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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科32巻3号

1978年03月発行

雑誌目次

特集 第31回日本臨床眼科学会講演集 (その3) 学会原著

眼の異常を伴つたThe first and second branchial arch syndromeの2例

著者: 岡嶋由布子 ,   西村宜倫 ,   大島健司 ,   加納正昭 ,   大石隆興

ページ範囲:P.377 - P.382

緒 言
 顔面特に上顎,下顎,耳介等は第1および第2鰓弓から発育するといわている。第1および第2鰓弓は胎生第4週頃から胎児頭腹側外側に出現し,第6週頃から第8週頃までにその分化を完成するといわれているが,この分化過程の異常から,種々の奇形が発生することが知られている。古くは,B.C.2000年にMesopotamiaのChaldeansに記されており,その後も1654年のBartholinusの報告から現在まで多くの報告がなされている。この第1および第2鰓弓の奇形に対して多くの名称が提唱されたが,Grabbらは,the first and secondbranchial arch syndromeとこれらをよび,この呼称は一般に受け入れられている。この症候群に見られる,第1および第2鰓弓由来の外耳,下顎骨,上顎骨,頬骨,側頭骨等の形成不全等の症状に伴う他の奇形としては,眼および眼瞼の奇形,口蓋裂および口唇裂,脊椎や肋骨の奇形等が報告されているが,何れも比較的稀でGrabbらによると10%前後にしか見られていない。

Pseudo-exfoliation syndromeの毛様体変化

著者: 室井繁 ,   武井洋一 ,   清宮輝夫

ページ範囲:P.383 - P.391

緒 言
 pseudo-exfoliation syndromeは,臨床的にしばしばglaucomaを伴い,その原因については種々の議論のあるところである。一方,pseudo-exfo-liation (以下PEと略す) materialの本態についても臨床上のみならず形態学上からも多数の研究がなされ水晶体,虹彩,毛様体附近の形態は,電顕的にもほぼ確立されているが1〜9),PE materialのsourceに関してはまだ解決されていない現状である。
 このPE materialは,臨床的には通常,水晶体前面ならびに瞳孔縁に認められるが,虹彩切除の部より毛様体や毛様体小帯にもPE materialの附着を認めた報告もある10〜11)。しかし非手術眼における毛様体の変化についての報告はまだなされていないため,今回はこの点を中心にしてPEsyndrome 18例についてcycloscopyによる毛様体観察を行ない,更に本症患者の手術時に得られた水晶体,虹彩,毛様体,線維柱帯を電顕ならびに組織化学的に検討し,今まで本疾患についてほとんど言及されていなかつた毛様体および毛様体小帯の変化,さらにPE materialのsourceにつき興味ある知見を得たので報告する。

18 Trisomyの眼所見

著者: 酒井寿男 ,   渡辺みどり ,   山中龍宏 ,   菱俊雄 ,   大河内雄幸 ,   渡辺郁緒

ページ範囲:P.393 - P.399

緒 言
 Edwardsら1)により最初に報告された本症候群は,E群18番目の染色体が3本みられるもので比較的稀な先天異常である。その頻度はSmith2)によれば,1,000の出産に対し0.3とされている。性差は4対1で女に多く3)症例の90%は1歳未満に死亡する。眼に関連した変化は,眼窩と眼瞼の異常に基づくものを含めれば報告例の50%にみられるとされている。臨床的には小眼球症,虹彩欠損,青色強膜,硝子体動脈遺残,視神経萎縮を伴つた先天緑内障4),両眼の瞬膜5)などの報告があるが,本症候群の眼病理組織像についての報告は少なくわが国においては未だみられない。このたびわれわれは18 trisomy syndromeの典型例を自験し,その眼球を検索する機会を得たので報告する。

後部強膜炎の臨床経過

著者: 渡辺千舟 ,   丸山俊郎 ,   中山周介

ページ範囲:P.401 - P.407

緒 言
 強膜炎の名のもとに,臨床上広く親しまれてきた疾患は,強膜前半部に主病変の場がある,いわゆる前部強膜炎に属する型である。
 これに対して,後部強膜炎は後極部附近におきる強膜の炎症病変の総称で,1902年Fuchs1)が,視力障害,球結膜の充血と浮腫,眼痛および乳頭,網膜の硝子体内への膨隆を認めた1例を,後部強膜炎として報告したのを初めとするが,今日までこの疾患の臨床例は極めて少なく,かつ,ほとんどが1例報告にすぎない。著者らはFuchs1)の診断基準に合致する例を1972年に経験して以来,現在までに3症例を経験したので,その臨床所見,経過について報告する。

進行性錐体機能不全症

著者: 児嶋守 ,   桜井泉 ,   岩田和雄

ページ範囲:P.409 - P.417

緒 言
 網膜錐体機能の進行性,選択的,広範囲の障害が後天性におこり,視力・色覚障害,昼盲を主症状とし,先天性全色盲と類似の臨床像を呈する疾患は進行性錐体機能不全症cone dysfunctionといわれ,過去いくつかの報告2,3,5,8,10,12,14,15,18,21)がある。
 本疾患は広範なcone dysfunctionを説明できる眼底所見に乏しく,Stargard病等の他の若年性黄斑部変性症とは区別される。しばしば球後視神経炎,弱視,ヒステリー,Albinismと誤診される8,10,12)。主症状は,視力低下,後天性色覚異常,昼盲などの明所視覚障害で,特に昼盲(差明)が特徴的とされる8,14)。桿体機能はほぼ正常で,一般に夜盲はない。本疾患の名称は報告者により異なり,cone dysfunction syndrome10),progressive cone Clegeneration3),progressive conedystrophy5)等がある。最近,Krill13)らは,本疾患が遺伝的傾向を示すことからdegencrationよりdystrophyを適切とし,progressiveの意を含めて,cone dystrophyと命名した。遺伝形式は多様であるが,常染色体優性3,5,13,21)の報告が多い。常染色体劣性8,10,14,18)や単独例2,18)の報告もある。

収縮性傍乳頭ブドウ腫(Contractile peripapillary staphyloma)−Retracter bulbi muscleの遺残と思われる症例

著者: 野中富夫 ,   竹田宗泰 ,   田辺裕子 ,   竹田真 ,   田川貞嗣

ページ範囲:P.419 - P.422

緒 言
 1966年J.B.wiseらは,傍乳頭ブドウ腫(Peri-Papillary staphyloma)で,その壁が間歇的に収縮する症例を収縮性傍乳頭ブドウ腫(Contractileperipapillary staphyloma)として報告した。今回われわれも検眼鏡的検査で眼底視神経乳頭部,および,これと接する網膜,脈絡膜に先天性の異常所見を認め,かつ,この部分に,奇妙な収縮運動が起る症例を経験したので報告する。

Usher症候群についての眼科的研究

著者: 大鳥利文 ,   法貴隆 ,   越智信行 ,   須田秩史 ,   羽白多恵子 ,   坪井俊児 ,   太田路子 ,   保倉賢造

ページ範囲:P.423 - P.430

緒 言
 Usher症候群とは,先天聾に網膜色素変性症が合併した場合に呼ばれる遺伝性の疾患である,この症候群には精神病,知能発育遅延やその他平衡障害などの神経学的異常を伴うことも報告されている1〜3)
 著者らは,過去3年間厚生省特定疾患網膜色素変性症研究班の事業の一つとしてUsher症候群の眼科学的研究をとりあげ4〜6),第一次眼同科検診および第二次精密眼科検診を行なうとともに,家系調査を行なつた。

劣性硝子体網膜変性症(Goldmann-Favre)の一家系

著者: 米倉欣彦 ,   玉置政夫 ,   中井義秀 ,   高芝紘之

ページ範囲:P.431 - P.436

緒 言
 硝子体と網膜が関連して起る疾患をHyaloido-retinal degenerationと呼称したのは,Wagner(1938)が最初である。その後,Ricci(1960)はこの疾患を遺伝形式により3型に分けた。
(1) Idiopathic retinoschisis in young persons with sex-linked recessive inheritance

メチルブロマイド中毒による眼障害

著者: 亀山和子 ,   土橋由美子 ,   内田幸男

ページ範囲:P.437 - P.442

緒 言
 メチルブロマイド(臭化メチルCH3Br,以下MBと略す)は殺虫剤として穀類,木材,線維,土壌,倉庫などの燻蒸に広く用いられている。また化学工業ではメチル化剤としての用途をもつ。かつては消火剤として使用されたこともある。常温常圧で気体,液化すると無色の液体となる。沸点は4.6℃,融点は−93℃である。クロロフォルムに似た微臭をもち,気体は空気の約3倍の重さがある。
 MBによる中毒は今世紀初めから知られ,産業医学領域で問題とされてきた。中毒はMB製造工場,使用者などに主として見られている。大量のガス吸入による重症例では致死的であり,軽症や慢性中毒では多彩な神経症状が起こる。眼症状としては視力,視野,調節,眼球運動,瞳孔の障害などがあげられる。視力障害に関しては,中心暗点,視神経褪色の所見などを伴い,視神経障害を思わせる記載があり,球後視神経炎と診断した報告もある。しかしまだGrant著Ocular Toxi-cology1)のようにMBの視神経炎に疑問符をつけたものもある。Oettingenの著書2)にもふれられていない。

"Cherry-red spot"を呈した年長児の同胞例について

著者: 和田眞知子 ,   植村恭夫 ,   北川照男 ,   大和田操

ページ範囲:P.443 - P.449

緒 言
 Cherry-red spotは,Lipidosisの診断上重視される眼症状であり,Lipidosisの中でもTay-Sachs病,Niemann-Pick病などのSphingolipidosisおよびGeneralized GangliosidosisなどのMuco-lipidosisに出現する。これら疾患の典型的なものの,ほとんどは乳児期に発症するもので,親がこどもの視力がないことを心配して来院し,眼底検査の結果Cherry-red spotを認められ,Lipido-sis発見の端緒となることもある。Lipidosisは主に神経組織や,肝,脾,リンパ節などの細網内皮系組織に代謝物質が異常に蓄積するものであり,精神障害,知能低下,視力障害,痙攣,筋緊張異常,麻痺,肝脾腫など様々な症状を呈することで知られている。Lipidosisに関しては,近年の組織生化学,電子顕微鏡的観察法の進歩により,蓄積する物質名を中心として再編成される方向にむいており,研究者の関心がたかまつているもので,新しい角度よりの再検討がなされようとしている。
 Cherry-red spotが,年長児期に発見されることは極めて稀であり,1933年にVillaniが報告して以来,現在までに21例の報告をみるにすぎない。

Chloroquine retinopathyの1剖検例

著者: 山田栄一 ,   森田敏和 ,   鈴木恒道 ,   前田尚広

ページ範囲:P.451 - P.459

緒 言
 Chloroquine retinopathyは1959年Hobbsら1)により初めて報告されて以来,多くの報告がなされて来た。chloroquin (以下chl.と省略)は,網脈絡膜に大量に蓄積し,網膜は不可逆的な破壊を受けることが知られている。人についての剖検報告も既に見られるが,われわれも1例を経験したので報告する。わが国では本症の剖検例はまだない。

連載 眼科図譜・244

若年性Gaucher病眼の病理組織化学

著者: 上野脩幸 ,   上野信也 ,   梶谷喬 ,   藤原順子 ,   小渕聖子

ページ範囲:P.368 - P.369

 著者らは本症例の眼底所見を既に本稿1)において,両眼底に点状白斑が見られ,螢光眼底撮影にて,白斑の部は極く軽微に背景螢光をblockする傾向がみられたが,色素により充盈されなかつたと報告した。患者は家族歴に特記すべきことはなく,2歳9カ月のときに某病院にて巨大な脾腫の摘出をうけ,病理組織学的にGaucher病と診断された。3歳3カ月のときに誘因なく右半身強直性痙攣をきたし,同時に意識消失をきたしたため川崎医大小児科へ入院した。その後症状は一時軽快したが7歳になり次第に痙攣回数が増加し,8歳2カ月に死亡した。著者らはその眼球を剖検する機会にめぐまれたので病理組織化学的に報告する。なおGaucher病の診断は生前,摘出脾臓の病理組識学的検索,骨髄生検2)によつて確定されている。眼球摘出後,右眼を10%中性フォルマリン固定し一部を凍結切片用とし,残りはツェロイジン包埋し光顕で観察した。詳細は既に報告した3)。後極部網膜の神経節細胞層に大きさが30〜80μで細胞膜の境界が比較的鮮明であり,原形質はPAS陽性の,多核巨細胞が少数ながら認められた(図1,2)。脈絡膜には無数のmacrophageが認められた。これらのmacrophageは円形または楕円形を呈しており大きさは10〜30μで多くは偏在性の核を1個有していた。

眼科臨床レントゲン診断学・3

撮影法(その3):眼内異物,涙道,CTスキャン

著者: 戸塚清

ページ範囲:P.472 - P.473

眼球内異物の位置測定
 眼部異物外傷の疑の患者が来院した場合には,とにかく一応,直ちに眼窩部の1方向,後→前方向の写真を1枚だけは撮つてみることが必要である。そしてもし写真上で,眼球相当部になにか鉄片等の存在を疑わせるような変化が発見された場合には,さらに重複撮影を行なうなり,あるいはコンベルグ氏法を行なうなりして,その異物の位置,眼球との関係を確かめる手段を構ずればよい。

眼科動物園・8

遺伝性白内障マウス(その2)

著者: 岩田修造

ページ範囲:P.474 - P.478

 眼異常が多発するマウスの中でも,劣性遺伝子により発現する遺伝性マウス白内障は特に珍らしいものであり,現在までにNakanoマウスといわれるcac系統種のみしか発見されていない。それも21年前に日本で発見8)されて以来,この劣性遺伝性白内障マウスのみが大切に継代保持されて研究に供されてきた。
 その研究とは,先月号で述べたごとく,1967年までに遺伝的解析8),形態学的観察18),タンパク質の変動9),1価陽イオンの変化10)などであり,さらにこのマウスの飼育・生長に関する種々の情報が蓄積された。そして,この自然発症モデルとしてのマウス白内障解明のために,次の研究のステップに入ることになる。

螢光読影シリーズ・2

網膜静脈分枝閉塞症

著者: 横地圭一

ページ範囲:P.519 - P.522

 司会 網膜静脈分枝血栓症branch occlusion of reti-nal vein,通称Astthromboseは,かなり頻繁に外来で遭遇する疾患ですが色々問題があり,特に視力の予後などを考える場合は,症例ごとにそれぞれの特殊な事情を検討する必要があります。今日は少し変わつた症例を用意してもらいました。まずその大体を話してもらいましよう。
 H.M. 患者(52-5053,K.N.,F 52-956)は60歳の女子で,約20日前から自覚している左眼の霧視と傍中心暗点を主訴として来院しました。視力は右0.9(1.2×+1.0D),左0.02(0.04×+1.5D)。初診時の血上圧は190/110mmHgでこれは現在治療中です。眼圧は左右とも14mmHg,前眼部には特に異常はなく,軽度の初発白内障が両眼にあります。左眼の眼底所見ですが,上耳側静脈の支配領域に火焔状の出血があり,その中に軟性白斑を数個含んでいます。出血は黄斑部にまでかかり,黄斑部は浮腫状で黄斑部の下方から乳頭側にかけてcircinata様に硬性白斑が出ています。

総説

角膜熱形成による円錐角膜の治療

著者: 糸井素一

ページ範囲:P.371 - P.376

緒 言
 私たちが円錐角膜の治療のため,角膜熱形成という方法を開発してから1〜4),すでに5年たつた。
 普通角膜の表面を加熱すると,角膜のコラーゲンが熱収縮をおこすために,角膜の彎曲が扁平化するが,同時に細胞や組織が熱障害を受けて,角膜混濁をおこす。しかし,特別な条件下,具体的には,90℃で1秒間以内熱した場合は,障害は可逆的であとににごりを残さずに,角膜の形だけを変えることができる。

臨床報告

新しい色覚検査表の試作

著者: 田辺詔子 ,   市川宏 ,   深見嘉一郎 ,   川上元郎

ページ範囲:P.479 - P.487

緒 言
 先天色覚異常の検査の第一段階は色覚検査表である。検診などの際それだけである種の診断がなされてしまう場合も非常に多い。その是非はさておいて,色覚検査表だけでも大過ない判定のできる表が望まれる。1973年改正された学校保健法に「色覚は色覚異常検査表を用いて検査し,色覚異常の有無及び程度を明らかにする」とあるため学校関係者からもこの目的に合う色覚検査表の要望が強い。
 今まで各種の色覚検査表の成績の報告は枚挙に暇がない。これらの報告を総括すると,検出表としては石原表の数字表(国際版)が定評があり,これをpassする異常者はあるけれども例外的なもので,正しく使えば異常者をほとんど全部検出できると思われる,しかし学校など検診の場で国際版石原表が使われていることは少なく,一般に学校用石原表が使われている。学校用石原表は国際版に比べて検出能力が劣る。著者の1人は学校用でpassしたもの82名を国際版とアノマロスコープで再検査し,その中から19名の異常者を発見している1)。東京医大表,AO-HRR表も検出能力は石原表国際版に及ばない。

眼内細網肉腫の2例と診断上の問題点

著者: 大平明彦

ページ範囲:P.489 - P.494

緒 言
 悪性リンパ腫全体のうち,眼にも腫瘍細胞の浸潤が認められたものは1.5ないし3.1%であつたという報告がある1,2)。眼悪性リンパ腫のうち,眼内細網肉腫は2%以下の頻度と考えられる3)。眼内細網肉腫はこの様に稀な疾患であり,現在眼病理学的に証明された眼内細網肉腫は29例報告されている3〜19)。日本では吉岡らによる1例の報告があるのみと考えられる4)。しかし,近年日本では細網肉腫の増加は著しく20),眼科医も注意を払うべきであろう。東大眼科では過去7年間に2例経験した。
 眼内細網肉腫は,ブドウ膜炎症状を呈する事が多いとされている5,17)。われわれの経験した2例のうち,1例は前部ブドウ膜炎症状は示さなかつたが主として乳頭炎様症状を呈した。他の1例は,著明な前房蓄膿を伴つた虹彩毛様体炎の症状を示した。いずれの例も初期の診断が困難であり,診断・治療上の問題があつた。死後行なわれた病理解剖の所見を含めて報告する。

Behçet病患者の血液凝固能について

著者: 安藤文隆 ,   佐竹成子 ,   加藤美代子 ,   鯉江捷夫 ,   神谷忠 ,   緒方完治

ページ範囲:P.495 - P.499

緒 言
 Behçet病患者では,血沈値の促進しているものが多く,増悪期の前後にはより著明になつているものが多い。そして血沈促進に関与する可能性のある血清中の因子としては,アルブミン量,グロブリン量,A/G比,γ-グロブリン量,ブイブリノゲン量等が考えられるが,これらの因子と血沈値との間の相関関係を調べたところ,フィブリノゲン量と血沈値との間に,きわめて高い正相関が認められ,この血沈の促進因子は,主にフィブリノゲンであることがわかつた1)
 一方,Behçet病患者の血液凝固および線溶系については,Chajekら2,3)は,フィブリノゲンと第Ⅶ因子活性の著明な上昇と線溶能の明らかな低下を認め,中山ら4)は血小板凝集能の上昇を報告している。また斉藤5)は,眼発作の2〜3日前から線溶能は低下し,眼発作期には低値が続き,その後しだいに上昇して数日のうちに間歇期の値にもどると述べている。そして,血栓性微少循環障害がBehçet病の組織の初期病変としてあり,これが多核白血球遊出を伴う急性炎症を誘発する6)との説につながつている。

カラコルム山地より下山の途中に発症したと思われるブドウ膜炎の1例

著者: 湯口修次 ,   馬嶋昭生

ページ範囲:P.501 - P.504

緒 言
 高山病は1590年d'Acosta1)によりはじめて記載されてから,多方面にわたる研究がなされているが,その本質はいまだ不明である。高山病の眼症状に関しても,1839年Tschudi2)により報告されてから種々の報告があるが,眼底出血以外はあまり報告されていない。
 今回著者らはカラコルム山地に登山し,その下山中に発症したと思われる興味あるブドウ膜炎の1例に遭遇し,その臨床経過を観察する機会を得たので,ここに報告する。

眼窩内plasmacytomaの1例

著者: 岳野圭明 ,   朝長正道 ,   沢田稔夫 ,   大島健司 ,   峯崎仁

ページ範囲:P.505 - P.509

緒 言
 plasmacytomaは網内系とくに骨髄に由来する腫瘍であり,本来多発性でmultiple myelomaとして知られている。時に単発性(solitary),または骨髄外性(extramedullary)の発生もあるが,これらは一般にいずれ多発性となる初期像にすぎないとか,あるいは多発性のものの異型(variant)であると考えられている。そしてその発生頻度も稀で,extramedullaryとしては呼吸器,鼻咽腔のものが大部分であり,眼窩内のplasmacytomaは大変珍しく本邦での報告例はみられない。われわれは最近この眼窩内に原発したplasmacytomaを経験したので報告する。

カラー臨床報告

網膜硝子体病変を伴つた朝顔症候群の2例

著者: 大滝正子

ページ範囲:P.465 - P.469

緒 言
 朝顔症候群は1970年にKindler1)が特異な形態を示す視神経乳頭の先天異常を独立した1疾患として報告したものである.近年散見される報告によると乳頭部第一次硝子体過形成遺残と朝顔症候群との関係,また網膜剥離を生ずる原因等に関心が持たれている。著者は典型的な朝顔症候群に網膜剥離を併発した1例,および乳頭上の白色塊より一条の索状物が硝子体中へ伸び,水晶体後面に付着している所見のみられた1例を経験し細隙灯顕微鏡写真ならびに螢光眼底撮影の立場から若干の検討を加えたので報告する。

眼の臨床局所解剖

白内障手術に関連した局所解剖(その1)—球後麻酔と瞬目麻酔

著者: 清水昊幸

ページ範囲:P.470 - P.471

 球後麻酔と瞬目麻酔が効果的に行われれば白内障手術の術中合併症はほぼ完全に防止できる。中でも硝子体脱出は,これを完全に効かせればその発生率が1〜2%の水準に低下する。球後,瞬目麻酔にあたつては,第1にその目的をはつきり認識し,第2に外科的局所解剖に精通し,第3に適正な方法で実行し,第4に効果を確認することが必要である。

銀海余滴

緑内障濾過手術における結膜弁作製の問題

著者: 生井浩

ページ範囲:P.511 - P.513

 最近緑内障に対し,手術用顕微鏡下に行なうTrabeculectomy (シュレム氏管線維柱切除術)が流行している。これはCairns1)(1968,1972),Watson2)らによつて発案されたものであるが,その手術操作の過程と結果から考えて,明らかに濾過手術である。
 ところで過去において実に種々様々の濾過手術が報告,実施されているが,その最も代表的なものはイギリスの眼科医Robert Henry Elliotによつて創案されたSclerocorneal trephining (強角膜円鋸術或いは管錐術)であつた。Elliotは1864年インドのボンベイに生まれ,長じてロンドンのSt.Barcholomew's Hospitalで医学教育を受けたが,28歳の時,軍籍に身を投じ,インドのマドラスに長く駐屯,大佐まで昇進し,同時に国立眼科病院の院長,マドラス医学校の眼科教授になつた。しかし1913年病気のため,ロンドンに帰国した。マドラスではおびただしい白内障と緑内障の患者の手術の体験をしたが,彼の名を不朽ならしめたのは,何といつても強角膜円鋸術の創案である。彼がこの手術法を始めて発表したのは1909年で,雑誌Ophthalmoscope 7巻に短い論文を出し,さらに翌年再び同誌に論文を載せている。

国際眼科学会に向けて

ラウンドテーブルディスカッション参加者のプロフィール—Optic-neuropathy

著者: 井街譲

ページ範囲:P.515 - P.517

 網膜神経節細胞より出発したノイロンが集約されて,約80〜100万本の神経線維の束としての視神経すなわち乳頭より後走してC.G.L.に到る間の障害についてのround-table-discussion(Ⅳ)である。
 1957年私は視神経炎を原因別に10分類を行つて,
 (1)脱髄性疾患(M.S.,Devic氏病Schilder氏病等)

GROUP DISCUSSION

弱視・斜視

著者: 中川喬

ページ範囲:P.523 - P.530

1.スクリーニンゲとしてのステレオテストの評価
 学校健康診断に眼位の検査が重視されるようになつてから,斜視のスクリーニングの方法としてステレオテストが推漿されてはいるが,一方,間歇性斜視が見逃されやすいのが欠点であるともいわれている。そこで,スクリーニングの方法としての近見ステレオテストの評価をしてみたい。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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