文献詳細
文献概要
特集 第31回日本臨床眼科学会講演集 (その2) 学会原著
眼トキソプラズマ症患者の妊娠対策
著者: 鬼木信乃夫1
所属機関: 1九州大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.285 - P.292
文献購入ページに移動緒 言
眼トキソプラズマ症患者の妊娠中の再発はもちろんのこと,患者の妊娠にあたつてどう対処すべきかは眼科医にとつても重要な課題となり,最近のPerkins1)の総説でもこの問題を重視している。先天性トキソプラズマ(以下トキソ)症は何らかのルートを通じて感染した母親から胎盤を経て胎児に移行することにより発生する。したがつて,明らかに眼底にトキソ性病変を有した女性患者が妊娠した場合,先天性トキソ症が発生するのではないかという危惧に悩まされる。こういう場合,妊娠を続行させてもよいのか,または妊娠を中断すべきなのかという問題に対して明確な指示を与えた論文は,いまだかつて報告されていない。
著者は,本症を研究し始めた頃,貴重な2例(症例1,2)の本症患者の妊娠を経験することができた。その経験より「若い母親で,しかも妊娠中抗体価が上昇しないものにかぎり妊娠を続行させてもよいのではなかろうか」という大胆な仮説のもとに,その後,6症例11回の本症患者の妊娠を体験した。ここでは全症例13回の出産成績を紹介し,眼トキソ症患者の妊娠対策について論じてみたい。
眼トキソプラズマ症患者の妊娠中の再発はもちろんのこと,患者の妊娠にあたつてどう対処すべきかは眼科医にとつても重要な課題となり,最近のPerkins1)の総説でもこの問題を重視している。先天性トキソプラズマ(以下トキソ)症は何らかのルートを通じて感染した母親から胎盤を経て胎児に移行することにより発生する。したがつて,明らかに眼底にトキソ性病変を有した女性患者が妊娠した場合,先天性トキソ症が発生するのではないかという危惧に悩まされる。こういう場合,妊娠を続行させてもよいのか,または妊娠を中断すべきなのかという問題に対して明確な指示を与えた論文は,いまだかつて報告されていない。
著者は,本症を研究し始めた頃,貴重な2例(症例1,2)の本症患者の妊娠を経験することができた。その経験より「若い母親で,しかも妊娠中抗体価が上昇しないものにかぎり妊娠を続行させてもよいのではなかろうか」という大胆な仮説のもとに,その後,6症例11回の本症患者の妊娠を体験した。ここでは全症例13回の出産成績を紹介し,眼トキソ症患者の妊娠対策について論じてみたい。
掲載誌情報