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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科30巻6号

1976年06月発行

雑誌目次

特集 第29回日本臨床眼科学会講演集 (その6)

第29回日本臨床眼科学会講演目次

ページ範囲:P.646 - P.646

講演
炭素粒子導涙試験――涙の流れ,とくに
Krehbiel flow について………………長嶋孝次…651
片眼眼球突出の診断………………丸尾敏夫・他…659

学会原著

炭素粒子導涙試験—涙の流れ,とくにKrehbiel flowについて

著者: 長嶋孝次

ページ範囲:P.651 - P.656

緒言
 流涙症の多くは涙道の器質的通過障害によるとはいえ,その診断には,いきなり洗浄試験やブジー消息によつて涙道粘膜に機械的刺激を加える前に,導涙試験をおこなうことが好ましい。慢性涙嚢炎や上下涙点の閉鎖例など,はじめから導涙性とわかりきつたものにまでその必要はないが,その他の場合にはフルオレスセイン残留試験が実用的である。これはとくに涙道機能障害と分泌性流涙症の鑑別に有用であるが,ルーチンにおこなうには,いささか時間がかかるのが欠点である。
 そこで,導涙機構の研究に炭素末を利用したMaurice (物理学者,1973)1,2)の方法を検討して,炭素粒子懸濁液の処方を改良し,観察を上涙点でおこなつた結果,著者の変法は迅速簡易な導涙試験として,流涙症の診断に有用と認められたので報告する。併せて本法によつて観察した涙の流れのパターンとくにKrehbiel flowと涙道ポンプ作用の関係についても考察する。

片眼眼球突出の診断

著者: 丸尾敏夫 ,   竹内真

ページ範囲:P.659 - P.666

緒言
 眼球突出の診断法は眼窩静脈撮影,超音波検査,あるいは放射線同位元素によるscintigra—phyなどによつて,近年いちじるしい進歩をとげた。これらの診断法の個々については,わが国でもすでに報告がなされているが,総合的な評価はあまり行なわれていない1,2)。これらの診断法それぞれは有用であるが,万能であるともいい難い。
 一般に,検査は患者への侵襲度,特殊設備の必要性,あるいは安全性などからみて,診断の順序も考慮されなければならない。眼球突出には,そのような系統的な診断法についての報告も乏しいようである3)

17歳男子にみられた眼窩RhabdomyosarcomaとOphthalmoscanによる超音波検査所見について

著者: 大鳥利文 ,   越智信行 ,   須田秩史 ,   橋本重夫 ,   中尾雄三 ,   水野薫

ページ範囲:P.669 - P.676

緒言
 眼窩のRhabdomyosarcoma (横紋筋肉腫)は稀な悪性腫瘍であるとされてきたが1〜3),Horn& Enterline4),Porterfield & Zimmerman5),Ashton & Morgan6),Jones, Reese & Krout7)らの報告以来,報告例がしだいに増加し,眼窩横紋筋肉腫は必ずしも稀な腫瘍ではなく,小児の眼窩腫瘍のうちではもつとも多い腫瘍であるとされるようになつている。
 わが国ではじめて眼窩より発生した横紋筋肉腫について発表したのは,大杉8)であるとされているが,1960年石倉9)が眼窩付近に発生した横紋筋肉腫の症例を報告するまでは,全く本腫瘍についての報告がみられなかつた。しかし,1960年以後は欧米の本腫瘍についての研究に刺激されてか,しだいに横紋筋肉腫の症例報告数が増加し,現在までの文献をひもとくと,不確かなものを含めると眼窩より発生したものだけで,17例の報告がみられるようになつている10〜28)

Alveolar Soft Part Sarcoma of the Orbitの1例

著者: 臼倉弘子 ,   河崎一夫 ,   米村大蔵 ,   松原藤継 ,   北田博久

ページ範囲:P.677 - P.681

緒言
 1952年Christophersonら1)。よ,組織学的にきわめて特徴的であるが組織由来不明の軟部肉腫を12例集め,alveolar soft part sarcomaと命名した。それ以後,alveolar soft part sarcomaの報告は1973年までに世界で125例,うち本邦で24例みられるが2),四肢に発生するものが大多数であり,眼窩原発の報告はわずか数例である。著者らはきわめて稀な眼窩原発のalveolar soft partsarcomaの1症例を経験したので報告する。

水疱性角膜症に対するGundersen法による結膜被覆術の効果について

著者: 北野周作 ,   東野巌 ,   竹中剛一 ,   山田耕司 ,   塚田良一 ,   赤松義之

ページ範囲:P.683 - P.687

緒言
 水疱性角膜症は単に視力の減退をきたすのみではなく,眼痛,流涙,異物感などの不快な自覚症状に悩まされることが多い。本症の治療には,高張の溶液または軟膏の点眼,眼圧降下剤,角膜表層の焼灼,角膜移植,人工角膜移植などいろいろな方法が試みられており,特に最近ではsoftcontact lensの利用による治療が行なわれている。しかし上記のいずれの方法にせよ,効果が的確でしかも永続的であるとはいえない。1958年にGundersen1)は水疱性角膜症は原因のいかんにかかわらず,眼科医に抵抗する最も悲惨な病状の一つであることを指摘している。そして本症に対する最適の方法としてlamellar keratectomyを併用した結膜被覆術を紹介し,1960年には詳細な術式と本法を実施した症例について報告している2)。その後Dohlman3),Wille-Gφrgensen4),Hvidberg Hansen5),Sugar6),Arentsen7),らの報告があるが,いずれも眼痛よりの解放に主要な目的をおいている。
 わたくしどもは,疼痛などの自覚症の軽減のみならず,視力の改善をも図る意味でGundersenの原法に改良を加えた方法で,手術を行なつており,ほぼ満足すべき結果をえているので,ここに報告するしだいである。

脈絡膜動脈閉塞症候群

著者: 小林義治 ,   氏家和宣 ,   赤羽信雄

ページ範囲:P.691 - P.701

緒言
 限局性の網膜脈絡膜萎縮のうち,後極部に頂点を有し,周辺部に向け底を有する三角形のものは"Triangle syndrome"(Amalric 1969)1)と呼ばれ,後毛様動脈の閉塞によるとされている。
 これは,外傷ないし手術操作等により,また全身疾患から起こるいわゆる続発性のものはすでにいくつかの報告にみられるのであるが,明白な基礎疾患なしに発症する原発性ともいえるものについては,ほとんど明らかにされていない。

網膜剥離手術における網膜下液排除の新方法

著者: フリーマンハル・マッケンジー ,   スケペンスチャールス・エル ,   広瀬竜夫

ページ範囲:P.705 - P.708

緒言
 脈絡膜,硝子体および網膜下出血は,網膜下液排除に伴つて生じうる重篤な合併症である1)。この出血の頻度を減少させるべく,手術上二つの新しい方法について述べる。その一つは脈絡膜血管を明瞭に観察するための透視法(transillumina—tion)であり,他の一つは小さな脈絡膜血管を閉鎖するための脈絡膜ジアテルミー凝固法である。

連載 眼科図譜・223

眼瞼,球結膜の限局性アミロイド変症の1例

著者: 松浦啓之 ,   瀬戸川朝一 ,   藤永豊 ,   五明田学

ページ範囲:P.649 - P.650

〔解説〕
 限局性アミロイドージスは上気道,尿道,皮膚などに見られ,眼部では眼瞼,結膜,角膜などに生ずる稀な疾患である。
 本症例は47歳の男性で,右眼の流涙,充血を訴え上下眼瞼に弾性軟の小指頭大と拇指頭大の腫瘤形成がありそのために眼瞼の腫脹,眼裂狭小を来たしていた(第1図)。腫瘍は下眼瞼結膜ならびに球結膜の一部にも浸潤している(第2図)。右眼耳側への眼球運動に障害があり複視を自覚した。球結膜腫瘍を含めて上下眼瞼の腫瘍摘出をおこない,口唇,口腔粘膜移殖による結膜嚢形成術をおこなつた。腫瘍は組織学的にcongo-red染色陽性(第3図),偏光顕微鏡的に緑色の偏光を示し(第4図),アミロイドと同定した。また電子顕微鏡的にも約100Å径の入り乱れた走行を乱すアミロイド細線維を確認した(第5図)。

眼科診療の管理・3

3.コミュニケーション

著者: 湖崎弘

ページ範囲:P.746 - P.749

 高度の知識と技術を持つ医師,優秀な検査員,高性能の検査器具,それらの力を総合して発揮するには診療の管理が必要である。診療の管理の第1は患者数のコントロール,つまり予約システムで,それは前回に述べた。第2は患者と医者との間の情報交換,つまりコミュニケーションをよくすることにある。

特別講演

Pars Plana Vitrectomy

著者: ,   松井瑞夫

ページ範囲:P.709 - P.714

まえがき
 第29回日本臨床眼科学総会の招待特別講演として,米国のマイアミ大学医学部眼科Ba—scom Palmer Eye InstituteのRobert Machemer教授により「Pars Plana Vitrectomy」(毛様体偏平部硝子体切除術)の講演が行なわれた。当総会長の加藤教授よりMachemer教授に講演原著の執筆を依頼したところ,同教授はすでに同じ内容の原著は英文で発表されているので再び同じ内容のものを執筆することは無意味であることを理由に,了諾が得られなかつた。しかし日本の読者へのよりよい理解のため,その原著の翻訳転載の依頼を行なつたところ,逆に筆者に講演内容の資料をすべて提供するので,紹介記事の形式で執筆するようにと依頼されたので,本文をここに発表するにいたつた。まず,この点についてご了解を得ておきたいと思う。
 講演内容の紹介の前に,同博士の略歴を述べておきたいと思う。

網膜剥離

著者: L.Schepens ,   広瀬竜夫

ページ範囲:P.723 - P.743

緒言
 本論文は一三つの部分より成る,すなわち網膜剥離の原因,診断,および治療について,特に最近の進歩,あるいは一般にあまり知られていない所見に重点を置き述べたく思う。ここでは,裂孔原性網膜剥離(rhegmatogenous retinal detach—ment)についてのみ言及し,原疾患が他にあり二次的に生じた剥離については論じないことにする。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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