文献詳細
臨床報告
光凝固によるOptic Pitの2治験例—とくに黄斑部剥離に対する早期効果について
著者: 横山実1 松永功1 宇治幸隆1
所属機関: 1三重大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.1083 - P.1089
文献概要
視神経乳頭の先天異常であるOptic pitは,その約1/3の症例に黄斑部の剥離あるいは変性を伴い1〜3),視力,視野の障害を来しうることが知られている。黄斑部剥離の発生原因については未だ定説がないが,Sugar5)は硝子体液がpitを通じて黄斑部の網膜下へ侵入する経路を想定し,もしこの"channel"が網脈絡膜の癒着によつて閉塞すれば自然治癒もありうると考え,またそのような症例の報告も行なつている4)。それについては異論もあるが,もし人工的にそのような閉塞を発生させ,黄斑部剥離を消腿せしめうるならば,Sugarの仮説にとつて一つの有力な裏付けとなる。そして,本症の1例に,乳頭縁に沿う光凝固を適用したJack6)は,2カ月後に黄斑部の変化が改善し,視力も回復したことから,まさにSugarの見解と両立する事実であると報告した。その後,本症に対する光凝固有効例の報告7〜9)が相次ぎ,pitを通じての体液侵入説は確立されたかに思われたが,最近,Gass11)は自験例も含めて,一般に治療から剥離網膜の復位までに長期間を要するところから,自然治癒との判別が明確でないという疑義を提唱している。彼自身,髄液を含む体液侵入論10)の支持者の1人ではあるが,それが確立されるためには,光凝固後,数日ないし数週以内に網膜下液の消褪がみとめられねばならないと述べている。
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