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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科30巻7号

1976年07月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・224

視力障害の原因となつた硝子体閃輝症

著者: 山田捷文 ,   清水昊幸

ページ範囲:P.767 - P.768

〔解説〕
 硝子体閃輝症は特異な硝子体混濁を来す疾患であるが,その臨床上の特徴として視力障害を来さないことが挙げられている。
 今回報告した2例は硝子体閃輝症に後硝子体剥離を併発したことにより視力障害を来したと思われた症例である。

眼科診療の管理・4

4.診療の記録とその保管

著者: 湖崎弘

ページ範囲:P.871 - P.878

 高度の知識と技術を持つ医師,優秀な検査員,高性能の検査器具,それらの力を総合して発揮するには診療の管理が必要である。診療の管理の第一は,患者数のコントロール,つまり予約システムであり,第二は,患者と医者との間の情報交換,つまりコミュニケーションをよくすることにあり,これらについては既に説明した。第三は,診療の記録およびその保管の問題である。その要は,正確で洩れのない記録が,誰にでもわかる形式で書いてあり,しかもいつでもその記録が利用できるように保管されていることである。

臨床報告

緑内障に対する調整的手術の考案—階段状強膜弁法

著者: 塩瀬芳彦 ,   神田孝子 ,   川瀬芳克

ページ範囲:P.769 - P.776

緒言
 最近の緑内障手術として,従来の炉過手術に対し流出路手術と呼ばれるtrabeculotomy1,2),trabeculectomy3,4),sinusotomy5)などが注目を集めつつある。これらの方法は房水流出路の異常抵抗部位に限局したmicrosurgeryを行なうことにより侵襲を少なくし,手術に伴う偶発症を最小限に抑える試みである。問題点としては強膜内経路における異常抵抗の局在性確認と正確な手術操作の難しさにある。特に代表的術式とされるtrabeculotomyは先端操作がblindであることから術者の熟練度により結果が大きく左右される難点がある。
 一方,濾過手術の立場からの改良法としてsubscleral sclerectomyを主体とするdoubleflap法6,7)があるが,これは強膜弁を作製することにより前房開口部を保護するとともに,濾過水胞を後方に形成させ,かつ嚢状の薄い水胞形成を防ぐ利点がある。当初,流出路手術として出発したtrabeculectomyは結果的に濾過水胞を形成することから,いわゆるdouble flap法に属する濾過手術と考えられている。

カルバメート(SevinR)長期経口投与による眼所見について—特にrubeosis iridisのモデル実験として

著者: 田宮和朗 ,   安田是和 ,   宮田幹夫 ,   石川哲

ページ範囲:P.777 - P.785

緒言
 Rubeosis iridisは,定義としては虹彩組織内における血管拡張と結合組織の増加であるといわれている1)。一方臨床的には,虹彩炎のない虹彩部の血管拡張または新生を称し,糖尿病,網膜中心静脈閉塞症,出血性緑内障その他に起こるといわれている2)。Rubeosisとは糖尿病に必ずしも特異的ではないが,糖尿病の重症な合併症の一つとされている。若年者では罹病期間の長い人に,老人では短い人にも発生するという。この場合はほとんど常に両眼性であり,重症の網膜症を合併していることが多い3)
 一方組織学的には,虹彩面上の新しい血管の存在(必ずしも血管新生とはいわぬ)と,前述の定義とは逆に,炎症または新しい組織増殖を伴わぬ状態を呼ぶと記した発表もある2)

視力障害の原因となつた硝子体閃輝症

著者: 山田捷文 ,   清水昊幸

ページ範囲:P.787 - P.791

緒言
 1894年Benson1)によりAsteroid hyalitisと命名された硝子体閃輝症Scintillatio niveaは他にAsteroid hyalopathy2)Asteroid hyalosis3)等の呼称をもつ特異な硝子体混濁を示す疾患である。
 従来硝子体閃輝症は視力に影響を及ぼさない4,5)といわれており,そのためかその報告例は多くはないが,最近著者らは本症に後硝子体剥離を合併した結果視力障害を来したと考えられる2例を相次いで経験したので報告する。

学校における色覚検査の検討

著者: 青木功喜 ,   田中宣彦 ,   時田広

ページ範囲:P.793 - P.796

緒言
 学校保健法改正が1973年5月に行なわれ,従来「色神障害の有無及び障害の種別を明らかにする」といわれていたのが,「色覚異常の有無及程度を明らかにする」と変更された。しかしわが国では学校における色覚検査を如何にするべきかは今なお統一された見解がない。このため学校医は色覚異常程度判定に際して眼科専門医ですら少なからず混乱しているのが現況である。一方色覚検査で現在わが国で用いられているものには色覚検査表(石原表,東京医大表,大熊表),ファーズワース氏パネルD−15,ランタン,アノマロスコープなどが代表的なものであり,その方法にはそれぞれの特徴と限界があり,その組合せによつてはじめて色覚異常の有無,および程度判定が可能になつてくる。このような背景の下でわれわれは学校における色覚検査をより能率的かつ正確に行なうには如何にするべきかを知るため,札幌市内の小中学生を対象に検討を加えてみたので,その結果を報告したい。

樹氷状血管炎を呈した小児ブドウ膜炎

著者: 伊藤康行 ,   中野雅代 ,   邱信男 ,   竹内真

ページ範囲:P.797 - P.803

緒言
 小児ブドウ膜炎として,慢性に経過する前房硝子体混濁,および眼底に限局性病巣を有し,虹彩癒着を来たす等の症例には,時に遭遇するが,初診時,主病変として網膜の動静脈が,あたかも樹氷を思わせる高度の白鞘化を呈し,経過と共に血管病変,網脈絡膜病変が消腿した症例を経験し,2年間の経過を観察した。最近10年間に,小児ブドウ膜炎は増加したというが,報告1〜9)は散見されるにすぎない。本症例は,樹氷状血管炎(fro—sted-branch angiitis)を主病変とするきわめて興味ある小児特有なブドウ膜炎の一病態を示し,Schepens,Brockhurst1),浦山12)による周辺性ブドウ膜炎についての詳細な記載はあるが,稀有な病像である。

再発をくり返し,悪性化した涙腺多形腺腫の1例

著者: 谷瑞子 ,   浅野善郎 ,   中村滋

ページ範囲:P.805 - P.808

緒言
 多形腺腫—いわゆる混合腫瘍—の多くは唾液腺に発生し,涙腺の多形腺腫の発生頻度は全多形腺腫の0.5〜1.0%にすぎない1)。しかし,涙腺多形腺腫は臨床的に遭遇する機会の比較的多い腫瘍の一つであり,全涙腺腫瘍の40〜90%の発生頻度が報告されている2〜3)。多形腺腫は一般に腫瘍を完全に摘出すれば根治しうるという意見が多いが,さらに長期間にわたり術後経過を観察すると,病理組織学的に良性と診断された場合にも,再発ないしは悪性化の転帰を示す症例も決して少なくはないことも報告されている4)
 著者らは第1回の手術後34年の経過中に,再発をくり返し,その都度手術を受け,最終的には悪性化し,局所への浸潤,および肺への遠隔転移を示して死亡した右涙腺多形腺腫の1例を経験したのでここに報告し,併せて再発例の手術方法に関して考察を加えた。

Epinephrine Maculopathyの1症例

著者: 伊東良子 ,   吉住真 ,   布田竜佑

ページ範囲:P.809 - P.813

緒言
 L-epinephrineの副作用の一つであるepine—phrine maculopathyは1967年Beckerらの報告以来,欧米では数例の記載があるが,本邦ではいまだその報告をみない。著者らは,最近次のような症例を経験した。すなわち白内障手術5年後のPosner-Schlossman症候群と思われる1例に,l-epinephrineを点眼したところ,1カ月後に視力障害,中心暗点を訴え,眼底検査,螢光眼底撮影により,cystoid macular edemaが見出された。これらの症状は点眼中止により治癒したが,l-epinephrineの再点眼により再発した。以上のことから著者らは,この症例を本邦ではまだ報告のないepinephrine maculopathyと診断した。本論文では,本症例を紹介し,特徴的な螢光眼底所見の分析,ならびに類似の螢光像を呈するIrvine-Gass症候群より本症の病理学的変化および発生機序を類推し,併せて熊大眼科緑内障クリニックにおけるl-epinephrineの副作用についても検討し,報告する。

白点状網膜炎を呈したE17環状染色体の1例

著者: 玉井嗣彦

ページ範囲:P.815 - P.819

緒言
 今回,著者は極めて稀な17番環状染色体の1例の眼科的検査を施行する機会を得た。
 18番環状染色体の症例1〜5)に高頻度にみられる顔面正中部の陥凹,眼間離開,内眼角贅皮,斜視,眼球の異常などはなかつたが,検影法にて+2.5Dの遠視と眼底検査において白点状網膜炎の所見が観察された。

眼部ワクチニアにたいするVIGの使用経験

著者: 藤原隆明

ページ範囲:P.821 - P.825

緒言
 種痘眼合併症はさほど多いものではないが眼科医が時に遭遇する疾患である。当大学の所在する伊勢原市においても,本年4月第1期種痘が行なわれたのち,3名の眼部ワクチニアの患者が来院した。うら1名は眼瞼ワクチニアの子より感染した母親の例である。いずれの症例も,乾燥抗ワクチニア人免疫グロブリン(商品名ワクチニアブリン,以下,VIGと略す)の全身的および局所投与により,比較的すなやかに治癒にいたつた。本報では,これらの症例についてのVIGの使用経験を述べ,眼部ワクチニアの治療法について,検討を加えてみた。

幼児にみられた前頭洞膿嚢腫による眼球突出

著者: 佐々本研二 ,   李英子

ページ範囲:P.827 - P.829

緒言
 一側性眼球突出をきたす原因としては,腫瘍と炎症が大部分であるが,小児においては,成人に比べると腫瘍によるものが多く,炎症によるものは少ないといわれている。そして,小児に比較的稀な副鼻腔嚢腫のように慢性に経過して炎症所見の少ないものでは,眼窩腫瘍との鑑別に困難を感じる場合もある。
 今回著者らは,4歳の女児で一側性眼球突出をきたし,初期に眼窩腫瘍が疑われたが,手術により前頭洞膿嚢腫と診断された症例を経験したので報告する。

全眼球炎の化学療法,特に抗生剤大量投与療法—Carbenicillin大量投与による眼内移行ならびに臨床効果

著者: 大石正夫 ,   本山まり子 ,   西塚憲次 ,   小川武

ページ範囲:P.835 - P.840

緒言
 全眼球炎は重篤な眼感染症で,なかでも緑膿菌によるものの予後は不良である6)
 近年,広域合成ペニシリン剤の一つであるCarbenicillinの大量投与によるグラム陰性桿菌,特に緑膿菌感染症に対する臨床効果がクローズアップされてきている。全眼球炎に対しても当然その適応が考えられて臨床効果が期待されるところである。

ラットにおける実験的有機燐中毒による眼障害について—眼障害の発症薬量

著者: 深見悠紀人

ページ範囲:P.841 - P.848

緒言
 有機燐系農薬は,農産物増産に多大の貢献をしているが,一方人体に対するその毒性についても問題となり,諸家により臨床的および実験的にその毒性につき多数の報告がなされている。すなわち現在すでに強毒性の有機燐剤は禁止され,低毒性のものがもつばら使用されているが,なお有機燐剤の安全性については種々論議されているところであり,いまだ一定の見解に達していないのが現状である,,前回著者らは1),ラットにおいて低毒性有機燐系農薬Sumithionの大量投与による全身的中毒所見と著明な角膜障害について報告した。
 今回著者は,その安全最低量を知るために,比較的低濃度のSumithionを長期間にわたり投与し,全身的中毒所見と共に眼障害,特に角膜障害について臨床的所見と併せて組織学的および電顕形態学的に検索し,若干の成績をえたのでここに報告する。

薬の臨床

眼感染症におけるボンナマイシン(Doxycycline)の眼内移行ならびに臨床的検討

著者: 大石正夫 ,   西塚憲次 ,   本山まり子 ,   小川武

ページ範囲:P.851 - P.856

緒言
 Doxycycline (DOTC)は,1962年,Stephens,C.R.ら1)によつて合成されたTetracycline系誘導体である。その特徴は,経口投与後の吸収率がきわめて高く,1日1回の少量投与で長時間有効血中濃度が持続し,かつ組織への親和性が従来のTCに比べて非常に高いことである。
 本剤は臨床上,各科領域の感染症の治療にすぐれた効果がみとめられており,私どもは眼感染症に対する基礎的,臨床的検討成績についてすでに報告したところである2)

Sulfobenzylpenicillinの眼科領域での使用経験

著者: 瀬戸川朝一 ,   藤永豊 ,   松浦啓之 ,   田中清

ページ範囲:P.857 - P.859

緒言
 眼科領域における各種化膿性疾患に対する合成ペニシリンの効果は大であるが,今回,新合成されたSulfobenzylpenicillin (SB-PC)の注射用製剤であるLilacillinを使用し,比較的短期日で症状の軽快する例を認めることができたので報告する。

GROUP DISCUSSION

白内障(第14回)

著者: 藤永豊

ページ範囲:P.861 - P.870

1.先天性白内障マウス水晶体の組織像
 マウスの先天性白内障は,そのstrainにより初発時期および発生部位を異にしている。現在まで先天性白内障マウスのstrainは10種近く報告されている。今回は主にCataract-Fraser並びにCataract-Nakano-Char—les River strainについてそれらの組織像を光顕および電顕にて検討したので報告する。
 白内障の変化は前者では胎生13日目にelongationを生じた後壁細胞の膨化として,また後者では生後6口目に後極部で水晶体核周辺の細胞のhydropic changeとして認められた。これら両者における細胞内の変化は細胞核をはじめ,mitochondria,endoplasmic reticulum,Golgi's apparatusなどのorganellesの残存と,正常組織には認められないdense bodyの出現であつた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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