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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科32巻1号

1978年01月発行

雑誌目次

特集 第31回日本臨床眼科学会講演集 (その1) 学会原著

開放隅角緑内障の視機能に関する研究—感度−持続時間曲線について

著者: 環龍太郎

ページ範囲:P.17 - P.22

緒 言
 緑内障の視機能障害に関して,著者らはさきに開放隅角緑内障の網膜中心窩部位におけるスペクトル感度を測定し,とくに短波長領域,すなわちいわゆるblue componentに感度低下を認めることを報告した。今回著者は緑内障による視機能障害のメカニズムを知る目的で,北原1,2)がさきに発表したTübinger perimeterの反射面に種々の波長の光を投影する装置を使用し,前回よりも強い順応光を用いた選択的順応法により,臨床的に開放隅角緑内障の網膜中心窩における3種のcomponentを分離,測定し,blue componentの感度低下を確認した。さらに視機能障害解明の一手段として,時間的寄せ集め機能を示す感度−持続時間曲線を求め,知見を得たので報告する。

末期緑内障による視覚障害者の眼圧管理の意義

著者: 山崎康宏

ページ範囲:P.23 - P.37

緒 言
 末期緑内障を持つ視覚障害者(児)にはいくつかの医学的,社会的の問題がある。
 第一に,視覚障害者がすでに医療と全く断絶していることである。たとえば老人性白内障の場合は手術という医療によつて,合併症がない限り視力予後が良いので患者は医療に大きな期待と信頼を持つている。しかし,重度の視覚障害者の場合は,発症より視覚障害を残しての症状固定にいたるまで,実に多くの医療行為,すなわち多くの検査,薬物療法,手術などを繰り返し受けており,その結果,不良な予後となつたため,医師および医療への不信,諦念を持つにいたつているものが大部分である。

緑内障視野の進行形式

著者: 湖崎弘 ,   中谷一 ,   塚本尚 ,   清水芳樹 ,   木下茂

ページ範囲:P.39 - P.49

緒 言
 緑内障視野の特徴として,Bjerrum領域の点状小暗点,弓形暗点,nasal step,固視部視野の末期までの残存,周辺島状視野の残存がよく知られているが,それらがどのような過程をたどつて進行するかは明確ではない。
 われわれは多くの症例について検討の結果,今までに,視野による慢性原発緑内障の病期分類を確立し(1972,1975),それぞれの病期について視野の異常部位の頻度分布を調べ(1975,1976),更に各病期の視野異常が幾つのパターンに分類されるかを検討し(1977),それぞれ発表した。

緑内障病期と視神経乳頭—Ⅰ.視神経乳頭CupとPallorについて

著者: 塩瀬芳彦 ,   大見吉洋 ,   川瀬芳克 ,   伊藤照子 ,   天野みゆき

ページ範囲:P.51 - P.58

緒 言
 緑内障における視神経乳頭変化の定量的表現法として,現在臨床的にもつとも広く使われている方法はC/D比(cup/disc水平直径比)1)であるが,この評価法はその定義も含め多くの問題点がある。
 最近Schwartz2)は多数の双生児を対象にC/D比を精密に計測し,この結果を他の著名な学者(Snydacker3), Armaly1), Becker4), Pickard5),Tomlinson6))の統計と比較検討をしているが7),同じ正常眼でありながらそれぞれに全く異なつた分布様式であることを指摘し,これはsample側の質的条件の差異のみでは説明しうるものではなく,判定法の差による検者側の要因であることを明らかにした。

若年性網膜剥離

著者: 箕田健生 ,   金上貞夫 ,   竹内忍 ,   加藤秋成 ,   河上勝美

ページ範囲:P.59 - P.67

緒 言
 若年性網膜剥離は成人性,老人性の網膜剥離に比較して,原因・臨床症状・裂孔の形態・手術予後等の点で異なつた特徴を有することは,従来より多くの報告で明らかにされている1〜4)。しかし,これらの網膜剥離の周辺部眼底を螢光眼底血管造影法ならびに細隙灯顕微鏡検査法によつて詳細に観察した研究はほとんど無い。われわれは過去3年間に経験した裂孔原性網膜剥離366例における周辺部眼底を螢光造影法,細隙灯検査法で観察した結果,瘢痕性未熟児網膜症の網膜剥離と原発性若年性網膜剥離において特徴ある周辺部網膜血管異常を認めたので,ここに報告し,その意義に関して考察を行うことにする。

強度遠視を伴つた小眼球症に合併した高度な網脈絡膜剥離

著者: 浅原典郎

ページ範囲:P.69 - P.80

緒 言
 1963年Schepens1)は特異な眼症状を呈した無裂孔性網膜剥離,17例30眼を報告し,新しい疾患概念として,uveal effusionを提唱した。更に,1975年Brockhurst2)は,5例の小眼球に合併した続発性網脈絡膜剥離の症例を"Nanophthalmoswith uveal effusion"として報告し,小眼球ととuveal effusionの関連性に注目している。
 近年,Brockhurstのこの報告に引き続き,本邦でも,弓削3),別所4),倉知5),岡田6),当麻ら7)によつて,一連の詳細な報告がなされているが,本疾患には依然として不明な点が多く,その病態,病因についても,いまだ十分解明されていない。今回著者は,同様な症例において,手術を施行し,その際得られた組織を組織学的に観察すると同時に,その術前,術後を通じて得られた螢光造影所見と比較検討することにより,本症例の病態について,若干の知見を得たので報告する。

網膜剥離手術による眼球の容積変化と形態変化—その1 強膜短縮術について

著者: 柳沢仍子 ,   清水昊幸

ページ範囲:P.81 - P.86

緒 言
 強膜短縮術を眼球の半周以下の範囲に行うと強膜が短くなり眼球容積も縮小する割には術前術後の屈折の差が少ないことが臨床上経験される。手術時被手術眼を詳細に観察すると強膜短縮術による変化には,眼軸の短縮もなくはないがそれ以上に眼球壁の一部が眼球内に陥入することや,手術部周辺で眼球壁が球面から平面に近く形態変化することが重要な要素であるように思われる。すなわち,強膜短縮術による眼球容積変化と形態変化は単に短縮幅に見合う眼軸の縮小として計算できるものでない。しかし手術によつて生ずる眼球容積変化と形態変化を正確に知つておくことは前述の臨床的観察を定量的に裏づけ,同時に強膜短縮の効果と適応を理論づけるために是非とも必要なことである。
 そこで著者らは(1)強膜短縮術による眼球の容積変化,(2)同手術による眼球の形態変化,(3)実際に同手術を受けた症例の屈折変化の3点について,人眼ならびに豚眼を用いた実験と自験症例の屈折測定結果をもとに比較検討し臨床的に有用と思われる結果を得たのでここに報告する。

網膜嚢状変性の研究—その1:鋸状縁部網膜嚢胞の微細構造についての一考察

著者: 西田祥蔵

ページ範囲:P.91 - P.101

緒 言
 周辺部〜鋸状縁部網膜に好発する嚢状変性1〜3)は網膜剥離や網膜分離症の発生に深い関係を持つ網膜変化として重要視されている。しかしながら,その発生機転については種々の説明がなされているが,未だ明確な結論を得るに至つていない。従来の報告の多くは光学顕微鏡的観察に基づく研究で,細胞・組織の微細な変化や,観察された細胞の鑑別は,電子顕微鏡法による神経細胞学が大きく発展した今日,十分なものとは考えられず,電子顕微鏡的観察による形態学的情報が加えられなければならない。
 本研究の目的は成人眼の鋸状縁部網膜を電子顕微鏡で観察して得られた嚢状変性の微細構造について考察を試みることである。

トラベクレクトミーを併用した白内障手術の経験

著者: 黒田純一 ,   高槻玲子 ,   吉村利規 ,   愛川和代 ,   上野山謙四郎 ,   上野山典子

ページ範囲:P.103 - P.108

緒 言
 トラベクレクトミーはCairns1)やWatson2)らによつて始められ,今日ではRidgway3),Wat-son4),望月5)らによつて長期観察の報告も行われている。そして近年,緑内障を伴う白内障に対しトラベクレクトミーを併用した白内障手術も行なわれている6)が,本邦には詳細な報告はまだ無い。われわれは今回このトラベクレクトミーを併用した白内障手術を行い,その術後成績を検討する機会を得たので報告する。

Gifu lens Ⅱ(Iridocapsular lens)と嚢内摘出術

著者: 杉谷幸彦 ,   鈴木一成 ,   鬼頭錬次郎 ,   高橋捷允 ,   早野三郎

ページ範囲:P.109 - P.114

緒 言
 数年来われわれはわが国での人工水晶体の製品開発を試み,動物実験により臨床応用の可能性を確かめ1),これに基づいて作製したGifu lens Ⅰを用いた症例の臨床成績は満足すべきものであつた2)
 その後この人工水晶体に改良を加えIridocap-sular lensではあるが,白内障の嚢外摘出術のみでなく,嚢内摘出術にも組み合せて利用できるGifu lens Ⅱを開発したのでここにその臨床成績を報告する。

白内障手術中におこる硝子体脱出の予防・救済法

著者: 平井健一

ページ範囲:P.115 - P.118

緒 言
 白内障の手術中におこる硝子体脱出を予防し,またはこれを救済する方法については多数の報告がある。従来一般に行なわれている防止対策は,十分に瞬目・球後麻酔を効かせる,眼球マッサージをする,MannitolやDiamoxなどを投与する,などの方法で眼圧・硝子体圧をコントロールすること,またはFlieringa輪を使つて眼内圧の上昇を防ぐことなどであり,救済対策としてはanterior vitrectomyがある。
 三井は1966年に,硝子体脱出は手術前または手術中に予測できることが多いことを述べ,こういう場合には大きな周辺虹彩切除孔をつくつて,そこから水晶体を摘出すれば,硝子体脱出をかなり防げると共に,たとえ硝子体が周辺虹彩切除孔から脱出しても,良い視力と,円形の瞳孔とを保つことができる事を発表した1)

鉄錆症による白内障の電子顕微鏡的観察

著者: 浜井保名 ,   高橋茂樹 ,   柳田泰 ,   真田知彰 ,   武田和夫

ページ範囲:P.119 - P.127

緒 言
 眼内異物の90%前後は鉄片によるものであり,長く鉄片が眼内にとどまると大部分の例が鉄錆症を発症するといわれている。この変化が鉄に起因するものであり,siderosisという語を用いて報告したのは1890年のBunge1)が最初である。以来,眼内各組織のsiderosisの病理について光学顕微鏡的レベルでの報告は多くを数えている1〜3)。そのうちでも特に水晶体の変化は著明でrust stops,siderotic cataractなどが特徴的である。しかし電子顕微鏡による所見や微量分析および組織学的変化についての検討はほとんど行われていない。
 今回,約2年前に異物が眼に当つた既往があり,X線検査では異物は不明であつたが,その後,白内障を発症した症例,および鉄片が飛入したが摘出を拒んでいるうちに白内障を併発した症例について水晶体摘出術を施行,その水晶体組織の電顕的微量分析および組織学的検索を行つたので報告する。

硝子体手術に関する臨床的研究(その3)—Eales病に対する手術成績

著者: 松井瑞夫 ,   田代忠正 ,   佐藤節

ページ範囲:P.129 - P.134

緒 言
 前報において,著者らは重症糖尿病性網膜症に対するpars plana vitrectomyの手術成績について報告したが,その手術成績はきわめて不良であり,視力の向上が得られる症例は30%以下であつた。今回は,Eales病による硝子体病変に対しpars plana vitrectomyを行つた結果を報告する。

中心性滲出性網脈膜炎(Rieger)と黄斑部血管新生

著者: 丸山明信

ページ範囲:P.137 - P.149

緒 言
 眼底病変のうち,黄斑部に起る浮腫・出血・浸潤・瘢痕形成などは,直接視機能に影響を及ぼすことにより重大な問題であるが,これら黄斑部病変の発症機序については十分に解明されていない。
 最近,いくつかの黄斑部疾患に脈絡膜由来の血管新生が証明され注目をあびている。黄斑に浮腫,網膜下浸潤,出血を伴つて発症するRieger型中心性滲出性網脈絡膜炎は,増田型中心性網膜炎とは異なつた予後と経過を示す疾患であり,これに遭遇することは稀ではない。

連載 眼科図譜・242

水晶体後嚢損傷による外傷性白内障

著者: 内野允 ,   清水昊幸 ,   金上貞夫

ページ範囲:P.6 - P.7

〔解説〕
 眼球に鈍的な外傷を受けて,その外傷のために水晶体後嚢が損傷され,白内障をおこした症例を2例経験した。
 症例1:10歳の男子。1975年11月17日初診。1ヵ月前に直径約5cm大の粘上の固まりを至近距離から投げられたのが左眼に当たる。同年4月の学校健診で1.2あつた裸眼視力が受傷後急激に低下した。初診時視力は10cm指数弁で矯正不能であつた。前眼部所見は図1のように角膜・強膜・結膜には異常を認めない。水晶体は全体に白内障をおこしていて,その中心部は混濁がやや薄くなつていた。細隙灯検査では図2のように胎生核と思われる部分は中空になつていて,透明に見える。更に水晶体の後方かつ下方に白い固まりがあり,これは硝子体中に飛び出した水晶体の核である。Cloquet Canalに入つていたことが,後に手術中に確認された。手術は全身麻酔下に角膜輪部から佐藤氏刀を入れて,水晶体前嚢を十分に切裂し,次にこの創孔から涙嚢洗浄針で人工房水を注入後水晶体実質を吸引する操作を繰返し行つた(詳細は本文171頁)。硝子体内に脱出していた核も吸引され,ほぼ全部の水晶体実質を吸引し終えた。現在はコンタクトレンズ装用で1.0の視力を得ている。

眼科臨床レントゲン診断学・1【新連載】

撮影法(その1):後→前方向撮影

著者: 戸塚清

ページ範囲:P.150 - P.151

はじめに
 従来から眼科ではレントゲン診断は余り重視されていない。その理由は二つあると思う。一つは,眼科ではX線によらないで,生体に起る病変の諸相を,直接肉眼で,または光学器械で良く覗い知りうること,二つは,陰影複雑な眼窩骨壁等に囲まれているために,C.T.等の場合を除いては,眼窩内容をなす諸組織が総てほぼ均一の影像しか与えないことである。
 しかし眼科においてもレントゲン診断は必要であり,1)外傷で透光体の何れかの部分に混濁,あるいは出血等が起つたために眼球内部を覗きえぬような際に,そこに異物の侵入,留止を確めたい場含,2)種々の眼疾患脳疾患,あるいは外傷等の際に,眼窩壁,視神経管,あるいは頭蓋内の変化の有無を確めたい場合,3)涙道の変化を確めたい場合,4) X線写真を多数統計して人類学的統測を行う場合等は特に重要である。

眼科動物園・6

モグラの眼と視中枢

著者: 三島済一

ページ範囲:P.155 - P.157

はじめに
 昭和21年,終戦直後,医学部の学生であつた私は,小川鼎三教授の脳解剖に関する講義に非常に強い感銘を受けた。理路整然たる講義の中に脳の比較解剖の話があり,エディンゲル・ウエストファール核について言及された。その話の中に,現東大脳研究所・草間敏夫教授が学生時代に,この核について比較解剖研究を行ない,従来の定説,すなわち,「同核が動眼神経核の副核で,眼内平滑筋を支配する中枢である」という説に疑義を投げかける重要な知見を得られた1)という話があつた。その根拠は,眼の退化しているアズマモグラの中枢にエディンゲル・ウエストファール核(EW核)が立派に存在するということである。私は,この話に非常に刺激されて,その後の4年間を,小川教授,草間教授の指導のもとに,脳研究所で,視蓋前域の比較解剖学的研究をすることになつた2)。その当時から,モグラの脳は,複雑な中脳における視中枢と,そうでないものとの鑑別にとつて,重要な材料であるとされており,自然,モゲラの眼も,機会があれば見たいと考えていた。たまたま,一匹のモグラを得て,これを見る機会があつた。随分,古いことであるので,詳細な文献や細かい所見は,科学的に記載することはできないが,当時の写真を供覧して,思い出話のような形でこれを紹介したい。

螢光読影シリーズ・1【新連載】

網膜色素線条と黄斑変性

著者: 横地圭一

ページ範囲:P.158 - P.160

 T.H.まず症例の説明をします。49歳の男子(S.H.52−5436)で生来健康でしたがひと月半前から新聞の字が曲つてみえ,ひと月前に起床時全体がクシャクシャ見えた,と申しています。実は15年前に今回の左眼と同じような出来ごとがあり,視力障害がそれ以来残つています。ひと月半前の変視症出現以来中心性網膜炎の疑いということでザルブロなどの治療を受けていますが,今回紹介されて当科へまいりました。
 右眼視力0.03,左眼視力0.07でいずれも矯正不能です。眼圧は右左それぞれ15と12mmHg,前眼部,透光体に異常ありません。

総説

Steroid白内障の成因に関する生化学的研究

著者: 小野繁

ページ範囲:P.9 - P.16

緒 言
 Steroid白内障は,steroidの長期経口投与時に水晶体の後嚢下部に限局して初発する混濁であり,steroidの副作用の代表的なものの一つとして知られている。本症の発現に重要な役割をはたしているとみなされるsteroidの不活化機構としてのsteroid結合蛋白(われわれはcortisol-bind-ing-crystallin, C-B-Cと呼称した1,2)。)の特性ならびにglucuronideとsulphate抱合の役割については,さきに本誌において総説した3)
 われわれが注目した点はsteroid白内障の発現に重要視される結合蛋白の存在ならびに抱合の二つの局所的要素は下垂体ならびに副腎摘出,肝機能障害などの全身的な種々の因子によつて支配されることであつた4)。すなわち,水晶体代謝に対する下垂体−副腎−肝臓系の影響が大でありsteroid白内障の成因を考慮する際にこの系の異常は特に重要視すべきであり,本症は決してMorbus sui generisでないことを指摘したのである。本総説においてその後の一連の研究によつて得られた二,三の興味ある成績について紹介してみたい。

国際眼科学会に向けて

メインレポーターの横顔—Ocular Immunology

著者: 杉浦清治

ページ範囲:P.152 - P.153

 第23回国際眼科学会の主題の一つOcular Im-munologyに出演するメインレポーターはA.M.Silverstein, W.Böke, R.Witmer, R.Campinchiの各教授と,A.C.Martenet博士の5氏である。
 Silversteinはただ1人Ph.D.で,本学会の直前にサンフランシスコで開かれる第2回Immu-nology and Immunopathology of the Eyeシンポジウムの会長である。

臨床報告

隔日性内斜視の6例

著者: 粟屋忍 ,   菅原美雪 ,   中尾美由紀 ,   原田景子

ページ範囲:P.161 - P.166

緒 言
 隔日性内斜視は,その名の様にかなり正確に1日おきに内斜視と正位をくり返すもので,比較的稀であるが,本邦では三国1),久保田ら7),その他数人2〜6)の報告があり,また外国ではCostenba-dcrら8),Friendlyら12),その他9〜11)の報告がある。その本態についてはまだ不明な点が多い。通常幼児期に始まり,この周期が数カ月から数年続いて,恒常性内斜視へと移行する場合が多いとされている。またこの疾患は,周期性が強いことや,斜視のない日には交代遮閉試験などでもほとんど偏位をひき出すことができないという点で,他の間歇性内斜視とは性質を異にするものである。この独特な周期性に対する機序はまだ明らかになつていないが,隔日性内斜視の患者は彼らの基本的なbiologic rhythmに何らかの障害をもつている可能性もあると考えられている。
 最近5年間にわれわれは女性6例の隔日性内斜視を経験し,検討を加えたので報告する。

急性緑内障症状で発症した原田病

著者: 白土城照

ページ範囲:P.167 - P.170

緒 言
 原田病1)の続発性緑内障は,経過中の虹彩後癒着および周辺虹彩前癒着による,いわゆるVogt-小柳型と,治療中のStcroid緑内障に大別され,その頻度は20%前後2,3)であるといわれているが,近年原田病の極めて初期に,後極部炎症および虹彩炎に先行して眼圧上昇を示した例が報告4〜6)されている。この緑内障症状先行型ともいうべき原田病は,前房深度の減少を伴う事が指摘されているが,その深度および変化を測定した報告は行われていない。今回,著者は両眼の急性閉塞隅角緑内障症状で発症した原田病を経験し,前房深度および屈折系変化の経時的測定によつて,初期眼圧上昇の機転を推察することができたので報告する。

水晶体後嚢損傷による外傷性白内障

著者: 内野允 ,   清水昊幸 ,   金上貞夫

ページ範囲:P.171 - P.174

緒 言
 眼球に鈍的な外傷を受けて,その外傷のために水晶体後嚢が損傷され,白内障をおこした症例を2例経験した。
 症例1は,水晶体の後嚢と前硝子体膜が破れて,水晶体の核が後方の硝子体中に飛び出した症例である。症例2は,後嚢は破裂していたが,前硝子体膜は破れずに水晶体後皮質が後方へ膨隆した状態となつていた。

GROUP DISCUSSION

糖尿病性網膜症

著者: 福田雅俊

ページ範囲:P.175 - P.180

 今回はRubeotic Glaucomaをメイン・テーマに選んで演題を求めたが,これに関するもの5題を含めて16題の応募があり,時間一杯の熱心な発表,討論が続いた。講演時間7分の制限も,学会並みとなり,次回より採用演題数も制限して,もつと十分な討論時間をとるのがよいという意見も出た。いずれにせよ,糖尿病に関する眼疾患,失調は,今後も検討すべき問題が山積していることを痛感させられた,内容豊富な研究会であつた。
 発表演題の抄録は次のごとくであつたが,質疑,応答は討論用紙の提出があつたものだけを収録した。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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