連載 眼科図譜・244
若年性Gaucher病眼の病理組織化学
著者:
上野脩幸1
上野信也2
梶谷喬3
藤原順子3
小渕聖子3
所属機関:
1岡山大学医学部眼科学教室
2川崎医科大学眼科学教室
3川崎医科大学小児科学教室
ページ範囲:P.368 - P.369
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著者らは本症例の眼底所見を既に本稿1)において,両眼底に点状白斑が見られ,螢光眼底撮影にて,白斑の部は極く軽微に背景螢光をblockする傾向がみられたが,色素により充盈されなかつたと報告した。患者は家族歴に特記すべきことはなく,2歳9カ月のときに某病院にて巨大な脾腫の摘出をうけ,病理組織学的にGaucher病と診断された。3歳3カ月のときに誘因なく右半身強直性痙攣をきたし,同時に意識消失をきたしたため川崎医大小児科へ入院した。その後症状は一時軽快したが7歳になり次第に痙攣回数が増加し,8歳2カ月に死亡した。著者らはその眼球を剖検する機会にめぐまれたので病理組織化学的に報告する。なおGaucher病の診断は生前,摘出脾臓の病理組識学的検索,骨髄生検2)によつて確定されている。眼球摘出後,右眼を10%中性フォルマリン固定し一部を凍結切片用とし,残りはツェロイジン包埋し光顕で観察した。詳細は既に報告した3)。後極部網膜の神経節細胞層に大きさが30〜80μで細胞膜の境界が比較的鮮明であり,原形質はPAS陽性の,多核巨細胞が少数ながら認められた(図1,2)。脈絡膜には無数のmacrophageが認められた。これらのmacrophageは円形または楕円形を呈しており大きさは10〜30μで多くは偏在性の核を1個有していた。