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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科32巻7号

1978年07月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・248

免疫グロブリンの産生を伴つた結膜リンパ腫—lymphoplasmacytoid immunocytoma

著者: 猪俣孟 ,   山名敏子 ,   菊池昌弘

ページ範囲:P.1054 - P.1055

〔解説〕
 症例:E.O.,39歳女性。
 主訴:右結膜腫瘤。

眼科臨床レントゲン診断学・7

各論(4):副鼻腔ムコツェーレのX線写真

著者: 深道義尚

ページ範囲:P.1154 - P.1155

はじめに
 眼症例を呈する副鼻腔ムコツェーレの症例は決して少なくない。ムコツェーレの原因は,副鼻腔から鼻腔への生理的な通路が遮断されたため,副鼻腔内に粘液が貯留することによつて生ずるものと考えられている。その原因としては,慢性の鼻炎あるいは副鼻腔炎も考えうるが,これは大変稀である。原因の大部分は,過去に行われた慢性副鼻腔炎の手術である。副鼻腔内に加えられた手術的侵襲により生じた瘢痕が,その部位より深部からの分泌される粘液の流出を妨げることによつて起るものと考えられる。手術後に生ずる瘢痕の抵抗は生体の骨質よりも強いようで,ムコッェーレによる眼症状は,眼窩周辺骨の破壊と吸収により眼窩内に影響を及ぼしているように考えられる。したがつて,本症においては眼窩のX線撮影は,極めて重要な診断的価値を有するものと思う。以下に,前頭洞ムコツェーレの症例を2例,上顎洞のそれを1例ならびに後部篩骨洞の症例2例を紹介してみたいと思う。

総説

点眼薬の眼内挙動

著者: 長滝重智

ページ範囲:P.1057 - P.1066

緒 言
 薬物の点眼は,眼科領域でもつとも日常的な投与方法であり,点眼された薬物の眼内挙動を知ることが,適切な治療をおこなう上で必須であることは言をまたない。希望する薬物効果がえられ,しかも副作用を最小限にすることは,薬物治療の目標といえるが,点眼薬においてもまた,眼内濃度を至適にしてかつ眼外や全身への吸収を最少にするような最適の点眼方法が考えられなければならない。
 点眼薬の眼内における濃度変化に影響する因子を大きく分けると次の3点になる。

臨床報告

アルカリ腐蝕角膜内皮細胞層の変化—走査型電子顕微鏡的観察

著者: 塚田良一 ,   赤松義之 ,   北野周作

ページ範囲:P.1067 - P.1075

緒 言
 角膜のアルカリ腐蝕の病態に関しては,先に北野ら1〜3)が組織化学的に,あるいはautoradiogra-phyによつて検討し,とくに内皮細胞層において,腐蝕により脱落した欠損部は周辺の内皮細胞の遊走と増殖によつて修復され,過剰の増殖はretrocorneal membraneの形成をもたらすことを明らかにしている。この他,角膜腐蝕に関する基礎的研究としては,生化学,酵素学的に検討した報告4〜6)がみられ,透過型電子顕微鏡による観察7)も行なわれている。しかし走査型電子顕微鏡を用いて内皮の病態を観察した報告はいまだ内外に見当たらない。今回,著者は走査型電子顕微鏡を用いて経時的な内皮細胞層の変化を観察し,興味ある知見を得たので報告する。

眼球打撲症における眼底後極部病変の検討(網膜振盪症と脈絡膜破裂の螢光眼底像)

著者: 難波彰一 ,   山田いほ子 ,   大庭省三 ,   大沢英一 ,   檜垣忠尚 ,   松山道郎

ページ範囲:P.1077 - P.1084

緒 言
 教室の外傷クリニックでは眼球打撲症について眼圧,隅角の変化,眼底の変化など種々の面より検討を加えて来た1〜3)
 眼球打撲に起因して,特に視機能に障害をきたす眼底後極部病変の諸相を解析することは予後を判断するために極めて重要な事項の一つであると考え,今回著者らは過去2年6カ月間に経験した眼球打撲症(405症例)のうち,特に網膜浮腫,および脈絡膜破裂の症例を中心に検討した。

両眼性の網膜中心動脈閉鎖を伴う視神経低形成の1例

著者: 國田正矩 ,   堀内二彦 ,   松崎浩 ,   中野隆雄

ページ範囲:P.1085 - P.1089

緒 言
 視神経の低形成は,小眼球や単眼症などの著明な奇型眼や,中枢神経系の著しい異常(無脳症,水頭症など)を伴つていることが多く,視神経の低形成を唯一の異常とする症例は稀といわれている。H.B.Gordnerら1)は文献的に72例をあげ,彼ら自身も片眼性および両眼性の2例を報告している。わが国では,植村ら(1969)および阿部ら(1975)の症例報告があるのみである。
 われわれは今回,重度心身障害児で両眼性の網膜中心動脈閉鎖様所見を伴う視神経低形成の奇異なる眼底像を呈した1例を経験し,全身的および眼科的諸検査を行い,発生学的ならびに文献的考察を試みたので,ここに報告する。

視力の学校差(全日制・定時制)

著者: 大江謙一

ページ範囲:P.1091 - P.1094

緒 言
 わが国は幼稚園から大学まで入学試験になやまされている。なかでも大学入学試験を受ける高校生の受験勉強が最もはげしい。この受験勉強が視力に及ぼす響影について調査を行つたのでその成績を述べてみよう。

Congenital Hypertrophy of the Retinal Pigment Epitheliumの4例

著者: 白井正一郎 ,   橋本勝

ページ範囲:P.1095 - P.1100

緒 言
 日常の診療で眼底の色素性病変をみた場合,悪性黒色腫との鑑別が大切である。鑑別上重要なものの一つに,congenital hypertrophy of the reti-nal pigment epithelium (以下CHRPEと略す)がある。CHRPEは,網膜色素上皮の良性病変で,普通孤立性,円形,扁平,境界鮮明で黒禍色調を帯びている。過去には,悪性黒色腫と誤診され眼球摘出を受けた例で報告1〜4)されてきた。Re-eseとJones1)は,悪性黒色腫の疑いのある151眼の中に,片眼性,孤立性,黒色調,境界鮮明,扁平,円形ないし卵円形の眼底病変を9眼見出した。病変は網膜色素上皮にあり,組織学的に色素上皮が過度の色素を含有していることをつきとめ,benign melanoma of the retinal pigmentepitheliumと命名し,限局した色素上皮の先天性発育過度による病変と考えた。またReese5)は,hyperplasia of the retinal pigment epitheliumと記載したりした。KurzとZimmerman3)は,同様の臨床像を呈し眼球摘出された眼で,組織学的に網膜色素上皮の肥大であることを示し,conge-niしal hypertrophy of the retinal pigment epithe-liumと命名した。

超短時間流涙テスト—5秒間綿糸連続測定法とSchirmer法(5分間濾紙1回測定法)

著者: 栗橋克昭

ページ範囲:P.1101 - P.1107

緒 言
 流涙テストはシエグレン症候群の診断,聴神経腫瘍や小脳橋角部病巣の補助診断,顔面神経麻痺の部位診断と手術方法の決定,コンタクトレンズ装用の適否の決定などに使用される。シルマー法1)は最も普及しているが信頼性に乏しく涙分泌減少症の大まかなスクリーニングテストとして使用されているにすぎない。われわれはすでに綿糸を用いる流涙テスト法を報告してきたが2〜5),更に本法を発展させ連続測定することにより涙分泌減少の程度を知りうるようにしたので報告する。

視神経障害を示す疾患における髄液の生化学的検討

著者: 絵野尚子 ,   中島崇 ,   田地野正勝

ページ範囲:P.1109 - P.1116

緒 言
 髄液検査は,中枢神経系疾患の原因究明に対する補助診断の一助として,またその経過観察の指標として重要な役割を占めている。特に髄液中の重要な構成成分である蛋白の分析は,数多くの報告がみられる。眼科領域においても,主として視神経疾患にその報告がみられ1〜4),われわれも髄液中糖蛋白の分析,あるいはα1-Acidglycoprotein(α1-AGP)の動行について報告を行つて来た4,5)
 現在も神経眼科学的疾患患者の髄液中の総蛋白量および蛋白結合総Hexore量の定量Disc電気泳動による蛋白,糖蛋白の分析,さらには,免疫拡散法によるAlbumin量,α1-AGP量,IgG量の定量を,血清中のそれらと対比しつつ行つているが,今回は主としてα1-AGPおよびIgGにつき疾患による変動に検討を加えたので報告する。

強部強膜炎の1例

著者: 蘇原洋子 ,   嶋田孝吉 ,   小暮正子

ページ範囲:P.1127 - P.1133

緒 言
 強膜炎は通常前部に起り,後部には稀である。
 1902年FuchsがSclcritis Posteriorとして一症例の臨床報告をして以来1),今日まで70余例の報告があり2〜4,23),わが国においても,1907年の河本の症例以後5),7例の報告がみられる6〜10)

石原・大熊色覚異常程度表による検査成績の検討

著者: 加藤晴夫 ,   関亮

ページ範囲:P.1134 - P.1137

緒 言
 1973年6月に学校保健法が一部改正になり,色覚検査についても,それまで毎年行われていたのが特定の学年のみに改められ,また異常の有無および種別のみでなく,その程度も明らかにすることになり,程度に応じて「強度」と「弱度」を区分することに改められた。しかしながら,強度,弱度の判定は,各程度表の評価が異なるなど,実際にはなかなか容易でなく,学校などの現場でもかなりの混乱を生じているのが現状である。
 こうした背景をもとにして,1974年に従来の大熊表が改作され,新しく石原・大熊色覚異常程度表として発刊され,すでに各方面で使用され,またその使用経験も,二,三発表されている1〜3)。今回,独協医大色覚異常外来でも,本表を使用し,その検査成績を検討したので,ここに報告する。

網膜色素変性症の視力予後に関する研究,特に初診時視力と長期視力予後との関係について

著者: 窪田靖夫

ページ範囲:P.1138 - P.1140

緒 言
 さきに著者1)は網膜色素変性症の長期視力予後について検討し,若年発病群と高年発病群の間に視力低下傾向に差がないこと,視力の低下は0.6前後にいたるまでは緩徐であるが,0.5以下になると視力は比較的急速に低下することなどを報告した。
 今回は,初診時における視力別にその進行性(長期視力予後)について検討したのでここに報告する。初診時の視力の状態から,10年後,あるいはそれ以上の時期における視力をある程度まで推定できれば,患者に対する職業の選択や生活面での指導などに極めて有効であろうと考えたからである。

静注用ペプシン処理ヒト免疫グロブリンの角膜ヘルペスに対する治療効果

著者: 道野正夫 ,   松浦雅子

ページ範囲:P.1141 - P.1144

緒 言
 角膜ヘルペスに対する治療法としては,従来IDU点眼,IDC点眼,システィン点眼などの局所療法,種々の薬剤の全身投与なども試みられて来た。また近年冷凍手術法の開発にともない同疾患に対してもこの方法が利用されるようになり多大の効果をもたらしている。しかしこれらのどのような治療法も有効でない症例もあり,現在のところ角膜ヘルペスに対して絶対的に的確な治療法はない。今回著者は,種々の治療法を試みられ,これらに抵抗した難治性角膜ヘルペスに対し最近開発された静注用ペプシン処理ヒト免疫グロブリン製剤(Gamma Venin以下G.V.と略す)を用い著名な好結果をもたらした症例を経験したので報告する。

カラー臨床報告

後極部扁平隆起を伴う先天性視神経乳頭欠損の1例

著者: 大滝正子

ページ範囲:P.1123 - P.1126

緒 言
 視神経乳頭窩に黄斑剥離を合併することはPit-macular syndromeとしてよく知られているが,その成因については未だ不明な部分が多い。今回著者は視神経乳頭欠損にPit-macular syndromeと同様の所見を呈した症例に遭遇し,細隙燈顕微鏡検査,螢光眼底撮影により,黄斑部扁平剥離の由来に関し検討したので報告する。

神経眼科講習会

視交叉近傍構造の臨床解剖

著者: 玉木紀彦 ,   松本悟

ページ範囲:P.1145 - P.1151

緒 言
 脳神経外科領域のレ線診断のうち,特に眼科領域と最も関係の深い視交叉近傍病変のレ線診断に限定し論じる。視交叉近傍病変のレ線診断と眼症候の発現機序の理解には,視交叉近傍構造の臨床解剖,およびレ線解剖の正確な知識が必要である。そこでまず最初に視交叉近傍構造の局所解剖を,次いでそれらを基にレ線解剖を概説した上で,最後に視交叉近傍病変のレ線診断を論じてみたい。
 いま視交叉近傍に腫瘍が存在するとき,その部位,大きさ,進展方向などがほぼ同様でありながら,眼症候は各症例によつてかなり異なる。また同様に腫瘍の鞍上部進展の小さい腫瘍が,より大きな鞍上部腫瘍よりも眼症候が重症であることを日常よく経験する。このように眼症候は腫瘍側の因子,すなわち,大きさ,発育方向,発育速度などに影響されるだけでなく,患者側の因子,すなわち視神経,視交叉近傍構造の解剖学的な変異も大いに関係していると考えられる。

眼の臨床局所解剖

結膜角膜上皮層(その1)

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.1152 - P.1153

 結膜および角膜は一連の上皮層によつて被われている。上皮層は薄い部分で2〜3層,厚い部分では7〜8層の細胞からなる。上皮の性状はそこにおこる病気と一定の関係がある。上皮の性状は大別して扁平上皮,骰子状上皮,および円柱上皮に分けられ,その性状が結膜の部位によつて異なるだけでなく,年齢と共に変化することが重要である。
 成人の場合の結膜の部位による上皮の性状の差は図1の模式図に示す通りである。すなわち眼瞼結膜の瞼縁部は扁平上皮で,これに接する眼瞼皮膚とは表面に角化層の無い点だけが異なる。瞼板部から眼窩部にかけての眼瞼結膜では股子状から次第に円柱状に移行する。円蓋部は定型的な円柱状上皮で,その電顕弱拡大所見は図2−Gに示す通りである。眼球結膜から角膜にかけて再び扁平上皮となる。

印象記

第25回光凝固・網膜剥離講習会印象記

著者: 渡辺千舟

ページ範囲:P.1157 - P.1161

 Prof.G.Meyer-SchwickerathとProf.A. Wessingを講師とする第25回光凝固・網膜剥離手術講習会が,昭和53年1月27日より29日までの3日間,九大谷口教授のお世話によつて,福岡市西鉄グランドホテルで開催された。すでに知られているように,この講習会は1958年ボン大学で開催されて以来,回を重ねて延800名以上の眼科医が聴講しているとのことである。昭和49年10月に清水弘一教授の企画によつて前橋市で行われ,筆者も参加した第22回講習会が,ドイツ国外でなされた初めてのもので,今度の日本における会がドイツ国外での2回目であり,日本での2回目の講習会である。今回は,清水弘一教授,坂上英教授,野寄喜美春教授,谷口慶晃教授の御世話で,日本国中から103名の受講者がホテルに宿泊して,まる2日半にわたり熱心に聴講した。
 1月26日午後7時からホテルで両講師を囲んでget-together partyがあり,講義は翌27日からはじめられ,午前中は9時より12時半まで,午後は2時より5時まで,その間にcoffee-breakをはさんで,プログラムのような講義項目で進行した。今回も多数のきれいなスライドと内容豊富な解説,質問や両講師の答弁も含め,清水教授の明解な通訳によつて,われわれは時間のたつのも忘れて受講した熱気あふれる会であつた。

GROUP DISCUSSION

眼感染症

著者: 内田幸男 ,   北野周作

ページ範囲:P.1163 - P.1169

1.周期性好中球減少症に伴つた眼瞼壊疽の1例
 本邦で未だ7例の報告をみるにすぎない周期性好中球減少症に,眼瞼壊疽を伴つた症例を経験したので報告する。症例は生後6カ月の男児で,発熱,咽喉発赤,下痢をもつて発生した。発症後6日目に左眼瞼発赤を起こし,10日目には眼瞼皮膚全体の壊死へと進行した。この部より緑膿菌が検出された。22日目にはこの壊死は更に進行し,中央部は黒褐色を呈し,周辺部は皮下浸潤性の深い潰瘍を形成していた。壊疽部の鼻側は左鼻翼にも及び鼻腔を通じ,更に右眼瞼皮下の壊死部と通じていた。左眼球の前房は血性膿で充満されていた。右眼は結膜炎症状を呈していた。全身的には肛門部に同様の壊死所見が認められた。5週目で腹部に大網の壊死による膿瘍を認め切除した。また10週目で左眼壊死部が眼球を含め脱落した。この間周期性好中球減少症と判明し,免疫療法,抗生物質,ステロイド投与,輸血などで次第に全身状態が回復し,眼瞼および肛門の壊死部はほとんど修復された。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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