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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科30巻9号

1976年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・226

単眼児の1例

著者: 原田敬志 ,   小嶋一晃 ,   杉田元太郎 ,   三宅三平

ページ範囲:P.1019 - P.1020

〔解説〕
 生後48時間で死の転帰をとつた単眼児の1例について臨床像・病理組織像を報告する。
 病例は,2回経産で28歳の女性に生まれた単眼児で前方後頭位により満期産で出産した。生下時体重は,2,510gであつた。臨床的にまず前景に立つのはその特異な風貌であり,proboscisあるいはtrompeと名付けられる棒状の鼻を上方に挙上すると,2対の眼瞼によつて区画された結膜が現われ,さらに十分開瞼すると痕跡的な角膜が2つ認められた(第1図)。典型的な小頭症もみられた。

総説

視能矯正の現状概観—斜視の種類別頻度と視能矯正の効果について

著者: 山本裕子

ページ範囲:P.1021 - P.1026

緒言
 斜視および弱視の治療に関し,ことに視能訓練の効果については,何をしても結局完全に治るものではないという悲観論と,斜視や弱視の問題はもう片づいたというような楽観論が,非常に一面的にとらえられ,喧伝される傾向があるのは残念なことである。
 ここでは,斜視の種類別に,その頻度を考慮に入れて,したがつてその重要度をも考慮に入れて,視能矯正の現状とその効果を概観してみたい。

臨床報告

Trabeculotomy‘ab externo'後の隅角所見

著者: 山田栄一

ページ範囲:P.1027 - P.1039

緒言
 1972年8月から約3年間に著者らが行なつたtrabeculotomy例の中から開放隅角緑内障眼54眼(55回施行)についての術後隅角所見を報告する。本法の術後隅角所見についての詳細な報告はまだ少ない。

眼窩内容除去術における出血量と輸血量

著者: 河野真一郎 ,   雨宮次生

ページ範囲:P.1041 - P.1043

緒言
 眼窩内容除去術は,眼科領域において最も積極的な治療法の一つであり,しばしば術中多量の出血を見,輸血を必要とすることもまれではない。しかしながらこの手術の行なわれる機会は少なく,現在まで本邦において眼窩内容除去術を行なつた症例群に関する統計的報告を,いまだ見ない。欧米においては,眼窩内容除去術を行なつた症例群につき,頻度,年齢,病理診断,予後,眼窩再構築術等についての報告を散見するもの1〜3)の,出血量および輸血に関する記載がない。
 本稿は,1958年より1975年までの18年間に,京大眼科において行なわれた眼窩内容除去術に関する研究の一部である。われわれが最近18年間に行なつた眼窩内容除去術につき術中の出血量,輸血量を記録にとどめ,年齢,術式,何回目の手術かによつて,それらを比較検討し,眼窩内容除去術における術中出血と輸血について論ずる。

眼瞼の大欠損例5例に対する眼瞼再建手術

著者: 新家真

ページ範囲:P.1045 - P.1054

緒言
 眼瞼は,その特殊な構造と機能のため,その欠損の再建にあたつては,いくつかの固有の問題があり,眼科形成外科的に重要な位置を占めている。特に眼瞼の全層大欠損に対する形成手術は,眼瞼腫瘍の摘出後眼球を保護しかつ眼瞼部の美容目的のためには欠くことのできない手術である。したがつてその再建法としていろいろの技術が考えられてきた。それらを要約すると次の三つの術式に大別できる。
 1.Sliding flap法:上下眼瞼の何れか残つた方を,失われた方の再建に供する術式であつて,Hughes6),Fox4),Culter & Beard2),Smith14)らによる各種の変法があり,よく用いられる。

先天性硝子体嚢腫の4例

著者: 田辺吉彦

ページ範囲:P.1057 - P.1060

緒言
 先天性硝子体嚢腫は1898年にThompsonが初めて記載したが,以後報告例は少なく,まれな疾患とされている。しかし本症はほとんどが視機能に大して影響せず自覚症状が少ないので,見逃されたり,受診しないままで終る場合がかなりあると想像される。私は昭和46年から5年たらずの間に4例の本症に遭遇し,これが一般に考えられている程まれな疾患ではないと思う。
 本症の成因に関して,従来毛様体由来説1,2)と硝子体管由来説3〜8)の二つがあるが,私の経験した4例はいずれも毛様体由来であろうと考えている。

単眼児の1例

著者: 原田敬志 ,   小嶋一晃 ,   杉田元太郎 ,   三宅三平

ページ範囲:P.1061 - P.1064

緒言
 今回,われわれは単眼児の興味ある1例を得たのでその肉眼的および顕微鏡的所見について述べあわせて文献的考察を試みた。

頭部外傷により内側縦束症候群(Syndrome of the Medial Longitudinal Fasciculus)を呈した1例

著者: 大河内雄幸 ,   佐藤修 ,   鈴木光夫

ページ範囲:P.1065 - P.1067

緒言
 内側縦束症候群(Syndrome of the MedialLongitudinal Fasciculus,以下MLF症候群と略す)とは,脳幹の内側縦束の障害によつて惹起されるもので,臨床症状としては,眼球の水平性共同運動障害で,一般に輻較は正常であるにもかかわらず障害側眼球内転障害と他眼の外転眼に見られる水平性眼振を特徴とするものである。病因としては,脳血管障害,多発性硬化症,脳腫瘍,外傷,糖尿病,膠原病(SLE)脳炎,梅毒等があり,脳血管障害(特に片側性),多発性硬化症(特に両側性)によるものが多く,外傷によるものは,現在までのところBielschowsky1),Jaensch2),田中ら3)の計3例の報告があるのみである。
 これらのうち両側性MLF症候群を呈した症例は,Bielschowskyの1例のみである。今回,われわれは,頭部外傷により両側性MLF症候群を呈した症例を経験したので,ここに報告する。

眼・光学学会

眼球光学系の非球面性について

著者: 中尾主一

ページ範囲:P.1091 - P.1101

緒言
 眼球光学系が通常の光学機械のように球面共軸光学系で示されないことは古くから知られていることである。ところでこの非球面光学系が,果たして生体に有利に働いているかといえば,必ずしもそうではなく,ある場合にはかえつて不利に働く場合もあり得るということは,他の生体機構たとえば免疫現象などと全く同様であると考えられる。
 この研究テーマの目的はこのような非球面光学系の結像状態がいわゆるGullstrandの模型眼あるいはLe-Grandの模型眼とどのように異なるかということ,さらに臨床的諸問題,限鏡矯正理論と関連して起こる問題を追求することである。未だ十分な成果はあげるに至つていないが,これまでの経過について述べることとする。

Soft C.L.の曲率半径測定法

著者: 平野東 ,   柴田博彦 ,   曲谷久雄 ,   金木昭 ,   寺尾孝

ページ範囲:P.1103 - P.1106

緒言
 著者らはHydrophilic Soft Contact Lens (以下SCL)の曲率測定法に関し,実験ならびに器械の開発を行ないすでに発表1,2)してきたが,今回本器に2,3の改良を加えその実用性を高めた。
 1μのDial gaugeでは測定条件により測定値の安定が難しいこと,測定値の読み取りが繁雑なことからDigital Indicatorを用い5μ読みとし同時に円柱直径を8mmφとし最終理論精度は0.03mm位となつた。また円柱上端の形状に検討を加えた。

人工水晶体の屈折力の決定方法について

著者: 小口芳久 ,   A.Th.M.

ページ範囲:P.1107 - P.1111

緒言
 人工水晶体の屈折力を術前に決定することは,理論的には困難でないが,術後に眼球の屈折性諸因子が変化することが考えられるので,必ずしも容易ではない。今回,著者は82例の白内障の症例について,術前に角膜曲率半径,前房の深さ,眼軸を測定して,これより屈折力の一定のStandard lens (Binkhorst1)のIris clip lensまたはWorst2)のMedallion lensのいずれもconvex—planoのレンズ)を眼内に挿入した後の屈折の期待値を計算し,術後の真の屈折と比較検討を試みたのでその成績を報告し,片眼白内障で他眼の視力の良好な場合,使用する人工水晶体の屈折力を正視化するような度(Em—metropizing power)にするかまた健眼との関係を重視して等像化するような度(Iseiconizing power)にするか,あるいは一定の屈折力(Standard power)をもつた標準レンズだけで十分であるかなどの問題について検討を試みたので,あわせて報告する。

眼のperipheral refractionの実測

著者: 武田啓治 ,   八百枝浩 ,   岩田和雄

ページ範囲:P.1113 - P.1116

緒言
 人眼の周辺屈折力,非点収差に関する研究は歴史が深く,古くはYoung (1801)の理論計算値,Parent(1881),Feree, Rand and Hardy (1931)ら1,2,3)の実測値がある。本邦でも検影法論争の盛んなおりに石津4)(1920),畑(1942)5),広石・杉野(1960)6)等の周辺屈折についての報告があり,検影法の誤差の一つの原因として検討されている。これら諸家の報告を検討してみると周辺屈折力や非点収差は個人差がかなり大きいようである。しかし諸家の試みた周辺屈折力,非点収差の測定法およびその結果には疑問が残されている。たとえばFereeらはparallax refractometerを用いて測定しているが,その結果には今日では同意できないものがある。また石津,畑,広石・杉野らはスキアスコピーを行つているが周辺スキアスコピーの場合の中和点の影行の記載がないため,その結果が今日えられているものに類似していても疑問が残される。
 近年になりRempt等(1971)7)により周辺スキアスコピーでみられるdouble sliding-door effectと呼ばれる影行を利用して周辺屈折力を測る方法が発表されている。私どももこの方法を用いて周辺屈折力と非点収差を測定したので測定法と実測値について述べる。

GROUP DISCUSSION

高血圧・眼底血圧

著者: 入野田公穂

ページ範囲:P.1117 - P.1121

1.高血圧自然発症ラットの螢光眼底所見
 高血圧自然発症ラットの眼底出血および脳出血等の出血機序解明の一手段として,螢光眼底血管造影を行ない,フルオレスセインの網膜および脈絡膜の分布および時間的推移を観察し,さらに網膜血管および脈絡膜血管の透過性について検索したところ,次のような結果が得られた。
 ①正常血圧ラットについては,網膜血管および脈絡膜血管より,フルオレスセインの漏出は認められなかつた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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