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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科32巻8号

1978年08月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・249

水晶体脱臼による眼性頭位異常

著者: 岩重博康 ,   久保田伸枝

ページ範囲:P.1196 - P.1197

〔解説〕
 眼性頭位異常には種々の原因によるものがあるが,上下筋異常によるものがもつとも多く認められる1〜5)。私どもは,上斜筋麻痺と類似の頭位異常を示していたが,実は水晶体位置異常が原因であつた症例を経験したので報告しておきたいと思う。
 症例:4歳,女子。

眼科臨床レントゲン診断学・8

各論(5):眼窩底骨折—Blowout fracture—のX線写真

著者: 深道義尚

ページ範囲:P.1256 - P.1257

はじめに
 眼窩底骨折の診断は,難しいと考えられているようである。しかし,受傷直後より生ずる眼球の上下方向への運動障害と,X線写真の所見によれば,その診断はむしろ容易なものと考えられる。本症にみられるこの眼球の上下方向の運動障害は,眼窩底に生じた骨折部位に,眼窩内組織が,骨折の生じた瞬間に嵌頓することにより生ずることは,既によく知られている事実である。X線写真による診断も,この眼窩底の下方に存する上顎洞内に,嵌入嵌頓した眼窩内組織の像を,X線写真上に陰影として確認することにより行われている。この上顎洞内に生ずる陰影には,一部に洞内粘膜下に生じた血腫の像も含まれていると考えられるが,大部分は嵌頓した眼窩内組織の像と考えてよいようである。

総説

黄斑部血管新生症候群Neovascular maculopathy

著者: 横地圭一 ,   丸山明信

ページ範囲:P.1199 - P.1212

緒 言
 円盤状黄斑変性とは主として検眼鏡による形態学的な面からの名であり,これに対してさまざまな呼称が与えられている2,30,38)。一方,病理学的な面からはneovas-cuiar maculopathy30)とも呼称すべきもので,黄斑部網膜下あるいは網膜内に脈絡膜血管系に起原を有する新生血管網を形成する疾患を意味する総称である。したがつて両者は必ずしも同一の概念ではなく,前者は完成された姿をいい表わしているのに対して,neovascular maculo-pathyは極く初期の病変も含む,より広い意味で用いられる。
 従来よりいわれているごとく円盤状黄斑変性の中には,老人性円盤状黄斑変性(Kuhnt-Junius),中心性滲出性網膜炎(Rieger),近視眼にみられるFuchs'spot,網膜色素線条,ヒストプラスマ症に伴う黄斑部変化などが含まれる。その他にわれわれは,58歳男子の両側の特発性のtriangle syndromeの1眼に発症した1例を経験している。このおのおのはいずれも特徴ある異なつた疾患単位として分類されているものの,黄斑部病変は一つの共通した病態を有しているという別の見地からこれらの疾患を整理することは意義ある事と考える。

臨床報告

優性遺伝性若年性視神経萎縮症の新2家系について

著者: 若倉雅登 ,   福田敏雅 ,   松本充子 ,   清水敬一郎

ページ範囲:P.1213 - P.1217

緒 言
 遺伝性視神経萎縮症の分類はKjer1)の総括したものが一般に認められており,このうち幼小児期に徐々に発症し,極端な視力障害は起こさず,乳頭耳側蒼白,周辺視野正常,中心暗点,第三色覚異常等,特徴的所見を呈するとされる優性遺伝性若年性視神経萎縮症(Dominant Inherited Juve-nile Optic Atrophy)は,Kjer自身も19家系(約200例)について報告し,Smith2)はこれまで各国で報告された数百例について,詳細に総説し診断基準を示した。しかし個々の臨床データの検討に関しては,報告内容,数ともに十分なものとはいえず,なお症例集積の段階の様である。
 一方,本邦における報告は極めて少なく,山中ら3),Ohbaら4),小口5)がおのおの一家系ずつ報告を行つたにすぎず,黒住ら6)が本症と判定した過去の報告の2家系,系図のみの記載である井街9)の4家系を含めても,現在まで9家系が知られているのみである。

脈絡膜の炎症性偽腫瘍の1症例について

著者: 小原永津子 ,   竹田宗泰 ,   中川喬 ,   野中富夫 ,   室谷光三

ページ範囲:P.1219 - P.1222

緒 言
 脈絡膜の腫瘤を呈するものは,良性または悪性腫瘍,特異的炎症または非特異的炎症等によるものが考えられる。脈絡膜の非特異的炎症性偽腫瘍の報告は少ない。報告例1)において,悪性黒色腫,血管腫,転移性腫瘍を疑われて,眼球摘出をうけている。本症例は硝子体中に著しく隆起した直径約3乳頭径大の脈絡膜腫瘤を試験切除し,病理組織学的検査で炎症性肉芽と診断された興味ある症例である。

ICR系遺伝性白内障ラットの水晶体組織所見とその特異性について

著者: 伊原信夫 ,   布野秀二

ページ範囲:P.1223 - P.1228

緒 言
 ICR系遺伝性白内障ラットは,いはら和漢薬研究所で発見された白内障自然発症ラットをもとにして,累代選択交配によつて開発,育成されたもので1),白内障を自然発症する。本系ラットの白内障は3ないし4カ月齢で急速に発症し,5ないし6カ月齢で完成する成熟期完成型であり,またいつたん発症しても種々の条件で,5ないし7カ月齢において水晶体白濁度を減ずるものがあることなどから,現在諸外国で報告されているどの系統よりもヒトの老(壮)年性の白内障に比類しうる点が多く,病態モデルとしての利用価値が高いものと思われる。
 本稿では,ICR系ラットの初歩的な水晶体所見と二,三の特殊染色所見について述べるとともに,本系の特異性についての考察を加える。

強膜ブドウ腫をきたしたvon Recklinghausen病の1例

著者: 北原博 ,   小早川幸代 ,   河合一重 ,   斉藤恒秋 ,   北原健二

ページ範囲:P.1229 - P.1233

緒 言
 Von Recklinghausen病(以下R病と略す)は,全身の末梢神経に多発性の神経線維腫を生ずる系統的な疾患で,眼科領域においても,1863年Billroth以来多数の報告があり,その眼症状も極めて多彩で1,2),眼瞼,虹彩,毛様体,脈絡膜,網膜,視神経,眼窩などの各部位に神経線維腫が形成されてくることは良く知られている。しかし,R病が水眼症を合併することは比較的稀とされており,本邦では,1908年河本3)が記載して以来,数例の報告があるが,強膜ブドウ腫をきたした症例は,文献的にもこれをみない。
 われわれは,R病によつて強膜ブドウ腫をきたした1例を経験し,その発生機転について考察を加えたので報告する。

低眼圧眼の諸問題(1) Hypotony maculopathy

著者: 近藤武久 ,   高橋義公 ,   安積慶子 ,   前島伸二子 ,   根木昭 ,   宮代汎子

ページ範囲:P.1235 - P.1239

緒 言
 眼圧変動の影響による眼組織の変化にはいろいろなものがあり,そのうち高眼圧による変化は緑内障としてその病理学的検索はいうまでもなく螢光眼底撮影法などによる脈絡脈や視神経乳頭の循環動態の検討など現在もはなばなしく研究がなされているのは周知のところである。これに反し低眼圧の影響による眼組織の変化に関しては若干の文献が散見されるもののはなばなしい緑内障研究の陰にかくれあまり注目を集めていないのが実情である。しかし低眼圧によつてもたらされる種々の眼変化は日常臨床の場においても丹念に観察を行つているとかなりの頻度で遭遇する機会がある。すなわち眼外傷後の低眼圧,緑内障手術や白内障手術などの術後の低眼圧,網膜剥離眼にみられる低眼圧など身近かな症例においても低眼圧性眼変化が見出されうる。
 低眼圧眼の臨床的所見について最初にかなりまとまつた報告をしているのはDellaporta1〜3),Pau4)であるが,その後永い間この問題は多くの研究者の関心を集めなかつた様である。近年に至りGass5)が螢光眼底撮影法を駆使し新しい解析を行い再び注目を集めだしたといえる。本邦においては横山6)がGassの説を紹介しその概要を述べているが,本邦ではHypotony maculopathyという言葉はまだ比較的馴染が薄い。

低眼圧眼の諸問題(2)—緑内障手術後の浅前房・低眼圧に対する考察

著者: 根木昭 ,   近藤武久 ,   安積慶子 ,   前嶋伸二子 ,   高橋義公 ,   宮代汎子 ,   上野一也

ページ範囲:P.1241 - P.1245

緒 言
 緑内障における,瀘過手術後の合併症は,その修復が非常に困難なものが多く,今日に至るまでの緑内障手術術式の変遷は,合併症との戦いといつても過言ではない。近年,従来の術式に比べ,比較的合併症の少ないtrabeculectomy,trabecul-otomy,sinusotomy等の術式が考按され,特にtrabeculectomyは,その適応範囲の広さから,好んで用いられている術式である。しかしながら,trabeculectomy自体が,瀘過手術である以上,併発率の低下はあつても,合併症の重篤さは,旧来と変わるものではない。とりわけ,術後前房再生遅延は,眼科医が必ずや遭遇する難題の一つであろう。
 今回,われわれは狭隅角性緑内障眼にtrabecu-lectomyを施行した後,胞状脈絡膜剥離を伴い前房再生遅延をきたした症例を経験し,これを手術的に治癒せしめたので,その発生機序および治療法等につき若干の考察を加えてみた。

カラー臨床報告

ゴルフボール液体芯による異物性肉芽腫

著者: 本田孔士 ,   西麗子

ページ範囲:P.1251 - P.1253

緒 言
 ゴルフボールの中には,その打球としての性能を良くするため,高圧の液体が封入されている。好奇心から,ボールを割つて内部を調べようとしたりする者が,時にその高圧液噴出をかぶることがある。この高圧液体芯による眼障害が,長南1),井上2)らによつて最近,相次いで報告されているが,われわれは同液の結膜のう内飛入後,長時間経過して,強い異物性肉芽を形成した1症例を経験したので,組織所見と合せて報告する。

眼の臨床局所解剖

結膜角膜上皮層(その2)

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.1254 - P.1255

角膜はビラン(Erosion)および潰瘍(Ulcer)の好発部である。ではビランと潰瘍とはどうちがうのであろうか。医学辞典をみても,病理学書をみても,明確な定義を記載したものが殆どない。私の探した範囲では唯一つ緒方・三田村病理学総論に次のようにはつきり定義してあつた。"ビランとは,粘膜層あるいは角膜の上皮層,皮膚の表皮膚にのみ限られた欠損をいい,潰瘍とは更に深部にまで及んだ欠損をいう。"
 病理学総論という立場の小さな本で人体の表面の組織を粘膜と皮膚に分けるだけでなく,「角膜」という特殊な組織を独立させてあることは驚くべきである。こういう前書きをした理由は,ひとつには人体の外皮を考える場合,角膜は特殊な局所解剖の対象になるということもいいたかつたのである。

神経眼科講習会

視交叉近傍病変の単純写—Ⅰ.視交叉近傍構造のレ線解剖

著者: 玉木紀彦 ,   松本悟

ページ範囲:P.1259 - P.1266

緒 言
 視交叉近傍病変の診断は,年齢,性,既往歴,現病歴,臨床症候,内分泌学的検査,各種補助検査法などを参考にして行われる。なかでも眼症候とレ線診断は極めて重要である。さきに眼症候発現の理解に必要な視交叉近傍構造の臨床解剖と解剖学的変異について述べた。これらの基礎知識をもとにして本稿では,まず視交叉近傍病変のレ線診断に必要な,視交叉近傍の単純写上のレ線解剖とその解剖学的変異について論じる。

薬の臨床

Tobramycin点眼液の手術前結膜嚢無菌法使用実験

著者: 高島玲子 ,   近藤千代 ,   山根伸太 ,   小川剛史

ページ範囲:P.1267 - P.1273

緒 言
 Tobramycinは,1971年にリリー社が開発した新しいAminoglycoside系抗生物質であり,Stre-ptomyces tencbrariusが産生する抗生物質混合物Nebramycinの一成分(Nebramycin Factor 6)である1)。TobramycinはGentamicinと構造式および抗菌スペクトルが共に類似しており,他剤耐性ブドウ球菌などのグラム陽性球菌および緑膿菌をはじめとするグラム陰性菌に対し,優れた抗菌作用を持つと云われている1〜4)。TOBの点眼液は,生理的食塩水1ml中にTobramycinを3mg力価(0.3%)溶解したもので,防腐剤として塩化ベンザルコニウム0.025mg/mlを含む,pH7.4の透明な水性点眼液である。室温で少なくとも2年間は安定であるという5)
 眼科では他科と違つて,抗生物質は治療に使われるだけではなく,手術前無菌法としても用いられている。結膜嚢は強い消毒薬を用いることができないので,手術前に一定期間抗生物質を点眼し,結膜嚢内を無菌とするのである。私どもはTobramycin点眼液を術前無菌法に試み,使用する価値があると判定されたので報告する。

GROUP DISCUSSION

第19回 緑内障

著者: 澤田惇

ページ範囲:P.1275 - P.1278

〔主題〕新しい緑内障の薬物療法
I.薬物投与手段について
〔話題提供〕
新しい薬物投与手段(Drug delivery system)について
 最近の緑内障薬物治療の上での注目すべき動向として,臨床薬理学とtechnologyの進歩に基づいて産み出された新しい薬物投与手段(drug delivery system)を利用した緑内障薬物治療の出現がある。新しい薬物投与手段のうち現在緑内障治療に応用されているものはまだ少数であるが,その近い将来における緑内障薬物治療に与える影響の重大性を考慮して,その概略を述べた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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