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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科31巻9号

1977年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・238

網膜色素変性症に漿液性中心性脈絡網膜症の合併した1例

著者: 霜鳥政光 ,   大塚裕

ページ範囲:P.1120 - P.1121

〔解説〕
 症例;46歳,男性。
 現病歴:約1カ月前から左眼がかすみ,視野の中心部で物が白つぽく見えた。夜盲の自覚はない。

眼科動物園・2

動物の視力(その2)

著者: 安部勝人

ページ範囲:P.1149 - P.1151

 動物の視力に重要な影響を及ぼすのは,視軸の発散と脈絡膜と網膜の構造である。
 脈絡膜の境界層は家畜(豚兎を除く)にはなくこの部分の血管板と毛細管板の間で乳頭より上方部位によく輝くTapetum Lucidumという一種の反射層がある。このタペタムは動物によりその組織が異なつている。馬,牛,羊など草食獣は線維性であり,犬,猫など肉食獣は細胞性で強い反射力をもつ。タペタムの作用は弱光が眼に入る時,タペタムで反射され視細胞を再度刺激することである。当然ながら,絶対暗室ではその作用は役立たない。タペタムのある部位では網膜の色素上皮層は色素を欠き,タペタムの作用をたすける。猫のタペタムは写真の黄色フィルターと同じような作用をしていて,コントラストをさらに強める働きをする。猫は弱光中でも注視した物体の輪郭がはつきりみえる。その反面,日中の強力な光線は猫にとつては異常にまぶしく,夜間に強力な光が急に眼に入るとタペタム反射が強いため,一時的に失明状態となる。夜間動物の眼に光をあてると青く,赤く,時にオレンジ色に輝いて見えるのはタペタムの色素によるものである。

総説

色覚の発生機序

著者: 御手洗玄洋

ページ範囲:P.1123 - P.1133

はじめに
 20年前であつたら色覚の発生機序を神経生理学に問うことなど何もなかつたであろう。
 当時ですら,色覚はまだ遠い心理現象であつた。しかし以後のわずかな間に数々の発見が相次いで,その問いがいまここに向けられるようになつたのは,同じ期問これにかかわりをもつた者にとつて大きな感慨である。もちろんこの発展は,色盲の研究,心理物理的研究,視物質の化学などことなつた多くの分野の研究から独立したものではない。ただこれらとの関連の上に解説することは到底筆者の能力の範囲でないので,ここではかかわつた範囲の神経生理学だけからの答案を書いて責をふさぐことにしたい。

招待講演

若年型黄斑変性

著者: J.FRANÇOIS

ページ範囲:P.1135 - P.1147

 種々の型の若年型黄斑変性は侵される初発部位によつて次のごとく分類することができる。
(1)神経上皮層:Stargardt病,優性遺伝型若年型変性,中心性ないし傍中心性色素性網膜症,進行性錐体変性,のう状黄斑浮腫

臨床報告

黄斑部血管走行異常の2例

著者: 浅原典郎 ,   高野真

ページ範囲:P.1153 - P.1159

緒 言
 黄斑部血管走行異常については,中島による本邦最初の報告例1)も含めて,現在まで数例の報告があるのみであり,しかもその多くは螢光眼底撮影法の出現以前のもので,網脈絡膜循環と血管走行異常との関係について,詳細に観察されていない。
 今回われわれの経験した2例も含めて,螢光眼底撮影が施行された,前川の2例2),Moschand-reouの1例3),計5例について検討し,比較的共通した興味ある知見を得たので報告する。

Smooth Pursuit Eye Movementの定量的測定法

著者: 山崎篤巳

ページ範囲:P.1161 - P.1164

緒 言
 神経眼科領域において,指標を追跡する眼球運動がどのようなパターンで動いているかによつて,中枢神経系疾病の障害部位を診断しようとする試みがされてきているが,障害程度や治療効果を知るためには眼球運動の定量的診断法が重要である。しかし,従来,指標として等速でない振子様刺激を用いて正弦波状の滑動性眼球運動(smo-oth pursuit eye movement)を記録し,その滑らかな正弦波に衝動性眼球運動(saccadic eye mo-vement)が混入して,階段波形(staircase patte-rn)になるかどうかをみる定性的診断法が行われてきた。
 最近の神経生理学の進歩によつて,滑動性眼球運動(smooth pursuit),衝動性眼球運動(saccadic)および前庭動眼反射(vcstibular ocular reflex)における神経機構については図1のごとき仮説が有力視されている1)。滑動性眼球運動は指標速度に眼球運動速度を一致させることによつて,映像を網膜中心窩に安定させるように働く眼球運動である。猿の後頭葉視覚領野の単一ニューロンからの神経活動パターンは映像が網膜上を動く比率に応じて発火頻度変調がおこることを示している2)

先天性眼窩奇形腫の1例

著者: 野崎尚志 ,   粟屋忍 ,   杉田源太郎 ,   杉田虔一郎 ,   杉藤徹志

ページ範囲:P.1165 - P.1169

緒 言
 先天性眼窩奇形腫は生下時より著明な片眼の眼球突出を主徴としてその成長は速く,早期手術を必要とする稀な疾患である。Streiffら1)によると1863年にHolmesが報告して以来文献的に54例が記録されている。性別では女性(25例)が男性(12例)よりも多く,17例に性別の記載がないとしている。また左右差では左眼窩(26例),右眼窩(22例)となつており6例は左右が不明であるという。
 わが国では現在までに水尾,桶渡2)(男性,左眼窩),河内3)(性別不明,左眼窩),越智4)(男性,左眼窩),中山5)(女性,右眼窩),松田,杉本6)(女性,左眼窩),谷,角田7)(女性,右眼窩),田坂,桐村8)(女性,左眼窩),日谷9)(男性,右眼窩),福味,兼子,河瀬10)(女性,右眼窩)等の報告がある。

Rodenstock社製視機能検査器(Rodatest)で測定できる色覚検査—Test Disc 173

著者: 深見嘉一郎

ページ範囲:P.1171 - P.1175

はじめに
 色覚異常に対する検査は従来Stilling表,石原表などによつて,ある集団から異常者を,screen-ingし,またはある個人が異常か正常かを検査し,異常または異常の疑いのある者について定量的検査表,D−15,anomaloscope,lantern testなどによつて検査して類型や程度を決定している。その場合定量的検査表といわれる程度を決定する検査表は簡便ではあるが,各表によつて程度の基準が異なる1)という根本的難点がある。そこでD−15とlantcrn testによつて程度区分をする方式2)が考え出されている。他方医学的な意味において厳密な類型分類は臨床的にはanomaloscopeによる以外に方法はない。しかし,この検査器は扱い方がむずかしく,よく習熟した者でない限り信頼に価する結果が出せないという困難さがある。
 最近Rodenstock社の視機能検査器(Roda-test)で測定しうるTest Disc 173という色覚検査器が発売された。その目的は簡便に検査ができ,その成績が安定であり,しかも長期間の使用に耐えることである,という。今回この検査器を試用し好成績を得たので,その結果を報告し,この検査器の存在価値について考察を加える。

交感性眼炎の1例

著者: 湯口修次 ,   白井正一郎 ,   竹内廣 ,   堀井惟伸

ページ範囲:P.1177 - P.1181

緒 言
 交感性眼炎は,Duke-Elder1)によれば,1830年Mackenzieによつて命名されたと記載されており,それ以来多くの報告があるが,最近は比較的まれな疾患となつてきた。今回著者らは,ステロイド治療に抵抗し,起交感眼摘出後も被交感眼の炎症の遷延した交感性眼炎の1例に遭遇し,起交感眼摘出の時期,ステロイド量についての1知見を得たので報告する。

流行性耳下腺炎に伴う角結膜炎

著者: 嶋田孝吉

ページ範囲:P.1193 - P.1196

緒 言
 流行性耳下腺炎はウイルス(Paramyxovirus)による全身性感染症で,小児によくみられ,成人が罹患すると重篤な合併症を起こす。ウィルスは,耳下腺腫脹の起こる約1週間前より,10日後頃まで唾液などの分泌液中に認められる。したがつて,口,鼻,眼等の分泌物の飛沫などにより伝染する。潜伏期は約18日。ウイルスは感染後血中に出て,全身のあらゆる臓器を犯す,耳下腺などの唾液腺に炎症が必発する。その他の合併症は割り合いに少なく,その発生頻度順に列挙すると,睾丸炎,卵巣炎,膵臓炎,乳腺炎,甲状腺炎,前立腺炎,バルトリン腺炎,副睾丸炎,脳神経炎,髄膜炎,脳膜炎などがある1〜3)
 眼合併症は,涙腺炎2,4),結膜炎3),強膜炎3,6),角膜炎2,6〜11,14,16),ブドウ膜炎2,12,13),視神経炎2),網膜炎で2),極く稀には眼筋マヒも起こす1)

特異な経過をたどつた転移性脈絡膜腫瘍の1例

著者: 田中稔 ,   沖坂重邦 ,   中島章

ページ範囲:P.1199 - P.1203

緒 言
 脈絡膜を初めとして眼内の転移性腫瘍は日常診療において遭遇する機会は決して多くない。加えて全身的に腫瘍が発見されている時は転移を疑うことは比較的容易であるが,網膜剥離のごとき所見のみの場合は診断が難しい。
 今回,われわれは網膜剥離と思われた症例に転移性脈絡膜腫瘍を認め,不幸な転帰をとった症例を経験したので報告する。本症例は最後まで転移性の眼内腫瘍があることが診断できず,いわゆる誤診例であるがその臨床経過および病理所見を報告し,反省の具に供したい。

Clinical Conference

眼窩下縁の腫瘤から診断されたWegener肉芽腫の症例

著者: 安間哲史

ページ範囲:P.1183 - P.1188

 安藤(講師) それではケース・カンファレンスを始めます。まず最初に症例の概要を安間君から話して下さい。
 安間(大学院) 患者は59歳の男性。1976年4月28日,diplopiaおよび,右眼窩下縁内側に固いtumorがふれることで受診しました。また,以前より右の内眼角部の圧痛,結膜の充血を訴えています。初診時,現在ドイツへ出張,不在ですが粟屋先生(助教授)の診察で,右下内転に制限があり右眼窩腫瘍の診断をうけました。初診時,視野は正常,両眼とも結膜が怒張,充血していましたが角膜,中間透光体,眼底に異常なく,眼球突出はほとんど認められませんでしたが,右眼窩の下縁に固い腫瘤を触れました(図1)。

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.1203 - P.1203

 論文の後に引用文献を載せるが,その記載の仕方は,それぞれ雑誌によつて書き方を投稿規定に決めてある。長い言葉を省略する為に従来は色々な省略の仕方があつたが,最近これを統一し,国際標準として各誌で用いられるようになつた。1970年に,American NationalStandards Committeeから出された「InternationalList of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が一般化して来た。我々もこの国際標準に則つて記載するようにすべきであろう。そのうち眼科に関係のありそうな言葉の例を揚げると次のようである。

銀海余滴

眼底写真のビュワーについて

著者: 三国政吉

ページ範囲:P.1205 - P.1207

 最近必要あつて眼底写真のビュワーについてまとめてみたので以下にその要点を述べてみたいとおもう。これによつて眼底写真の観察方法が多少とも系統だてられる一助ともなるならば大変幸せである。

国際眼科学会に向けて

第23回国際眼科学会の概要—本誌編集委員による座談会

著者: 三島済一 ,   市川宏 ,   塚原勇 ,   初田博司

ページ範囲:P.1209 - P.1213

 初田(司会) 第23回国際眼科学会,いよいよ来年の5月ということになりまして,だんだん近づいてまいりました。この国際眼科学会について,今日は,私は読者の代表として,座談会の話を進めて行けというご命令で,司会という役を引き受けさせていただきました。
 早速でございますけれども,私ども一般読者が,今これについて情報をどこから手に入れているかといいますと,「日眼」誌のブルーページに,逐次いろんな相談,こう決まつたというようなことが書いてございますのと,それから「日本の眼科」誌上に,話がここまで進んでいるとかいうようなことが,ちよつと出ております。だいたいそういうことで概括はつかめておるつもりですけれども,まだどうも,国際眼科学会全体についての概要ですな,どんな具合にしてこの話が出てきたのかとか,どういう人たちが来るのかとか,そこでどんな話が出てくるのかとか,話が起こつてから今準備がどこまでできているのかとか,これからどういうようなふうにこれが進んでいくのか,そういうようなことがまだはつきりつかめていない点もございます。で今日は,編集会議の席を借りまして,ちようど編集委員の先生方,それぞれ重要な役に就いて,組織委員会のほうで活躍でいらつしやいますので,このぶち割つた話を,座談的にいろいろお話しいただけたらと思います。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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