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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科31巻1号

1977年01月発行

雑誌目次

特集 第30回日本臨床眼科学会講演集 (その1) 学会原著

Vogt・小柳・原田症候群—九大眼科における最近14年間の症例の統計的観察

著者: 川田芳里 ,   岡義祐

ページ範囲:P.17 - P.22

緒 言
 Vogt・小柳・原田症候群は,clinical entityが確立された内因性ブドウ膜炎の一つであるが,その病因についてはウイルス説,免疫説などがあり未だ解明されていない。ブドウ膜炎としてはその予後が比較的良好であり,治療法として1955年ごろからステロイド剤の全身投与が試みられて,本病に著効を呈することが明らかにされ,予後はさらに良くなつた。しかし,症例によつては治療経過がいちじるしく遷延したり,あるいは白内障や緑内障などの眼合併症を併発して,不良な経過をたどるものも少なくない。診断がつけやすく,わが国では日常よく遭遇するポピュラーな疾患であるにかかわらず,多数の症例について臨床的な分析を加えた報告はない。
 著者らは最近の14年間(1962年1月〜1976年4月)に九大眼科において治療を受けた症例につき,臨床統計的に,初発症状,視力の予後,眼外症状の出現頻度,再燃の有無,眼合併症の頻度などを検討した。とくに予後に関与する要因について検討を加え,若干の知見を得たので報告する。

原田病の経過と聴器機能障害との関係

著者: 星兵仁 ,   玉田康房 ,   村田蓉子 ,   小田島祥司 ,   田沢豊

ページ範囲:P.23 - P.30

緒 言
 原田病は,Vogt・小柳病とともに,髄膜症状,聴器障害および皮膚毛髪病変を伴つた特発性ブドウ膜炎であつて,その臨床像ならびに治療法等は成書に詳細に記載されている。しかしながら,本症に高頻度に随伴する耳症状に関して特に検討を加えた報告は,眼科1〜3)のみならず耳科方面4〜9)においても少なく,本症の聴力障害は,高音障害型感音難聴であるといわれているに留まり,詳細は明らかでない。
 今回,著者らは,原田病患者の聴覚平衡機能を検査し,その成績と病期との関係について検討したので報告する。

若年性リューマチ様関節炎と慢性虹彩毛様体炎

著者: 大野重昭 ,   Samuel J. ,   G. Richard

ページ範囲:P.31 - P.35

緒 言
 Juvenile Rheumatoid Arthritis (若年性リウマチ様関節炎,以下JRAと略す)は,小児ブドウ膜炎における最も頻度の多い原因の一つであり,その視力の予後は不良といわれ,病因も不明のままである。JRAの約10%に慢性虹彩毛様体炎が合併するといわれているが,その眼合併症の出現を予告できる有効な検査もみつかつていない。
 著者らは今回,University of California, SanFranciscoのUveitis Survey Clinicにおいてみられた,58例のJRAに合併した慢性虹彩毛様体炎について,その臨床所見および検査所見の検討を行なつたので報告する。

ベーチェット病患者にみられた網膜新生血管の微細構造

著者: 浜井保名 ,   高橋茂樹

ページ範囲:P.37 - P.41

緒言
 眼組織崩壊を伴うベーチェット病などの眼内血管の構造上の変化については,光学顕微鏡1,2)および電子顕微鏡的研究3)などでほぼ明らかにされている。しかしこれらの疾患では組織崩壊と同時に組織の増殖も認められ,正常組織にも増して活発な組織呼吸や栄養分の補給が必要である。このため血管新生という異常な現象が生じているものと考えられる。
 血管新生は角膜,虹彩および網膜疾患などで可視的現象として確認されており,それら各組織の新生血管については多くの報告4〜7)がなされている。

ベーチェット病患者の血液pHとKininの関係

著者: 宮永嘉隆 ,   水谷敏子 ,   梯やよい

ページ範囲:P.43 - P.48

緒 言
 ベーチェット病をはじめとする炎症性疾患におけるkinin系の動態は,その炎症症状が増悪している時期を頂点として,kallikreinにおいては,やや低値を示し,bradykinin活性は増強する。一方,kininaseはhypopyonなどの炎症極期には,極めて活性低下の著しいものが多い事実をすでに著者らは報告した1)。生体中でのこういつたautacoid2),特に,kinin, kininaseの関係はそのpHにより非常に大きな影響をうけるであろうことは想像に難くない。すなわち,bradykininをはじめとするplasmakininはpHが酸性であればあるほど,安定であり,容易に活性化される。逆にアルカリの状態ではkininaseが安定で活性化され,pH 6.5附近ではkininase活性はほとんど100%失活してしまう事実がある。こういつたことから,今回,著者らは,生体中,特に血液pHの影響をkinin systemが,どの様に受けるかを検討すべく,ウサギを使用して基礎実験を行ない,更にこれをうらづけるべく,ベーチェット病をはじめとするブドウ膜炎の患者における血液pHとKinin systemの関係を検討し,興味ある事実を得たので報告する。

FDP(Fibrin and Fibrinogen Degradation Products)値よりみた網膜血管病変の検討

著者: 杉本浩一 ,   砂田勲

ページ範囲:P.49 - P.60

緒 言
 網膜血管病変のうちで,閉塞性疾患が占める比率はきわめて多く,眼科臨床上,問題となる症例の大部分は網膜静脈閉塞症(retinal vein obst-ruction,以下RVOと省略)と糖尿病性網膜症(diabetic retinopathy,以下DRと省略)である。RVOは,網膜静脈に血栓による閉塞が生じ発病するとされ,DRでは細血管における閉塞性病変が主要病態と考えられている。
 このような血栓形成の要因としてVirchow以来,(1)血管壁の変化,(2)血流の速度(または性質)の異常,(3)血液成分の変化などが関与するといわれてきたが,血栓形成の機序についてはいまだ不明な点が多い。このうちHayrehも述べたごとく,第三の要因が最も複雑であり,この観点にたつて今日まで,上記疾患群の凝固,線溶系についての検索が三国1,2),福田3),宇山4),瀬戸川5),Almer6),小沢7)らによつて行なわれてきた。従来からの線溶能測定法には,ユーグロブリン溶解時間法,フィブリン平板法などがあるが,最近血管内凝固症候群の臨床的意義が認められ,病理学的作用が明らかにされるにいたつて,この際,血液中で増加するFDP(fibrin, fi-brinogen degradation products)検討が多くの領域で行なわれるようになつた8〜10)

網膜細動脈硬化症の長期観察における硬化性変化の推移

著者: 対馬敬子 ,   兼平民子 ,   松山秀一

ページ範囲:P.61 - P.67

緒 言
 網膜細動脈硬化症の進行は高血圧症と密接に関係するものである事は,すでに多くの報告に述べられているが,加齢的因子の関与については,なお不明な点も多い1)
 今回著者らは網膜細動脈硬化症の加齢による進行の有無を明らかにする目的で初診時,軽度の網膜細動脈硬化症と診断された者について,経年的観察を行ない,若干の知見を得たので報告する。

血液凝固系から網膜循環障害へのアプローチ(1)

著者: 忍足正之 ,   島野葉子 ,   大塚裕 ,   石川清

ページ範囲:P.75 - P.84

緒 言
 血栓形成に関しては,血管,血流,血液が三大要因として古くからとりあげられ,これらの面から多くの研究が報告されている。なかでも血液成分と血栓形成の関係については,凝固や線溶とともに血小板の関与が近年とくに注目され,この血球の機能や代謝に関する研究は多方面でとりあげられている。著者らは,血小板の最も重要な機能と考えられる凝集や粘着の機序と,血栓形成,および血小板と過酸化脂質の問題を糖尿病患者,網膜静脈血栓症,正常者の血清から解明し,血小板機能と過酸化脂質の関連性とその意義について検討を試みた。すなわち糖尿病にみられる凝固異常の主体は,基礎疾患である糖尿病の進展に伴う脂質代謝異常に基づく血栓形成傾向,さらに糖尿病の予後を左右する血管障害を血液レオロジーの立場から考える時,Dormandyらのいうように血液粘度と過酸化脂質が関係があるとするならば,糖尿病の血管障害すなわち微小循環障害の原因を解明する上で血清ならびに血球中の過酸化脂質を測定することは意義がある。また網膜静脈血栓症における血小板の意義は未だほとんど不明であるが,発症機序の解明を考えるとき,血小板機能と過酸化脂質との関係が検討されねばならない。著者らはかかる観点より,細小血管病変と血.小板粘着能,凝集能,および血清過酸化脂質の関連性を検討したので,ここに報告する。

一卵性双生児にみられた稀有なる黄斑部形成異常について

著者: 塩瀬芳彦 ,   神田孝子 ,   大見吉洋 ,   川瀬芳克 ,   御宿真理子

ページ範囲:P.85 - P.91

緒 言
 本疾患は両眼性小眼球と+10D以上の高度遠視に伴う特異な眼底異常として1970年,植村ら1)により「乳頭黄斑間網膜襞」として6例がはじめて発表された。以後1975年Boynton2)らが"Bilateral microphthalmos without microc-ornea associated with unusual papillomacu-lar retinal folds and high hyperopia"として1例報告あるのみである。
 本症の特徴は,1)両眼性の小眼球,2)+11.0D〜+16.0Dの高度遠視,3)黄斑部から乳頭に向つて走る網膜襞,4)矯正視力は0.1〜0.4でそれ以上には改善しない,5)眼位は正位で眼振はない,6)身体的・知能的発育異常はなく全身検査所見は正常,の諸点である。

強度近視と黄斑部血管新生

著者: 袖野吉高

ページ範囲:P.93 - P.106

緒 言
 多彩な黄斑部病変の解釈には難解なものが多い。黄斑部の瘢痕形成,出血も例外ではない。近年になり,黄斑部の脈絡膜由来の血管新生が老人性円盤状黄斑部変性症8),眼ヒストプラズマ症12,16),網膜色素線条10),脈絡膜腫瘍および病因不明の黄斑部血管新生9)等に証明されて注目されてきた。
 強度近視におけるFuchs' spotは衆知のことであるが,この一連の変化として,特発性黄斑出血,黄斑部瘢痕形成,色素斑形成等が認められる。強度近視の黄斑部病変は,眼球伸展による変性萎縮と解釈され,その具体的な発生機序は未だ十分に説明されていない。黄斑部病変に脈絡膜由来の血管新生が関与していることは強く推定されているが,その病態の把握には螢光眼底造影法が最も効果的であるものの,螢光眼底造影法により強度近視眼に黄斑部の血管新生を証明したものはない。血管新生と思われる症例さえ,螢光眼底造影による脈絡膜由来の血管新生の造影所見の特徴および,判定基準が無いため,その判定には苦慮する場合が多い。

連載 眼科図譜・230

放射線性網膜症の眼底像

著者: 田渕祥子 ,   小田逸夫 ,   大川智彦

ページ範囲:P.6 - P.7

〔解説〕
 放射線療法の発達に伴い,その副作用の一つとして放射線性網膜症も増加しつつある。著者らは,自験25例を便宜上,乳頭型,中心動脈型,毛細血管型,中心動脈塞栓型,その他(障害部位不明型)の5型に分け,本文(頁133-140)に報告したが,その代表的眼底像をここに掲げる。

総説

角膜真菌症の診断と薬物療法

著者: 渡辺郁緒

ページ範囲:P.9 - P.16

はじめに
 角膜真菌症の診断と治療に関する総説的な論文は幾多発表されている。最近2年間に8例の角膜真菌症に遭遇した著者が,それらの患者の治療中に通読した約130篇の内外論文および成書をまとめたものが,本文である。

臨床報告

外傷性涙小管断裂の治療

著者: 鎌尾憲明 ,   白井正一郎 ,   橋本勝

ページ範囲:P.123 - P.126

緒 言
 眼瞼の裂傷,特に内眼角部近くの眼瞼裂傷では涙小管断裂を伴うことが多く,ことに下涙小管断裂が多く認められる。このような場合,涙小管断裂に気付かれず眼瞼裂傷に対してだけ処置が行なわれると以後の導涙機能は障害され,患者は流涙に悩まされ続けることになる。
 今回著者らは,涙小管断裂を伴う眼瞼裂傷新鮮例を6例経験したので,その手術成績をまとめてここに報告する。

隅角Cleft(Cyclodialysis)によるHypotony Maculopathyに対する手術的療法の一経験

著者: 千原悦夫 ,   近藤武久 ,   安積慶子 ,   前島伸二子 ,   福味陽次 ,   宮代汎子

ページ範囲:P.127 - P.131

緒 言
 隅角での毛様体解離に伴う低眼圧は,日常の診療においても外傷や手術の後に散見することがある。治療上の応用としては1905年のHeine以来cyclodialysisとして緑内障,特に人工的無水晶体眼の減圧手術に用いられている1)
 著者らは今回,緑内障手術(trabeculotomy)の際,偶発症として形成された隅角cleft (cyclo-dialysis)のために高度のHypotony maculo-pathyをおこし,保存的療法では奏効せず,手術的に直接cleftを閉塞せしめて治癒した1症例を経験したので報告する。

放射線網膜症の臨床について

著者: 田渕祥子 ,   小田逸夫 ,   大川智彦

ページ範囲:P.133 - P.140

緒 言
 悪性腫瘍の治療には,手術,化学療法とともに放射線療法が行なわれ,眼近傍の照射の機会も多くなつて来た。原病の治療成績が向上した一方では,放射線眼障害も多く見られるようになり,最近では,網膜の障害に関する報告も増えてきた。著者らは,病院の性格上かなり多くの臨床的放射線網膜症に遭遇したのでここに報告する。

カラー臨床報告

Geographic helicoid peripapillary choroidopathy (乳頭周囲地図状らせん状脈絡膜症)の症例

著者: 原山憲治 ,   宇山昌延 ,   浅山邦夫

ページ範囲:P.109 - P.115

緒 言
 眼底後極部に,散在性に斑状あるいは融合して地図状に網脈絡膜に浮腫様病変を来たし,あとに網脈絡膜萎縮巣を残す疾患がある。以前は,散在性脈絡膜炎とか黄斑部変性症と診断されていたが,最近,眼底検査法の進歩,ことに螢光眼底検査法の発達により,これらの病気のあるものは,脈絡膜または,網膜の滲出性炎症というよりは,網膜色素上皮細胞層を中心として,Bruch膜や脈絡膜毛細血管板に病変の主座があると推定される疾患が見出されてきた。その一つにGass1)(1968)のいうacute posterior multifocal placoid pig-ment epitheliopathy (A.P.M.P.P.E.)がある。GassのいうA.P.M.P.P.E.は,後極部に散在性に発症する斑状病巣で,急激に発病して,一時視力は悪化しても,その後に軽い変性を残すのみで視力予後は良好である。一方,それとは異なり,乳頭周囲に始まり,外方に向つて蛇行性に進行して黄斑部を侵し,あとに地図状の網脈絡膜萎縮を残して視力の永続的低下をもたらす疾患をMaum-enee2)(1972), Schatz, Maumenee & Patz3)(1974)は,geographic helicoid peripapillarychoroidopathyと名付けて,その9例を紹介し,一つのclinical entityをなす疾患であると報告した。

Clinical Conference

主として片眼に急速なる網膜血管障害の進行したSLEの1例

著者: 神鳥高世

ページ範囲:P.117 - P.122

 神鳥(医局員)症例は27歳女性で,初診は1975年の1月31日。主訴は,75年1月中旬より左眼の視力低下。
 家族歴,既往歴では特記すべことはありません。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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