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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科31巻6号

1977年06月発行

雑誌目次

特集 第30回日本臨床眼科学会講演集 (その6) 学会原著

視神経乳頭cuppingと視野変性の追跡

著者: 岩田和雄 ,   祖父江邦子 ,   今井晃 ,   桜井泉

ページ範囲:P.759 - P.765

緒 言
 緑内障の診断,治療,管理の上で視神経乳頭cupの形,位置,量,色調等はきわめて重要な意義を有し,時には視野以上の役割を演ずることがあり,細隙灯顕微鏡による乳頭のステレオ観察なしでは乳頭所見を云々できないとするのが現在の考え方である。
 問題は対象が三次元のものであるから,これを写真やスケッチ等で再現すると二次元的となり,これらをもとに論ずることは二次元的な低レベルの論議に終つてしまう。

網膜血管反応性の研究—開放隅角緑内障眼の飲水負荷後の網膜血管径について

著者: 小林直樹 ,   環竜太郎 ,   小早川幸代 ,   堀内二彦 ,   小池裕司

ページ範囲:P.767 - P.773

緒 言
 網膜循環は生理的状態において,いわゆる自動調節機構に従つて恒常状態を保つている。なかでも,眼圧と網膜血流量の関係については,緑内障性視神経乳頭陥凹および緑内障性視野変状の成因を考える上で議論の多いところである。
 そこで,われわれは網膜血液循環の自動調節機構の解明の一端として,長期にわたる眼圧上昇が,網膜血管にどのような影響を与えているかを知る目的で,正常眼と開放隅角緑内障眼を対象に,飲水負荷を試み,その時得られた眼底写真から血管径変化率を基に網膜血管反応性を検討した。

炭酸脱水酵素阻害剤によつて惹起された尿路結石症に対する予防について(予報)

著者: 武本征人 ,   木下勝博 ,   八竹直 ,   塚本尚 ,   清水芳樹

ページ範囲:P.775 - P.780

緒 言
 緑内障の治療に不可欠ともいえる炭酸脱水酵素阻害剤(Acetazolamide)の投与によつて尿路結石症を惹起することは,臨床的にも動物実験においても古くから知られた事実である1〜5)
 表1は1975年度に阪大眼科緑内障外来で管理した患者495名の治療内訳と,Acetazolamide(Diamox®以下DXと略す)を投与された患者における尿路結石症の発生頻度を示したものであるが,DX内服者265名中10名(3.8%)に尿路結石症を認めている。この数値にはDXが投与されている患者のすべてに尿検査,X線検査などによる精密検査が行なわれているわけではないので,無症状に経過しているものは含まれていない。実際の発生頻度はもつと高いものであると老えられる。DX投与による尿路結石症に対して泌尿器科医のとる立場,すなわち多量の水分摂取,疼痛に対する副交感神経遮断剤の使用,更にはDXの投与中止などは,ことごとく緑内障患者に不都合なことばかりであり,その対策に窮しているのが現状である。今回著者らは,DXによる尿路結石症の発生機序について検討し,DXにクエン酸塩を併用することにより,眼圧のコントロールのみならず尿路結石症の発生を完全に防止しえたのでここに報告する。

小児における副腎皮質ホルモン剤内服の眼圧に及ぼす影響

著者: 大口正樹 ,   大野重昭 ,   竹内勉 ,   矢島信悟 ,   塩野寛 ,   門脇純一

ページ範囲:P.781 - P.785

緒 言
 副腎皮質ホルモン剤の内服によつて時として高眼圧〜緑内障(以下高眼圧とする)を生ずるが,その機構については未だ十分明らかではない,,また,内服量と眼圧との相関関係について多数例で検討した報告は見当たらない。今回,われわれは小児において副腎皮質ホルモン剤の内服を現在行なつているか,または余り遠くない過去に行なつたことのある149例を対象として,眼圧測定,副腎皮質ホルモン剤点眼負荷試験,トノグラフィーなどを行ない若干の知見を得たので報告する。

Exfoliation Syndromeの臨床的研究—その2 水晶体嚢緑内障の臨床所見

著者: 原敬三 ,   布田龍佑 ,   吉住真 ,   清水勉 ,   田上文子

ページ範囲:P.787 - P.796

緒 言
 Exfoliation syndrome (以下Ex.syndromeと略す)は緑内障を伴うもの(水晶体嚢緑内障:glaucoma capsulare)と緑内障を伴わないものの2群があることは周知の事実であるが,exfoli-ative materialの本態やこの物質と緑内障の関係については未だ不明の点が多い。従来,水晶体嚢緑内障の眼圧上昇機転はexfoliative materialがtrabecular meshworkを閉塞することによるという見解が多い。われわれは先にtrabecul-ectomyより得た水晶体嚢緑内障の隅角切除片を電顕的に検討した。その結果,本緑内障の多くは既存の緑内障がexfoliative materialにより増悪または修飾されたものであると考えるのが妥当であろうと推論した1)。しかし電顕による所見は眼組織のごく限られた部分のものであり,電顕所見だけで本緑内障の眼圧上昇機転を論ずるのは無理がある。そこで今回は本緑内障が高齢者でかつ開放隅角を有するものに多い事実から,水晶体嚢緑内障46例56眼と同年代の原発開放隅角緑内障の類似点および相違点を臨床的に比較検討し,電顕所見により得られた推論と同様な結果に達した。

Trabeculectomyの術後成績

著者: 望月学 ,   高瀬正弥 ,   北沢克明

ページ範囲:P.797 - P.802

緒 言
 TrabeculectomyはCairns1)およびWat-son2)の報告以来,緑内障手術として広く行なわれるようになつた。その眼圧下降効果のメカニズムに関しては,初期の段階ではSchlemm氏管を通る房水流出路の再建という見解1)であつたが,その後external filtrationを示唆する報告2〜11,13,14)が多い。Trabeculectomyの利点としては眼圧下降効果が安定して2〜4,6〜14),術後偶発症の少ないこと1〜14)があげられている。
 現在,東大眼科においては,従来の濾過手術の適応となる症例のほぼ全例にTrabeculectomyを行なつており,その長期観察例も多数に至つた.本邦では後術長期にわたる観察例の報告は少数を見るのみで11〜14),また,従来の濾過手術と術後成績を比較検討した報告を見ない。今回,われわれのTrabeculectomyの術後成績を検討し,また,過去に当教室で施行した古典的濾過手術の代表といえるScheie氏手術の術後成績とも比較検討したのでここに報告する。

Retinal arterial aneurysms 8症例の臨床像と光凝固治療

著者: 戸張幾生 ,   阿曾須巳子 ,   横路万寿子

ページ範囲:P.803 - P.809

緒 言
 網膜動脈に,まれに孤立性の比較的大きな血管瘤を認めることがある。この動脈の血管瘤より限局性の出血や浮腫を起こし,輪状網膜症様の所見や,網膜中心静脈枝閉塞症類似の変化をきたす。最近この網膜動脈の血管瘤により起こる臨床像を,一つのClinical entityとして報告されるようになつた1〜7)。Robertson1)は,この網膜動脈の血管瘤に対し,Macroaneurysmなる名称を与え,Leber病,Coats病,Hippel病などと異なり,その臨床像を,1)主幹動脈系(第3分枝以内)に血管瘤を認める。2)限局性の網膜出血と浸出斑を伴う。3)高血圧,動脈硬化症のある高齢者に多い。4)特別な治療なく自然寛解の傾向があると述べた。
 しかし,Cleary4)は,黄斑部に浮腫のおよぶ症例は,血管腫自体は自然治癒しても,浮腫によつて黄斑部の器質的障害を起こし,視力障害の原因となると述べており,すべての例で,Robertsonのいうように,全く治療せずに放置しておいてよいか,疑問を投げかけている.この血管瘤自体に光凝固を行うことにより,血管瘤よりの透過性をおさえ,浮腫の吸収の促進をはかることにより,術後の視力の維持に好結果をもたらし,また,凝固治療による重篤な障害も認められなかつた。そこで網膜動脈の血管瘤に対する光凝固治療の適応を主体に述べてみたい。

連載 眼科図譜・235

網膜動脈閉塞症の発症をみた乳頭前動脈ループ形成症の1例

著者: 甲田尚也 ,   中西泰憲

ページ範囲:P.744 - P.745

〔解説〕
 乳頭前血管ループ形成症はLiebreich (1871)以来多数の報告があるが,そのほとんどは偶然の機会に発見されたもので血管ループは網膜循環の立場からは特殊な意味をもたないと考えられている。しかしながら,現在までに本症で網膜動脈閉塞症の見られたものがBär(1901),Walker (1902)により2例報告されている。
 今回の我々の症例は17歳の男性で,ある朝突然左眼下方視野欠損を自覚したが,当科を訪れるまでに2日間を経過していた。来院時矯正視力両眼共1.5,中間透光体透明であつたが,左眼視野に鼻下側四分の一半盲が認められ,眼底所見で乳頭面上の軽度に拡張した血管ループの存在と,中心動脈上方枝,耳側上方枝での閉塞性変化が認められた(図1)。螢光造影(図3,上段左より下段右へ,フルオ静注後12",13",14",15",16",28")で,左眼の血管ループは動脈性であり,閉塞された動脈枝はループの末梢に位置している事が観察された。閉塞血管の拡張を期待して,左側頸部神経節ブロックを3回(3日間)施行したが視野の改善が認められず,血管拡張剤の投与に切り換えた。発症後38日時では,視力,視野は不変であつたが,眼底所見では乳頭前血管ループは初診時に較べ明らかに狭小化して,ループ周囲の浮腫の消失,耳側上方部での動・静脈および網膜はほぼ正常であつた(図2)。

総説

眼とプロスタグランディンズ—プロスタダランディンズ生合成阻害剤の臨床的応用

著者: 増田寛次郎

ページ範囲:P.747 - P.757

1.はじめに
 Prostaglandins(以下PGsと略す)が眼の病態生理に重要な働きをしている事を発見したのはAmbache1〜3)で,兎の虹彩から抽出した物質が従来の活性aminesを始めとする生物活生物質とは異なるもので,強い平滑筋収縮を引き起こすことを初めて報告し,この物質を虹彩にちなんで"Irin"と名付けた。これが後にPGE2,Fである事がわかつた。またこれらの物質は前房内に,機械的刺激により生合成され遊出してき,このために縮瞳,充血,血液−房水柵の破綻や眼圧上昇等の眼の刺激症状を起こす事がわかつてきた。これらの事実はいろいろな動物実験で証明され,その総説が既にいくつか発表されている4〜11)
 最も関心の深い人間の眼とPGsとの関係についてはあまり報告をみないが,人間の虹彩抽出物中に12)PGs様物質が存在しある種の急性前眼部ブドウ膜炎で前房水中に高濃度のPGE様物質を測定している13〜15)。単性緑内障ではPGsの値が高いという報告16)とそうでないという報告17)があり,まだはつきりしていない。aspirine18)を大量前投与しておくと,前房穿刺の際の血液−房水柵の破綻を防ぐことができる19)等の報告がある。以上の事を総合して,人間の眼でもPGsが生合成され遊出される事,またそのPGsによりある病態が惹起される事もほぼ間違いない事である。

印象記

World Congress on the Cornea 印象記

著者: 糸井素一 ,   百瀬隆行 ,   山口達夫 ,   金井淳 ,   中島章

ページ範囲:P.819 - P.825

 糸井 今日は,1976年4月28日から5月までワシントンD.C.で開かれたSecond World Congress onthe Corneaの印象を,皆さんとともにまとめてみたいと思います。この学会は,International Eye Fundationというものが主催しておりますが,このFoundationは1960年に設立され,1961年にInternational Eye Bankと合併いたしました。そして1965年に再びInternatio-nal Eye Foundationと名前を変えております。このFoundationは,開発途上国の眼科に関する教育に必要な一切の便宜を提供することを事業目標としており,医師だけではなく,paramedicalの人,あるいは,公衆衛生に携る人たちの教育等の手助けもしようとしております。World Congress on the Corncaは,角膜に関する一切のこと,すなわち,角膜の基礎的研究から,疾患の治療,あるいは,予防に至る一切のことに関して討議を行ない,角膜に関する知識を増し,医療を発展させようという目的で1964年にワシントンD.C.で第1回の会議が開かれ今回は第2回目にあたります。第1回,第2回ともDr.J.H.Kingが主催しており,今回は世界各国から大体300人前後の人達が参加しております。

談話室

「斜視」の動詞

著者: 弓削経一

ページ範囲:P.826 - P.827

 斜視という言葉を辞書でみると(1)眼筋の異常のため両眼の視線が発散または交叉して注視点に向かわないもの。やぶにらみ。邪視。(2)ながしめに見ることと出ている(広辞苑)。
 「ながしめに見ることが」斜視ならば「ながしめに見る」は「斜視する」となつてもよいとおもわれる。凝視は目をこらしてじつと見つめることとなつていて(広辞苑)「凝視する」という動詞は日常使われている。議論する,勉強する,戦争する,研究するなど,また世話する,夜遊びする,はてはぬるぬるする,はらはらするなど,例はいくらでもある。文法的な解釈を加えると生意気になるので例だけをあげるが,平和するとか,空気するとかいえない所からすると,「する」が加わつて動詞になるには,加わる言葉──連用修飾語といわれるらしい──,議論,勉強などに,何か,そうなるにふさわしい性質があるにちがいない。

臨床報告

Marin-Amat症候群とその筋電図所見

著者: 安部修助 ,   丸尾敏夫

ページ範囲:P.829 - P.832

緒 言
 顔面神経麻痺後に,下部表情筋の作用と同時に,不随意的に眼輪筋も収縮し,瞼裂が狭くなるという異常連合運動は,Marin-Amat症候群と呼ばれている。1918年Marin-Amatにより記述されて以来世界で数十の報告例がある。病因に関しては,以前顔面神経と三叉神経の異常連絡であるという説があつたが,現在は顔面神経核への抑制機構の障害または再生神経のmisdirectionという説が有力となつている。その際,表情筋と眼輪筋との間の異常連合であることの証明には筋電図検査が不可欠である。のみならず,表情筋の作用時に瞼裂が狭くなり,一見本症候群のようであるが,眼輪筋の収縮ではなく,眼瞼挙筋の弛緩により,瞼裂の狭小化のおこつている異常連合運動すなわちparadoxical levator inhibitionもあり,筋電図検査なしには本症候群であるとの確定診断はなしえない。しかしながら,著者らの検索したかぎりの本症候群についての報告例では,筋電図検査の行われているものは,まれであり,行われているものでも,表情筋と眼輪筋のものだけで眼瞼挙筋についても検査されているものはなく,完全なる確定診断とはいい難い。

網膜下液排除を行なわなかつた剥離手術眼の検討

著者: 安藤文隆 ,   佐竹成子 ,   加藤美代子 ,   市川宏

ページ範囲:P.833 - P.838

はじめに
 網膜剥離の手術に際しては,剥離がある程度以上存在し,また一定期間以上続いている症例では,一般には網膜下液の排除がなされて来た。この網膜下液を排除する際には,網膜下出血,脈絡膜出血,硝子体出血,網膜裂孔形成,硝子体脱出,網膜嵌頓,脈絡膜剥離などの合併症も多数報告されており,これら合併症の中でも,脈絡膜出血が最も扱いにくいものであるとして,出血させない様注意する必要性を強調している1)。われわれもまた,脈絡膜出血のために,術後完全復位しながら,あまりよい視力が得られなかった苦い経験ももっている2)
 Freemannら3)もこの脈絡膜出血の合併症をさけるため,transilluminationによりvortexveinの膨大部を見きわめて,その部をさけて穿刺を行う方法を勧めている。

農村における外眼部感染症の起炎菌について

著者: 藤田邦彦 ,   山口達夫

ページ範囲:P.841 - P.844

はじめに
 起炎菌の動態を知る事は,眼感染症の治療上,重要なことである。従来より都市における起炎菌については多くの報告があるが,農村地域におけるものは少ない。われわれは長野県佐久総合病院において約3年間(1972〜74年),急性結膜炎,涙嚢炎,麦粒腫の,3疾患について,おのおの起炎菌の検出,Disc法による抗生物質の感受性および点眼薬の疾患に対する効果について,調査を行なつたので報告する。

網膜静脈閉塞症に続発した裂孔原性網膜剥離の1例

著者: 難波彰一 ,   桧垣忠尚 ,   山田いほ子 ,   大沢英一 ,   松山道郎

ページ範囲:P.845 - P.849

緒 言
 網膜静脈閉塞症に裂孔原性網膜剥離を合併した報告は,内外の文献上極めて少なく,われわれの調べたかぎり10数例をみるにすぎない。今回,陳旧性網膜上耳側分枝静脈閉塞症が存在し,その閉塞静脈領域部に網膜裂孔が出現し,網膜剥離を発現した症例を経験したので,その大要を述べ,従来報告された文献的考察に併せて,本合併症の発生機序について検討した。

GROUP DISCUSSION

白内障(15回)

著者: 藤永豊

ページ範囲:P.851 - P.859

1.ヒト房水における遊離アミノ酸について
 ヒト房水を用いた遊離アミノ酸の研究はほとんど見当らないのが現状である。今回ヒト房水中に,いかなる遊離アミノ酸が検出,測定されるかを調べる目的で実験を行つた。
 実験には白内障(老人性,外傷性),緑内障の約40眼に対し,房水を採取し,Ion exchange single columchromatography〔日立KLA 5型〕を用いて,17種の遊離アミノ酸およびアンモニアについて測定を行つた。すべての検体に対し,検出されたのは必須アミノ酸中リジン,スレオニン,バリン,非必須アミノ酸中セリン,アラニンであつた。その他の12種の遊離アミノ酸は検出きれなかつたものと痕跡を認めるにすぎなかつたものとであつた。検出された遊離アミノ酸中,最も高濃度であつたものはスレオニン,次いでバリン,アラニン,リジン,セリンの順であつた。これらの実験成績と血清との関係,疾患別について検討を加え,考按した。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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