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連載 眼科動物園・10
Blind Dolphin
著者: 神谷敏郎1
所属機関: 1東京大学医学部解剖学教室
ページ範囲:P.818 - P.821
文献購入ページに移動 陸生の哺乳動物から海へ生活の場を求めて進化を遂げた鯨は,呼吸のために水面に頭を出す時以外は一生涯水中で過す。視覚器にとつて水中という生活環境はかなり厳しい条件といえよう。眼を開ければ四六時中海水による洗眼状態におかれ,角膜の表面は早い速度で間断なく流れる大量の水によつて,陸生の動物の眼に比べるとかなり激しく消耗されるであろう。さらに餌を求めて潜水するにつれて高まる水圧との闘い,また視界もきかなくなろう。このような条件下に生活するためか,鯨の視覚器は一般に退化の傾向を示すといわれている。
もつとも鯨類の中でも小型のイルカは眼をよく使う。水族館などではトレーナーの顔色を窺いながら,示された標的に的確な反応を示し,観客からの拍手かつさいを受けてはいるが,イルカの主導感覚は聴覚である。イルカの眼をゴムキャップで塞いで完全に遮光してしまつても,遊泳や摂餌を何一つ不自由なくやつてのける。イルカは超音波を出して,そのechoを受けて行動している。
もつとも鯨類の中でも小型のイルカは眼をよく使う。水族館などではトレーナーの顔色を窺いながら,示された標的に的確な反応を示し,観客からの拍手かつさいを受けてはいるが,イルカの主導感覚は聴覚である。イルカの眼をゴムキャップで塞いで完全に遮光してしまつても,遊泳や摂餌を何一つ不自由なくやつてのける。イルカは超音波を出して,そのechoを受けて行動している。
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