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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科31巻4号

1977年04月発行

雑誌目次

特集 第30回日本臨床眼科学会講演集 (その4) 学会原著

Sjögren症候群の臨床病態について

著者: 北野周作 ,   竹中剛岩 ,   杉田由紀子 ,   植田達子 ,   小杉知子

ページ範囲:P.475 - P.481

緒 言
 1933年にSjögren1)が乾性角結膜炎,耳下腺腫脹に慢性関節リウマチ(以下RA)を合併した症例を報告して以来,40年近い歳月を経ているが,特に最近になつて,Sjögren症候群(以下SS)に対する関心がたかまり,日本では1975年難病の一つに指定されている。
 しかし,SSが,涙腺,唾液腺をtarget organとするsicca syndromeを主体とする独立疾患か,Systemic Lupus Erythematodes (以下S-LE)のchronic benignの型か,RAの合併症にすぎないのか,あるいはRAのvarianttypeであるのかなど,SSの疾患としての位置づけは,いまだに明確にされていない現状である。今回,われわれはSSの病態解明の一助として,眼科受診中の原発性乾性角結膜炎(以下KCS),および当付属病院整形外科のRA外来に受診中であるが,眼科には未受診の患者の2群について,臨床病態の比較検討を行ない,いささかの知見を得たので報告する。

春季カタルにおける局所および血中免疫グロブリン—Ⅰ.局所の免疫グロブリン保有細胞

著者: 湯浅武之助 ,   日山英子 ,   西素子 ,   堀知子 ,   三村康男

ページ範囲:P.483 - P.487

緒 言
 春季カタルは眼科領域における典型的なアトピー性疾患,すなわち遺伝的な体質もしくは素因を伴うアレルギー性病変である。春季カタル本来の炎症は即時型反応であり,Coombs&GellのⅠ型アレルギー1)に相当する病変であるが,結膜局所における病変は慢性の経過をとり完治し難いものである。本症患者の結膜においては,当然Immunoglobulin E (IgE)による反応が存在するはずであり,同時にこの即時型アレルギー反応を修飾する他の免疫グロブリンも何らかの消長を示すはずである。しかし,これまで春季カタルにおける眼局所での病変をアレルギー学的な立場から解析した研究はほとんどみられない。今回は結膜および涙腺における免疫グロブリン産生を行なう形質細胞を中心とした病理組織学的所見について検討した結果を報告する。

1976年多発した急性アレルギー性結膜炎について

著者: 三国郁夫 ,   藤原隆明 ,   野村公寿 ,   尾羽沢大

ページ範囲:P.489 - P.495

緒 言
 過去2年間の国立相模原病院リウマチ・アレルギーセンターの花粉曲線によれば,1976年のスギ花粉降下が3月より4月中旬にかけて異常に多いことがわかる(図1)。
 また神奈川県伊勢原市東海大学眼科測定の花粉曲線でも同様の傾向がみられる。

シリコンループ留置術の新法による涙点閉鎖の治療

著者: 長嶋孝次

ページ範囲:P.497 - P.499

緒 言
 涙小管閉塞,あるいはこれに鼻涙管閉塞をも合併した症例に対して,開放手術を行なわずにシリコンラバーチューブをループ状に留置する二,三の方法1〜3)がすでに試みられているが,いずれも技術的に共通した難点をもつている。岩すなわち,この柔軟なチューブを涙道へ誘導するための銀製1)や鋼製2)の案内ブジーを下鼻道から,あるいは通常後方へ向かつて進むナイロン線3)を鼻咽頭から探し出しで,これらを鼻孔からとり出すことは容易ではない。私は特にこの問題を解決するとともに,本法をまず涙点閉鎖に適用して,卓効を得たので報告する。

Orbital Scintigraphy (第2報)—眼窩および眼窩周辺部腫瘍における骨シンチグラムの診断的意義について

著者: 能勢晴美 ,   中村泰久 ,   能勢忠男 ,   有水昇

ページ範囲:P.501 - P.508

緒 言
 眼窩腫瘍,あるいは眼窩近傍部の腫瘍の診断上,更には治療方針の決定に際して,その骨変化の有無を知ることは大切なことであり,したがつてX線撮影の持つ意義は大きい。実際にX線上で骨変化が捉えられるのは30〜50%以上のCaの移動があつた場合であるといわれる1)。一方,骨スキャンはこれより早期に骨変化を捉えることができ,特に癌の転移の早期発見に有用であるといわれている。他科領域においては骨スキャンの報告例も多く,その有用性が高く評価されているが2〜5)眼科領域においては本検査法を評価した報告は著者らの知りえた範囲では見出されなかつた。
 先に著者らは眼窩腫瘍例に99mTc-pertechne-tateによるシンチグラフィーを行ない,その診断的有用性につき報告した6)。今回はその骨変化に主眼をおき中眼窩腫瘍例ならびに眼窩近傍腫瘍で何らかの眼症状をきたした症例につき骨スキャンあるいは骨シンチグラフィーを行ない,併せて頭部単純X線写真との比較検討を行なつたのでここに報告する。

眼窩骨折の臨床経過および予後

著者: 中川喬 ,   木村早百合 ,   中嶋乃婦子 ,   槇本真理子

ページ範囲:P.509 - P.513

緒 言
 眼窩骨折は骨折の形により臨床所見,経過がことなつている。著者らは眼窩骨折153症例(男131,女22)の眼機能障害を長期間観察したので報告する。眼窩骨折は多様性に富み,一概に分類するのは容易でないが,今回は著者らが1971年に発表した眼窩骨折の分類1)にしたがつた。眼窩上壁および下壁骨折の合併例が多く,その臨床所見が特有だつたので独立した項目にした。下壁骨折とは頬骨上顎骨骨折またはブロウアウト骨折のことである。ブロウアウト骨折Ⅱ型は1症例であつたため,Ⅰ,Ⅱ型の分類は行なわなかつた。粉砕骨折はLe Fort Ⅱ,Ⅲ型の合併例とも考えられるのでLe Fort型骨折とした。眼窩尖端部骨折のうち,視束管骨折はかなりの症例があつたが,このグループは他の型の骨折と性格をことにするので今回の統計から除外した。

瞳孔—調節電図よりする調節異常の解析

著者: 鈴村昭弘 ,   鈴木直子 ,   清水洋子

ページ範囲:P.515 - P.526

緒 言
 視覚成立に瞳孔・調節・輻輳の三つの主要なサブシステムが協調して働いている。このうち瞳孔岩輻輳,調節—輻輳の両者の関係については比較的多くの研究がある。
 瞳孔と調節との関係については,一般に縮瞳反応は輻輳に随伴するものであつて,調節とは関係が少ないことが報告されているが,反論がないわけではない。それは調節と輻輳とを分離することが困難である故に,この問題点に判然とした決論を出していないと考えられる。

Paradoxical Convergence during Lateral Gazeの症例について

著者: 桐渕利次 ,   丸尾敏夫

ページ範囲:P.527 - P.532

緒 言
 Duane症候群が異常神経支配によることは筋電図検査が眼科領域に応用されるようになつて初めて明らかになつた事実である1〜3)。その後,外眼筋の異常神経支配にはDuane症候群ばかりでなく種々のものがあることがわかつてきた。Papstら4〜6),井上・久保田7),Huberら8),丸尾・久保田9),本村ら10)の報告がみられる。最近,著者らは先天性に側方視(水平むき運動)に際して輻輳(内よせ)がおこるという未だかつて経験したことのないきわめてまれな眼球運動を示す症例を経験した。側方視に際して開散(外よせ)のおこる症例11〜13)や側方視に際して輻輳様動運がおこる症例13〜16)についての報告はあるが,ここにみるような症例はきわめて珍しいのでここに報告しておきたいと思う。

職業運転手(タクシー)の疲労時における視機能について—特に両眼視機能の立場から

著者: 山下龍雄 ,   翠英子 ,   古謝将昭 ,   越智常登 ,   高地秀知 ,   滝本久夫 ,   武藤依子 ,   福山千代美 ,   山西政昭

ページ範囲:P.533 - P.536

緒 言
 運転能力に視機能が重要な影響を与える一つの因子であることはいうまでもない。人の視機能がいろいろな条件によつて変動することは既に多くの研究者によつて発表されている。今回われわれは職業転運手(タクシー)について,天候,走行上などの異なる環境のもとで,就業直前直後の視機能の変動を検討するために,動体視力と調節時間を調べ,両眼視機能を中心に分析してみた。また事故との関連性および運転手の適性についても検討した。

病的近視の進行過程とその病態について(予報)

著者: 所敬 ,   林一彦 ,   佐藤公子 ,   打田昭子 ,   伊藤百合子

ページ範囲:P.537 - P.539

緒 言
 強度近視は,変性疾患として失明原因の上位を占めている1,2)にもかかわらず,網膜色素変性症あるいは老人性黄斑部変性症に比べて注目されておらず,その原因および病態についての研究は少ない現状である。強度近視の原因は従来より眼軸長の延長によると考えられており,これにより種種の視機能障害,あるいは合併症がおこるとされていた。しかしこのような障害が,眼軸長の延長のみによりおこるか否かは,強度近視による失明原因を追求する上には重要な事と思われる。そこで今回は,屈折度,眼軸長および種々の視機能検査を行ない,強度近視が視機能障害を現わしてくる,すなわち病的近視としての進行過程およびその病態につき検討を加える事ができたのでここに報告する。

視機能異常児の検出成績—4歳児の集団を対象としたスクリーニングについて

著者: 大関尚志 ,   木村素子 ,   木ノ内智賀子 ,   秋山明基 ,   鈴木慶子 ,   西岡三紀

ページ範囲:P.545 - P.548

緒 言
 著者らは視機能異常児の早期発見,早期治療を目的として,1970年度より神奈川県下の4,5歳児の視機能に関するスクリーニングを神奈川県小児療育相談センター(センターと略)を中心として行なつてきた。この方式はアンケート調査に加えて検査員による出張検査を行ない,そこから選別された幼児に対して眼科医による精密検査を行なうという一連の方法であつた。1975年度は新しい試みとして一部改変したアンケート表に加えて0.3のランドルト環(ラ環と略)をそえて保護者による視力検査を併用した。またこれとは別に0.3および0.5のラ環をもちいた幼稚園の保育者による視力検査をも併用した。そしてスクリーニングの結果視機能異常の疑われるものについて眼科医による精密検査を行なつた。

視神経交叉比異常と斜視

著者: 筒井純 ,   深井小久子

ページ範囲:P.549 - P.552

緒 言
 1969年Guillery1)が内斜視のシャムネコに視神経線維の交叉比異常を発見してよりalbino動物で非交叉性視神経線維につながる視路に形成不全のあることが次々と判明した2〜9)。Creel10)はヒトの白児にVERを応用して非交叉性視路の形成不全を暗示するデーターを報告した。
 そこで問題になるのがヒトの内斜視に,このような視路の交叉異常があるかどうかということと,臨床的に如何にしてこれを検出するかということである。もしヒトの斜視に高率にこれが存在するならば,斜視治療に,絶望的な根拠ともないうることである。さて視路の交叉異常を臨床的に検出するにはどうすればよいかということである。Creel10)はVERを応用して光刺激をあたえた眼と同側半球のN1波の劣性をもつて非交叉視路の形成不全を暗示するものとしている。

小児の屈折矯正に関する研究—第2報 斜視を伴う遠視の経年変化—その1 固視眼,斜視眼との屈折度変化

著者: 湖崎克 ,   山崎康宏 ,   中岸裕子 ,   鈴木章子 ,   八木真知 ,   岩井寿子

ページ範囲:P.553 - P.558

緒 言
 小児の視機能の発達に遠視が及ぼす影響の大きいことは衆知のことである。小児の遠視は調節性内斜視,屈折性弱視,不同視弱視の原因となりやすいため,できるだけ早期に屈折矯正をしなければならない。
 小児の遠視の屈折矯正には,調節麻痺下屈折検査値から生理的トーマス分として,0.5D〜0.75D差し引いた値を用いることが原則であることは,丸尾1),粟屋2),らが述べているごとく間違いのないこととは考えるが,長期に永続的に小児遠視に完全矯正眼鏡を用いていると,遠視度の減弱という経年変化に対応しえないで,時には内よせ不全をみることもあることから,筆者3,4)は遠視の屈折矯正は常に経年変化やよせ運動に配慮をはらうべきであると考え主張している。

連載 眼科図譜・233

水痘に合併した視神経網膜症の1例

著者: 斉藤一宇

ページ範囲:P.462 - P.463

〔解説〕
 Exanthematous virusesによる眼合併症としてけ麻疹が良く知られているが,水痘によると思われる視神経網膜症に遭遇したので,その螢光眼底所見と併せて報告する。
 症例は5歳,男児で,定型的水痘発症後4日目より,右眼の球結膜の充血に始まり,7日目より内斜視の状態となり,視力低下を自覚したため,14日目に当科を受診した。

総説

眼科領域におけるコンピューター断層装置Computed Tomography (CT)の応用

著者: 澤田惇

ページ範囲:P.465 - P.473

緒言
 コンピューター断層装置(Computed Tomo-graphy,CT)は1972年英国でEMI-Scannerとして発表1〜3)されて以来,従来のX線撮影では得られなかつた軟部組織が作像されるようになつたので,国産のものを含めて多数の機種が製作され,急速に波及するようになり,1977年初めには,米国ではJournal of Computer AssistedTomography,英国ではComputerized Tomo-graphyという雑誌が創刊されようとしている。
 眼科領域においてもすでに多くの成績4〜22)が発表されているが,Iowa大学でのEMI-Scanner,藤元病院(都城市)での日立CT-H250による経験を中心に本法の概要とその結果を紹介する。

臨床報告

螢光眼底検査後に不幸な転帰をとつた1例

著者: 藤田邦彦 ,   鈴木弘子 ,   天野清範

ページ範囲:P.575 - P.577

緒 言
 螢光眼底撮影の際に使用するFluoresceinsodium水溶液(以下Fl-Na液)の静注による副作用として,一過性の悪心,嘔吐など短期間の副作用は時に経験するが,他の薬物に見られるような長期間にわたる肝,腎障害やショックなどの重篤な副作用は非常に少ないとされている。
 最近,われわれはFl−Na液静注後,脳塞栓による中枢神経障害が出現し,2週間後,死に至つた1例を経験したので報告する。

Pigmented Paravenous Retinochoroidal Atrophyの2例

著者: 原田正夫 ,   渡辺誠一 ,   武井洋一 ,   佐々木一之

ページ範囲:P.579 - P.586

緒 言
 Brown1)が,両眼底における乳頭周囲の萎縮ならびに網膜血管,とくに静脈周囲に萎縮と色素沈着を呈する特異な眼底疾患をretinochoroidi-tis radiata1,16)として報告して以来,同様の疾患が,congenital pigmentation of the retina2,3),melanosis of the retina4),paravenous retinaldegeneration5)など,いろいうな名称で報告されている。しかし,Franceschetti6)による詳細な報告以後は,彼の命名によるpigmented para-venous retinochoroidal atrophyの名称が広く用いられている7〜10)
 これは,かなり稀な疾患で,その報告例も少なく,本邦でも水野ら11)の報告以来,数例12〜15)に止まつており,したがつて,その原因,発生機転についても意見の統一をみていない現状である。

毛様体悪性上皮腫の1例

著者: 荻田昭三 ,   荻田玲子 ,   久賀宣人 ,   重河康弘 ,   国田俊郎

ページ範囲:P.587 - P.591

緒 言
 ブドウ膜に原発する悪性腫瘍は,脈絡膜のものが多く,虹彩,毛様体に原発するものは非常に稀である。今回我々は,1年3カ月にわたつて光凝固などの保存療法を行なつたが効果がなく,臨床的に悪性の経過を辿つた毛様体腫瘍を経験し,病理組織学的にmalignant epitheliomaと診断された1症例を報告する。

カラー臨床報告

黄斑部網膜分離症Foveal retinoschisis

著者: 宮久保寛 ,   村岡兼光 ,   小林義治

ページ範囲:P.561 - P.573

緒 言
 網膜内の外網状層あるいは神経線維層の部位で網膜が内外2層に分離する網膜分離症retinosc-hisiSは,網膜剥離との鑑別やこれと合併した網膜剥離の予後を考える際に常に考慮しなくてはならない重要な疾患であるにもかかわらず,現在までその報告例は少なく,あまり知られていない。
 このretinoschisisの中に伴性劣性の遺伝形式を呈するX-linked juvenile retinoschisisと呼ばれる型がある。この疾患は周辺部のretinoschi-sisと共に黄斑部の小さな嚢胞により形成された変性,すなわち,黄斑部網膜分離症foveal ret-inoschisisを伴う事が特徴であるにもかかわらず,この黄斑部病変はあまり注目されていない。

GROUP DISCUSSION

斜視・弱視

著者: 丸尾敏夫

ページ範囲:P.593 - P.596

1.内斜視の分類について
○菅 謙治(大阪・北野病院)
 内斜視の分類をつぎのように試みた。
1.非調節性内斜視

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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