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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科31巻5号

1977年05月発行

雑誌目次

特集 第30回日本臨床眼科学会講演集 (その5) 学会原著

無水晶体眼における角膜乱視と矯正眼鏡レンズ—第2報 臨床的検討

著者: 大島祐之 ,   本村幸子

ページ範囲:P.621 - P.624

緒 言
 Ophthalmometerによる角膜乱視測定を無水晶体眼の乱視矯正に活用するには,無水晶体眼が通例強度遠視である関係上,矯正眼鏡レンズと角膜の頂点間距離を二考慮に入れた補正を必要とすることは古くから知られていたが1,2),実用的な補正換算式がなかつたのに鑑み,角膜乱視ΔDを矯正する眼鏡の円柱レンズ度ADを求める換算式:A=(1,000-2dL1)Δ/(1,000十dΔ)。ここにdmmは頂点間距離, L1は矯正球面レンズ度D……を誘導し,それに基づく換算表等を第1報3)に発表した。本報ではそれを無水晶体症例に適用した結果を報告し,あわせて白内障術後経過にみられるophthalmometry所見について眼科臨床につながる知見を得た。

奇異な動きを伴う視神経乳頭欠損症の1例

著者: 田中泰雄

ページ範囲:P.625 - P.630

緒言
 視神経乳頭の先天異常のなかで,検眼鏡的にみていわゆる定型的欠損症とは異なつた型の存在は,古くから指摘されているが,近年KindlerがMorning Glory Syndromeと名付ける10例を報告して以来,該部の同様な異常例の報告が相つぎ,それぞれ種々の解釈がなされている。
 最近われわれは,該部附近に奇異なる運動を認め定型的欠損症とは異なつた型の視神経乳頭部異常を有する珍しい症例を経験したので報告する.

無水晶体眼の屈折矯正方法の分析—850名アンケート調査による

著者: 矢島保道 ,   松岡久栄 ,   百瀬隆行 ,   中島章

ページ範囲:P.631 - P.638

緒 言
 無水晶体眼の矯正には,様々な方法が試みられている,しかし,無水晶体眼者が,実際にその矯正方法に関して満足しているかどうかを調べた報告は少ない1)。そこで,無水晶体眼者のアンケート調査という手段を用いて,無水晶体眼者の現状における矯正方法の問題点を調べてみた。
 無水晶体眼者の矯正の現状には,多くの問題が内包されている。このうら最も問題なのは,他眼の視力良好な片眼の無水晶体眼者て,しかも無水晶体眼の矯正をおこなわずに放置している例であろうと考えられた。加えて人工水晶体や長期連続装用可能なソフトコンタクトレンズの臨床上の必要性についても考察したので報告する。

視神経疾患に対する新しいQuantitative Maculometry

著者: 川上勇作 ,   諫山義正

ページ範囲:P.639 - P.643

緒 言
 球後視神経炎等,視神経症では,視野の求心性狭窄のあるなしにかかわらず,中心暗点を来す場合が圧倒的に多い。中心暗点を計測する場合,正確な暗点の位置づけが,疾病—とりわけ視力—の予後および経過観察の上でぎわめて重要である。
 従来,Tübinger静的視野計による中心暗点の計測においては,①びまん性の中心視野の沈下型(general depression type)②鋸歯状ないし"ふるい"状の沈下型(sieve-like depression type)③完全な中心視野の沈下の中に,島状に視野が認められる型(island-like field type1))④完全な中心視野の沈下型(complete depression type)がある(図1)。しかし,中心暗点を有する患者の固視の動揺のために,必ずしも正確な位置づけに基づく計測がなされているとは限らない。

中大脳動脈閉塞症と視機能との関係

著者: 月花一 ,   中川好江 ,   谷口重雄 ,   矢田清身 ,   塩川健 ,   小道末登 ,   荻野総夫 ,   松井将 ,   劉弘文

ページ範囲:P.645 - P.649

緒 言
 中大脳動脈閉塞症は外傷性,特発性を含めて比較的珍しい疾患とされているが,本症の性格から主として脳外科領域での症例および研究の報告がなされている。中大脳動脈は大脳半球外側面の大部分の皮質と深部の髄質とを栄養している。この閉塞のために昏睡状態を惹起し,中心前回,中心後回の大部分が含まれるために片麻痺および反射知覚脱失,さらに視放線の障害のために反対側の同名半盲が現れるほか優位半球の場合には言語障害が現れる。また場合によつては生命の危機すら招来することがある。本症は一般に片側性の場合が多く報告されている。
 今回われわれは本症に一般に見られる症状を示さず,特に視機能障害を呈した両側中大脳動脈閉塞症を経験したので,本症と視機能との関連性についての検討を試みた。

人工水晶体の網膜に及ぼす影響と挿入術式の選択

著者: 尾崎吏恵子 ,   梅園千秋 ,   永田誠

ページ範囲:P.651 - P.658

緒 言
 人工水晶体(Pseudophakos以後PPと略す)挿入術が一般化する前に,その素材が,眼組織特に網膜に及ぼす影響を精査しておく必要がある。
 Alloplasty (異物的形成術)は,近年血管手術の分野で長足の進歩を遂げてぎた。眼科領域においては,可動性義眼台やKoratoprosthesisへの応用の他,1949年にRidlley1)が初めて片白内障患者の水晶体嚢外摘出術後,後房内にPPを挿入し,眼内への人工産物挿入の道を開いた。その後Strampelli, Denheimらは隅角固定の前房レンズを開発し2),Binkhorstは虹彩支持によるレンズ固定法を考案した3).Strampelli, Dan-heimらのレンズは,角膜内皮障害の多発によつて姿を消したが,Binkhorstのレンズは,その後20年以上にわたる臨床経験の蓄積によつて,その優秀性が認められるようになり,最近10年間は,虹彩固定の原理による種々のデザインのPPが作製され,挿入されてきた。

Phaco-emulsification と Aspiration による白内障手術について

著者: 馬嶋慶直 ,   新美勝彦

ページ範囲:P.659 - P.666

緒 言
 白内障の乳化,吸引手術の新しい方法として1967年にDr.Kelman, C.D.1)が最初の報告を行い,第22回臨床眼科学会でも12例の患者について報告している。また本邦では1970年に桑原2)教授が有核白内障の吸引法についてと題して特別講演を行つておられ,1971年著者3)も少数例ではあるが治験例を報告し続いて倉知4),秋谷5),中野6)等の報告があつた。その後本邦ではこの方面の進展はみられなかつたが米国においては装置の改良と臨床例の検討がなされてきた。今回私たちはCavitron社の phaco-emulsifier aspiratorを使用し白内障手術をする機会を得,二,三の知見を得たので報告したい。

水晶体嚢内弁状摘出術における硝子体脱出の積極的防止法—虹彩制御糸

著者: 西興史

ページ範囲:P.667 - P.672

緒 言
 水晶体摘出術中における最も不愉快な合併症一つ,硝子体脱出は,ここ十数年下術器具,手術方法,麻酔法や術前処置の改善により減少した1〜13)。しかし尚,術者により1%以下〜8%,時に10%以上の頻度12,14〜22)でこの合併症が出現している。これら硝脱(以下硝子体脱出をこの様に略す)眼の予後の重篤16〜22)さを考えると,その頻度が低下したとはいえ我々眼科医にとつて,この合併症を防ぐ事は,尚大きな,興味ある問題である.今回,水晶酒体嚢内弁状摘出術にける硝脱を,虹彩を利用して積極的に防止する事を意図した虹彩制御糸を考案した。この方法を導入して,硝脱の頻度が有意に低下し,この方法が有効である事を確認した。

水晶体吸引術中の散瞳保持

著者: 澤充 ,   増田寛次郎

ページ範囲:P.673 - P.676

緒 論
 軟性白内障に対する手術術式はScheie1)の発表以来,水晶体吸引術が主として行なわれるようになり,種々の方法,器具が考案されて来た。我我はBarraquer2)の術式を基にした,灌流および吸引用の2種類のカニューレを使つて吸引術を行なつている3)。多くの著者の一致した強調点は術中の十分な散瞳の保持である。術後の合併症の主体をなす虹彩後癒着とこれにともなう瞳孔変形は,水晶体を十分吸引することにより除去できる問題であり,かつこれを可能ならしめるのは術中の散瞳保持と考えられる。
 しかし我々は吸引を行なつている間に縮瞳を来し虹彩のうしろにある水晶体を吸引することが困難であり,かつ危険となる例を数々経験する。再度散瞳させることはアトロピン等を使用しても不可能である。こうした際の処置についてGirard4)は1,000倍エピネフリンを灌流液中に滴下するとよいと述べている。

Primary angle-closure glaucomaのCycloscopy

著者: 室井繁 ,   木村良造 ,   水野勝義

ページ範囲:P.681 - P.686

緒 言
 Primary angle-closure glaucomaの成因については,解剖学的要因として,小眼球,毛様体の位置異常,水晶体偏位等が挙げられているが,これに生理学的要因が加わつていると考えられている。すなわちChandler1)のpupillary blockの考えである。換言すれば水晶体の位置および厚さの変化によりphysiological iris bombéの状態が起り前房が浅くなり隅角の狭少化をひき起すと考えられている。
 毛様体の位置異常については,primary angle-closure glaucomaでは,前方へrotateしているとされている2)が,これは摘出眼における所見であり現在まで生体における狭隅角眼での毛様体に関する報告はみられていない。

単性緑内障患者のOphthalmodynamography所見について

著者: 荒川陽子 ,   大島健司 ,   多比良久美子 ,   岡嶋由布子

ページ範囲:P.687 - P.693

緒 言
 緑内障における視神経障害の原因に関しては,種々の説が唱えられているが,最近視神経自身の血流障害に求める説が有力である1〜4)。すなわち,正常眼においては,眼圧と視神経の血流は一定の平衡関係を保つているが,眼圧の上昇や視神経自身の血管障害などにより,この平衡関係がこわれると,視神経に対する血液供給の不足がおこり,その結果二次的に視神経障害がおこつてくるというのである。
 これを裏付けるために,Ophthalmodynamo-meterを用いて眼圧を上昇させ,眼圧の上昇による血流の変化が視野にいかなる影響をおよぼすかを測定した結果,眼圧の上昇につれて視野の鼻側沈下や,Bjerrumの暗点が出現したり5),緑内障進行眼では,健常者に比べてわずかの眼圧の上昇で視標の消失が認められたという報告などがある6)

前眼部螢光血管造影に関する研究—その2 緑内障眼房水静脈の螢光造影所見について

著者: 浅井美子

ページ範囲:P.695 - P.706

緒 言
 緑内障眼房水静脈螢光造影に関する報告は少なく,国外でもわずかCristinaの報告をみるにすぎない。著者は前回報告した正常眼房水静脈の螢光像をもとに,今回は,緑内障眼35眼に対し螢光血管造影を行い,高眼圧時,正常眼圧時の房水静脈の造影状態を比較観察し,興味ある知見を得たので報告する。なお開放隅角緑内障では,手術の適応決定に際し,本検査法が大変有益な情報を提供するものでることが判明したので合わせて報告する。

連載 眼科図譜・234

ベーチェット病患者にみられた角膜潰瘍の1例

著者: 斉藤一宇 ,   加瀬学

ページ範囲:P.610 - P.611

〔解説〕
 ベーチェット病は,Muco-Cutaneous-Ocular Syn-dromeの範疇に入る疾患であるので,その臨床症状も多彩であるが,口腔内アフター,陰部潰瘍などは日常みられる症状であるが,角膜に潰瘍をきたすということは,ベーチェット病では,ごく稀なことである。
 症例は,26歳,男性,完全型,1971年頃より,眼症状の出現を認め,主として前眼部型で,1年に2〜3回の発作をくり返していたが,1974年以来ブドウ膜炎の発作は認められていなかつた.また,1972年頃より時々,両眼瞼裂部に.上強膜炎様の限局性結膜充血を認めていた.

総説

硝子体切除術の最近の動向—装置の現況

著者: 松井瑞夫

ページ範囲:P.613 - P.620

まえがき
 欧米,ことに北米におけるpars plana vitre-ctomy経毛様体扁平部硝子体切除術の普及には目覚ましいものがあり,一つの施設ですでに1,000例をこえる手術症例を経験しているところすらある。このpars plana vitrectomy の発達の歴史,また発達の主導者の1人として人きな役割を果したRobert Machemerの研究の概略は,すでに本誌にも掲載された。また,わが国にも硝子体手術研究会が発足し,すでに2回の研究会をもら,昨秋の中部日本学会の折には硝子体手術についてのシンポジウムも開催され,わが国でも本手術の普及期をむかえるにいたつたということができよう。そこで今回は,現在われわれが入手することのできる硝子体手術器具について,筆者が現在までに実際に使用した器具,実際に手にとつてみたことのある器具,さらに詳しい資料を入手することのできた器具までふくめて,それぞれの紹介を行なつてみたいと思う。これから硝子体手術をはじめる時に,その機種の選択に迷つている方に多少とも参考になればと考えている次第である。

臨床報告

網膜剥離手術におけるRadial Buckling の応用

著者: 檜垣忠尚 ,   松山道郎 ,   難波彰一 ,   山田いほ子 ,   大沢英一

ページ範囲:P.717 - P.721

緒 言
 網膜[剥]離手術に対するscleral bucklingにおけるPlombe縫着の方向は radialとcircum-ferentialとに2大別される。最近まで広く行なわれているのはcircumferential bucklingである。近年radial bucklingの効用を主張したLincoff (1965)の報告にはじまり,1975年には,同氏等が数学的解析を行ないradial bucklingの方がより望ましいと望べている。我々は後極部を,周辺部網膜にある裂孔よりblockするという目的を第一義的に考え,現在までcircumfer-ential bucklingを行なつてきたが,その裂孔の形,大きさ,位置および剥離の状態によつてはradial bucklingの方が望ましく,また,深部裂孔においては技術的にも本法による操作が比較的容易である事より,今回3例にradial bucklingのみを行ない,9例にcircumferential buckli-ngにradial bucklingを併用し,全例ともに復位に成功し,術後6カ月間以上にわたり経過を観察しているが,認むべき合併症もみられなかつたので,今回報告する。

カラー臨床報告

視神経乳頭のSimultaneous Stereofundusphotography

著者: 岩田和雄 ,   武田啓治 ,   八百枝浩

ページ範囲:P.711 - P.715

緒 言
 近年緑内障の分野では視神経乳頭の三次元的形態変動が視野変状と関係深いことから,乳頭の立体解析への必要性が高まつてきている.従来の立体撮影はカメラ本体の平行移動やAllenのse-Paratorを用いるsequential photograPhy法である。これらの撮影法は一組の立体写真を得るのに時間的ならびに空間的なズレを除きえないという決定的な欠点を有している。このことは経過観察を写真によつて行うための最大の防害となる。更に立体写真の解析には立体図化が必要であり,このためには被写眼の位置ズレを防ぐためにone shotで一組の写真をとる必要がある。これらのことを解決するためにSaheb1),Schinitier2)らは対物レンズの直前に頂角を向け合け合わせたdouble prismを挿入して乳頭の同時立体撮影を行つている。この方法が現在アメリカ,カナダの学会の主流となつているが,光学的検討が全くなされていない。著者らはこの方法をKowa RC-2およびOlympus GRCの眼底カメラに試み(図1,2),あらたにこの撮影法の光学的検討を行つてみたので報告する。

GROUP DISCUSSION

糖尿病性網膜症

著者: 福田雅俊

ページ範囲:P.723 - P.728

 主催者側のご好意から,翌日臨眼の第一会場に使用される大ホールを割当てていただいたので,座席が不足で立つたまま聴いておられる方が多数あるというような例年の混雑はさけられたが,大講堂の中に参会者がばらばらいるという状態で,淋しい感じも否定できなかつた。しかし発表討論は例年のごとく活発で,午後1時半から5時まで熱心な討論が交わされ,十分な成果があつたものと主催者は感じた次第である。会場の運営も,臨眼のリハーサルさながらに,福島医大側でてきぱきと行われ,お手伝いに参上した教室員が手持ち無沙汰に感ずるほど見事なものであつた。本誌上で世話人からもご協力を深く感謝いたしたい。
 演題は,プログラムにもあるごとく12題が予定されていたが林正雄氏(北里大)と谷口慶晃氏他(鹿児島大)との2題の取り消しがあり,以下10題と谷口氏他発表予定演題に対する追加発炎があつた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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