icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科31巻7号

1977年07月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・236

網膜芽細胞腫の前房内増殖

著者: 郡山昌太郎 ,   調枝寛治

ページ範囲:P.872 - P.873

〔解説〕
 網膜芽細細腫が前房内へ転位し増殖するのは稀であり,なかでも,前房内に小腫瘤を形成する例は,きわめて少ない。Velhagenによれば,Ulrich (1886),Hymer(1893)およびPascheff (1924)の報告があるという。最近では,私どもの他に報告例がないようである。
 私どもは,1962年1月から1973年12月までの12年間に広大眼科に入院し,加療された22例の網膜芽細胞腫のうち,前房内に転位し,真珠のような色で,卵形あるいはゴムマリ状の遊離嚢胞のような形をとつた症例を2例経験したので,その1例を供覧する。

総説

眼内barrier機構とその臨床的意義

著者: 塩瀬芳彦

ページ範囲:P.875 - P.887

緒 言
 生体内に各種barrierが存在する意義は血液または他のmediumから機能組織を保護するとともに,有用物質の選択透過,不用物質の排除などにより至適な生物環境を維持することにあると思われる。
 眼内barrier(blood-ocular barrier)としては血液−房水1〜3),血液−網膜1,2,4〜6),血液−視神経barrier7〜9)などが関心を集めているが,これらの多くはtracerを用いた形態学的研究が主体であり,これにより証明されるのはいわゆるstru-ctural barrierと考えられる。一方,生体における電解質やホルモン,薬物などの組織移行はそれぞれのbarrierで選択透過がなされるが,これはbarrierの機能的側面を表わしている。すなわちこれがphysiological barrierであり,その全貌は明らかではないが少なくともstructuralbarrierはもちろん,介在する細胞機能も含めた,より高次の"barrier complex1,2)"として理解されよう。

臨床報告

人眼網膜色素上皮活動におよぼす高張液静脈内注入の影響

著者: 河崎一夫 ,   柳田隆 ,   山本幸子 ,   米村大蔵

ページ範囲:P.889 - P.894

緒 言
 高張液の動脈内注入(以下では動注と略す)によつて,重篤な神経障害を併発することなく脳・血液関門は可逆的に解離し(サル)13),さらに網膜色素上皮の関門も弛緩するという(ウサギ10),サル9))。ERGのc波は高張液の静脈内注入(以下では静注と略す)で著明に増大する7,17〜20)。c波と眼球常存電位はともに主に網膜色素上皮に由来するといわれる。人眼常存電位の間接的指標となるEOGにおよぼす高張液静注の効果を検討したところ,高張液の臨床常用量によつてEOG振幅が明らかに変化し,この現象は二,三の眼疾患で欠如することが判明したので報告する。

Monochromatic Filterによる眼底疾患の分析(第1報)

著者: 富井純子

ページ範囲:P.895 - P.902

緒 言
 Ginestons1)の頃より,単色光による眼底所見の観察は多くの情報を提供するであろうとされていたが,1913年,Vogt2)により,初めて,その方法が実施された。その後,Francesch-ette & Müller(1930),Pavia(1931),Kleefeld(1935),Serr(1937),Ballentyne(1937)と報告が続いた。その結果は一定ではなく,臨床応用にには非実用的なものであつたが,眼底所見の把握に,新しい示唆を残した。単色光による眼底写真は,1934年,Kugelbergにより初めて発表されたが,当時,眼底カメラ,撮影手技,フイルムの感度,フイルターの特性等々,多くの問題があつた。
 その後,フイルターの開発,眼底撮影法の向上に伴い,Potts3),Behrendt & Duane4),Beh-rendt & Wilson5),小島ら6)による詳細な分析は当時,注目を浴びた。PottsはTelevision ca-meraによる観察を行ない,Behrendtらは主波長が431,477,504,549,577,606および640nm,透過率40%,半値幅がほぼ10nmの干渉フイルターを用い,小島らはKodak Wrattenfilter No.17をおのおの使用し,眼底撮影を行なつた。

上眼瞼に咬着したヤトマダニ(Ixodes ovatus Neumann)の1例

著者: 本多伝 ,   本多和子

ページ範囲:P.903 - P.905

緒 言
 わが国のマダニ類(Ixodideae)は浅沼(1965)によると7属見出されるといわれており,それらマダニ類は,すべて吸血のための宿主を必要としている。
 このように生活史の一環に必ず宿主を必要とするために,マダニ類の生活圏内に人間が立ち入つた場合は,その吸血のために,しばしば人が選ばれる例が報告されている。

代用硝子体としてのPVA橋かけ含水ゲルについて—白色家兎による実験

著者: 西岡啓介 ,   原嘉昭 ,   神谷貞義 ,   生野俊樹 ,   山内愛造 ,   松沢康夫

ページ範囲:P.907 - P.913

はじめに
 過去に検討されてきた代用硝子体の歴史は古く,文献的に残つているものは1893年Deutsch-mann1)が網膜剥離の治療に家兎および子牛の硝子体を人眼の代用硝子体として使用した事に始まる。これはWernicke2)の追試により結果も悪く,その後はほとんど行なわれなくなつた。それ以前には,しばしば硝子体混濁の吸引および自家房水の硝子体注入は行なわれていたようである。Deutschmann以後の興味ある文献を紹介するとGradenigoが硝子体を生理的食塩水で置換したのに端を発し,Elschnig3)が食塩水による硝子体置換手術法を発表した。それ以来好んでよく最近までこの方法が用いられている。Elschnigと同じ時代にOhm4)は空気を硝子体に注入する事を考え,Wood5)は網膜下液と生理的食塩水を硝子体に注入し,剥離の治療に用いた。髄液の使用はHegner6)が硝子体出血の患者に置換したのが最初である。わが国では,1910年河本7)が網膜硝子体出血で失明した眼に強膜を切開して0.6%の食塩水で洗浄を行なつている。1946年Cutler8)はアイバンクの出現により硝子体出血の患者に人屍体眼硝子体移殖を行ない3例中,2例に成功し,その後網膜剥離などに多くの追試がなされ,その有効性が認められている。だが細菌感染や保存などに欠点も多く,1960年代に入りStobbyらは動物実験にて凍結乾燥した硝子体を移殖に用いた。

緑内障の集団検診成績—第2報 Follow-up成績

著者: 諫山義正 ,   溝上国義 ,   林栄一 ,   今村秀夫 ,   小川捨雄 ,   五藤宏 ,   山中昭夫

ページ範囲:P.915 - P.921

緒 言
 緑内障,特に単性緑内障は無自覚,無症状の内に発病し,また進行する疾患である事は衆知の事実であり,この早期発見における集団検診の役割は大きく,価値あるものである。一方,高眼圧を示す者1),また乳頭陥凹の大きな者2〜4)が必ずしも視機能障害を来たすわけではなく,緑内障の発症については不明の点が多い。われわれは,1972年,新日鉄広畑製鉄所従業員中,40歳以上の男子1,128名に対して,眼圧測定および乳頭所見による集団検診を行い,0.8%の緑内障を検出した5)。以後毎年,冬期(1〜3月)に同様の方法で検診を行い,現在までに3,639名の検診を終了した。一次スクリーニングの陽性者に対して,種々の緑内障検査を行い,この内,視機能障害はみとめられないが,眼圧調整機能の変化が疑える群を,加療を行う事なく,最長4年にわたり厳重にfollow-upし,緑内障発病の機転および期間につき検討した。更に,一次スクリーニングで正常と判定された対象群についても,3年の後に再び,同様の検診を行い,緑内障の新発生について検討した。
 また前報5)において,緑内障集団検診を眼圧のみで行う事は危険であり,視野スクリーニングを行う事の重要性について述べたが,現在までに,前記の集団検診受診者中2,788名に対して,われわれの考按した簡易視野測定用紙5)による視野スクリーニングを終了した。

他眼に黄斑円孔を伴つた白色瞳孔の1例

著者: 古林晴臣 ,   岡本のぶ子 ,   可児一孝 ,   井街譲

ページ範囲:P.923 - P.926

緒 言
 著者らは,先天性十二指腸膜様狭窄を有し,この手術後真菌による尿路感染および髄膜炎を併発した例について,片眼の白色瞳孔と他眼に黄斑裂孔を認めた症例を経験した。これに対してopenskyのもとで水晶体全摘出および水晶体後面の白色塊切除摘出を行ない,病理組織学的検索を行なつた。

交感性眼炎の1例の電気生理学的検討

著者: 玉井嗣彦 ,   瀬戸川朝一 ,   松浦啓之 ,   藤永豊

ページ範囲:P.927 - P.932

緒 言
 交感性眼炎のERGならびにERPついては,いくつかの報告1〜9)があるが,経過を追つて観察した報告は稀である3,8,9)
 今回,著者らは,重症の1症例において,電気生理学的検討を加える機会を得たので,ここに報告する。

再発をくり返した悪性結膜メラノームの1例について

著者: 浜田幸子 ,   千原小夜子 ,   渡辺良子 ,   三根亨

ページ範囲:P.933 - P.936

緒 言
 外国では皮膚悪性メラノーム,結膜,ブドウ膜悪性メラノームの症例が多いため,メラノームに関する臨床的,実験的研究が多数報告され,螢光抗体法による研究も少なくない。本邦では眼科領域におけるメラノームの螢光抗体法による観察は少ないと思われるのでここに報告する。

同胞2名にみられたCongenital Retinoschisis

著者: 長谷部治之

ページ範囲:P.945 - P.950

緒 言
 Congenital Retinoschisis (以下C.R.と略す)は伴性劣性遺伝を示す網膜硝子体疾患であり,欧米では既に多数の報告がみられる。しかしわが国では比較的稀な疾患であり,近年網膜硝子体疾患への関心の高まりと共に,その報告数が増えてきているが,まだ日常診療において常に考慮されている疾患とはいい難いようである。またわが国で報告された多くは,安定期に入ったC.R.であり,種々の合併症に対して積極的に治療を加えたものは少ないようである.本症例は兄弟例であり,その特異な眼底所見と共に,それぞれが興味深い臨床経過を示しているので報告する。

カラー臨床報告

黄斑部低形成症の2家系

著者: 岡山良子 ,   豊福秀尚 ,   大蔵文子 ,   何千恵子

ページ範囲:P.959 - P.965

緒 言
 黄斑部の発生異常である黄斑部低形成症は,稀にみる疾患である。本症は小児に,弱視のため発見されることが多い。また小眼球症・脈絡膜および虹彩毛様体の欠損症・無虹彩症・視神経欠損症・網膜有髄神経線維などに合併して起ることが多いといわれている1)。最近私たちは上記合併症を伴わない黄斑部低形成症の2家系を経験した。その1家系は4代にわたる常染色体優性遺伝と思われ,他の1家系は同胞間3名に発症した家系であつた。常染色体優性遺伝を示した症例は現在までに報告がなく,本例がはじめてであると思われる。おのおのの家系の発端者を中心に両家系の臨床調査を行なつたので,施行した検査項目とそれに対する考察を加え報告する。

GROUP DISCUSSION

眼感染症

著者: 北野周作

ページ範囲:P.951 - P.957

1.眼感染症患者より分離したStaphylococcusaureusの薬剤感受性検査成績(1975年度)
 眼感染症の起炎菌として,Staphylococcus aureusは従来と同様現在でもなお検出頻度のもつともたかいものである。
 私どもはこのたび,1975年度における患者分離のStaph.aureusについて,各種抗生剤に対する感受性,耐性の出現頻度を検査したので,その成績を報告する。

私の経験

圧迫隅角検査新法

著者: 平野潤三

ページ範囲:P.967 - P.970

緒 言
 緑内障の診療に隅角検査が不可欠なことは,いうまでもない。しかし狭隅角眼では,虹彩根部にかくれて,その奥が望めない。この場合,さらに的確な情報を得て,以後の治療方針を決めるには圧迫隅角検査によらねばならない。つまり圧迫法もまた,不可欠な診断法である。
 これまでにもすでに,数種の圧迫隅角鏡が世に出ているが1,3,4),いずれも長短あつて,十分に意にそわない。そこで,新たに圧迫隅角鏡の設計を試みた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?