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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科31巻12号

1977年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・241

Actinomyces israeliiによる涙小管炎の1例

著者: 長嶋孝次 ,   川浪正 ,   上田恵一 ,   鷲津良道

ページ範囲:P.1424 - P.1425

〔解説〕
 真菌性涙小管炎の報告は少なく,わが国では小口忠太1)の1例から田中幸子ら2)の3例までを合算しても20例に満たない。しかし,抗生物質や副腎皮質ホルモン剤の影響で真菌症が増加しているといわれる最近では,頑固な片側性結膜炎の原因究明に涙道の検査3)を手抜かりなくおこなえば,本症はときおり遭遇するものである。ここに供覧するのは典型的な症状を呈した1例である。

総説

硝子体手術の最近の動向—経毛様体扁平部硝子体切除術の基本術式

著者: 松井瑞夫

ページ範囲:P.1427 - P.1434

まえがき
 前回筆者は本誌31巻5号に,硝子体手術の最近の進歩のうち,手術装置の現状について紹介を行つたが,今回は経毛様体扁平部硝子体切除術parsplana vitrectomyの基本的な術式について解説を行つてみたいと思う。
 今回ここでのべる,術前投薬の問題,患者への術前処置,手術装置の準備,本手術を行うときの手術顕微鏡のそなえるべき条件,強膜創部位の選択,さらに基本的な手術操作などは,より複雑な硝子体切除術,すなわち,massive periretinalproliferation(MPP)を伴つた網膜剥離,tractiondetachmentを伴つた増殖性網膜症などに対する硝子体切除を行うにも不可欠な知識である。そして,今回紹介する基本的な技法によつて,網膜静脈閉塞症,Eales病などに起因する硝子体出血,糖尿病性網膜症の単純硝子体出血,あるいは硝子体アミロイドーシスなどに対する硝子体切除術は可能である。したがつて,本稿では,まず硝子体切除術の臨床応用をはじめるときに,最低限心要な事項を紹介するということになる。

臨床報告

持続点眼用ソフトコンタクトレンズ

著者: 嶋田孝吉

ページ範囲:P.1435 - P.1438

緒 言
 薬剤の連続あるいは頻回点眼を必要とする症例はよく経験するものである。ところが,現在,実際に使えあるいは行える持続点眼装置および点眼法は数少ない1〜4)。そこで,実用性のある持続点眼用コンタクトレンズを試作し,使用してみたので,その効用につぎ報告する。

脈絡膜循環障害によると思われる急性網膜色素上皮症の症例

著者: 越生晶 ,   加賀典雄 ,   土井治道 ,   大熊紘 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1439 - P.1444

緒 言
 原発性あるいは続発性赤血球増多症の眼症状については多くの報告をみるが,それらは球結膜の充血1),網膜静脈の拡張と蛇行2),網膜深層あるいは表在性の出血2,3),視神経乳頭の浮腫や萎縮2〜4),網膜中心静脈血栓症3)などであり,脈絡膜の循環障害をきたしたと思われる報告は少ない5,6)
 また,近年,脈絡膜血管構築に関する実験的研究と螢光眼底撮影法により,脈絡膜血管の循環障害による眼底病変が注目されつつある。Amal-ric7〜9)は後毛様動脈の閉塞によつて起こる扇形の脈絡膜萎縮をtriangular syndromeとよび,Hayreh10,11)も実験的に類似した病変を確認している。さらにgeographic helicoid peripapillarychoroidopathy12)に代表される一連の地図状網脈絡膜萎縮をきたす疾患やacute posterior multifocal placoid pigment epitheliopathy13)などでも脈絡膜の血管障害との関連性が強調されている。

Mikulicz症の2症例—リンパ腫型眼窩炎性偽腫瘍との相関関係について

著者: 高橋俊博 ,   豊田幸信 ,   井出俊一 ,   諫山義正

ページ範囲:P.1445 - P.1450

緒 言
 Mikulicz病とは,涙腺と唾液腺の対称性腫脹を特徴とする原因不明の慢性炎症性疾患とされている。しかし,Morganら1,2)がMikuliczはSjögren症候群の一表現型であると報告して以来,本疾患の病因研究に関して著しい進歩がみられるにもかかわらず,その本態に関して十分に解明されていない。
 今回,われわれはいわゆるMikulicz病の2症例に遭遇し,病理組織学的な検討を加え,眼窩炎性偽腫瘍のリンパ腫型と同一の組織像を呈し,同じ免疫学的背景を有する事を明らかにし,さらに治療に就いても若干の考察を加えたので報告する。

眼障害をきたした副鼻腔嚢腫のC.T.像

著者: 近藤和義 ,   三嶋弘 ,   日比野弘道

ページ範囲:P.1451 - P.1457

緒 言
 眼窩内病変に対する臨床検査として従来より,単純撮影。断層撮影・血管撮影等が行なわれているが,病巣の種類および位置によつては必ずしも満足すべき情報を得ることができなかつた。1967年以来Hounsfieldによつて開発されたC.T.(Computed Tomography)は,X線断層撮影にコンピューターによる解析を組み込んだもので,1973年には実用化され,現在では眼窩内病変に対する最も有用な放射線診断装置として評価されている。眼窩内腫瘍のC.T.像は既に多数が報告されているが,副鼻腔嚢腫のC.T.像の報告はきわめて少ない。
 今回われわれは,手術によつて副鼻腔嚢腫と確認された3例と,臨床的に副鼻腔嚢腫と診断された1例の計4例の副鼻腔嚢腫に起因する眼障害例について,主としてそのC.T.所見を検討したので報告する。

眼位異常患者の脳波異常について

著者: 柴田博 ,   筒井純 ,   寺尾章

ページ範囲:P.1459 - P.1463

緒 言
 眼位異常を示す患者には,頭蓋内病変が多いとの報告1〜4)はいくつか見られるが,眼位異常における脳波異常の報告5,6)は少なく,しかもその中の個々の波形の検討はほとんど行われていない。
 著者らは眼位異常患者における脳波検査を実施したので,ここにその結果を報告する。

Behçet病患者の血沈促進因子について

著者: 安藤文隆 ,   佐竹成子 ,   加藤美代子

ページ範囲:P.1465 - P.1470

はじめに
 Behçet病患者では,しばしば血沈の促進が認められる1,2)。特に症状の増悪期には,より促進するように思われる3)のであるが,それはどのような因子に起因するものであろうか。
 一般に血沈を促進させる因子としては,血漿側の因子として,1)アルブミン減少,2)総グロブリン増加,したがってAIG比の低下,3)γ-グロブリン増加,4)フィブリノゲン増加,さらに赤血球側の因子として,5)高度の貧血,6)表面電荷の変化等があげられる。これら血沈促進因子のうち,Behçet病患者では,どの因子が直接血沈促進に作用しているかを調べてみたので報告する。

カラー臨床報告

眼窩壁に変化のあつたクモ膜嚢胞と頭蓋咽頭腫の合併例—Computed Tomographyの診断における応用

著者: 戸塚清一

ページ範囲:P.1487 - P.1491

緒 言
 眼窩壁近くに生じたクモ膜嚢胞は,時に,眼窩壁の圧迫変形をもたらし,それによつて眼球突出を起こすことがある1,2)。しかし,従来の脳血管撮影等の検査法では,術前に,この病変の性状を正確に診断することは困難であつた。
 このたび,著者は,両眼の視野異常に加え,片眼の眼球突出を示した患者について,従来のX線検査によつて,頭蓋咽頭腫を見出すと共に,ACTA scannerおよびEMI scannerの二つの機種によるComputed Tomography (以下CTと呼ぶ)を施行することによつて,眼球突出を示す眼の眼窩壁の直後に明らかな嚢胞の存在を確認できた。この嚢胞は,眼窩壁を圧迫し眼球突出の原因となつていると考えられた。

Clinical Conference

若い女性にみられた黄斑部病変

著者: 林倫子 ,   雨宮次生

ページ範囲:P.1471 - P.1478

 雨宮(助教授) それでは眼科臨床検討会を開催いたします。症例は,黄斑部疾患の症例ですが,受け持ちの林先生から,患者さんの紹介をしていただきます。
 林(助手) 紹介いたします。患者は23歳の女性,初診は1975年11月6日です。左眼視力低下と変視症を主訴として来院いたしました。現病歴は,1975年7月,これは当科受診の4カ月前になりますが,新聞を読む際,左眼の変視症に気付き近医を受診し,さらに某大学眼科に紹介されましたが,どちらでもRieger型のRetinitiscentralisの診断を受け,ステロイドの内服,結膜下注射を受けていました。しかし,症状が軽快しないので当科を受診いたしました。

国際眼科学会に向けて

第23回国際眼科学会の概要(その3)—本誌編集委員会による座談会

著者: 三島済一 ,   塚原勇 ,   市川宏 ,   初田博司

ページ範囲:P.1479 - P.1484

 初田(司会) 本日は,私ども札幌に来ておりますが,第31回臨床眼科学会の行事日程の第1日目,9月22日(木曜日)に国際眼科学会の組織委員会および同専門委員会が開かれましたので,前回(9月3日)に引きつづきまして,国際眼科学会の準備の模様を編集委員の先生方に,いろいろと今回決まりましたことなどお話願いたいと思います。
 まず,組織委員長の三島先生,お願いいたします。

銀海余滴

後部硝子体剥離の検査法

著者: 梶浦睦雄

ページ範囲:P.1485 - P.1486

 古い成書には老人性白内障の初期に水晶体の変化のために飛蚊症を自覚する患者がいるということが書かれている。しかし最近の硝子体に関する研究の進歩や細隙灯顕微鏡検査が普及してきたことによつて古い成書の誤まりは訂正され,この際の飛蚊症は実は老人性白内障眼にみとめられる後部硝子体剥離におけるPrcpapillary opacity (乳頭前硝子体斑)に基くものであることがわかつてきた。もちろんこの後部硝子体剥離は老人性白内障に併発したものではなく老齢化による変化であり,最近は水晶体硬化のおきている入の94%にみとめられることが明らかである。若い人でも近視や無水晶体眼では高頻度に観察される他,ブドウ膜炎,網膜色素変性症,網膜剥離,打撲,眼内手術後や外傷性穿孔,硝子体出血,増殖性網膜症,硝子体内寄生虫,Hippel-Lindau氏病,黄斑前線維増殖症等多くの眼内疾患にも観察されているが,詳細な事についてはほとんどわからないというのが現状であろう。
 さて,この後部硝子体剥離を詳細に観察できる最上の方法は細隙灯顕微鏡をおいてない。もちろん通常の細隙灯顕微鏡検査では眼球の屈折力のために硝子体の後方約2/3では見ることができないので後部硝子体剥離を観察することはほとんど不可能である。もつとも硝子体虚脱が強く後部剥離面が硝子体の前1/3まで移動している時は例外であるが,この頻度も数%にすぎない。

眼科動物園・5

鯨は眼球を水深計として使つている

著者: 鹿野信一

ページ範囲:P.1493 - P.1495

 最初におことわりしておくが,私は人間の眼球の専門家で,鯨の眼玉の専門家ではない。何故その私に鯨の眼についてかけといわれたのかはなはだ解せない。想うに一時人間の隅角のからくりを明かにするために兎,鼠,犬,猫,馬,牛,豚などの房水排出路を調べていたことがある。これが誠に千差万別,人間とはちがつていて大変面白い問題を示してくれた。その頃,たまたま,内科の方で捕鯨船医として冒険を楽しんで来られた方が,数個の鯨の眼球のアルコール漬けを下さつたので,その一つ二つをきつて標本にし,雑誌に数行書いたことがある。そうそれはもう十年以上前のことであるが,それを耳にはさんだ編集者の方が,この様な私にとつて迷惑千万の注文を出したのであろう。
 したがつて私のこれから書くことははなはだ非科学的の,いわば与太話みたいなものである。第一その鯨が,どんな鯨だか,長須鯨だか,まつこう鯨だか何鯨だか聞いてなかつたのでわからない,ただ十年前に日本の捕鯨船でよく獲つたたちのものというにとどまる。

談話室

眼科医からみた「安全な車」と「危険な車」

著者: 木村肇二郎

ページ範囲:P.1497 - P.1498

 わが国の自動車保有台数は1967年に1,000万台を突破し,71年に2,000万台,75年にはついに3,000万台に突入して,今や約3.5人に1人の割合で自動車を保有することとなつた。これと共に年々増加の一途をたどつた自動車事故による死傷者は,70年には実に100万人を数えるに至つた。わが国では従来,これら交通事故による死傷者のうち約80%が歩行者が被害者となるケースであり,残りの20%が乗車中の死傷者であつた。ところが自動車の使用条件や道路環境の変化などによりこれらの比率に変化があらわれ,69年31.8%,70年33.5%,71年34%72年35.5%,76年38%という具合に年々乗車中の死傷者の割合が増加してきており,車は「走る凶器」型から「走る棺桶」型へ移行しつつある。このことは歩行者の安全もさることながら,乗員の安全により一層の注意を払う時期がきていることを意味している。その一つとして,1974年度よりシートベルトの全席装備が法制化されたことは,乗員の安全に寄与するものとして評価されるべきことではあつた。しかるに警視庁の統計によれば,シートベルトの着用状況はわずかに一般道路では1%,高速道路では6%というものであり,シートベルトはあつてなきがごとき存在であつた。一方乗員の安全を確保するもう一つの重要な対策として,わが国ではほとんど関心がもたれてしないが,フロントガラスの材質の問題がある。

GROUP DISCUSSION

遺伝・先天性眼疾患

著者: 水野勝義

ページ範囲:P.1499 - P.1503

1.自然発症網膜変性ラット(SDR)とライソゾーム酵素
 自然発症高血圧症ラット(SHR)からERG振幅を指標として選び出したSDRのlysosome酵素活性について生化学的および組織学的に測定した。12カ月齢のSDRの網脈絡膜のcathepsin Dとβ-glucuronidaseは,totalおよびfree activityともに,ウィスターラットの約2倍の活性を認めた。SDRの網膜色素上皮層のacid phosphataseは組織化学的に異常な量の反応と局在性を示した。これらの点から,SDRの網膜変性に及ぼすlysosome酵素の役割は重要であると思われた。

眼・光学学会

眼底カメラのピント合わせ精度

著者: 小早川嘉 ,   松村勲 ,   馬立治久

ページ範囲:P.1511 - P.1513

緒 言
 自然散瞳状態で眼底撮影を行うためには被験眼に縮瞳を伴う光刺激を与えずにピント合わせを行う手段が必要になる。これには赤外線等の暗視装置の使用が考えられるが,赤外線テレビ,イメージ管等一般にこの種の装置の解像力は低く,通常の使い方では十分なピント合わせ精度が保証されない。著者らはこの解像力の低い暗視装置を使つてより高い精度を得る方法として,眼底にスプリット輝線を投影しその合致状態でピントを知るスプリット輝線合致方式を考案し,その方式による精度を検討した。

同時立体蛍光眼底撮影装置の試作(第2報)

著者: 松井瑞夫 ,   神谷稔 ,   加藤康夫 ,   滝沢志郎

ページ範囲:P.1515 - P.1519

まえがき
 著者らは,前報において既存カメラTRC-F形を改造し,容易に1回の撮影で左右一対の立体写真を35mmフィルムの1コマに記録することのできる同時立体螢光眼底撮影装置を試作したことを報告した1)
 この試作装置(以下TRC-SS-I形と記す)は,眼底カメラTRC-F形の照明系をそのまま使用したため,stcreo baseすなわち撮影基線長に制限があり,結果的に再生された写真の立体効果は乏しかつた。うつ血乳頭などの相当高底差のある病変については立体再生が可能であるが,正常眼底については全く立体効果が得られなかつた。

クリニテックス社製広角眼底カメラの使用経験

著者: 浅山邦夫 ,   本田孔士 ,   大田実

ページ範囲:P.1523 - P.1527

緒 言
 眼底カメラの利用は,眼底病変の正確な記録を可能にし,また螢光眼底撮影は,記録に加え,病変の解明に大いに寄与してきた。しかし,従来のカメラでは,たいていの機種が一度に撮影可能な範囲が30°ないし45°であり,撮影可能範囲を越える広範な病変の場合では部分的な記録しかできず,また病変が乳頭ないし,黄斑部より離れて存在する場合,その病変の位置を示すべく乳頭ないし黄斑部を同時に含んで撮影できる事が望まれ,広範囲撮影可能なカメラの開発がまたれていた。
 われわれは,今回最大100°での広範囲撮影が可能なクリニテックス社製広角眼底カメラを借用する事ができたので使用経験について報告する。

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臨床眼科 第31巻 総目次・物名索引・人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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