文献詳細
連載 眼科動物園・6
文献概要
はじめに
昭和21年,終戦直後,医学部の学生であつた私は,小川鼎三教授の脳解剖に関する講義に非常に強い感銘を受けた。理路整然たる講義の中に脳の比較解剖の話があり,エディンゲル・ウエストファール核について言及された。その話の中に,現東大脳研究所・草間敏夫教授が学生時代に,この核について比較解剖研究を行ない,従来の定説,すなわち,「同核が動眼神経核の副核で,眼内平滑筋を支配する中枢である」という説に疑義を投げかける重要な知見を得られた1)という話があつた。その根拠は,眼の退化しているアズマモグラの中枢にエディンゲル・ウエストファール核(EW核)が立派に存在するということである。私は,この話に非常に刺激されて,その後の4年間を,小川教授,草間教授の指導のもとに,脳研究所で,視蓋前域の比較解剖学的研究をすることになつた2)。その当時から,モグラの脳は,複雑な中脳における視中枢と,そうでないものとの鑑別にとつて,重要な材料であるとされており,自然,モゲラの眼も,機会があれば見たいと考えていた。たまたま,一匹のモグラを得て,これを見る機会があつた。随分,古いことであるので,詳細な文献や細かい所見は,科学的に記載することはできないが,当時の写真を供覧して,思い出話のような形でこれを紹介したい。
昭和21年,終戦直後,医学部の学生であつた私は,小川鼎三教授の脳解剖に関する講義に非常に強い感銘を受けた。理路整然たる講義の中に脳の比較解剖の話があり,エディンゲル・ウエストファール核について言及された。その話の中に,現東大脳研究所・草間敏夫教授が学生時代に,この核について比較解剖研究を行ない,従来の定説,すなわち,「同核が動眼神経核の副核で,眼内平滑筋を支配する中枢である」という説に疑義を投げかける重要な知見を得られた1)という話があつた。その根拠は,眼の退化しているアズマモグラの中枢にエディンゲル・ウエストファール核(EW核)が立派に存在するということである。私は,この話に非常に刺激されて,その後の4年間を,小川教授,草間教授の指導のもとに,脳研究所で,視蓋前域の比較解剖学的研究をすることになつた2)。その当時から,モグラの脳は,複雑な中脳における視中枢と,そうでないものとの鑑別にとつて,重要な材料であるとされており,自然,モゲラの眼も,機会があれば見たいと考えていた。たまたま,一匹のモグラを得て,これを見る機会があつた。随分,古いことであるので,詳細な文献や細かい所見は,科学的に記載することはできないが,当時の写真を供覧して,思い出話のような形でこれを紹介したい。
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