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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科31巻10号

1977年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・239

水晶体を固定している組織

著者: 井出醇

ページ範囲:P.1228 - P.1229

〔解説〕
 白内障手術に,手術顕微鏡が常用され,またすぐれた医学用カメラが頻用されるようになつて,微細な所見が容易に確認記録されるようになつた。
 ここに示す写真は,それぞれ角膜を広く切開した後,なんの断帯操作をも施すことなしに,鉤で虹彩を十分に引き寄せ,水晶体赤道部の12時の近くにCryoextractorを当て,水晶体をほぼ真上に牽引したものであり,いずれも水晶体後嚢と毛様体のあたりとが透明な索状物によつて結ばれ,水晶体縁挙上によつて索状物が緊張している様子が明らかである。

総説

眼瞼下垂の鑑別診断と治療—Putterman-Urist法の検討

著者: 粟屋忍

ページ範囲:P.1231 - P.1241

はじめに
 眼瞼下垂は日常しばしば遭遇する疾患であり,その眼瞼や瞼裂の異常をみつけることはさして困難ではない。しかし,その成因については,すべての症例でかならずしも明確ではなく,病因的診断を下すことはむずかしい症例も多い。またその治療法も当然原因によつて異なるので,正しい鑑別診断をすることが大切である。
 眼瞼下垂の種類や治療法については,すでに多くの成書や論文で数々の記述がなされているところであるが,以下私たちの経験した眼瞼下垂の種種の症例を写真とともに記述し,併せて文献的考察を試みた。

臨床報告

代用瞼板としての凍結乾燥硬膜(Lyophilized dura)の応用

著者: 小暮正子 ,   嶋田孝吉 ,   宮下洋子 ,   箕田健生

ページ範囲:P.1243 - P.1248

はじめに
 眼瞼の悪性腫瘍に対する手術では,眼瞼全層の広範な切除が必要となることが多く,したがつてその再建は困難なことが多い。
 再建眼瞼の理想条件としては種々あげられているが1),特に眼瞼の有する特異的な運動性,粘膜および支持組織の存在,自然な外見などが必須である。これらの条件を満すにあたつて最大の難問は,いかにして瞼板を補充するかにある。

Acromegalyの眼症状

著者: 雨宮次生 ,   橋本恵 ,   大迫文麿

ページ範囲:P.1249 - P.1253

緒 言
 Acromegalyは,下垂体前葉の腫瘍による,すなわち前葉の好酸性細胞の腺腫,または単純増殖に基づいて生ずる症状であつて,成長ホルモンの過剰分泌による症状と,腫瘍の場合には,周囲組織への圧迫症状に分けて考えることができる。
 Acromegalyにおける眼症状も,成長ホルモンの過剰分泌によつて直接起るものと,これによつて惹起された疾患によつて眼に生ずる変化と,前葉の腫瘍の場合には,周囲組織への圧迫に起因する眼への影響に分けて考えることができる。Acromegalyの大集団について,眼症状の考察のなされる機会が,これまで少なかつた。内分泌学的にも本邦においては,100例を越す自験例についての報告のないこと,本疾患が,本来眼科疾患でないことを考えれば,眼科独自で大集団を集められないことなどとあわせて,大集団についてAcromegalyの眼症状が検討されなかつたのも,もつともなことと思われる。

Bleomycin局所注射が著効した色素性乾皮症患者の眼瞼癌の1例

著者: 大沢英一 ,   三木徳彦

ページ範囲:P.1255 - P.1258

緒 言
 眼の悪性腫瘍の中で,日常遭遇する眼瞼癌は,肉眼的に容易に観察できるので,早期に適切な治療を行いうる。
 その治療法として,外科的療法,放射線療法および化学療法等があるが,従来から外科的療法および放射線療法が主流を占め1〜5),制癌剤単独で治療された報告はほとんどない。

蛍光眼底撮影後に脳底動脈狭窄症により死亡した1剖検例

著者: 田中三枝子 ,   小沢勝子 ,   馬嶋昭生 ,   岸本英正 ,   橋詰良夫

ページ範囲:P.1259 - P.1264

緒 言
 螢光眼底撮影は一般に行われるようになつてからすでに15年経過し,現在では眼科的診断および治療の上で欠くべからざる検査法の一つである。しかしフルオレセイン・ソーダの静注により,悪心,嘔吐,蕁麻疹などの副作用が発生し,数は少ないが重篤なショック症状をおこした症例や死亡した症例の報告がある。
 われわれは今回螢光眼底撮影後に上肢のしびれ感,言語障害を訴え,約3時間後に意識消失をきたし,37日目に死亡した症例を経験した。本症例は剖検する機会を得たが,従来螢光眼底撮影後の死亡例の剖検は皆無であり,螢光眼底撮影またはフルオレセイン・ソーダと死亡との関係を明らかにすることは今後の検査の上から非常に参考になる重要なことであると考え,ここに報告する次第である。

全身異常を伴わない視神経無形成の1症例について

著者: 木村肇二郎 ,   植村恭夫 ,   樋田哲夫

ページ範囲:P.1265 - P.1269

緒 言
 検眼鏡的に視神経乳頭および網膜中心血管を完全に欠いた視神経無形成(Aplasia of the OpticNerve)についての報告は1854年Von Graefe1)によりはじめてなされており,その後Retze2),Meisner3),Krauss4),Renelt5),Little6)らの報告があるのみできわめてまれな疾患である。一方視神経乳頭低形成(Hypoplasia of the Optic Nerve)はそれほどまれな疾患ではなく,これまでに多くの報告がみられるが,それらの大部分は無形成として報告されており,両者は発生学的に明確に区別されるべきであるにもかかわらず混同がみられる。今回著者らは2歳の女児で他眼に臨床的無眼球を伴い,全身的にはほとんど異常を認めない視神経無形成の1症例に遭遇したので,その眼底所見を主とした臨床所見の特徴について述べ低形成との相違を明確にし,従来の報告と併せその病態につき発生学的見地より考察を加えたのでここに報告する。

浅前房と急性一過性近視を初発症状とした原田病の1例

著者: 富森征一郎 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1271 - P.1273

緒 言
 原田病は一般に,眼底後極部の浮腫を初発症状として発病する。しかし,きわめて稀には,浅前房,さらに浅前房にもとづく閉塞隅角緑内障を初発症状として発病した症例の報告もみられる(八田1),渡辺2),木村3),白土4))。著者は,このたび,両眼の浅前房と,同時に急性一過性の強い近視を初発症状とし,初診の3日後に,視神経乳頭と後極部網膜に浮腫状混濁を生じ,原田病と診断された症例を経験した。原田病においてこのような症状を示すのは少ないのでその経過を報告する。

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.1248 - P.1248

 論文の後に引用文献を載せるが,その記載の仕方は,それぞれ雑誌によつて書き方を投稿規定に決めてある。長い言葉を省略する為に従来は色々な省略の仕方があつたが,最近これを統一し,国際標準として各誌で用いられるようになつた。1970年に,American NationalStandards Committeeから出された「InternationalList of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が一般化して来た。我々もこの国際標準に則つて記載するようにすべきであろう。そのうち眼科に関係のありそうな言葉の例をあげると次のようである。

眼科動物園・3

犬と猫の眼

著者: 安部勝人

ページ範囲:P.1275 - P.1277

 犬の眼窩を構成する骨は前頭骨,涙骨,蝶形骨,口蓋骨,頬骨,上顎骨の六つの骨であるが,完全な骨性の眼窩輪でなく,外側の前頭突起と頬骨突起は眼窩靱帯で結ばれている。犬は種類により頭骨の形態が異なる(長頭種,コリー種など,中頭種,ポインター種など,短頭種,狆,ブルドック種など)。頭骨の形態により眼窩の形や血管,神経の走行も違つてくる。一般に犬の解剖について論じられているのは中頭種が基本となつている.狆などの短頭種では涙骨の発達が悪いため上顎骨がこれを補う形体となつている。
 猫の眼窩は全頭蓋の大部分を占め,蝶形骨,上顎骨,涙骨,頬骨の四つの骨で眼窩を構成し外側は眼窩靱帯で結ばれている。ただ蝶形骨が2枚の骨枚(眼窩蝶形骨翼,蝶形骨翼状突起)からなり,これらの骨に眼窩孔が開口している。前頭骨に眼窩上孔はない。犬,猫とも眼窩から最後上臼歯の近くの口内に頬骨腺と呼ばれる唾液腺が開口している。そのため上臼歯の歯牙疾患が眼窩に波及することがある。

銀海余滴

白内障手術史の研究から

著者: 鈴木宜民

ページ範囲:P.1283 - P.1285

 私が千葉大学を定年退職して早くも3年目になる。在職中,恩師あるいは多くの先輩同僚から受けた恩顧は忘れ難いものとなつているが,そのなかで一つだけ現在の私の仕事にその命脈を保つているものがある。それはほかでもない医史学である。私の医史学に対する関心は,恩師の伊東先生から受けついだものであるが,その伊東先生は医史学に対する眼を先生の恩師であつた河本重次郎先生によつて開かれたものであつたというから,師の感化影響というものが如何に強いものであるかに驚くほかはない。
 医史学そのものは,若い世代の方々にはあまり関心はないかもしれない。新知識の吸収に追われて過去の学問等に当てる余裕は無いというであろう。研究の対象はもつぱら自然科学であり,精神科学は疎外され,忘れられているというのが実情であろう。

追悼

H.Christian Zweng氏(1922-1977)の死を悼む

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.1285 - P.1285

 アルゴンレーザー光凝固の第一人者Zweng氏が急逝した。Dr.Zwengは,現在あるような形でのレーザー光凝因を開発普及することの原動力となつた人物であり,天才的な学者・臨床家・教育者であつた。氏の名前はわが国では,その著書Laser photocoagula-tion and retinal angiography with current conceptsin retinal and choroidal diseases.Mosby,St.Louis,1969によつて知られている。1972年には国際螢光眼底シンポジウムISFA(東京)に来日参加しており,レーザーの可能性と限界をどう見るかで熱のこもつた議論のあつたことが今もあざやかに想起される。
 Zweng氏はその共同研究者Hunter Little氏と共にカリホルニア州のMenlo ParkにPalo Alto Re-tinal Research Foundation網膜研究施設をつくり,全米から集まつてくる患者の治療と,十数回のレーザー講習会による教育活動を行なつた。網膜や光凝固を主題とする国際学会ではいつも立役者にあり,実績に裏打ちされた独創的で明快な主張と,誰にも愛される機知とで参加者を魅了するのであつた。

国際眼科学会に向けて

第23回国際眼科学会準備状況

著者: 中島章

ページ範囲:P.1287 - P.1288

 1974年に日本開催が本決りになつてから既に3年経ち,本番まであと10カ月となつた。準備も展開を終つていよいよ本格的になつて来た。1982年の第24回国際眼科学会はあと5年後であるが,既に場所(サンフランシスコブルックスホール(収容8000名)),時間(1982年11月1日〜4日,引き続いてAmerican Academy of Ophth-almology Meeting 5〜7日),会長は,A.E.Maumenee副会長はFrank W.Newell,B.Straatsma,SecretaryGeneralはBruce Spiveyという所まで決定している。各委員は京都の学会までに決定する由である。
 1974年までに我々も会場,日時,大約の準備委員会の人選は決定していた。その後,予算の編成,技術展示の場所,細目の決定に色々と苦心があつた。京都国際会館が数千名の参加者と数十社もの商業技術展示を予想してつくられていない事から,色々な可能性を検討する必要にせまられた。現在の駐車場に展示場を建てて欲しいと大蔵省や,会館の理事長の松下幸之助さんに直訴に及んだこともあつた。そのためかどうかしらないが,会館の事業部長が交代するということもあつた。当時の高木館長が逝去されて現在の後宮館長に変られた。

眼・光学学会

視神経乳頭のsimultaneous stereophotography

著者: 岩田和雄 ,   武田啓治 ,   八百枝浩

ページ範囲:P.1289 - P.1290

I.目的
 近年緑内障の分野では視神経乳頭の3次元的形態を分析し病態の解析を行うために,乳頭の立体撮影の必要性が高まつてきている。従来の立体撮影法は1組の立体写真の時間的なズレならびに空間的なズレを除きえないという決定的な欠点を有している。また立体図化を行うためには被写眼のズレを防ぐために,one shotで1組の写真をとることが必要である。これらのことを解決するために,Saheb, Shirmerらが対物レンズの直前に頂角を向け合わせたdouble prismを挿入し,乳頭の同時立体撮影を行つている。著者らもこの撮影法をKowa RC−2およびOlympus GRCの眼底カメラに試み,あわせて本法の光学的検討を行つてみたので報告する。

細隙灯写真撮影法の改良

著者: 野寄喜美春 ,   馬場賢一 ,   加藤尚臣 ,   田尾森郎 ,   小田治雄

ページ範囲:P.1291 - P.1294

はじめに
 細隙灯写真撮影法については,すでに多くの報告があるが1),とくに画期的な方法として1966年にNieselはScheimpflugの条件を利用して,フイルム面を傾けることにより細隙面をさらに鮮明に撮影する方法を発表した2)。しかし,この方法は特殊のカメラバックを必要とし像の傾きにより観察がきわめて困難となるなど実現困難な点が多かつた。
 われわれは,角膜,前房とくに水晶体など厚みのある組織の光学切片の精密撮影を目的として撮影系の改良を試み撮影レンズを傾けて前記の条件を満足し,実現性の高い装置を試作,実験をおこなつた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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