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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科32巻10号

1978年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・251

眼球結膜下に寄生せるマンソン孤虫症の1例

著者: 西塚憲次 ,   守田潔 ,   大石正夫

ページ範囲:P.1404 - P.1405

 マンソン裂頭条虫の幼虫,plerocercoidの人体への寄生は「マンソン孤虫症」と呼ばれている。感染経路は主として第2中間宿主である蛙,蛇,鳥類の肉を生で食用した時である。また,溜水を飲用した際第1中間宿主のミジンコ類を通しての感染も否定できない。
 本邦における眼部寄生の報告は現在まで約29例を数えるが,環境衛生思想の発達した今日では珍奇なる例となつてきた。

眼科臨床レントゲン診断学・10

各論(7):眼窩静脈造影法

著者: 丸尾敏夫 ,   竹内真 ,   桐渕利次

ページ範囲:P.1454 - P.1455

 眼窩静脈造影法orbital venographyは前頭静脈より逆行性に,両側の眼窩内の静脈に造影剤を注入してX線撮影を行い,静脈の状態から眼窩内の病変を推定する診断法である。

総説

神経眼科:最近の進歩と臨床上の問題点

著者: 下奥仁 ,   三村治

ページ範囲:P.1407 - P.1411

緒 言
 この数年間,神経眼科の進歩は目ざましいものがあり,眼科領域の中で神経眼科の占める比重はますます増加の一途をたどつている。過日,京都国際会議場で行なわれた第23回国際眼科学会でNeuropathyのround table discussionにおいても,さすがに広い第1会場も満員の盛況であつたし,世界の多くの眼科医がこの方面に興味を有していることが感ぜられた。編集室から表題の如き執筆依頼を受けたが,それをどのように記述するかという問題の取捨選択に困惑した。そこで神経眼科のうち,視神経,眼球運動などの方面を除外し,比較的神経眼科専門以外の方々も興味がある二,三の点について記述を進めてみたい。

臨床報告

新生児外科と未熟児網膜症について

著者: 依田初栄 ,   森実秀子 ,   秋山洋 ,   三川宏

ページ範囲:P.1413 - P.1420

緒 言
 新生児医療は,後遺症なき救命(intact survi-val)を最終目標としながらも,その理想に向かつて,試行錯誤を重ねている段階であり,この場合に,未熟児網膜症の問題が必然的に深い関わりをもつてきた。さて,外科領域においても,近年の新生児麻酔,および新生児外科の急速な進歩に伴い,外科的疾患をもつ未熟児の生育率が漸次向上し,それと共に未熟児網膜症が問題とされるようになつてきたが,その関連性について検討した報告は大島1)の報告のみである。著者らは,国立小児病院において,過去10年間に外科手術をうけた未熟児について,網膜症の実態を検討し,若干の知見を得たのでここに報告する。

動的周辺視野計測における中心固視変動の問題点

著者: 本田孔士 ,   根木昭 ,   三木正毅

ページ範囲:P.1421 - P.1424

緒 言
 われわれは先に,動的周辺視野には,一般的な臨床レベルのセットアップで測定された場合,ある程度の測定誤差を見込まねばならないことを述べ,その原因の一つとして,中心固視の変動を挙げた1)。今回は,網膜静電位を使用して,視野測定中の被検者の眼球運動を記録し,固視変動の問題について論ずることを目的とした。

アルゴンレーザーによる中心性網膜炎の治療経験

著者: 原田敬志 ,   小宮山和枝 ,   小嶋一晃

ページ範囲:P.1425 - P.1432

緒 言
 増田型中心性網膜炎に対する光凝固は,西独キセノン凝固器を用いて(Wessing1)1967, Riehm2)1967,三井ら3)1969,塚原4)1969,清水・戸張5)1969,栗本6)1969,Gass7)1971,Wessing8)1971,塚原ら9)1972,Harris10)1974,Annesleyら11)1974,福地ら12)1975,三木ら13)1977),東独キセノン凝固器を用いて(戸張14)1972,斎藤・藤岡15)1972,戸張16)1973,Heydenreichら17)1974,Fuhrmcister & Lohse18)1974,Heydenreich ら19)1975,原田ら20)1978)そしてルビーレーザーを利用して(瀬戸川・松戸21)1973,Watzkeら22)1974,瀬戸川ら23)1974,Kaluznyら24)1975)広く実施されている。

上強膜血管網の著しい怒張を伴つたSturge-Weber症候群の1例

著者: 向野利寛 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1433 - P.1436

緒言
 Sturge-Weber症候群は顔面および頭蓋内血管腫に同側の緑内障を合併する。Sturge-Weber症候群に緑内障を合併する機序については多くの説が述べられているが1〜5),Reeseの集計によると以下の説に分けられる。
 A.ブドウ膜血管腫に基因するもの。

カラー臨床報告

Macular colobomaを伴うpigmented paravenous retino-choroidal atrophyの1例

著者: 今川亘男

ページ範囲:P.1463 - P.1469

緒 言
 近年,螢光眼底撮影法,電気生理学的検査法等の技術の開発進歩により,網膜色素上皮層の生理,病態について多くの新しい知見が見出されつつある。しかしそれらの新知見に対する解釈は,未だ確定されたものとはいえず,またそれらの所見にあてはまらない症例も多数存在し,今後さらに検討されなければならない。
 Pigmented paravenous retino-choroidal atrophyは網膜色素変性症類似疾患であり,その特異な病状と比較的稀な疾患であるため,その本態が不明な疾患の一つである。今回著者は,macular colo-bomaを伴つたpigmented paravenous retino-choroidal atrophyと思われる1例を経験したので,その所見を報告し,加えてその病態について検討する。

神経眼科講習会

鼻副鼻腔の臨床解剖とレ線所見

著者: 足川力雄

ページ範囲:P.1437 - P.1446

緒 言
 鼻副鼻腔は眼窩周囲の約2/3を占め,鼻副鼻腔疾患と眼科疾患とが密接な関連を有するものが少なくないのは周知のごとくである。
 鼻副鼻腔疾患のための眼合併症としては球後視神経炎,眼窩内感染症,眼球突出,眼筋麻痺,涙嚢炎,反射神経症(眼精疲労)などがあり,最近は鼻副鼻腔炎手術に際しての視器損傷が医療事故の面より重要視されるようになつてきた。

視交叉近傍病変の脳血管造影—Ⅰ.正常脳血管写像

著者: 玉木紀彦 ,   松本悟

ページ範囲:P.1447 - P.1453

緒 言
 脳血管造影は視交叉近傍病変の診断には極めて重要である。視交叉近傍病変の局在診断,種類診断に有用であるばかりでなく,腫瘍の大きさ,進展方向,腫瘍と主要血管との解剖学的相関,腫瘍自身のvascularityなど脳神経外科的治療の施行に際し是非必要な情報が得られる。特にトルコ鞍の拡大のいまだない鞍内microadenomaに対しては気脳写やCTでは診断は不可能である。このような超早期下垂体腺腫の診断に拡大脳血管造影が極めて有用であり,最近の下垂体腺腫の治療に大きな貢献をしている13)
 本稿では,1)視交叉近傍の脳血管の解剖と正常血管造影,2)下垂体の血管分布,3)視交叉近傍病変における脳血管造影の診断的価値について論じる。この部位の脳血管は微小なものが多く,部位的に限定されているため,最近では視交叉近傍病変が疑われる場合には,拡大脳血管造影がルーチンに行われる。これにSubtractionが応用され,微細な変化を把握することが行われている。

眼の臨床局所解剖

眼の形成手術に関連して—上眼瞼の局所解剖(1)

著者: 久冨潮

ページ範囲:P.1456 - P.1457

 眼瞼の解剖における問題点の一つは,名称が,用いる人によつてまちまちであり,そうなると,同じものをそれぞれが別の名称で呼んでいるのか,またはそれぞれ別のものを述べているのかはつきりわからなくなるという点があることである。
 例えば"瞼板前脂肪組織"とか"中央結合組織"という呼称がどの部分を指しているのか私にはよくわからない。わからぬままにこの名称を使うと,また別の部分をいつていることになりかねないので,自分でわからない名称は使わない様にした。

薬の臨床

糖尿病性網膜症に対するAdrenochrome monoaminoguanidine methansulfonateの治療効果の二重盲検法による臨床評価

著者: 福田雅俊 ,   田村正 ,   箕田健生 ,   河上勝美 ,   崎元卓 ,   常田孝和 ,   岩崎由雄 ,   杉浦良一

ページ範囲:P.1470 - P.1474

緒 言
 糖尿病性網膜症に対する臨床研究は近年世界各国で進められているが,今日までのところ残念ながら有効確実な治療薬剤は開発されていない。本症の治療には糖尿病自体の適正管理が第一に必要であるが,網膜に出血斑が多発して来ると何等かの止血剤による全身療法も加味されているのが現状である。
 福田は本症が螢光造影上血管閉塞性病変であること1,2),本症の増悪期(特に出血,軟性白斑の出現時)には線溶能の低下,血液凝固傾向の亢進を認めることが多いこと3,4()などから,本症の治療に使用される止血剤は血液凝固を促進するものではなく,血管強化性の薬剤でなければならないと主張して来た5)。今回,われわれは血管強化性止血剤6,7,8)であるAdrenochrome monoamino-guanidine methansulfonate (AMM と略,商品名S・アドクノン錠30)の糖尿病性網膜症における出血に対する治療効果を二重盲検法により検討した結果,一応有効と判定すべき成績を得たのでここに報告する。なお,共同発表者の杉浦は解析を担当し,岩崎はコントローラーとしてこの研究に参加した。

GROUP DISCUSSION

遺伝・先天性眼疾患

著者: 水野勝義

ページ範囲:P.1476 - P.1480

 昭和52年9月24日午前9時半−12時半,札幌市厚生年金会館第4会場で開かれた。本ディスカッションへの演題数は年々増加の傾向にあり,しかも広範にわたつて来た。したがつて参加者も多くなり,活発な討論が行われるようになつたことは喜ばしい。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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