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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科31巻11号

1977年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・240

通常の眼底カメラ(直像式)を用いて撮影した未熟児網膜症

著者: 高木郁江 ,   岡義祐 ,   西村みえ子

ページ範囲:P.1316 - P.1317

〔解説〕
 未熟児の眼底周辺部撮影には,永国ら1)の発表以来,もつぱら倒像撮影法2,3)が用いられているが,この方法はかなり高度の技術を必要とし,あるいはカメラ個定のための特殊装置を設置しなければならない。また光凝固機(東独Carl Zeiss社製)付属のカメラは解像力が落ちる。私たちは未熟児網膜症で治療適応の可能性が生じてくる症例の多くは病変が赤道部あるいはその後方に存在することに着目し,これらの症例にたいして一般の眼底カメラ(Topcon TRC-FET型,Olympus GRC-ⅡS型)を用いて撮影を行ない,良い結果を得ている。
 撮影に際しては原則として気管内麻酔は行なわず,自然睡眠あるいはTriclofos睡眠下に行なつている。患児を側臥位とし,介助者2名がそれぞれ頭部と躯幹を固定する。睡眠中,眼球は外転(外上転)していることが多いので,鑷子などによる眼球の固定は行なわなくとも赤道部およびそれより後方の撮影は上記カメラにより十分可能であつた。なお,撮影部位を移動させる操作を円滑に行なうために,できるだけ首振りの自由なカメラが良いと思われる。

眼科動物園・4

小動物診療

著者: 安部勝人

ページ範囲:P.1385 - P.1387

 物を言わぬ動物の病気がよく解るものだと不思議がられるが,特別の診療方法があるわけではない。人の診察と同じであるが稟告に十分な時間をかける。眼科もまた特別の診察方法はなく,初診時全身病との関連,犬や猫の種類による眼の遺伝性疾患や先天性疾患を勘案しながら診察する。治療に先立つて動物の保定が重要で,動物に無理がなく,不安や恐怖を与えず術者が治療しやすいようにする。無理な力まかせの保定は弱つた動物がショックで死ぬことがあり,兎や小鳥ではとくに細心の注意が必要である。

総説

特殊条件を併せもつ裂孔原性網膜剥離

著者: 調枝寛治

ページ範囲:P.1319 - P.1326

はじめに
 裂孔原性網膜剥離(rhegmatogenous retinal de-tachment)の発症には,網膜裂孔の形成と後部硝子体剥離などによる硝子体の牽引が基本的な因子であるが,第3の因子として脈絡膜網膜間の接着力も重視されている1)。これらの要因に加えて,個体の特異性,剥離眼が併せもつ特殊な状態,および網膜裂孔の様態などの種々の条件が,網膜剥離の病像を多彩にするとともに,治療の難しさを助長している。裂孔原性網膜剥離の病因については,これを経時的概念から,A:先天性あるいは後天性に既存する因子,B:加齢とともに起こる老人性変化,C:老人性変化を助長させる因子,D:主に外傷等によつて急激に加えられた因子に分類して詳細に記述された豊福・広瀬2)の総説がある。
 さて,対剥離治療法の進展によつて,裂孔原性網膜剥離の復位率は90%を超える報告もみられるようになつた現在では,剥離治療の最も重要な課題は,特殊条件を多く併せもつ予後不良な症例,特殊な型の網膜剥離例にどのように対処するかにある。そこで,裂孔原性網膜剥離の特殊型のうち,最近注目されているものを取上げて臨床像を概説する。

臨床報告

Congenital Angiodysplastic Exudative Vitreo-retinopathyについて

著者: 木村肇二郎 ,   植村恭夫

ページ範囲:P.1327 - P.1334

緒 言
 網膜血管の未熟性を基盤にして,これに酸素が一つの引き金となつて未熟児に発生する未熟児網膜症は,一つのclinical entityとして確立されている。一方,網膜症が,酸素を使用しない例,たとえば成熟児に稀に起こることも指摘されている。Brockhurstら1)は瘢痕症例の観察より,酸素非使用の成熟児に未熟児網膜症と全く同様の眼底所見を呈する症例を報告している。しかしこの成熟児にみられる網膜症の機序,病態は未熟児網膜症と全く同じものなのか,あるいは臨床所見が類似しているのみで本態は異なるものなのかについては末だに明らかにされていない。今回著者らは著明なvitreo-retinopathyを呈する症例を経験し,特にそのうちの2症例について初期の所見より瘢痕に至るまでの全経過を,螢光眼底検査を含めて詳細に観察した結果,これらの疾患は酸素非使用であること,満期産,成熟児であるにもかかわらず網膜血管の著しい未発達が認められたこと,網膜は汚臓色調を呈し低形成ないしは変性を思わせる所見を呈していたこと,滲出性増殖性変化の進行とともに硝子体網膜牽引,網膜剥離,黄斑偏位などの所見を呈したこと,家族性発症のみられないことなどより未熟児網膜症,familiar exudativevitreo-retinopathy,Coats'disease,PHPVなどとは異なつた新しい独立した疾患であると結論するに至つた。

黄斑部孔を伴う網膜剥離に対する黄斑プロンベの試作とその手術法について

著者: 安藤文隆 ,   佐竹成子 ,   市川宏

ページ範囲:P.1335 - P.1339

はじめに
 黄斑部孔を伴つた網膜剥離の治療法は,光凝固療法のよい適応とされているが,それでも安静位をとらせて剥離を消失させ,光凝固が可能となる症例は少なく,あらかじめ何らかの観血的な手術方法にて,先ず剥離網膜を復位させねばならぬ場合が多い。この際にも,網膜下液を単に穿刺排液するのみでは復位は得られにくく,剥離網膜の復位を強制する何らかの補助手段を構じねばならぬ場合が多い。
 われわれは今回,手術方法が簡単で,黄斑部をある程度永続的にbuckleできるexplantとして,黄斑プロンベ(仮称)を作り,数例に使用してよい結果を得たので報告する。

先天性梅毒性角膜実質炎経過後の角膜の微細構造

著者: 井筒雄一 ,   石井康雄 ,   内海栄一郎 ,   林正泰

ページ範囲:P.1341 - P.1345

緒 言
 先天性梅毒性角膜実質炎の炎症消退後に,角膜実質深層に,異常に肥厚したデスメ氏膜,あるいは,角膜内皮細胞面に,クモの巣様に凝集し,前房内に隆起している硝子様網状物質を残す事が,しばしば観察される。
 Vogtら1〜3),は組織学的に,この硝子様網状物質の発生病理について報告した。更に,Edmondら7〜10)は,電子顕微鏡的に観察し,この硝子様網状物質や,デスメ氏膜の滴状変性,および肥厚は変性内皮細胞が分泌形成したものであると報告している。

Acute posterior multifocal placoid pigment epitheliopathyと思われる急性網膜色素上皮症の2症例

著者: 越生晶 ,   三浦敬子 ,   大熊紘 ,   加賀典雄 ,   福味陽次 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1347 - P.1354

緒 言
 急性後極部多巣性鱗状網膜色素上皮症acuteposterior multifocal placoid pigment epitheliopathy(以下APMPPEと略する)は1968年,Gass1)により命名された疾患であり,眼底後極部網膜深層に散在性の黄白色円形滲出斑を多発し,視力障害をきたすが,比較的短期間で軽快し,あとに永続する網膜色素上皮障害を残す。しかし視力予後は良い両眼性の疾患である。Gass1)は感染あるいは毒性因子による網膜色素上皮の急激な反応であろうと推察した。その後Ryan,Maumenee2)の報告によつて,本症の臨床的概念は一層明確となり,Gass1)の述べた疾患はほぼ確認された。
 その後は多数の症例報告があるが,未だその原因は明確ではない。かつまた,その病態に関しても,原発病変が網膜色素上皮にあるとする考えと,脈絡膜毛細血管板にあるとする考えが存在する。

ブドウ糖非醗酵グラム陰性桿菌,Ps.cepaciaによる角膜浸潤の1例

著者: 大石正夫 ,   西塚憲次 ,   本山まり ,   小川武

ページ範囲:P.1355 - P.1359

緒 言
 緑膿菌による眼感染についてはすでに総説1)がなされ,その原因菌としての重要性に大きな関心がよせられている。最近,緑膿菌以外のPseudo-monasをはじめとする。いわゆるブドウ糖非醗酵グラム陰性桿菌による感染症の増加傾向が各科領域で注目されて来ている2)
 Pseudomonas cepacia(以下,Ps.cepacia)はこの一つであつて,従来緑膿菌に有効とされているGentamicin(GM),Colistin(CL)に耐性の薬剤感受性パターンを示すことで,臨床上重視される。

Degeneratio hyaloideo-retinalis hereditaria (Wagner)について

著者: 原田敬志 ,   渡辺郁緒 ,   小嶋一晃 ,   原田景子 ,   柳田和夫 ,   市川宏

ページ範囲:P.1361 - P.1370

緒 言
 Franceschetti1)は,24歳と22歳の兄弟に若年性の硝子体の破壊を観察した。1938年,硝子体・網膜・水晶体の変化を伴う遺伝性疾患がWagner2)によつてはじめて記載された。Wagnerはチューリッヒの一家系二世代のうち男6人,女7人にこの疾患を認め,Degencratio hyaloideo-retinalishereditariaと命名した。その特色とすべき点は,
 1)光学的にほとんど虚な(optisch fast leer)液化した硝子体中に点状の沈着物と,眼球運動とともに揺れ動く糸状あるいは糸球状硝子体索がみられ,硝子体の前境界膜と正常な硝子体構築とを欠く。

未熟児網膜症の螢光眼底所見—通常の眼底カメラ(直像式)による撮影結果

著者: 高木郁江 ,   岡義祐 ,   西村みえ子

ページ範囲:P.1371 - P.1375

緒 言
 未熟児網膜症は網膜の血管に病変が原発する疾患であるから螢光眼底撮影がその病態の解明および治療指針に有力な役割を果たすであろうことは想像に難くない。最近本邦でも患児の全身状態の不良であることや,眼底周辺部撮影における困難さなどをのりこえて本症の螢光眼底撮影を行なつた報告が二,三1,2)みられる。しかしこれらの報告で用いられた倒像眼底撮影にはかなり面倒な撮影技術を必要とし,あるいはカメラ固定のための特殊装置を設置しなければならない。そのため同一症例の経過を追つたものも余りないようである。
 私たちは治療に対する適応がみとめられる症例の多くでは,その病変が赤道部,あるいはそれより後方に存在することに着目し,これらの症例に対して普通の眼底カメラ(Olympus GRC-ⅡS型,Topcon TRC-FET型)を用いて螢光眼底撮影を行ない,十分利用できる写真と若干の知見を得たので報告する。

眼窩内転移を来たした皮膚悪性黒色腫の1例

著者: 小野弘光

ページ範囲:P.1377 - P.1380

緒 言
 一般に,悪性腫瘍の眼窩内転移は比較的稀なものとされている上に,皮膚悪性黒色腫は皮膚悪性腫瘍の数%を占めるにすぎないものである1)ことからみて,その眼窩内転移は極めて稀なものと推測される。著者の調査した範囲では悪性黒色腫の眼窩内転移例として,1894年のPolignaniの1例2)を嚆矢とし,16例を数えるが,そのうちで皮膚を原発とすることを記しているものは9例にすぎない。
 著者は皮膚を原発とし,全身性転移を呈して死亡するに至る経過中に,左眼眼球突出を来たし,死亡後,眼窩内における悪性黒色腫の転移巣を確認しえた症例を経験したので報告する。

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.1354 - P.1354

 論文の後に引用文献を載せるが,その記載の仕方は,それぞれ雑誌によつて書き方を投稿規定に決めてある。長い言葉を省略する為に従来は色々な省略の仕方があつたが,最近これを統一し,国際標準として各誌で用いられるようになつた。1970年に,American NationalStandards Committeeから出された「InternationalList of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が一般化して来た。我々もこの国際標準に則つて記載するようにすべきであろう。そのうち眼科に関係のありそうな言葉の例をあげると次のようである。

銀海余滴

輸入眼球による角膜移植の成功

著者: 今泉亀撤

ページ範囲:P.1381 - P.1383

 日本においては,自分が死ねば,その肉体は火葬場に運ばれて,焼かれて灰になつてしまうのだから,その死後の眼球を不幸に泣いておられるたくさんの盲目同様の方々に提供することによつて開眼され,その方々は再び光をとり戻して社会人として人のため世のために活動できるようになるのであれば,こんな立派なことはなく,本当の人助けであることは,老若男女を問わず誰方も良く承知のことであると思うが,これが現実の場台になるとそう簡単にはゆかぬ。自分の親兄弟が亡くなつて悲しんでいる時に,その死体から眼球を摘出されること自体がはなはだみじめに思われるし,更には死後も霊魂が残ると信じている仏教上の問題から,眼球がなくなつてあの世に行つたら定めし不自由であろうし,先に行つている親兄弟に会えないだろうと考えると,その遺族の方はやはり,いくら当人が生前に眼球銀行に登録していても,この日本独特の宗教的国民感情から眼球提供を拒な。われわれが盛んに啓蒙解説して,良いこととはわかつていても,他国に比較すると,死後の眼球提供はもちろん,眼球銀行への登録さえ,その数はほとんど増加する傾向がない。結局,いくらわれわれが努力しても日本においては医師の需要にその供給が間に合わないのがこの死後提供の眼球である。
 ところが,同じ仏教国でも,無制限に死体眼球が入手できる国がある。それは国民の80%以上が仏教信者で,しかも日本人とはケタはずれの盲信者の多いスリランカ(旧称セイロン)である。

国際眼科学会に向けて

第23回国際眼科学会の概要(その2)—本誌編集委員による座談会

著者: 三島済一 ,   清水弘一 ,   市川宏 ,   初田博司

ページ範囲:P.1389 - P.1392

 初田 前回の国際眼科学会の座談会に引きつづきましてまた今日も編集委員の先生方にその後のお話を伺つて,私ども心の準備をしていきたいと思いますが,今日は清水先生お見えでいらつしやいますので,のちほど詳しく学術委員会の内容についてお話し願いたいと思います。では三島先生,その後ございました委員会の模様などについて,概略お話し願いたいと思います。
 三島 国際学会も余すところ8カ月足らずになりまして,いま学会の運営や計画につきまして,具体的に最後の詰めをそれぞれやらなければならない段階でございまして,この8月7日の日曜日に,学術委員会およびフリーペーパーの選考委員会が行われまして,そこで今度の学会に行われる特別講演以外の,いわゆるフリーペーパーの最終的な採択が決まりました。そのほかいろんな学術関係の問題が討論されましたので,これは担当していらつしやる清水先生からお伺いすると,非常に詳しい話が聞けるんじやないかと思います。それから8月の27日に,京都で学会の運営委員会が行われまして,やはりこの場でも学会の実際の運営面につきまして,相当突つ込んだ細かい討論が行われましたので,その会議の委員であらわれる市川先生から,お話を伺えますと非常に有難いと,思います。

眼・光学学会

Slit-Lamp用凸非球面前置レンズの使用上の検討

著者: 梶浦睦雄 ,   高橋正孝 ,   高橋文男 ,   上原誠

ページ範囲:P.1399 - P.1403

緒 言
 Slit Lamp Microscope(以下Slit Lamp)による眼底観察のための,凸非球面前置レンズの有用性については,先に梶浦ら1)が報告したが,その設計基準,非球面加工技術,現有へSlit Lampの取り付け方法等に,問題が残されている。
 今回,(1)観察画角の拡大。(2)スリットの切れ味の向上。(3)光学性能の向上(特に歪曲収差の改善)。(4)光学性能とレンズ面による反射光との関係などの各項目について,検討を加え種の凸非球面前置レンズを作製したので報告する。

高精度レンズメーターの開発

著者: 納田昌雄 ,   諸橋和男

ページ範囲:P.1405 - P.1407

緒 言
 レンズメーターは,メガネレンズの製造,検査,処方等,メガネレンズの製作から,枠入れまで,どの行程においても,不可欠な,重要な,光学測定機である。
 われわれは,このレンズメーターに,新しい方式を導入し,一般に使用されているレンズメーターよりも,高精度で測定し得るレンズメーターを開発したもので述べる。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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