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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科30巻8号

1976年08月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・225

定型的なAcute Posterior Multifocal Placoid Pigment Epitheliopathyの1例

著者: 高橋寛

ページ範囲:P.899 - P.900

〔解説〕
 Gass1)が,1968年特徴的な眼底所見および螢光眼底造影所見を呈する疾患をAcute posterior multifocal Placoid pigment epitheliopathy (以下APMPPE)と命名して以来,いまだ報告例はきわめて少なく,わが国においては,吉岡9),萩野ら10),浅山11),丸山14)の報告を見るにすぎない。私は,比較的高齢者にして,しかも左眼につづいて約2年後に右眼に発症した定型的なAPMPPEの症例を経験Lたので報告する。
 症例:61歳,女性。

眼科診療の管理・5

5.物品の管理

著者: 湖崎弘

ページ範囲:P.979 - P.985

 高度の知識と技術をもつ医師,優秀な検査員,高性能の検査器具,それらの力を総合して発揮するには診療の管理が必要である。診療の管理の第一は,患者数のコントロール,つまり予約システムであり,第二は患者と医者との情報交換の方法を考えること,つまりコミュニケーションであり,第三は,診療の記録およびその保管の問題であり,以上はすでに説明した。診療管理の最後は物品の管理,つまり器械その他の機器の配置とその管理である。要は狭い診療室または手術室に,使い勝手よく器械などを配置し,しかもそれぞれの器械が誰でも,いつでも使えるように整備された状態にあることである。

総説

眼科領域における抗生物質療法の展望

著者: 徳田久弥

ページ範囲:P.901 - P.905

1.新しい抗生物質
このところ新しい抗生物質はセファロスポリン系のものとアミノ配糖体にいくつかでているが,新薬として許可され発売されるものとなると非常に少ない。したがつてここ数年来地位を確保したものとなると,Sulbenicil—lin (SB-PC,リラシリン)とDideoxy kanamycin B(DKB:Panimycin)のほかは,マクロライド類似群のClindamycin (ダラシン)と,それに特異な広域スペクトル抗生物質として緑膿菌に対する効果が評価されているスペイン生れの経口剤ホスホマイシン(FosfomycinFOM,筋注用,シロップ剤もある)ぐらいのものであろう。セファロスポリン系のものでは;
 Cephapirin:CETに抗菌力がにているが筋注時の疼痛,腎毒性が少ない(CEP)。

臨床報告

副腎皮質ホルモンの大量投与が奏効した周辺性ブドウ膜炎の1例

著者: 菅謙治 ,   永井隆子

ページ範囲:P.907 - P.910

緒言
 1950年にSchepens1)がora serrataに限局して滲出物の出現する疾患をperipheral uveitisと命名し,1960年にBrockhurstと共に2)100例の集計を行なつて本疾患の特徴を明らかにした。一方1960年にWelch4)は同疾患をpars planitisと命名し,ブドウ膜炎という名称をはずしたが,1964年にはKimura6)らがふたたびchroniccyclitisという名称にもどし,以来現在にいたるまで本症はブドウ膜炎の一種とみなされてきている。
 わが国においては1963年に浦山7)が本疾患をわが国に紹介して周辺性ブドウ膜炎という日本名をつけ,文献上本疾患が極めて多種多様の症状を示すことから,定義として,初発病巣が毛様体や前部脈絡膜に限局して存在する疾患を指すとしてはどうかとした。この定義は現在もなお一般に信じられているようで,われわれも周辺性ブドウ膜炎とは初期においては,前眼部,中間透光帯,後極部網膜などにはほとんど異常がなく,ただ毛様体や周辺部網脈絡膜においてのみ滲出物が認められる疾患を指すと解釈している。

網膜静脈枝閉塞症における脂質の検討

著者: 小沢勝子 ,   種田光成 ,   高井みちえ

ページ範囲:P.911 - P.915

緒言
 網膜静脈枝閉塞症は血管炎型を除けば,高血圧があるかまたは高血圧の既往がある者に発見されることが多いといわれる。そしてほとんど全例に網膜細動脈硬化を認める。動脈硬化のうち,アテローム硬化は高脂血症との関係がよく研究されており,脂質代謝が動脈硬化の進展に密接な関係をもつといわれているが,網膜血管のような細動脈の硬化は高血圧と関係していて脂質には関係がないという意見が従来圧倒的である。また網膜静脈枝閉塞症患者における脂質代謝の報告はみられない。しかし網膜静脈枝閉塞症患者のわれわれの治療経験によれば,高血圧の有無にかかわらず,網膜動脈硬化が強く,線溶療法のみでは治療効果が不十分な例がある。そこで今回は網膜静脈枝閉塞症の予防および治療的見地から,脂質代謝について検討した。

運動による眼圧変動の研究—踏み台昇降後の眼圧変動について

著者: 清水洋一

ページ範囲:P.917 - P.928

緒言
 眼圧は生理的な変動によつて影響をうけることは以前より知られている,そのうち律動的な変動としては心臓血管系のリズム,呼吸,眼圧日内変動,女性においては月経による変動などが知られている。急激な生理的変動としては正常瞬目運動,外眼筋の収縮,内眼筋の収縮(調節による),バルサルバ試験,強制的な呼気,咳,くしやみ,笑い,そして身体運動などが知られている1,2)
 日常生活において歩行,走行,階段昇降,体操,その他種々なる日常運動,スポーツなどの運動を行なつている。しかし,運動による眼圧の変動を報告した文献は比較的少ない。

蚕蝕性角膜潰瘍の一治療法

著者: 武井洋一 ,   佐藤裕也 ,   斉藤武久

ページ範囲:P.929 - P.932

緒言
 蚕蝕性角膜潰瘍は,比較的稀な疾患ではあるが,進行性のもので,多くは角膜周辺から中央にまで潰瘍が拡がる予後不良な疾患である。今までにも,いろいろな治療法が行なわれてきたが,本疾患の原因,作用機序が不明なため,治験例も散見されるにもかかわらず,適切な治療法というものは,まだ確立されていない現状である。われわれは今までには潰瘍部の結膜被覆や表層角膜移植,ステロイド療法等を行なつてきたが,いずれも長期間における効果をなずに終つている。
 今回,本疾患2症例において角膜潰瘍部の掻爬,周囲結膜の切除,自家血清,cysteineまたはステロイド点眼等を併用した治療を行ない,良好な結果を得た。

未熟白内障の1眼における水晶体融解緑内障兼水晶体起因性ブドウ膜炎

著者: 小島道夫

ページ範囲:P.933 - P.936

緒言
 水晶体融解緑内障は従来過熟白内障において嚢の変性により皮質物質が前房内に遊出して,その際集合する組織球によつて貪食され,これが前房隅角の線維柱網に蓄積・粘着することによつて起こるとされている1〜6)
 一方三国・岩田は未熟白内障でもそれを惹起することが稀ながらあることを強調している7)

虹彩根部広範切除術

著者: 青池明 ,   植村より子 ,   梅津道子

ページ範囲:P.937 - P.940

緒言
 Graefeの虹彩(全幅)切除術は百有余年の歴史を経て今なおその価値を保つている有効な手術方法である。ことに急性緑内障には第一選択の術式であり1),慢性狭(閉塞)隅角緑内障にも,虹彩はめこみ術,周辺虹彩切除術とともに有効な術式の第一に挙げられる2)。しかしこの術式の欠点は,術後瞳孔が拡大するため,これに伴う様々の不快な後遺症を残すことである。この術式の効果は,前後房の交通路をつくることと,虹彩根部を切除して隅角の一部を開放する点にある。この目的を達するためには,必ずしも瞳孔縁に侵襲を加える必要はないと考えられる。筆者は,虹彩切除術で切除される部位から瞳孔縁付近を除く(この付近を残存させる)手術法を考案した(第1図)。一見,周辺虹彩切除術と同じように思えるが,一般の代表的手術書による方法では,虹彩根部が十分に切除されないうらみがある1〜4,6)。これでは後に何らかの原因で隅角癒着を起こす可能性も残るので,効果において同様とはいえない。

最近5年間の網膜剥離手術症例の統計的観察および術後6カ月以上観察した復位症例の視力ならびに合併症の検討

著者: 檜垣忠尚 ,   難波彰一 ,   山田いほ子 ,   松山道郎

ページ範囲:P.941 - P.946

緒言
 今日まで網膜剥離の病態,臨床像ならびに手術成績に関する文献はおびただしく正に枚挙にいとまをみない程である。しかし,視力予後および復位例において視力改善を認めない症例についてその病因を詳細に検討した報告は意外に少ない。
 今回著者らは,1970年1月より1974年12月までの5年間に大阪市立大学眼科にて入院加療を受けた網膜剥離患者200名を対象に,病態,手術方法,成績,およびfollow-upしえたものの視力予後について統計的観察を試み,特に,復位後における視力の回復不良症例について若干の検討を加えて報告した。

談話室

顕微鏡手術のためのフットスイッチ盤について—その改良とテレビの応用

著者: 原たか子 ,   原孜

ページ範囲:P.951 - P.956

緒言
 近年,眼科手術に関する電気機具の数は,増加の一途を辿り,そのほとんどに,フットスイッチが用いられているので,これらをまとめるスイッチ盤が必要となつてきている。これが,スイッチ盤作製の根本動機であるが,この他,もう一つの動機がある。顕微鏡手術を楽な姿勢で行なおうとすれば,術者の大腿は,患者の頭をはさみこむような位置をとらなければならなくなる1)。このために,手術台からの患者の頭部の突き出しとか,術者のwrist restの改良等が必要となつてくる2)わけである。術者にとつて良い姿勢は,とりも直さず,助手にとつても,良い姿勢であり,患者の頭部付近の限られた空間を,術者と助手にどう配分するかということは,重要な問題となる。これは,術者と助手が,共に坐つて,共に手術顕微鏡(以下OPMIと略)を使用するという場合に,新しく生じてくる問題といえる。従来から,多くの術者が,おのおの独創的なフットスイッチ盤を創作,使用しているが,いずれも,一方的に,術者の立場から考案されているようである。私達のような個人病院では,指導的な立場の入が助手をつとめるということはまずない。非医師でかつ術者よりも経験,能力が劣ったものが助手をつとめるのが常である。一方,このような場合でも,顕微鏡手術は呼吸の合つた術者と助手の共同作業を必要としていることに変りない。

第80回日本眼科学会総会印象記

房水・葡萄膜炎・免疫(第1会場第1席〜第10席),他

著者: 浦山晃 ,   桜木章三 ,   酒井文明

ページ範囲:P.957 - P.976

 アンジェラスの鐘とともに開幕の第1日,長崎の空はさつき晴れに澄みわたり,暑からず寒からず,学会には惜しい程の好日である。総会議事に続いて,10時より12時半まで房水,葡萄膜炎,免疫に関する一般講演が行なわれた。
 冒頭の3題は,近年各科領域で脚光を浴びているプロスタグランディンズ(PGs)に関するもの。眼科領域では炎症,眼圧,瞳孔反応との関連において,三島教授らにより夙に採りあげられた課題で,基礎的検討の段階から臨床的な病変の面へと向いつつあるように感じられた。

GROUP DISCUSSION

遺伝・先天異常性眼疾患

著者: 水野勝義

ページ範囲:P.987 - P.992

 今回のGDは昭和50年11月8日,名古屋産業貿易会館において行なわれた。参加者約40名で,何時もながら小人数で和かな討論が行なわれた。今回は特に夜盲性疾患と交通安全をメインテーマとして募集したが,応募演題が少なかつたため,一般演題に加えた。また今回の特徴は特別講演として,東北大医学部細菌学講師海老名卓三郎氏に"臨床遺伝学と眼疾患"と題してお話をお願いし,本GDのメンバーに遺伝学の教育講演をお願いし,多大の感銘を与えたことである。今後このような特別講演は時々行ないたいと思う。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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