文献詳細
特集 第30回日本臨床眼科学会講演集 (その6)
学会原著
炭酸脱水酵素阻害剤によつて惹起された尿路結石症に対する予防について(予報)
著者: 武本征人1 木下勝博1 八竹直2 塚本尚3 清水芳樹3
所属機関: 1大阪大学医学部泌尿器科学教室 2近畿大学医学部泌尿器科学教室 3大阪大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.775 - P.780
文献概要
緑内障の治療に不可欠ともいえる炭酸脱水酵素阻害剤(Acetazolamide)の投与によつて尿路結石症を惹起することは,臨床的にも動物実験においても古くから知られた事実である1〜5)。
表1は1975年度に阪大眼科緑内障外来で管理した患者495名の治療内訳と,Acetazolamide(Diamox®以下DXと略す)を投与された患者における尿路結石症の発生頻度を示したものであるが,DX内服者265名中10名(3.8%)に尿路結石症を認めている。この数値にはDXが投与されている患者のすべてに尿検査,X線検査などによる精密検査が行なわれているわけではないので,無症状に経過しているものは含まれていない。実際の発生頻度はもつと高いものであると老えられる。DX投与による尿路結石症に対して泌尿器科医のとる立場,すなわち多量の水分摂取,疼痛に対する副交感神経遮断剤の使用,更にはDXの投与中止などは,ことごとく緑内障患者に不都合なことばかりであり,その対策に窮しているのが現状である。今回著者らは,DXによる尿路結石症の発生機序について検討し,DXにクエン酸塩を併用することにより,眼圧のコントロールのみならず尿路結石症の発生を完全に防止しえたのでここに報告する。
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