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連載 眼科図譜・235
網膜動脈閉塞症の発症をみた乳頭前動脈ループ形成症の1例
著者: 甲田尚也1 中西泰憲1
所属機関: 1信州大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.744 - P.745
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乳頭前血管ループ形成症はLiebreich (1871)以来多数の報告があるが,そのほとんどは偶然の機会に発見されたもので血管ループは網膜循環の立場からは特殊な意味をもたないと考えられている。しかしながら,現在までに本症で網膜動脈閉塞症の見られたものがBär(1901),Walker (1902)により2例報告されている。
今回の我々の症例は17歳の男性で,ある朝突然左眼下方視野欠損を自覚したが,当科を訪れるまでに2日間を経過していた。来院時矯正視力両眼共1.5,中間透光体透明であつたが,左眼視野に鼻下側四分の一半盲が認められ,眼底所見で乳頭面上の軽度に拡張した血管ループの存在と,中心動脈上方枝,耳側上方枝での閉塞性変化が認められた(図1)。螢光造影(図3,上段左より下段右へ,フルオ静注後12",13",14",15",16",28")で,左眼の血管ループは動脈性であり,閉塞された動脈枝はループの末梢に位置している事が観察された。閉塞血管の拡張を期待して,左側頸部神経節ブロックを3回(3日間)施行したが視野の改善が認められず,血管拡張剤の投与に切り換えた。発症後38日時では,視力,視野は不変であつたが,眼底所見では乳頭前血管ループは初診時に較べ明らかに狭小化して,ループ周囲の浮腫の消失,耳側上方部での動・静脈および網膜はほぼ正常であつた(図2)。
乳頭前血管ループ形成症はLiebreich (1871)以来多数の報告があるが,そのほとんどは偶然の機会に発見されたもので血管ループは網膜循環の立場からは特殊な意味をもたないと考えられている。しかしながら,現在までに本症で網膜動脈閉塞症の見られたものがBär(1901),Walker (1902)により2例報告されている。
今回の我々の症例は17歳の男性で,ある朝突然左眼下方視野欠損を自覚したが,当科を訪れるまでに2日間を経過していた。来院時矯正視力両眼共1.5,中間透光体透明であつたが,左眼視野に鼻下側四分の一半盲が認められ,眼底所見で乳頭面上の軽度に拡張した血管ループの存在と,中心動脈上方枝,耳側上方枝での閉塞性変化が認められた(図1)。螢光造影(図3,上段左より下段右へ,フルオ静注後12",13",14",15",16",28")で,左眼の血管ループは動脈性であり,閉塞された動脈枝はループの末梢に位置している事が観察された。閉塞血管の拡張を期待して,左側頸部神経節ブロックを3回(3日間)施行したが視野の改善が認められず,血管拡張剤の投与に切り換えた。発症後38日時では,視力,視野は不変であつたが,眼底所見では乳頭前血管ループは初診時に較べ明らかに狭小化して,ループ周囲の浮腫の消失,耳側上方部での動・静脈および網膜はほぼ正常であつた(図2)。
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