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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科32巻4号

1978年04月発行

雑誌目次

特集 第31回日本臨床眼科学会講演集 (その4) 学会原著

点眼量と点眼液粘度が薬物効果に及ぼす影響

著者: 菅谷真 ,   長瀧重智

ページ範囲:P.563 - P.570

緒 言
 点眼した薬物の眼内移行に,剤形が及ぼす影響についての研究を,その作用部位から大別すると次のようになる。
(1)結膜嚢における薬物動態への影響

視路交叉異常が推定される斜視3例の比較

著者: 筒井純 ,   深井小久子 ,   中村ヤス子

ページ範囲:P.571 - P.575

緒 言
 視路の交叉異常が推定されるヒトの斜視例について筒井,深井1,2)は現在までに2症例と,その発生頻度3)について報告した。今回は更に1例が宮崎県で検出され,川崎医大で精密な検査を行うことができた。本例は中村4)が1975年に「交代性非対称むき追従運動を示す外斜視の1例について」として記載した症例であるが,その当時は視路交叉異常に関する推定がなされていなかつた。非常に特有な眼球運動が注目されていた。ここに過去の2例と共に3例の比較を行つた。
 シャムネコの視路異常の発見はGuillery5)が1969年にはじめて行い,動物実験で6〜13)次々と確認され,Guillery type strabismusとさえ称せられるようになつているが,ヒトでその可能性を指摘した症例の報告は,私ども1)が最初である。

日本人の螢光虹彩血管造影について—1.虹彩色素との関係

著者: 海野さち子

ページ範囲:P.577 - P.580

緒 言
 前眼部螢光造影法については,すでに,外国においても,わが国においても,多くの手技およびその結果についての報告がみられている。しかし,前眼部螢光造影法の中でも,螢光虹彩血管造影法については,外国における報告ほどには,わが国では報告はみられていない,これは日本人の虹彩に存在する褐色の色素のために,青色虹彩のような鮮明な像を得ることが困難であるからとされている。
 今回,著者は,日本人の虹彩の中から種々の色調の虹彩を選び,それぞれについて,螢光虹彩血管造影を行い,撮影される程度と,虹彩色素との関係について,比較検討した,また,日本人の虹彩色調の分布についてあわせ調べてみたので,その結果を報告する。

先天性下直筋異常による上転障害について

著者: 丸尾敏夫 ,   久保田伸枝 ,   有本秀樹

ページ範囲:P.581 - P.588

緒 言
 1眼の上転障害としては,中枢神経性のdoubleelevator palsy,末梢神経性の動眼神経麻痺,筋性の内分泌性眼筋ミオパチー,機械的運動障害のblowout fractureをはじめ,多くのものが知られている。上転障害が下転筋の異常に起因するものとして,上述の内分泌性眼筋ミオパチー,blo-wout fractureのほか,動眼神経麻痺後の異常連合運動や垂直眼球後退症vertical retraction syn-dromeおよび上斜筋腱鞘症候群がある。
 先天性の下直筋の拘縮あるいは付着部異常に起因する上転障害については,すでに二,三の報告はあるが,わが国では明らかな報告はないようである。私どもは帝京大学開院以来8例のこのような先天性の下直筋異常に起因する上転障害の症例を経験し,すべてに手術を行つて治癒あるいは軽快させた。外眼筋の筋電図検査を行つた症例では下直筋の異常神経支配を認め,下直筋の病理組織所見では,予想されていたfibrosisは否定された。

未熟児出生児の視機能について(その1)

著者: 山本節 ,   文順永 ,   初川嘉一

ページ範囲:P.589 - P.594

緒 言
 私たちは1971年以来,兵庫県立こども病院における未熟児網膜症の発症,管理に関する種々の報告1〜7)を行つてきたが,未熟児で眼科的に観察して来た小児の数も相当数に達した。一方,未熟児を救命して生き残つた症例中に,種々の障害を伴つているものがいることがわかつてきており,積極的に救命しなければ障害児も生れなかつたのでないかというジレンマに陥り一つの問題になつている。
 この時点において未熟児出生児の視機能を検査することは,今まで行つてきた管理方法で誤りがなかつたかどうか,反省する一つの材料にもなるとともに,今後の未熟児保育管理上にも意義あることと考えて行つた。

Phaco-emulsificationとaspirationによる白内障手術について(続報)

著者: 馬嶋慶直 ,   新美勝彦

ページ範囲:P.595 - P.605

緒 言
 Phaco-emulsifier aspiratorによる白内障手術について1977年われわれ1)はその手術手技の概略と30例35眼の白内障手術について術中,術後の合併症とその予後,核乳化に必要なultrasound timeの限界について発表し,更に同年本術式のstan-dard methodとneglect method2)についても検討し,更に1977年馬嶋3)は有核白内障における本術式の手術手技について報告した。その後更に手術例を加え6カ月から約1.5年の術後観察例が102例128眼に達したので,このうち30歳以上の症例で有核白内障と考えられた100眼に対し検討を試みると同時に本手術の適応を選択するに必要な事項について考察し,二,三の知見を得たので報告したい。

頭部傾斜による両眼の反対回旋に関する研究—第3報 正常者における二,三の条件下における成績および臨床例における研究

著者: 森礼子

ページ範囲:P.607 - P.613

緒 言
 著者は第1報1),第2報2)で反対回旋(Counterrolling,以下CRと略す)の測定方法および頭部傾斜速度6°/secのときの動的反対回旋(Dyna-mic CR,以下DCRと略す),静的反対回旋(Static CR,以下SCRと略す)の様態について述べてきた。その後もひき続き数十例にのぼる対象について測定したが,SCR,DCRにおける両眼の協調性は正常者の場合はおどろくほど良好で,右眼と左眼のCRの大きさが0.1°のくるいもなく一致することもまれでなく,この測定方法がいかに正確であるかを痛感した。
 本報では,頭部傾斜速度を0.6°/secに変更した。その理由は,できるかぎり半規管等,他にCRに影響を与えうる要素の介入を除くためと3〜6),Bielschowsky Head Tilt Test (以下BHTTと略す)の反応を詳細に観察するためである。

Rebound Nystagmusの診断的意義—眼振発生機構に対する考察

著者: 山崎篤巳 ,   鈴木高遠

ページ範囲:P.615 - P.621

緒 言
 反発性眼振(Rebound Nystagmus)は1973年Hoodらによつて提唱されたもので,側方注視麻痺性眼振が時間の経過とともに減衰し(時に静止した後逆転することもある),正中視に戻すと側方注視時と眼振の方向が逆転し,この眼振も時間の経過とともに減衰消失する特異な眼振である。彼らは慢性の小脳障害(特に小脳半球病巣)にこの眼振を認め,脳幹障害だけではこの眼振を認めないことから小脳障害の有無の診断に有用であると述べている1)。この眼振が小脳病変に特異的であるかどうか,また眼振の発生の機構はどうなつているかなどが,今後検討していかなければならない重要な点である2)
 わが国においては耳鼻科領域でわずかに報告があるが3〜5,12),眼科領域では報告がない。しかし,最近われわれは眼科初診患者の2症例に反発性眼振を認め,病変部位診断に非常に重要な眼振であることを脳外科手術時の病変部位確認から知つた。そこで,脳外科的に小脳病変部位が確認できた2症例について,術前に記録分析した反発性眼振の特徴,検査法について詳しく述べる。また,反発性眼振の発生機序につき,注視眼振(漏洩積分器眼振)の発生機構のモデルを提示し考察を加え,新しい小脳片葉障害説について述べる。

未熟児性近視の眼軸長計測

著者: 太根節直 ,   伊藤清治 ,   久城初江 ,   神野順子

ページ範囲:P.622 - P.625

緒 言
 近年の諸家の研究により新しいentityとして認められつつあり,且つ注目を集めてきた未熟児性近視(Myopia of prematurity)1〜6)の眼軸長,ならびに眼内屈折要素軸長の相互関係の解明を日的として,超音波生体計測を行い,成熟児のいわゆる若年性近視とは異つた興味ある知見が得られたのでその大要を報告する。

眼底所見を伴わない全色盲3型の脳波—後頭部脳波のパワースペクトル

著者: 中塚利夫 ,   小野憲爾

ページ範囲:P.633 - P.638

緒 言
 全色盲でもつとも良く知られているのは先天性で桿体一色覚と呼ばれるものであるが,近年,類似した臨床像を呈する後天性のものの存在が報告されている。一般に進行性錐体ジストロフィーなる名称が用いられているこの病型は,視力障害,色覚障害,昼盲は共通するものの,眼底所見とりわけ螢光眼底写真で黄斑部に異常を有する点が異なる1〜3)。最近,大庭は眼底所見を伴わない進行性錐体ジストロフィー(unusual form)を詳細に報告し,新しい臨床疾患である可能性を提言した4〜6)。実際このような症例は存在すると老えられるが7),その場合,発症の時期,進行性の有無等の既往歴が明確でないと鑑別の困難さが当然ながら予測される。
 今回,著者はこの両者に中枢性の後天性全色盲を加え,従来の報告ではみられない脳波の検討を,主としてパワースペクトルの面から行なつた。その結果,これら眼底所見を伴わない全色盲の後頭部脳波は特徴ある所見を呈し,診断的価値が高いものに思えたのでここに報告する。

視細胞機能の他覚的検査法と臨床応用

著者: 河崎一夫 ,   米村大蔵 ,   田辺譲二 ,   山本幸子

ページ範囲:P.639 - P.645

緒 言
 人眼視細胞活動を他覚的にみる手段には,fun-dus reflectometry13,14,20)やその変法10,15)のほかにはERGがあるにすぎない。Fundus reflectometryには特殊の手技と装置および被験者の協力がとくに要求され,その臨床応用は目下容易ではなく,またERGとても通常の観察対象であるa波やb波などのon応答は視細胞活動そのものの代弁者ではない。本報では錐体電位を反映するとされるERG off応答の急峻部に着目し,その分光感度を正常者および色覚異常者で検討した。

先天性色覚異常者の色命名能力に関する研究—第3報 背景を黒にした場合

著者: 深見嘉一郎

ページ範囲:P.649 - P.653

緒 言
 先天性色覚異常者の色命名能力について,第2報1)において,背景白での視標の直径を小さくした場合の誤答内容について検討した。今回は背景色を黒にして同様の実験を行い,白背景の場合と比較検討を行つた。

未熟児網膜症瘢痕期の視機能に関する研究—特に屈折諸要素について

著者: 日比野由子 ,   高橋美代子 ,   馬嶋昭生

ページ範囲:P.655 - P.662

緒 言
 未熟児網膜症瘢痕期の合併症として屈折異常,特に近視が多いことはすでに多くの報告1〜8)があるが,その発生原因,機序についてほとんど解明されていない。わが国でも,生存した極小未熟児の多くが学童期に達した今日,それらの症例について網膜症瘢痕期病変の有無,程度と近視についての関係をしらべ,その成立について検討することは重要なことである。このことは現在行われている光凝固などの治療を受けた症例が成長した後の視機能を将来において比較する上からも,また治療の適応時期,方法を再検討する上からも有意義であると考える。
 Birge3)は本症に起因した近視に注目し,これらの近視の共通点として,高度で,停止性で,進行性の"悪性近視"に似ているがそれとも異なる新しい型の近視であるとし,その成因には,網膜あるいは脈絡膜にもたらされた血管性変化による可能性を考えた。

連載 眼科図譜・245

Kleeblattschädel syndromeの1例

著者: 高橋捷允 ,   早野三郎 ,   佐治董豊

ページ範囲:P.546 - P.547

 症例:生後20日目の男児,母24歳,父30歳の健康な両親の第1児として満期安産した。生下時体重は3,680g,家族歴,妊娠歴ともに特記すべきものはない。
 現症:頭部は長く扁平でクローバー葉型で,四肢は短縮,肘,手,足関節は硬縮状で両手足の第1指は内上方に変位している(図1)。

眼科臨床レントゲン診断学・4

各論(1):眼窩腫瘍(その1)

著者: 丸尾敏夫 ,   桐淵利次 ,   竹内真

ページ範囲:P.714 - P.715

 眼窩のレントゲン診断にあたつて,単純撮影はもつとも基本的であり,これに断層撮影を適宜併用することが,まず行われるX線撮影である。眼窩疾患のうち,もつとも頻度が高い眼窩腫瘍の場合,単純撮影あるいは断層撮影によつて,観察すべき所見としては,(1)眼窩の拡大,(2)上眼窩裂の拡大,(3)視神経管の拡大,(4)軟部組織の陰影増強,(5)骨破壊,(6)骨過形成,および(7)石灰化があげられる。以下,眼窩腫瘍の単純撮影および断層撮影によるレントゲン診断について述べてみたい。

眼科動物園・9

ニジマスの白内障

著者: 岩田修造

ページ範囲:P.718 - P.722

 ニジマス(Salmo gairdneri irideus)は北米大平洋岸の河川の原産魚で,明治10年に1万粒のニジマス卵がアメリカ水産委員から贈られて,わが国での養鱒事業が始まつたといわれる。
 釣をスポーツとするアメリカでは,ニジマスは猟魚(game fish)として天然の湖や河川に放流されているが,日本では養殖魚として家畜化されて,ヤマメ(Oncorhynchus masou ishikawae)やアマゴ(Oncor-hynchus rhodurus macrostomus)などの在来マスとともに日本各地で養殖され,冷凍食品として成魚が逆にアメリカに輸出されている。

座談会

中国の医療について

著者: 中島章 ,   早野三郎 ,   塚原勇 ,   箕田健生

ページ範囲:P.549 - P.561

 箕田(司会) 本日は,三人の先生方,学会が終わつたばかりでお疲れのところですが,中国の医療について座談会を開かせていただきます。
 申すまでもなく,日本と中国とは一衣帯水の隣国でありまして,両国の医学の交流は,非常に古い歴史がありますが,ただ,1949年に中華人民共和国が成立して以来,1972年日中両国の国交が回復するまでの間は,両国の正式な国交はございませんでしたので,その間医学の交流も,必然的に非常に低調でございました。しかし1972年以降両国の国交が正式に回復しまして,医学の交流も次第に活発になつてまいりました。眼科領域におきましても,本日お集まりの3人の先生方も,最近相次いで中国を訪問され,各地を視察されて来られました。本日は,特に1週間前に中国を回つてこられたばかりの塚原先生のホットな情報を中心にいたしまして,中国の医療についていろいろお話し願いたいと思います。

臨床報告

瞼裂縮小症の形成手術

著者: 田辺吉彦 ,   杉田潤太郎 ,   柳田和夫 ,   小宮山和枝

ページ範囲:P.673 - P.677

緒 言
 瞼裂縮小症は眼瞼下垂,逆内眼角贅皮を伴うtriad syndromeとしてくることが多く,わが国では比較的多い先天異常であり,散発例もあるが,常染色体優性遺伝をするといわれている1〜3)。この疾患は上記3症候の他にも種々の所見があるが,R.Kohnら3)はtelecanthusを必発としている。そうしてこの患者の顔貌を著しく醜くしている主な因子はこの四つである。それゆえ,この手術的矯正には上記4症候の修正が必要である。すなわち,瞼裂狭小には外眼角形成術,眼瞼下垂には下垂の手術,逆内眼角贅皮には内眼角形成術を行ない,更にtelecanthusに対しては内砦靱帯短縮術を行なうのであるが,内眼角および外眼角の形成手術には非常に多くの方法が発表されている。われわれは最近この2症例に対して,内眼角形成にはMustardé4)法を,眼瞼下垂に対しては,1例は上眼瞼挙筋短縮術,今1例にはズプラミッドによる吊上法を行ない,外眼角形成には,水平切開に三角弁を組合せた作図を考案して(図9)三角弁を上眼瞼へ組入れるという方法で手術をし,ほぼ満足すべき結果を得た。本疾患の手術に関する論文は我国では比較的少ない5〜8)ので,ここに報告したい。

両側性に発生した内頸動脈海綿静脈洞部の巨大動脈瘤

著者: 中尾文紀 ,   鍋島種信 ,   古賀一誠

ページ範囲:P.678 - P.682

緒 言
 頭蓋内に同時に2個以上の動脈瘤が存在する多発性脳動脈瘤は脳動脈瘤の症例全体の9〜21%1)に存在するといわれ,それほど珍しいものではない。しかしながら内頸動脈海綿静脈洞部の両側性の動脈瘤はこれまで海外では22例,本邦では3例の報告しかなく,きわめて稀な疾患である2)。このたび著者らは21歳男性で左の外転神経麻痺で始まり脳血管撮影の結果,両側の内頸動脈海綿静脈洞部に巨大な動脈瘤が発見された症例を経験したので報告する。なお著者らの症例は両側性内頸動脈海綿静脈洞部の動脈瘤のこれまでの内外の報告例のなかでは最年少である。

涙丘より発生したSebaceous Adenomaの1例

著者: 本多繁昭 ,   杉原甫

ページ範囲:P.683 - P.684

緒 言
 涙丘の腫瘍に遭遇することは稀である。内外の文献をみても報告は比較的すくなく,特に涙丘のSebaceous adenomaの報告はすくない。著者らの調べた限りでは,わが国ではまだ報告されていないようである。今回著者らは涙丘より発生したsebaceous adenomaの1例を経験し組織学的に検討することができたので報告する。

カラー臨床報告

収縮性異常運動を伴う視神経乳頭欠損症の1例

著者: 丸尾亨 ,   内薗久人

ページ範囲:P.665 - P.671

緒 言
 視神経乳頭の先天異常特にpitに黄斑部の扁平剥離が高頻度に合併する事はよく知られているが,その成因については諸説があり,未だ一致した見解はない。一方,最近少数ではあるが,乳頭近傍に異常な動きを伴うpit,peripapillary staphylomaの存在する事が報告され,その原因について種々論議されている。
 今回,著者らは片眼性の視神経乳頭形成異常に,黄斑部扁平剥離及びその部の異常な運動を伴つた1例に遭遇した,諸検査の結果と共にその本態について興味ある知見を得たので報告する。

薬の臨床

原発開放隅角緑内障患者に対する1%bupranolol点眼治療効果

著者: 荒木實 ,   高橋広 ,   植村恭夫

ページ範囲:P.685 - P.695

緒 言
 原発開放隅角緑内障の薬物療法として,通常,cholinergic agent(pilocarpine)と,catechola-mine(epinephrine)の点眼が行われ,この療法で不十分な場合はcarbonic anhydrase inhibitor(acetazolamide)の内服を併用するのが原則である。これらの薬剤が緑内障治療薬として登場して既に久しく,それぞれに,利点・欠点があり,これらの欠点を補い,またこれらによる眼圧下降の認められない例にも有効な治療薬の出現が望まれてきた。
 最近,戻水の産生,流出機構と,交感神経受容体に関する研究が進み,特にβ受容体の関与が注目されている。このような趨勢の中で,β受容体遮断剤の眼圧下降作用に関する多数の論文が報告されている。

Bumetanideの眼圧に及ぼす影響

著者: 蒲山俊夫 ,   森川節子 ,   服部美里 ,   環龍太郎 ,   小林直樹 ,   小池裕司

ページ範囲:P.696 - P.700

緒 言
 緑内障に対する全身投与の眼圧下降剤は,炭酸脱水酵素阻害剤,高滲透圧剤等があるが,これらの薬剤については,なお,満足し得る結果を得ないこともあり,更に新しい眼圧下降剤の開発が望まれている。
 今回,われわれは三共株式会社より新しい利尿剤で,主としてヘンレ係蹄を含む遠位部ネフロンに作用し,この部位のNaの再吸収を抑制することにより強力な利尿作用を有する1)というBumetanide(商品名Lunetoron)を眼圧下降の目的で使用する機会を得て,これが著しい効果を示すことを経験したのでここに報告する。

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「眼科手術研究会」掲載にあたつて

著者: 三島済一

ページ範囲:P.701 - P.701

 手術による眼疾患の治療は,眼科治療学の根幹をなすもので,その技術的精密さと特殊性のために,眼科学が一般外科学から独立してぎた。このような歴史的背景にある眼科手術学は,手術用顕微鏡の導入とそれに伴う幾多の技術革新を基礎として,近年全く装いを変える程の大きな分野に発展してきました、,わが国においては,昭和45年永田 誠,杉田慎一郎,湖崎 弘,木暮文雄等の各氏の努力により,顕微鏡手術研究会が発足し,眼科顕微鏡手術の普及に功績があつた。この研究会は,その後,発展的解消を遂げ,昭和52年,松山における顕微鏡手術の会において眼科手術一般を研究発展させるための新しい組織として「眼科手術研究会」を新たに発足させることが協議された。その発起人は,次の通りである。
 稲富昭太,小暮文雄,湖崎 弘,坂上 英,清水昊幸,杉田慎一郎,高久 功,竹内 光彦,塚原 勇,永田 誠,林 文彦,早野三郎,久冨 潮,深道義尚,福田雅俊, 馬嶋昭生,松井瑞夫,真鍋礼三,丸尾敏夫,三島済一

眼科手術研究会

新入医局員のための顕微鏡下白内障手術に対するわれわれの指導要領について

著者: 清水昊幸

ページ範囲:P.702 - P.706

緒 言
 白内障手術は過去と現在とを問わず代表的な前眼部手術と目されている。その理由は本手術が前眼部手術に必要とされる種々の手術手技をほとんど全部含んでいて,本手術に習熟すれば少なくとも技術的には他の前眼部手術も比較的容易に行うことができるようになると考えられるからである。同時に本手術は内眼手術中最も数が多く,手術の定型を学ぶのに適している。したがつて新入医局員をophthalmic surgeonsとして教育する上で本手術の修練は最も重要な地位を占める。それゆえその教育方法はすべての眼科学教室によつて卒後教育の中心的課題の一つとして論議さるべき事柄である。
 これここに当眼科学教室の訓練方法と成績を紹介するゆえんである。

人工水晶体Four Loop Lens手術中の合併症—特に硝子体膨隆および脱出に対して

著者: 竹内光彦

ページ範囲:P.707 - P.713

緒 言
 普通型通りの水晶体全摘出では硝子体脱出を起こさないで手術を完了させることができる。しかるに人工水晶体を挿入する因子が加わることにより硝子体脱出を起こす症例が多くなる。少量の硝子体脱出したものでは人工水晶体挿入は術後障害とならず多くは合併症を残さないが,大量に硝子体脱出を生じた場合には挿入が困難となり,あえて挿入しても線状角膜炎,葡萄膜炎を強く起こし,そのもつとも予後不良なのは角膜内皮障害(Endothelial corneal dystrophy,ECD)や黄斑部嚢状浮腫の原因となり,視力回復を期待しえなくなる。
 一方,水晶体全摘出後硝子体面が後退しているような症例では人工水晶体の挿入は容易である。しかし何時もこのような症例ばかりではなく硝子体面の膨隆の強い症例では6時の虹彩にループを挾めるのは非常に困難であり,操作中容易に硝子体脱出を偶発するものである。

眼の臨床局所解剖

白内障手術に関連した局所解剖(その2)—結膜弁・角膜弁の形成

著者: 清水昊幸

ページ範囲:P.716 - P.717

 はじめに:白内障手術の術後合併症はそのほとんどすべてが術創の癒合不全に由来する。浅前房,瘻孔形成はいうに及ばず,前房出血然り,緑内障然り,術後感染症もまた然りである。術創が1次的に水密性に閉じ,その後の治癒過程が円滑ならば,重篤な術後合併症は網膜剥離を唯一の例外としてほぼ完全に防止できる。
 解剖(第1図):角膜輪部を中心として眼球各組織の関連をみる。球結膜①は輪部の最も角膜寄りの点で角膜上皮⑤に移行し,この点からボーマン膜が現れる。球結膜の下には前部テノン嚢(anterior tenon)②がこの移行部にまで達している。後部テノン嚢③は眼筋④を覆つているので筋付着部で強膜に付着し,当然のことだがこれより前に位置する強膜は覆つていない。筋付着部付近ではテノン嚢は前部テノンと後部テノンが重なり合い,二重になつている。角膜輪部⑥は角膜組織と強膜組織が人り交つているので半透明である。この部は結膜,前部テノン嚢を剥し露出すると青味がかつてみえるので,青色輪部(blue limbus)または外科的輪部(surgicallimbus)とも呼ばれる。この青色輪部の強膜端の真下にシュレム管⑦が位置している。これより強膜側によると強膜岬⑧があり,ここに毛様筋⑩が付着している。強膜とブドウ膜が直接結合しているのは視神経乳頭周辺とこの強膜岬の部だけで,あとは両者の間はポテンシャル・スペースとしての脈絡膜下腔⑨で隔てられている。

国際眼科学会に向けて

ラウンドテーブルディスカッション参加者のプロフィール—中毒性眼疾患/視細胞の病理(Pathology of visual cells)

著者: 宮田幹夫 ,   水野勝義

ページ範囲:P.723 - P.725

 薬剤の副作用であるにせよ,環境汚染物質による中毒によるものであるにせよ視覚系の中毒は社会生活に対する適応力の欠落として非常に大きな問題である。わが国の大量の薬剤消費量,および濃厚な環境汚染の問題と併せ考えると,今回のこのRound table discussionが日本でおこなわれることは非常に時宜を得たものと思われる。各論者ともおのおのの中毒分野について長年の研究の積み重ねがあり,内容のある討論が期待される。

GROUP DISCUSSION

網膜剥離

著者: 塚原勇

ページ範囲:P.726 - P.731

1.術後10数年を経た網膜剥離復位眼の所見
 網膜剥離手術後10数年を経た網膜剥離患者67例74眼について,各術式別に視力,視野,白内障,眼底所見等の比較検討を行つた。症例の入院時平均年齢は36歳,今回受診時平均年齢は52歳で,術後経過年数は9〜36年で平均16年であつた。
(1)視力はどの術式で4,術後長期経過するとほぼ半数が著明な低下を来たした。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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