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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科32巻11号

1978年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・252

前房および硝子体内にコリステリン結晶の析出をみた1例

著者: 近藤英明 ,   坂田広志 ,   井上暁二 ,   追中松芳 ,   倉本戴寿 ,   岐部明廣

ページ範囲:P.1510 - P.1511

 前房および硝子体内にコレステリン結晶の出現をみた症例は,わが国では高橋ら1)のほかに数氏の報告がみられる。最近,私たちも前房および硝子体内に多数の美しい結晶が析出している症例に遭遇し,前房水からコレステロールを抽出し,定量したので報告する。
 症例:35歳,男性。

眼科臨床レントゲン診断学・11

各論(8):眼窩の先天異常

著者: 丸尾敏夫 ,   桐渕利次 ,   竹内真

ページ範囲:P.1572 - P.1573

 眼球の先天異常では,小眼球や無眼球は一般に眼窩の発育が悪く,眼窩も小さい。一方,牛眼では,眼窩の拡大をみることがある。脳の発育異常では,頭蓋骨ばかりでなく,眼窩にも奇形を生じることが多い。ここでは,眼窩の先天異常を中心に述べてみたいと思う。

総説

眼筋の異常運動について

著者: 久保田伸枝 ,   丸尾敏夫

ページ範囲:P.1513 - P.1519

緒 言
 眼筋の異常運動としては,眼球振盪をはじめ,眼振様運動,眼球異常沈下ocular bobbing,ミオクローヌスocular myoclonus,オプソクローヌスopsoclonusなどがあり,また,眼筋の麻痺や過動も含まれる。このほか,Duane症候群にみられるような,異常神経支配あるいは背理性神経支配を示す異常運動もある。ここでは,紙数に限りがあるので神経学の領域でむしろ記述される機会の多いものについてはふれず,主として眼科でみられる眼筋の異常運動で,全身症状に乏しいため他科では記述されることのほとんどないものについて述べてみたい。そのような観点からここに記載するのは,Duane症候群,動眼神経麻痺後にみられる異常連合運動および交代性上斜位にみられる異常運動ならびに,Paradoxical conver-gence during lateral gazeおよびParadoxicaldivergence during lateral gazeである。

臨床報告

網膜静脈閉塞症における視力予後—黄斑部微小血管系との関連について

著者: 新家真 ,   石井正子 ,   川村正

ページ範囲:P.1521 - P.1526

緒 言
 網膜静脈閉塞症6,7,10,16,21,22,24,25,28)は,しばしば重篤な視力障害を来たすが,その予後は一定せず比較的良好な視力に回復する症例がある一方,高度の視力障害を残すものもある1,9,13,19,22)。そこでもし本症の初期の所見より,その視力予後を推定する事が可能ならば,臨床上の価値は大きいと考えられる。
 従来,本症における視力低下は主に黄斑部網膜の障害程度に左右されるものである1,7〜9,27,28)事が知られており,その結果として生ずる初発時の視力障害の程度12)や,閉塞静脈と黄斑部との位置関係4,9)等が,視力予後に関係する因子であるとされて来た,また近年Clemettら3)は,螢光眼底造影の所見より,特に中心窩をかこむcapillaryarcadeが完全に保存されているか否かが,視力予後を考える上で重要であると報告した。

Penalizationによる弱視治療—特にFar Penalizationの適応と効果について(松尾信彦教授開講5周年記念論文)

著者: 宮崎富重 ,   野崎恵子 ,   渡辺好政

ページ範囲:P.1527 - P.1533

緒 言
 Penalization (以下P.と略す)はアトロピンとレンズ負荷による弱視斜視治療方法の一つであり,いろいろな段階的方法が報告されている。その主な適用についてはQuéré1),Catrosら2〜4)によると0.4未満の弱視にはNear P.,0.4以上の弱視にはFar P.,そのいずれでも視力の出ない場合はComplete P.,その後Alternating P.を経てSlight P.へ移行するのが基本とされる。ところが不同視弱視または斜視弱視においても弱視眼の方が遠視度が強く,弱視眼に+3Dの過矯正を行なうNear P.は眼鏡装用上適用し難い例が臨床上よくみられる。もしもこういう症例にNear P.を省略してFar P.から治療を開始して良好な結果が得られるとしたら,治療上大変有利なことであり,また治療期間の短縮,経済的負担の軽減にもつながると思われる。こういう理由からわれわれは多くの症例にFar P.から治療を開始し,その効果,適用について検討を行なつてみた。またFar P.の次の段階としてAltemating P.も省略してすぐSlight P.に移行した。ここにその結果を報告し,あわせてPenalizationの作用機序について若干の考察を加えることとする。

篩骨洞内眼球陥沒を呈したblowout-fractureの1症例

著者: 冨田直子 ,   浅山邦夫 ,   雨宮次生

ページ範囲:P.1535 - P.1539

緒 言
 SmithおよびRegan1)が,1957年に,眼窩壁骨折の特殊な型として,blowout fractureという名称を初めて使い,その特異な発生機序を明らかにしてから21年経つた。眼窩骨折の中で最も多いのは,外壁すなわち頬骨の骨折である2)が,blow-out fractureも決してまれなものではなく,日本でも,深道3),久冨2),三国4)のら数多くの報告がある。
 blowout fractureは眼窩縁骨折の有無により,pure typeとimpure typeとに分けられているが,眼窩縁骨折のあるimpure typeをblowoutfractureに含めるかどうかについては,なお混乱している。Smith,Converse自身も,含めるか否かについては,定義が定まつていないようである5)

巨大な眼窩Hemangiopericytomaの1例

著者: 丹羽子郎 ,   早野三郎

ページ範囲:P.1547 - P.1550

緒 言
 毛細血管から発生するHemangiopericytomaは1942年Stout and Murrayがはじめて記載し,以来欧米では比較的多くの報告がみられる血管性腫瘍である。
 しかし,わが国ではその報告は少なく,殊に眼科領域での記載はわずか数例に過ぎない。

カラー臨床報告

Laurence-Moon-Biedl症候群Alström-Hallgren型の同胞例

著者: 桂弘 ,   田中靖彦

ページ範囲:P.1541 - P.1546

緒 言
 Laurence-Moon-Bicdl症候群は,網膜色素性症,肥満,知能障害,性器発育不全および多指症の5主徴と備えた症候群として広く知られており,Rossら1)によれば,1955年までに約300例が,本邦でも現在までに200例以上の報告がある。
 一方,Alströmら2)は1959年,網膜色素変性症,肥満,神経性難聴,糖尿病の4症状を主徴とした症候群を,Laurence-Moon-Biedl症候群とは異なつた独立した症候群として報告した。以後,10例の報告があるが,Goldsteinら3)はこれをAlström症候群と呼んでいるのに対し,Kleinら4)は,Laurence-Moon-Biedl症候群の一亜型として,Alström-Hallgren型と呼ぶのが妥当であると述べている。

神経眼科講習会

頭部のComputed tomography (CT)

著者: 小林直紀

ページ範囲:P.1551 - P.1557

緒 言
 頭部に関する限り,CTの有用性は今や疑うものはなく,神経放射線領域に関しては,CTは一般検査の一つとして爆発的に普及し,本邦においてすでに300台余りのCT器機が稼働していると聞く。脳神経外科,神経内科あるいは神経精神科領域での必要性はもちろんであるが,耳科学や眼科学領域においてもこれを有効に利用されることが望まれる。
 CTにおける正常と異常の判定は脳室や脳槽系の形の異常の有無と異常X線吸収域の出現の有無によつて成される。

Clinical Conference

Contact lens cornea

著者: 岡和田紀昭 ,   馬嶋明

ページ範囲:P.1563 - P.1568

 岡和田(助手) 本日は,Rheumotoid Arthritis (以下RAと略す)に台併するいろいろな角膜病変の中で,Contact Lens Corneaと呼ばれているものについて症例報告します。
 馬嶋(医員) では症例を供覧いたします。症例1。35歳女性。主訴は,左の眼痛と羞明。1974年頃より,角膜の様々な部位に白い膜様物が張り,出現消退をくり返しました。白い膜はいつも3〜4日で治り,眼痛・異物感・羞明感を伴います。また,1年前より口内乾燥感も出現しました。近医にて治療を受けてきましたが次第に視力が低下し,眼痛・異物感・羞明を再発するため,1976年11月当科を初診しました。既往歴は,18歳よりRAをわずらい,3〜4年間steroidを内服しました。初診時所見,矯正視力は右0.7,左0.5。眼圧,中間透光体,眼底とも正常です。両側の角膜の所見ですが,角膜周辺全周にわたり菲薄化し,中央部の健常角膜との境に浅い潰瘍を作り,また白濁部も認めました。健常角膜部にKSDを認めました。limbusからの血管侵入はごく軽度です。Schirmer検査,涙液のLysozyme定量はともに正常です。治療は,はじめは抗生剤とsteroidの点眼を行ないましたが,2カ月後にはsteroidを中止し,抗生剤cysteineの点眼と,Vitamin Aの内服で現在に至りました。その後,所見はほとんど変化ありませんでした。次に症例2。46歳女性。

眼の臨床局所解剖

眼の形成手術に関連して—上眼瞼の局所解剖(2)

著者: 久冨潮

ページ範囲:P.1570 - P.1571

上眼瞼挙筋腱膜(図7)……⑦
 挙筋腱鞘を除去すると,上眼瞼挙筋の腱膜が現れる。これは肉眼的には縦に線維の走つているやや厚い膜様構造で,本来の挙筋の筋腹は眼窩内にあつて,眼窩縁の近くで終つており,それについては後に図18において再び述べるが,それより末梢は腱膜であり,組織像は楕円形の核を有する細長い細胞の層であつて筋組織ではない。腱膜の内,外はそれぞれ内角および外角となつて,内側,外側の眼瞼靱帯に入つている。
 外傷によつて挙筋断裂の起るのはこの腱膜の部分が多い。また眼瞼下垂手術で挙筋短縮を行うのも実はこの腱膜の部である。

座談会

第1回国際白内障手術学会印象記(イタリア)

著者: 岩田修造 ,   小暮文雄 ,   林文彦 ,   馬嶋慶直

ページ範囲:P.1575 - P.1583

 岩田(司会) お忙しいところ,遠い所から有難うございます。日本を代表する白内障手術の先生方ご三人に来ていただいて,私が司会をさせていただきます。
 今年の4月13日から16日までイタリアのフローレンスで行われた第1回国際白内障手術の会について,私の知つている範囲では,イタリア眼科学会は毎年それに付随して何か世界的な行事をやつていこうという趣旨のようです。例えば網膜剥離とか,光凝固とかがすでに行われたと聞いております。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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