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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科32巻5号

1978年05月発行

雑誌目次

特集 第31回日本臨床眼科学会講演集 (その5) 学会原著

人眼ERP (Early Receptor Potential)の臨床的研究—第9報 網膜剥離復位限のERP

著者: 玉井嗣彦

ページ範囲:P.759 - P.764

緒 言
 さき1)に網膜剥離復位後のERPについて報告し,術前に比べ多くの症例で有意の振幅増大がみられることより,人間においても剥離後損傷された視細胞外節が再生修復される可能性があるむねを指摘した。
 今回さらにERG検査所見とあわせ,その修復状態について検討を加えたので,ここに報告する。

近在感輻輳過剰による眼精疲労とγ−系抑制剤による治療効果

著者: 高島玲子 ,   今井睦子 ,   佐々木信幸 ,   三井幸彦

ページ範囲:P.767 - P.772

緒 言
 眼精疲労(Asthenopia, Mackenzie,18431))は,文明の発達に伴つて増加しつつある眼病であり,その治療も難しいものが多い。眼精疲労の原因は,眼自身または眼以外の体にあるもの(内因性),環境や不適正な眼鏡によるもの(外因性)など複雑ある。内因性と思われるものは,原因によつて更に幾つかに分類されている。一般に1)調節性眼精疲労(老視・遠視・乱視など,Jackson,18852)),2)筋性眼精疲労(斜位など,vonGraefe,18623)),3)症候性眼精疲労(結膜炎など),4)不等像性眼精疲労(アニサイコニア,Ames,19324))などに分類され,これらのいずれの原因も発見できないものを,5)神経性眼精疲労として一括する人が多い。私共はこの分類によるいわゆる神経性眼精疲労に所属する症例の中に,近在感幅榛(Proximal convergence)が異常に大きいものが多いこと,およびそういう症例には臭化プリフィニウム(パドリン®)を投与すると著効を奏するものがあることを見出した。

中心窩反射の研究—第1報

著者: 大島祐之 ,   本村幸子 ,   能勢晴美 ,   松原明子 ,   鈴木荘六

ページ範囲:P.773 - P.776

緒 言
 中心窩反射は網膜中心窩機能の健否の診断に役だつ情報として,日常の眼底検査で観察される所見であり,その生成過程に関しては古くDimmer1)の記載があるが,光学的検討は今日までほとんどなされていないので,屈折異常との関係を含めてここに報告する。

眼窩漏斗尖端部腫瘍のACTA scan所見

著者: 荻野總夫 ,   佐久間勝美 ,   増川弘 ,   塩川健 ,   劉弘文 ,   沖野秀麿

ページ範囲:P.777 - P.781

緒 言
 眼窩腫瘍の診断に関しては従来より超音波シンチグラム,眼窩静脈撮影法,X線単純撮影等が行なわれていたがいずれも一長一短がある。
 1972年英国にてコンピューター断層装置がEMI-Scannerとして発表されて以来その優位性により脳神経外科学のみならず眼科領域においても賞用されつつある。今回著者らは,確診困難であつた乳癌原発と思われる眼窩漏斗尖端部癌腫についてCT-Scannerにより確診を得,外科的治療を行なつた。

CTによる眼窩腫瘍の検索について

著者: 吉田秀彦 ,   雨宮次生 ,   塚原勇 ,   中野善久 ,   半田譲二

ページ範囲:P.783 - P.790

緒 言
 Computed Tomography (CT)による眼疾患の検索については,すでに著者は,1,2の報告を行なつてきた1,2)。CTが眼科領域において最もその威力を発揮し得るのは眼窩疾患であることはあらためて述べるまでもなく,眼窩疾患,特に眼窩腫瘍のCTによる検索に関してはすでに欧米においてAmbroseらをはじめいくつかの報告がみられ,CTの優秀性が強調3〜9)されている。また本邦にても2,3の報告がなされているが10〜12),CTが開発されていまだ目が浅いためいずれも症例数が少なく,また初期のCTによる検索は装置の不完全さの故に充分満足できるものではない。向後更に多数の症例をあわせての検討の望まれるところであろう。
 今回,著者らも1976年7月より1977年9月初めまでの14カ月間に眼窩腫瘍および偽腫瘍の症例計22例について,CTおよび組織学的に検索することができたので種々検討を加え報告する。

眼科領域におけるC.T.の使用経験

著者: 近藤和義 ,   三嶋弘 ,   調枝寛治 ,   日比野弘道 ,   魚住徹

ページ範囲:P.791 - P.796

緒 言
 1967年以来,Hounslield1)によつて開発されたC.T.(Computed Tomography)は,1973年には実用化され,脳外科領域のみならず眼科領域においても広く応用されてきた。眼窩内の占拠性病変に対してLampertら2)は主に撮影条件について紹介し,Ambroseら3),Wrightら4)は従来の諸検査法と比較しつつC.T.の有用性を評価した。Bakcrら5)は神経眼科領城の患者にC.T.を実施し,頭蓋内の病巣を検出している。また,Zi-mmerrnanら6)は眼窩と関連性の深い副鼻腔内病変のC.T.像を報告している。このように,眼科領域でのC.T.の有用性はさまざまな角度から検討されてきた。
 広島大学附属病院においては,1976年7月に著者らがC.T.検査を開始して以来1年余を経た。このC.T.検査が,眼科領域でいかなる症例を対象として実施され,どのような結果を得たかを分析し,今後のC.T.をより有効に利用することを目的として,今回眼科領域でのC.T.検査の結果をまとめたのでここに報告する。

学会抄録

静的量的中心視野計(Static Campimeter)の臨床的応用について—第1報 正常眼について

著者: 新里越郎

ページ範囲:P.765 - P.765

緒 言
 著者は,今回新しく考案された静的量的中心視野計Static Campimeterを用いて,本器の標準視標板における,基準となる正常眼の閾値を測定したので,それについて述べる。

連載 眼科図譜・246

眼白子症(伴性型)の遺伝的保因者の眼底所見

著者: 粟屋忍 ,   岩村百合子 ,   安間哲史 ,   杉田潤太郎 ,   市川宏

ページ範囲:P.750 - P.751

 羞明,眼振,視力障害を主訴とする2歳の男児にOcular Albinismが診断された。角膜径が左右12.5mmで稍々大きいが混濁はなく,全身麻酔下の眼圧は正常値を示した。虹彩は正常の禍色を呈したが透光性がつよく眼底は鮮明な赤色で脈絡膜の血管が著明に透見され,中心窩反射や黄斑反射はみられず中心窩の形成不全がみられ典型的な白児眼底の所見を呈した。頭髪や皮膚には白児の所見がみられずX-linked Ocular Albinismと老えられた。母親の眼底には両眼とも後極より周辺に至るにつれて著明な黄白色調と褐色調の入り混じつたモザイク様所見がみられ,この疾患のGcnetic Carrier独特の所見がある。母親の姉妹2人にも同様の眼底所見がみられた。家系図に示すごとく,1人の妹の男児1人にOcular Albinismがみられ,他の妹の女児1人にGeneticCarrier特有の眼底所見がみられCarrierと考えられた。母親の父,すなわちProbandの母方の祖父も視力障害,眼振,羞明などを訴えていることより,Ocular Albinismと推定される。
 これら4例のGenetic Carricrはいずれも,虹彩は正常褐色を呈したが透光性がつよく,外眼部は全く正常で視力も良好である。眼底はいずれも,視神経乳頭,網膜血管には異常がみられず,網膜全体の色調が少々明るい感じがある。

眼科臨床レントゲン診断学・5

各論(2):眼窩腫瘍(その2)

著者: 丸尾敏夫 ,   桐渕利次 ,   竹内真

ページ範囲:P.816 - P.817

視神経管の異常
 視神経管の拡大enlargement of optic foramenは視神経管撮影によつて観察され,種々の疾患でおこるが,とくに視神経膠腫の特徴あるX線所見として知られている。視神経管のX線写真上における直径は4ないし6mmで,4,5歳でこの大きさに達するとされ,7mm以上の場合には異常であるといわれる。しかし,計測値よりも,左右の視神経管を正しく対称的に撮影した写真上で比較することが必要である。視神経管の直径は正常でも左右差のあるものがあるが,2mm以上の差があれば病的の揚合が多い。図1は36歳,男子の左限視神経膠腫の症例の視神経管撮影で,視神経管の横径は右眼4.5mm,左眼7mmで,左視神経管の均等な拡大がみられる。
 視神経膠腫では,均等なびまん性拡大を示し,管壁の境界は鮮明に保たれ,erosionや萎縮を示さない。これは腫瘍の発育が遅く,徐々に拡大していったためである。視神経膠腫でも,眼窩内あるいは頭蓋内の視神経に腫瘍が存在している場合には見逃すことがあり,このような時には,断層撮影や立体撮影が有利となる。視神経膠腫のX線所見としては,視神経管拡大のほか,眼窩の拡大やJ型トルコ鞍J-shaped sella turnicaがある。

眼科動物園・10

Blind Dolphin

著者: 神谷敏郎

ページ範囲:P.818 - P.821

 陸生の哺乳動物から海へ生活の場を求めて進化を遂げた鯨は,呼吸のために水面に頭を出す時以外は一生涯水中で過す。視覚器にとつて水中という生活環境はかなり厳しい条件といえよう。眼を開ければ四六時中海水による洗眼状態におかれ,角膜の表面は早い速度で間断なく流れる大量の水によつて,陸生の動物の眼に比べるとかなり激しく消耗されるであろう。さらに餌を求めて潜水するにつれて高まる水圧との闘い,また視界もきかなくなろう。このような条件下に生活するためか,鯨の視覚器は一般に退化の傾向を示すといわれている。
 もつとも鯨類の中でも小型のイルカは眼をよく使う。水族館などではトレーナーの顔色を窺いながら,示された標的に的確な反応を示し,観客からの拍手かつさいを受けてはいるが,イルカの主導感覚は聴覚である。イルカの眼をゴムキャップで塞いで完全に遮光してしまつても,遊泳や摂餌を何一つ不自由なくやつてのける。イルカは超音波を出して,そのechoを受けて行動している。

総説

緑内障の薬物療法—その新しい局面

著者: 東郁郎

ページ範囲:P.753 - P.758

はじめに
 最近,緑内障の薬物療法は新しい局面に向つて動きつつあると思われる。
 その第1は,極初期の緑内障の扱いを巡つて,従前であれば緑内障の疑いという段階で既に縮瞳剤治療を始めることが多かつたのであるが,視機能に障害のみられない高眼圧症との異同が問題視されるようになつて,治療対象とする条件が論議されている。それは,ピロカルビンのような優れた点眼薬でも全く副作用なしとしないことから,患者に必要以上の負荷を与えるべきでないという考え方が生れてきたからである。

臨床報告

緑内障病期と視神経乳頭—Ⅱ.乳頭—視野相関の統計的研究

著者: 塩瀬芳彦 ,   大見吉洋 ,   川瀬芳克 ,   伊藤照子 ,   天野みゆき

ページ範囲:P.823 - P.830

緒 言
 緑内障において視野と視神経乳頭変化は相互に密接な関連をもち,かつこの両者が緑内障病期またはfunctional statusを示す最も信頼すべき指標と考えられている1)
 視野と視神経のいずれが先行変化するかに関してDrance2)は緑内障初期において視野欠損を伴わないcuppingの拡大,すなわちneuroretinalrimの消耗が起きることから視神経が視野に先行することを示唆し,Readら3)も同様の見解を示している。

乳頭周囲輪状網膜硝子体癒着による牽引性網膜剥離の治療

著者: 山岸直矢 ,   永田誠

ページ範囲:P.831 - P.835

緒 言
 近年わが国においても硝子体手術が数多く行なわれるようになり,硝子体出血の治療等にめざましい効果をおさめている。今回著者らは,硝子体出血や滲出などが原因となつて,乳頭周囲に輪状硝子体癒着を起こし,これからvitreous baseに至る膜様の硝子体索の形成により,乳頭周囲に牽引性網膜剥離をきたしたと思おれる症例を2例経験した。治療として経強膜法硝子体手術によりこの硝子体索を切除吸引し,網膜の復位に成功したのでここに報告する。

黄斑円孔患者の非手術例および手術例の視機能について

著者: 上原雅美 ,   林重伸 ,   隅田義夫 ,   近江栄美子

ページ範囲:P.837 - P.842

緒 言
 黄斑円孔およびそれによる網膜剥離は,たとえ手術的に円孔の閉鎖に成功しても,その術後視力は悪く,黄斑円孔を生じた眼はともすれば予備眼とみられがちで,その診療上の関心は予防手術の適応や手術術式に向けられ,その視機能の検討は余り行なわれていない。しかし,視機能の最重要部である中心窩の機能が喪失した時,中心視力の低下によるその後の視機能,特に両眼視機能や両眼の対応状態がどのようになつているかは興味のある問題である。
 今回著者らは,黄斑円孔症例の非手術例および手術例について,諸種の視機能検査を行なつたので報告する。

カラー臨床報告

眼球結膜下に冷膿瘍を形成した眼結核

著者: 櫻庭晴美

ページ範囲:P.809 - P.812

緒 言
 近年,眼結核は少なくなり,なかでも球結膜に結核菌を証明することは極めて稀である。最近,著者は球結膜下の冷膿瘍部に菌を証明しえた眼結核の1例を経験したので,細隙灯顕微鏡所見の推移ならびに生検組織所見を中心に報告する。

眼の臨床局所解剖

白内障手術に関連した局所解剖(その3)—水晶体の娩出

著者: 清水昊幸

ページ範囲:P.814 - P.815

 水晶体の摘出は,径24mmの眼球で径12mmの輪部を切開し平均値で径9mm厚さ4mmの水晶体を取出すのだから,眼球にとつては大きな侵襲である。白内障手術の術中合併症もこの段階に集中しておこる。いわく硝子体脱出(硝脱),いわく水晶体嚢破裂(破嚢)。この2大合併症以外にも水晶体の硝子体中への沈没,爆発性出血などまれではあるが破局につながる合併症や,前房内操作に伴う角膜内皮障害,虹彩の損傷等,程度の差こそあれ,毎常出現する合併症もある。
 解剖(図1)水晶体④は角膜弁①を持上げると,前房②および虹彩⑧をへだてて瞳孔領にその前面を直接みせる。角膜弁を形成し前房が消失したとき,この虹彩と水晶体前面,すなわち虹彩・水晶体隔膜(iris-lens dia-phragm)がとる形は次の3形のいずれかである。第1は虹彩・水晶体隔膜が前房に対し凹面をなすもので,瞳孔が深く窪んでみえ,硝子体圧は低く,硝脱はおこりにくいが娩出操作はやややりにくい。第2は虹彩・水晶体隔膜が平面ないしわずかな凸面を成すもので,大部分の症例にみられ,硝子体圧は正常で,正しく娩出を行えば硝脱はおこらない。第3は虹彩・水晶体隔膜が強く凸面をなし,角膜弁が自然と持上り虹彩が術創に押し出してくるもので,硝子体圧が高く硝脱の危険が大きい。

眼科手術研究会

Kelman水晶体超音波手術装置の使用経験

著者: 永田誠

ページ範囲:P.843 - P.849

 Chales D. Kelmanは,1962年頃から小切開による有核白内障摘出手術の実験に着手しているが4,10),水晶体核破砕に超音波振動を使用することを考えつくまでに約3年の試行錯誤を経ている。彼が最初の人眼有核自内障の超音波摘出手術を行なつたのは,1967年2)であり,最初の症例では核破砕に1時間を要し,手術時間は2時間半にも及んだという。しかしその後は驚くべき短時日のうちに装置,術式の改良がなされ,1968年新潟の臨床眼科学会で彼がその術式の講演を行なつた時には既に現在の装置の基本的機能はほとんど完成されていた。当時は手術の最終段階で水晶体嚢を摘出していたので小切開による全摘出術であつた。その後も装置術式は更に洗練され,実用的な装置がCavitron社から発売された。当初小切開による安静の不要,術後回復期間の短縮などのメリットのみがアメリカのマスメディアを通じて宣伝されたために本法を行なう眼科医のもとに愚者が殺到し,その結果一部の眼科医の中に多分に感情的な反発が起こり,本術式に対する厳しい批判も多く現れた。

GROUP DISCUSSION

超音波

著者: 山本由記雄

ページ範囲:P.851 - P.853

1.ZD−294Ps眼軸長測定用力ウンタ装置の測定精度について
 ディジタル表示式眼軸長計測用カウンター,ZD−294(Ps)(ゼネラル)について,ナイロン糸による反射パルスを用いて,計測の最適条件の検討および,この条件下で豚眼25眼と人眼53眼につき眼軸長を計測し,すでに教室の所らによつて検討済のZD−101B型(日本電波工業製)と比較したところ,豚限人眼共に有意差はなく,また極めて高い相関を示した。この結果,ZD−294(Ps)は眼軸計測用カウンターとしてその目的に適うものであるとの結論に達した。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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