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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科31巻3号

1977年03月発行

雑誌目次

特集 第30回日本臨床眼科学会講演集 (3)

網膜色素上皮の病変

著者: 塚原勇

ページ範囲:P.329 - P.345

1.緒言——網膜色素上皮のルネサンス17)
 網膜色素上皮層(以上RPEと記す)に関しては,この細胞層が眼内への入射光線の吸収,視紅の代謝に関係していることが長年知られてきたが,近年新しい研究技術の応用によつて,次に述べるような重要な幾つかの機能をもつていることが明らかにされたことにより,ひとり基礎学者のみならず,眼科臨床家の注目をもあつめるようになつた。RPEはその機能として,
 1)貪食作用,なかんずく視細胞外節の貪食

学会原著

裂孔位置による網膜剥離の四分分類法—(その1)周辺群網膜剥離の分析

著者: 清水昊幸

ページ範囲:P.347 - P.357

緒言
 「裂孔原性網膜剥離は網膜視部(pars optica)に裂孔を生じ,その結果これが色素上皮から剥離してくる疾患である」という定義の上では裂孔原性網膜剥離は単一疾患であるように見える。しかしこれは表面上のことで,さらに裂孔の成因にまで遡つて考える時,その原因は決して単一でなく種々異なつた機序が働いていることは明らかである。従つて裂孔原性網膜剥離は種々の疾患の複合であると考えた方がよい。それ故にこそ裂孔原性網膜剥離はこれまでにも種々に分類されたし1),著者自身も1971年に主として裂孔の位置と形を基準にした原因別分類を試みた2)。しかしこれまでの分類では著者自身のものも含めて分類基準に原理的な統一が欠け,ある場合には外傷や水晶体摘出などという偶発的外因を分類基準としてとるかと思えば,同時に格子状変性や硝子体剥離などという本質的かつ内因性の変化をも分類基準にするという具合であつた。そのため同一症例が各群に重複して所属したり,反対に所属する分類がない症例が現われたりする有様だつた。

Multifocal Posterior Pigment Epitheliopathy多発性後極部網膜色素上皮症とその光凝固による治療

著者: 宇山昌延 ,   塚原勇 ,   浅山邦夫

ページ範囲:P.359 - P.372

緒 言
 眼底後極部に黄白色の滲出斑が散在性に多発し,網膜剥離を伴う疾患が最近注目されている。この疾患は,従来,原因不明の播種性網脈絡膜炎と診断されていたと思われるが,螢光眼底検査法や,網膜色素上皮を中心とした眼底病変についての知見によつて,最近一つの独立した疾患であるとの見方が強まり,今までに,網膜剥離を伴つた中心性脈絡網膜炎(浦山1)),周辺性網膜剥離を呈する特異な網脈絡膜病変(三村2,3)),特異な続発性網膜剥離(塚原4),5)),異型中心性脈絡網膜症(吉岡6,7)),bullous retinal retinal detachment,an unusual manifestation of idiopathic centralserous choroidopathy (Gass8))などの病名で報告され,さらに同じ内容の症例は,uvealeffusionとして清水9),三村10)の報告もある。これらの論文をよくしらべると,どの報告も同一疾患を取扱つていると思われ,さらに,われわれは最近これらの報告例と同じ疾患とみなしうる症例の18例35眼を経験し,その観察結果から,この疾患は,独立した一つのclinical entityをもつ疾患であると考えるに到つた。その臨床所見を検討して,本疾患に多巣性後極部網膜色素上皮症multifocal posterior pigment epitheliopathyと命名した。

アルゴンレーザー光凝固による後極部疾患の治療について—その1.中心性網膜炎およびその類似疾患

著者: 天野清範 ,   藤田邦彦 ,   落合冨士也 ,   馬場賢一

ページ範囲:P.381 - P.387

緒 言
 アルゴンレーザー光凝固装置は,1970年にLit-tel1)等によつて,アルゴンレーザーと細隙燈顕微鏡を組み合せた光凝固機が製作されてから急速に発達した。特にアルゴンレーザー光の特性,すなわち高エネルギー,強集束性,網膜に対する凝固能率のよいこと,小凝固点が得られること等を利用して,後極部の精密凝固に応用されてきた。
 最近,伝達系にFiber optic (mono filame-nt)を使用し,出力の低下を防いだCoherentRadiation Argon Laser System 900 photoco-agulatorが製作され,従来キセノン光凝固機では危険の多かつた後極部疾患の精密凝固が容易となり利用度が増加してきた。

先天盲開眼手術後の視知覚獲得過程の観察

著者: 安間哲史 ,   外山喜一 ,   鳥居修晃 ,   望月登志子

ページ範囲:P.389 - P.399

緒 言
 生来性の盲(congenital blindness)1)あるいは幼児期に失明した盲(early blindness)1)などのいわゆる"先天盲"が成人してから開眼手術を受け,開眼した場合の視知覚獲得に関しては,心理学的な見地から,これまでに多くの研究がなされている1〜5)。それらによれば,その獲得過程は,その患者の失明時期,失明期間,失明期間中の残存視覚2),開眼手術を受けた年齢6),手術後の訓練7),などに依存しており,開眼したからといつてすぐに視覚の世界に入り込める訳ではない。その上,ある種の視覚機能は,放置しておけば獲得されないままになりうる可能性が注目され,手術後の訓練の重要性が近年強調されている7,8)
 今回,著者らは,幼児期に麻疹後の角膜症で両眼失明した28歳の男子に,角膜移植を行ない,手術前後の眼機能の変化と,術後の視知覚獲得の過程を,およそ1年間観察したので報告する。

先天性色覚異常者の色命名能力に関する研究—第2報 視標の大きさについて

著者: 深見嘉一郎

ページ範囲:P.401 - P.405

緒 言
 Dvorine表に附属するnomenclature testそのものでの実験については,第1報にて報告した。今回はその色のうち飽和色のみを用い,視標の直径を小さくして実験した。

眼科超音波診断に関する研究—第12報 硝子体病変の超音波診断

著者: 太根節直 ,   室本雅夫 ,   佐久間靖子 ,   伊藤清治 ,   河野英子

ページ範囲:P.407 - P.411

緒 言
 硝子体病変に対する超音波診断は,強い透光体混濁などが存在して,光学的検査法が行ないえない場合には,今日なお,X線CTスキャナー断層診断などでも眼内変化の把握には不十分であるため,その有用性は十分に評価されており,眼内病変の診断にはこれらの各種検査法と併用すべきものであることは論を俟たない。
 今回は硝子体病変に対する最近の新しい超音波検査手技の応用を試み,ディジタル式同時断層表示法,スキャンコンバータによるグレイスケール表示法,ドップラー法,およびMモード法などの総合的応用に関して診断上新知見が得られたので,その大要を報告する。

眼部異物の診断における超音波診断の役割

著者: 澤田惇 ,   L.Kaefring ,   C.Ossoinig

ページ範囲:P.413 - P.417

緒 言
 眼部異物に対する診断には超音波による検査がX線診断とともに用いられている1〜3)。その目的とするところは,1)異物の探知,特にX線透明の場合,2)異物の位置判定(定位),特に二重穿孔の有無の判定,3)合併障害の有無とその程度判定,および4)手術方法の選択である。このような目的が十分果たされるためには適当な診断装置と系統づけられた診断方法が必要である。今回私共はIowa大学において多数の眼部異物症例,特に眼球内のものについての成績を検討した結果,超音波診断法が本症の診断・管理にすぐれていることを明白にしえたので,診断方法ならびに結果を報告する。

未熟児眼の超音波的観察(第2報)—その2:眼底循環の動態

著者: 山本由記雄 ,   平野史郎 ,   鏑木ふく代 ,   富田美智子 ,   岡田栄子

ページ範囲:P.419 - P.423

緒 言
 前報1)で,未熟児眼における超音波ドップラー法の応用で,眼底循環の流速脈波を調査し,(1)血流速度,眼底血圧値が未熟度に比例して低値をしめす。(2)未熟児網膜症の発生時点,経過の推測が可能である。(3)透光体混濁眼でも追跡可能であるとの結論を得たが未熟児網膜症に密接な関係があるといわれる各種因子と,流速脈波との相関を調べ,いささかの知見を得たので報告する。

眼科用高性能超音波診断装置とコンピューター断層装置の眼科領域における検査意義の比較について

著者: 金子明博 ,   広江靖 ,   井上仁

ページ範囲:P.425 - P.430

緒 言
 近年電子計算機の利用技術の発展により,コンピューター断層装置Computerized Tomogra-phy(CTと略す)が出現し,眼科領域においても超音波検査法との比較が報告されている1〜4)。しかし最近開発された5),高感度高分解能を有する眼科用高性能超音波診断装置Aloka SSD−65(UTと略す)との比較はまだ発表されておらず,それぞれの検査法の眼科領域における意義について興味ある知見を得たので報告する。

連載 眼科図譜・232

Krukenberg's Spindleを伴つたGlaucoma Capsulareの1例

著者: 永井隆子 ,   菅謙治

ページ範囲:P.312 - P.313

〔解説〕
 Krukenberg's spindieは,角膜中央部裏面の垂直の紡錘型をした色素沈着をいい,角膜内皮細胞に虹彩色素が貪食された状態であるが,これはpigmentary glau-comaに必発の所見であるとされている1)
 一方,pseudoexfoliation of the lens capsule は,水晶体前面の中央部および周辺部,瞳孔縁,隅角部などへの灰白色の沈着物を主徴とするが,広隅角緑内障と共にしばしば認められ,glaucoma capsulareとよばれている。

総説

トキソプラズマ症における最近の知見

著者: 鬼木信乃夫

ページ範囲:P.315 - P.325

I.はじめに
 臨床医が遭遇する眼トキソプラズマ症(以下トキソ)の頻度は,欧米では全ブドウ膜炎の中20〜30%とされているが,わが国でも最近本症への関心が高まるにつれ欧米なみに眼トキソ症が存在していることが実証されてきた1)。したがつて,今日わが国ではトキソ症は,Behçet病,Vogt・小柳・原田症候群とならんでブドウ膜炎の三大原因を占めるようになつた。
 著者は,1972年に自験131例を中心とした研究成果を「トキソプラズマ症の臨床」として刊行し1),1974年には国内文献を主としたトキソ症の展望を紹介した2)。その折,指摘した問題点の数数——原虫の生活環,感染経路,胎盤感染の機序,流早死産との関連,先天感染の再発機序,眼トキソ症の発病様式,眼トキソ症の非典型例など——が徐々ではあるが解明されてきている。ここでは主として,1970年以降の外国文献を中心として,トキソ症の最近の知見と現状を述べていく。

臨床報告

Doyne's Honeycomb Macular Degenerationの一家系

著者: 宮永嘉隆 ,   水谷敏子 ,   山西律子

ページ範囲:P.431 - P.435

緒 言
 眼底にいわゆるfleckを認める疾病の報告は多くをかぞえるが,その分類,鑑別診断となると,いまだ明確にされていない点もかなりあるようで,日常の診療にあたつて,とまどいを感じることもしばしばである。
 今回,著者らはretina特にmaculo papillaryregionを中心とする部位にhyalin dystrophy(Doyne's honeycolnb macular degeneration)と思われるfleckとmaculaの degenerationを伴つた一症例に関して遺伝的背景を検討すると共に数年前,著者らが経験したFundus flavima-culatusの症例1)とも比較検討を加え,いささかの知見を得たので報告する。

Computerized Tomography(C.T.)によつて確認された眼窩血腫の1例

著者: 三嶋弘 ,   近藤和義 ,   長谷部治之 ,   石川進 ,   児玉安紀 ,   桑原倖利 ,   梶原四郎 ,   日比野弘道

ページ範囲:P.437 - P.442

緒 言
 日常の臨床において眼窩組織への出血は外傷後によく認められる。通常,保存的に出血の吸収除去が行なわれているが,著者らは最近,硬式野球ボールの顔面打撲により著明な眼球突出と視力障害をきたした症例で,術前にcomputerized tomo-graphy(C.T.)によつて眼窩血腫とその局在が確認され,外科的療法できわめて良好な結果が得られた症例を経験したので報告する。

Clinical Conference

眼科手術前の消毒薬について

著者: 澤充 ,   稲葉全郎

ページ範囲:P.443 - P.448

 沢(医局員) 兎眼での消毒薬の影響,手術時,術野消毒薬をチメロサールからヒビテンに切り替えてから,実際に手術術野の消毒前後での培養の結果,および22大学での消毒薬についてのアンケートの回答の結果の3点について今日は述べたいと思います。

GROUP DISCUSSION

超音波(第1回)

著者: 山本由記雄

ページ範囲:P.449 - P.451

1.水晶体の音響学的性質について
 水晶体の音響学的性質を知ることは,超音波による眼疾患の診断あるいはOculometryの際に重要であることは周知のことである。今回演者は,シュリーレン法を用い人眼混濁水晶体を資料として水晶体の音響学的性質を検索した。結論は次のとおりである。
 1.シュリーレン法により人眼摘出混濁水晶体は超音波ビームに対して,屈折,拡散,減衰現象を示すことを認めた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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