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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科32巻12号

1978年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・253

眼底出血を伴う網膜色素変性症の2例

著者: 原田敬志 ,   安間正子 ,   安間哲史 ,   宏川市

ページ範囲:P.1606 - P.1607

 ここに報告するのは,生来幼少時から存在したと思われる網膜色素変性症に網膜前出血や硝子体出血さらに網膜血管の限局性拡張や血管瘤などの網膜血管の変化を合併した2症例である。これに類似した病型は,1956年Zamorani3)によつて「コーツ氏網膜炎と網膜色素変性症とのまれな合併」として記載されて以来,10例の記載が文献上みられるが,国内では吉田,中島7)(1978)により最初に報告された1例がみられるだけである。
 症例1は49歳の男性で幼少時から夜盲を自覚していた外,最初特に右眼の霧視が著しいという主訴で来院した。右眼眼底は高度の硝子体出血のため乳頭以外はほとんど透見しえない。左眼眼底は,骨小体様色素沈着と混濁した色調,視神経乳頭の萎縮と血管の狭細化によつて特徴づけられる網膜色素変性のほかに,乳頭と黄斑の間に限局性血管瘤を2カ所に認め(図1)螢光眼底撮影(図2)によつても35秒頃から旺盛な漏出がみられた(図3)。右矯正視力は手動弁,左矯正視力は0.4であり,両眼とも視野は高度の狭窄を示しERGは消失型であつた。暗順応検査・色覚検査は視力の良好な左眼しか施行されなかつたが,それぞれ平坦型およびtritan(Farnsworth-Munsell 100-hue test)がみいだされた。右眼の硝子体出血は線溶療法やかずかずの止血剤の組み合わせにより消失しはじめ網膜前出血の存在することが明らかとなつた。

眼科臨床レントゲン診断学・12

各論(9):眼窩のCT

著者: 丸尾敏夫 ,   桐渕利次

ページ範囲:P.1682 - P.1683

 コンピューター断層法computed tomography (CT)は人体を通過してきたX線量を測定し,これをコンピューターで処理し,従来得られなかつた部位の横断面や冠状断面の画像の構成を行う診断法である。1972年Hou-nsfieldが発表した機種も,その後改良を重ね,現在では3〜10秒という短時間で1スライスの撮影が終るようになつている。CTによつて,眼窩,視神経,外眼筋および副鼻腔の状態が横断面および冠状断面で描写されるので,CTは眼窩疾患の診断に有力な情報をもたらす必須の診断法となつてきた。
 眼窩のCT診断法は,水平断面撮影については,視神経がスライスに含まれるように,眼窩下縁と外耳孔とを結ぶ線,すなわちReid's basc lineを基準として,これに平行に5〜10mmの間隔で2スキャン・4スライスの撮影を行う。また,眼窩内病変の上下へのひろがり,あるいは視神経および外眼筋との関係をみるために,外耳孔を基準にReid's base lineに垂直な冠状断面撮影を随時行う。コントラストを強くして,画像を一層明らかにするために,60% Urografin 100ml点滴静注による増強法enhancementが行われることが多い。眼球に対する水平断面が左右眼で異なると,片眼の眼球突出があるように映像されることがあるので注意せねばならない。

総説

緑内障の視野—早期異常と可逆性

著者: 湖崎弘

ページ範囲:P.1609 - P.1615

緒 言
 今年5月,International Perimetric Society(I.P.S.国際視野研究会)の第3回シンポジウムが松尾治亘教授のお世話で東京で開かれたが,その緑内障部門のテーマは早期異常と可逆性であつた。
 従来から緑内障の視野異常は不可逆性と考えられているので,早期発見,早期治療が原則であり,その意味で早期視野異常の形およびその検出法が問題となつている。しかしながら果たしてそうであろうか,厳密な意味の早期発見が可能であろうか,その方法は確立されているのであろうか,また厳密な早期治療が絶対に必要であろうか,の問題を症例を中心にしてここで論じてみたいと思う。

臨床報告

眼底後極部のparavascular microholeによる網膜剥離について

著者: 福味陽次 ,   宇山昌延 ,   加賀典雄

ページ範囲:P.1617 - P.1621

緒 言
 眼底後極部の網膜大血管に沿つて発生した小円孔が原因となつて発病した裂孔原性網膜剥離を最近3例経験し,剥離手術を行つて治癒せしめえた。この症例は,裂孔が小さく,血管の影にかくれていて見おとされやすく,また裂孔がきわめて深部に存在するため治療がきわめて困難であつた。また後極部血管に沿う円孔発生の病因など,種々の点で,本症例には特徴が存在した。
 このような病型の報告は,Philips and Dobbie(1953)の報告1)以来,parapapillary hole2),smallposterior hole3),conus hole4), juxtavcnous pit-ting7),juxtapapillary microhole8),paravascular re-tinal hole9)とよばれて報告があり,その病因について,網膜硝子体癒着の存在と,高度近視による網膜の菲薄なことが報告されている。しかし治療法は報告者により様々で,手術的療法を行つても成功率が低いとの報告が多い。

先天性虹彩嚢腫の1例—その病理組織学的検索

著者: 平松君恵 ,   加賀典雄 ,   服部吉幸

ページ範囲:P.1623 - P.1628

緒 言
 虹彩嚢腫には,先天性のものと後天性のものがあり,後天性嚢腫のうち,外傷によるものや縮瞳剤点眼によつて生じるものはしばしば経験し,その報告例も多い1〜6)。しかし先天性の嚢腫は比較的少ない7〜8)
 最近乳児の先天性虹彩嚢腫に,嚢腫全摘出手術を行ない,摘出標本の光顕的ならびに電顕的検索を行なつて,その起源を示唆する所見を得たので,症例の経過と検索所見を報告する。

眼底出血を伴う網膜色素変性症の2例

著者: 原田敬志 ,   安間正子 ,   安間哲史 ,   市川宏

ページ範囲:P.1629 - P.1636

緒 言
 網膜色素変性症に伴う眼底疾患としては白点状網膜炎(Franceschetti et al.1))や中心性網膜炎(霜鳥・大塚2))の報告があるが,これらと同様珍しい合併症としてコーツ症候群の合併が知られている。これらは1956年,Zamorani3)によつて最初に記載されついでMorgan & Crawford4),Sch-midt & Faulborn5)そしてSchmidt & Faulborn6)によつて紹介されており,わが国でも吉田・中島7)により報告された。
 ここに述べる自験例は浸出性変化や網膜剥離のない点で上記の記載例とはかならずしも一致しないが,血管にanomalyのあることから上述の範疇に属するものと思われる。臨床経過を報告し文献的考察を二,三付け加える。

白内障手術後の化膿性眼内炎の治癒症例

著者: 盛直之 ,   木村嗣 ,   遊佐悦子

ページ範囲:P.1637 - P.1639

緒 言
 白内障手術後の化膿性眼内炎の発生は稀であるが,不幸にも発症すると,その予後は極めて不良で,失明に陥る場合が多く,重大な合併症となる。
 本例は抗生物質治療により幸いにも治癒し,良好な視力を回復することができた。

フロントガラスによる穿孔性眼外傷に関する実験的研究

著者: 木村肇二郎 ,   藤野豊美

ページ範囲:P.1641 - P.1647

緒 言
 フロントガラスによる眼外傷のうちで穿孔性眼外傷の占める頻度はきわめて高く慶大眼科の過去3年間の統計でも約82%に穿孔性眼外傷が出現している。しかもこれらの外傷の予後は悪く受傷例の40%が光覚以下の失明状態に至つている。これはわが国と同じ材質の強化ガラスをフロントガラスに使用している西ドイツの統計においても同様であり,Müller-Jensenら1),Hollwichら2)はその失明頻度をそれぞれ44%,38%と報告している。一方Hassら3)はHPR (high penetration resistant)合わせガラスによる眼外傷は強化ガラスによる眼外傷に比較してその頻度,重症度ともに低いことを報告しており眼外傷を予防するためにはフロントガラスの材質が重要であることを強調している。そこで今回著者らはフロントガラスの材質差によつて穿孔性眼外傷の頻度や重症度に差があるか否かを明らかにすると同時に穿孔性眼外傷の機序を解明することを日的として現在市販されてい部分る強化ガラスおよびHPR合わせガラスの2種類を用いてダミー眼窩に豚の新鮮眼を固定し衝突実験を行つたのでこれらの実験方法,および結果について報告し,またフロントガラスによる穿孔性外傷の出現機序についても併せ報告する。

いわゆるOphthalmic Graves' diseaseについて

著者: 池田英子 ,   雨宮次生 ,   小西淳二

ページ範囲:P.1649 - P.1653

緒 言
 Gravcs病(Basedow病)は1786年Parryにより動悸を伴つた甲状腺腫,1835年Gravesにより甲状腺腫,頻脈,眼球突出を伴う女性の甲状腺疾患として,また1840年Basedow1)により,Exoph-thamus durch Hypertrophie des Zellgenebes inder Augenhöleという表題で,甲状腺腫,著明な頻脈,身心の不安,あるいは下痢などを伴つた3例が報告されて以来,数多くの報告があり,一般的には甲状腺機能亢進症のうちで,びまん性甲状腺腫に基づくものを指していて,定型的な場合は眼球突出を伴うものである。
 しかし,甲状腺機能正常(euthyroid)にもかかわらず,眼の異常所見の認められるものもあり,1945年RundleとWilson2)により,甲状腺腫と甲状腺機能亢進を伴わずGravcs病の眼症状を呈する症例が報告されて以来,いくつかの報告がなされている。

偽緑内障の4症例

著者: 鬼頭錬次郎 ,   杉谷幸彦

ページ範囲:P.1655 - P.1661

緒 言
 緑内障の診断は眼圧,視神経乳頭,視野,隅角,トノグラフィー,各種誘発試験などの諸所見,検査の総合判断によつてなされるが必ずしも常に全症例が全ての所見を完備し,かつ全ての検査に陽性を示すとはかぎらない。そして一度緑内障との診断がなされると終生治療の対象となり,またその視機能の予後は患者の精神的重圧,苦痛となるから診断には慎重を期しても期しすぎることはない。
 ましてそのうちの一,二の所見または検査が緑内障を思わせたとしても安易に診断を下すことなく緑内障の疑いをもちつつ,反面それ以外の疾患も念頭におき,より一層多角的な検査をすすめるべきである。

カラー臨床報告

7年後に他眼にも発症したのう胞状網膜剥離の1例

著者: 松木恒生 ,   山田宏圖

ページ範囲:P.1667 - P.1672

緒 言
 後極部に網脈絡膜症を伴う続発性網膜剥離の症例は,1971年浦山ら1)により報告されて以来,多数の報告例がみられる。最近,宇山ら2)は,このような病像を示す症例を一つのclinical entityを持つ疾患であることを示し,また吉岡3)は,これをUveal Effusionの後極型とする説を出しているなど,病像がかなりはつきりしているにもかかわらず,一般には,統一された見解は出されていない。諸氏の報告をみると,多くは,両眼性で,しかも比較的短期間のうちに両眼に発症している。今回,われわれは,諸氏の報告と同型であろうと考えられ,第1眼発症から,およそ7年後に第2眼の発症をみた症例を経験したので報告する。

神経眼科講習会

神経眼科領域における視野

著者: 諌山義正

ページ範囲:P.1673 - P.1679

はじめに
 神経眼科領域で,視覚系としてあつかうのは,網膜節細胞に核を有する第3ニューロン,外側膝状体より発する第4ニューロンおよびその高次の中枢である(図1)。
 すなわち視神経,視交叉,視索,外側膝状体,視放線,有線領,連合野などである。

眼の臨床局所解剖

眼の形成手術に関連して—上眼瞼の局所解剖(3)

著者: 久冨潮

ページ範囲:P.1680 - P.1681

図13 上眼瞼の組織図
 上眼瞼の中央部で眉から瞼縁までの,矢状断の組織標本の写真を合成したもので,1枚の標本では必要な要素が総て含まれているわけではないので,合成して眼瞼の姿を再現したものである。
 この写真では,組織の細胞成分までは判らないが,もつと強拡大で見れば,前に説明した組織像の総てを見る事ができる。

GROUP DISCUSSION

第17回白内障研究会

著者: 藤永豊

ページ範囲:P.1685 - P.1695

 従来の白内障グループディスカッションという名称を,今回から白内障研究会と変更することになつた。
 3月11日の午後,12日の午前と2日間にわたり,増田義哉教授(福岡大)の退職記念を兼ねて開催し,11日夜には懇親会を催した。半日ずつとはいえ,2日間にわたり記念会としたこと,懇親会を開いたことなどは初めてのことであつた。いずれも大変な盛会であつた。

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臨床眼科 第32巻 総目次・物名索引・人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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