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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科31巻8号

1977年08月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・237

視力障害発作を伴つたFundus Polycythemicusの1例

著者: 玉井嗣彦 ,   市頭教治 ,   藤永豊

ページ範囲:P.988 - P.989

〔解説〕
 症例は,1975年5月19日に右眼の急激な視力障害を主訴として,某医より紹介され,入院精査の結果,血液学的(表1)に真性赤血球増加症1)(polycythemia vera,以下P.V.と略す)と診断された29歳の男子である。家族歴,既往歴には,特記すべきものはない。
 初診時眼所見:視力は,右=0.2(n.c.),左=0.6(1.0×−7.5D)であつた。視野検査において,左眼に著変はなかつたが,右眼に求心性周辺視野の狭窄と中心性相対暗点およびマリオットの盲点の2倍強の拡大が認められた。前眼部,中間透光体には異常がなかつた。

眼科動物園・1【新連載】

動物の視力(その1)

著者: 安部勝人

ページ範囲:P.1091 - P.1094

 私は獣医であり動物学者ではない。あたえられたテーマがあまりにも大きく私には荷が勝ちすぎている。
 都心の開業では牛馬とは全く縁がなく,時たま競馬場で馬の眼を見るくらいで,もつぱらペットといわれる,犬猫が主でその他小鳥,兎,猿,モルモットなどを見ることがあり,稀にワニ,カメ,金魚などもくる。眼科が好きな関係上眼科疾患がわりに多くもち込まれ,困ることは犬や猫などで,疼痛や恐怖のため患眼に全くさわらせず,家庭でも点眼できないことがある。最近特に悩まされるのは小鳥の眼で角膜外傷,角膜乾燥,白内障などがあり,対照動物があまりにも小さいのでほとほと手をやいている。

総説

眼科領域におけるICGの臨床的応用

著者: 所敬

ページ範囲:P.991 - P.998

はじめに
 Indocyanine Green (略称ICG)は,1957年Foxら1)により紹介された暗緑色の色素で,静脈に注射すると肝臓から胆汁中に排泄され,循環器からはすみやかに消失する。そこで肝臓,および循環機能検査用色素として内科,外科領域では広く用いられている。この色素の特長は,血中蛋白と急速に結合し光化学的に安定化され,その最大吸収波長は近赤外領域の805nmにあることである。
 光の波長と眼底各層からの反射についてのBe-hrendtら2)の研究によれば,長波長光は脈絡膜まで透過する。そこで,脈絡膜の循環動態を知るためには,長波長側に吸収のピークのある色素を血管内に注入すれば,その流れを観察することができることになる。したがつて,この目的のために1970年Kogureら3,4)は,ICGと赤外線フイルムを用いる赤外吸光眼底撮影法を開発した。さらに,最近ICGより螢光が出る事がわかり,Flo-werら5)により赤外螢光眼底撮影法が発表されて来ている。また,色素希釈法による眼内血流量の測定にも,ICGは新たに使用されはじめようとしている。このように,ICGが眼科領域で利用されはじめてからまだ10年にもならないが,この間種種の業績が発表されている。そこで,これらの知見より眼科領域におけるICG利用の現況と,その臨床的応用について述べる。

座談会

眼科臨床の将来と眼・光学

著者: 大島祐之 ,   大庭紀雄 ,   市川宏 ,   大頭仁 ,   糸井素一

ページ範囲:P.999 - P.1011

 市川(司会) 本日はお忙しいところありがとうございました。
 まず臨床眼科学の中での眼・光学の位置づけについてですが,眼・光学に関するペーパーが,もうひとつ親しみにくいということをときどき聞きます。

網膜(循環),他—(第1会場 第1席〜第10席) 第81回日本眼科学会総会印象記

著者: 松山秀一

ページ範囲:P.1013 - P.1038

 第81回日本眼科学会総会は去る4月22日から3日間,東京医大,松尾治亘教授のお世話により,厚生年金会館を舞台に開催された。好天に恵まれ,また危惧されていた交通麻痺も事前に回避されたことは幸いであつた。以下,編集部からの求めに応じ,第1日目,第1会場,午前の部(第1〜10席)の発表,討論を見聞しての印象を記す。出席者の数は必ずしも多くはなかつたが,新しい知見か報告され,活発な討論が展開された。
 第1席は霜鳥政光氏ら(千葉大)が開発されたリボフラビン螢光眼底撮影法についての研究で,今回は,光凝固を施した家兎網膜におけるリボフラビン(FADおよびFMN)螢光所見の経時的推移を観察したものであつた。これに対し編田氏(東大),武田氏(札医大),長滝氏(東大),尾羽沢教授(東海大)からそれぞれ,リボフラビン使用の理由,フルオレスチン(以下フルオと略記)との優劣,蛋白結合の程度,フルオとの毒性の差について質問があつた。フルオにもショックなど副作用があり,それに代るものとしてリボフラビンの螢光に着目したが,現在までのところ,フルオより優れた点を見出してはいないとの答であつた。また西田氏(愛知医大)からmacrophage, melanin, pigment epitheliumとの関係についての質問があつたが目下電顕下で検索中とのことであつた。

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.1011 - P.1011

 論文の後に引用文献を載せるが,その記載の仕方は,それぞれ雑誌によって書き方を投稿規定に決めてある。長い言葉を省略する為に従来は色々な省略の仕方があつたが,最近これを統一し,国際標準として各誌で用いられるようになつた。1970年に,American NationalStandards Committeeから出された「InternationalList of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が一般化して来た。我々もこの国際標準に則つて記載するようにすべきであろう。そのうち眼科に関係のありそうな言葉の例を揚げると次のようである。

臨床報告

難治性春季カタルの治療—Triamcinolone acetonide局所注射

著者: 望月学 ,   新家真 ,   太田陽一 ,   崎元卓 ,   谷島輝雄

ページ範囲:P.1039 - P.1046

緒 言
 春季カタルの病因は,主に眼局所における一種のアレルギー反応1〜3)と考えられており,組織学的所見4,5)および免疫学的所見6)もこれを支持している。したがって,ステロイド剤点眼1,7)および種々の抗アレルギー剤8〜10)は春季カタル治療の良い適応であり,その使用報告例が多数みられる。しかし,これらの治療に抗し,角膜障害を併発したり経過が遷延する難治性のものが,しばしば見られる。これらに対しては,ステロイド剤全身投与1)や結膜乳頭への外科的手段1,11)が用いられるが,効果が一時的であること,さらに副作用の点から長期間の治療に適さないなどの問題がある。
 ステロイド剤を用いる場合,局所組織内により高いステロイド濃度を得るには,局所注射が点眼および全身投与に比し優れている。この場合,一回の局所注射で組織内にステロイドが高濃度かつ長時間存在することか望ましく,難溶性のステロイド製剤12)はこの目的に沿うものである。

Tuberous Sclerosisの一家系について—本邦報告例の眼底所見の分析

著者: 杉田潤太郎 ,   平田国夫 ,   渡辺郁緒

ページ範囲:P.1047 - P.1051

緒言
 Tuberous sclerosisは,顔面の皮脂腺腫,癲癇発作,精神薄弱を主微候とするもので,Bour-neville (1880)がこのような症状を呈する患者の大脳皮質に,結節性硬化巣を見出し,結節性硬化症という独立した疾患として報告した。その後van der Hoeve1)が本症に眼底腫瘍を発見し,後に他の疾患をも含めphakornatosesなる概念で統一した2)
 今回著者らは典型的な本症の患者に網膜腫瘍を見出し,その母親にも同様の皮脂腺腫と網膜腫瘍を観察する機会を得たので報告する。

慢性関節リウマチ金療法による角膜金症

著者: 亀山和子 ,   内田幸男 ,   並木脩 ,   森崎直木

ページ範囲:P.1053 - P.1057

緒 言
 1927年にLandieによつて金療法が有効であると報告されて以来,欧米では約40年の歴史をもって慢性関節リウマチの主療法の一つになつている。本邦でも1960年頃より広く用いられ,慢性関節リウマチの治療に重要な役割を果たしている。しかし副作用のために中止をせざるをえない症例に遭遇する。副作用の代表的なものは,口内炎,皮膚炎,蛋白尿などがあげられるが,時には造血器への障害もあるといわれている。しかし重篤なものは幸いにして少ない。近年,副作用ではないが金療法によつて生ずる一つの変化として,角膜金症が話題にのぼつてきた。この角膜金症は古くは1935年頃より報告1)かあるが,稀なものとされてきた。本邦においては1972年の金子2)の報告を第1例として,Hashimoto3),藤田4)とつづいてかなりの頻度に発現するという報告がある,著者らも金療法中の患者45人を調べたので報告する。

漿液性中心性脈絡膜症における光凝固について—経験例と奏効機構

著者: 三木徳彦 ,   佐藤孝夫 ,   佐藤圭子 ,   三井敏子 ,   廣森達郎

ページ範囲:P.1059 - P.1066

緒 言
 漿液性中心性脈絡膜症(以下CSC)の治療法としての光凝固法は,すでに臨床報告により有効性が確認されているが1〜24,27),稀に重篤な合併症を伴うとされている4,5,13,14,27)
 一方,CSCは自然治癒傾向もあるため,光凝固法に消極的な報告もなされている25)。したがつて,光凝固法は非常に有効な方法であるが,適応と方法について十分な注意を払わないと,かえつて不幸な結果を招くことになる。

網膜色素変性症に合併した緑内障について

著者: 樋端みどり

ページ範囲:P.1075 - P.1082

緒 言
 網膜色素変性症に合併した緑内障については古くから多くの報告があるが,その多くは1例または数例の症例報告にとどまり,本態にまで言及した論文は少ない。また,両疾患の合併についても,それを単なる偶然によるとする説がある一方,網膜色素変性症には何らかの理由で緑内障を合併しやすく,その原因を両疾患の発生に関する遺伝子の近接に求める説等もあり,種々の推定がなされてきたが,結局明確な結論は出ていない。
 両疾患の合併に関する論文は最近10年間は内外ともに非常に少なかつたが,近年,網膜色素変性症の房水動態についての検討がなされ1),また網膜色素変性症の隅角につき,統計的観察が行なわれる2〜4)等,網膜色素変性症と緑内障との関係か再び注目されている。

光凝固によるOptic Pitの2治験例—とくに黄斑部剥離に対する早期効果について

著者: 横山実 ,   松永功 ,   宇治幸隆

ページ範囲:P.1083 - P.1089

緒 言
 視神経乳頭の先天異常であるOptic pitは,その約1/3の症例に黄斑部の剥離あるいは変性を伴い1〜3),視力,視野の障害を来しうることが知られている。黄斑部剥離の発生原因については未だ定説がないが,Sugar5)は硝子体液がpitを通じて黄斑部の網膜下へ侵入する経路を想定し,もしこの"channel"が網脈絡膜の癒着によつて閉塞すれば自然治癒もありうると考え,またそのような症例の報告も行なつている4)。それについては異論もあるが,もし人工的にそのような閉塞を発生させ,黄斑部剥離を消腿せしめうるならば,Sugarの仮説にとつて一つの有力な裏付けとなる。そして,本症の1例に,乳頭縁に沿う光凝固を適用したJack6)は,2カ月後に黄斑部の変化が改善し,視力も回復したことから,まさにSugarの見解と両立する事実であると報告した。その後,本症に対する光凝固有効例の報告7〜9)が相次ぎ,pitを通じての体液侵入説は確立されたかに思われたが,最近,Gass11)は自験例も含めて,一般に治療から剥離網膜の復位までに長期間を要するところから,自然治癒との判別が明確でないという疑義を提唱している。彼自身,髄液を含む体液侵入論10)の支持者の1人ではあるが,それが確立されるためには,光凝固後,数日ないし数週以内に網膜下液の消褪がみとめられねばならないと述べている。

GROUP DISCUSSION

小児眼科

著者: 湖崎克

ページ範囲:P.1095 - P.1099

1.輪部デルモイドの遠隔成績について
 小児の輪部デルモイドの治療として,腫瘍切除,表層角膜移植などの手術が行われることが多いが,術後,角膜乱視,偽翼状片の発生などにより,視力はあまりよくない事が知られている。著者らは,最近10年間の輪部デルモイド患者,約25名のうち記録不明者を除く約19名(非手術患者も含む)について,その遠隔成績(主として乱視の程度,視力,偽翼状片の発生など)を調べ,予後を検討してみた。その結果,比較的強い乱視と,高い偽状翼片の発生をみたが,これらの結果から手術方法,時期など予後の改善のために考按を加えたい。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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