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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科32巻9号

1978年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・250

Eales' diseaseの眼底像

著者: 小林義治

ページ範囲:P.1302 - P.1303

〔解説〕
 本邦では,若年性再発性網膜硝子体出血と呼ばれるEales' diseaseは,有名な疾患であるが,最近では減少傾向にある。著者は多様な変化を経過していない,発症のごく初期の症例を経験したので,その螢光造影所見を報告する。
 症例は,21歳男子(Y.T.53-2283)。初診の3日前に左眼の視力低下を自覚し,その翌日古沢眼科を受診し当科を紹介された。初診時の視力は矯正で右1.5,左0.7であつた。左眼に虹彩炎があり,眼底は乳頭よりおよそ3乳頭径(D.D.)程へだたつた上耳側静脈およびその分枝に強い白鞘形成とその領域一帯の出血がみられ,出血は周辺部まで斑状に広がつていた。この部の網膜は浮腫状で,浮腫は黄斑部にまで及んでいた。上方へ向う静脈は口径不同が著しかつた(図1)。右眼はほとんど正常であるが,耳側周辺部(およそ10時方向)で静脈の蛇行がやや目立つていた。

眼科臨床レントゲン診断学・9

各論(6):視神経管のX線写真

著者: 深道義尚

ページ範囲:P.1368 - P.1369

 視神経管撮影法については,本シリーズの第1回に述べられている。戸塚氏はどの撮影法を使用しても,確実に視神経管を撮影できる方法はないとされているが,私は城所・戸塚の方法が最もよいと考えている。確実な方法がないから立体撮影を行うべきであるというよりは,細い変化を読みとるためには,立体撮影を行つて,立体的に観察することが大切であると思う。また,視神経管撮影による写真では,視神経管の形状をみるのみでなく,節骨洞から蝶形骨洞にかけての管周辺の副鼻腔の状態ならびに眼窩内側壁の変化をみることができるから,フイルム全体に管周辺の状態を撮影すべきである。立体撮影と同時に大切なことは,必ず両側の撮影を行う習慣をつけることである。視神経管の形状や走行には,先天的に個人差が多く,このため確実な撮影法がないとされているのが現状である。しかし,管壁の形には余り左右差のないことが多い。したがつて,妙な変形を示す場合には,健側にも同様な所見を認めることが多く,X線写真上ではあまり所見が得られぬことがある。図1に示したX線写真は,このような例の代表である。著しい変形を示しているが,健側にも同様の形が得られており,矢印で示した管腔のくびれと変形は,この症例に特有な解剖的変形に過ぎないようである。
 図2および図3は,左眼の視力障害を主訴として来院した26歳女子の,両側の立体X線写真である。

第23回国際眼科学会(1978年5月14日−20日京都) 私が感銘をうけた講演

—メインテーマⅠ—眼免疫学—(5月14日午後第I会場),他

著者: 嶋田孝吉

ページ範囲:P.1305 - P.1322

 メインテーマIの眼免疫学に関する講演は,5月14日午後2時より大ホールにて行われた。まず,アメリカのSilversteinが,近年,長足の進歩を挙げた免疫学を概説し,これに伴い急速に発展して来た眼免疫学について,その成果と将来の展望を語つた。講演の後半には,教授が過去数年間に手懸けた三つの仕事について言及した。眼免疫学のbasicな分野は,教授の独壇場であり,その輝しい成果を,華やかな会場で講演する教授を目の当りにし,研究を共にしたことのある私は,感無量であつた。角膜移植における移植片の拒絶は,主に遅延型アレルギー反応により惹起されるが,教授は,移植片抗原により特異的に感作されたリンパ球による移植片の混濁,特に,移植片の内皮細胞の破壊されていく有様を,あざやかな病理標本で示した。マウスに対し病原性をもたないLCMウイルスを,マウスの眼内に注射すると起る重篤なブドウ膜炎は,やはりリンパ球の関与するアレルギー反応によるもので,炎症はステロイドの投与により治癒する。しかし,炎症の消腿したブドウ膜組織にはウイルスがたくさん繁殖しており,螢光抗体法で証明される。病原性の全くない微生物の感染によつても,ブドウ膜炎が発症するのである。最後に,眼内での抗体産生について触れ,その特異な抗体産生の仕組を示し,これから再発性ブドウ膜炎の発症機序が説明されるとした。いずれも眼免疫のTopicsであつた。

臨床報告

動的視野計測における測定誤差について

著者: 本田孔士

ページ範囲:P.1323 - P.1327

緒 言
 動的視野は,種々の要素,たとえば,背面照度と視標光の強さの比率,視標の色,大きさ,その運動速度などの変数として求められる。そのうち,光学的,物理的な要素は,Goldmann型視野計の出現1,2)などによつて,かなり厳密な条件設定が可能となつた。Goldmannの卓見は,従来の視野計に順応装置がなかつたことを指摘し,その導入と,背面照度と視標のコントラストの定常性と可変性,そして屈折異常などへの配慮を行つた点にある3)。彼の視野計の厳密な運用について,たとえばSchmidtら4)が,その後,いくつかの改良点を指摘しているが,いかに精密な条件設定をしようとも,検者,被検者の性格,注意力など,人的要素からの誤差混入も無視しえないのではないか,という疑問が起こつてくる。ここではごく一般的な臨床レベルでセットされた1台のGold-mann型視野計により,同一検者が,同一人の両眼から周辺視野を繰返し測定して,それを面積として評価し,その値を比較することにより,動的周辺視野測定における誤差の問題に取り組まんとするものである。

1977年の急性出血性結膜炎小流行時の眼症状と潜在性神経障害

著者: 岡和田紀昭 ,   柳田和夫 ,   市川宏 ,   丹羽得三 ,   飯田光男 ,   祖父江逸郎

ページ範囲:P.1329 - P.1336

緒 言
 急性出血性結膜炎(以下AHCと略す)の臨床報告は1970年のガーナにおけるCharttcrjeeら1)の発表以来世界各地から相次ぐ報告があり,病原菌ウイルスは甲野ら2)によつてEntero-virus群の新しいタイプであることが分離固定され,神経合併症の発生が予測されていた。AHCの神経合併症としてRadiculomyelitisをはじめて注目したのは,インドでの大流行時のBharuchaら3),Wadiaら4)の報告である。以来台湾5),セネガル6),タイ7)の各地からの報告が相次ぎ,神経合併症の頻度はAHC罹患者2万人に1人の割合と推定されている。幸い本邦では1971年の初流行以来今日まで未だ神経合併症の報告がないが,甲野8)は九州で神経合併症の1例が確認されたと総説の中で述べている。AHCの神経合併症が将来本邦に出現する危険性は十分考えられるが,これに対しいまだ系統的な調査はなされておらず,わずかに共同研究者の丹羽ら9)がAHC罹患後の不定愁訴を長期に観察した報告がある程度である。
 今回われわれは1977年に名古屋市および近郊で発生した。

Tolosa-Hunt症候群の1例

著者: 天野数義 ,   花村哲 ,   鎌野秀嗣 ,   畠中坦 ,   羅錦営

ページ範囲:P.1337 - P.1341

緒 言
 「海綿静脈洞,上眼窩裂,眼窩漏斗先端部の非特異的炎症に由来する有痛性眼筋麻痺(painfulophthalmoplegia)」はTolosa-Hunt症候群と呼ばれ,1954年Tolosa1)の報告,1961年Huntら2)の6例の報告があり,1966年SmithおよびTax-dal3)が追加報告するとともにTolosa-Hunt症候群と名付けたものである。ステロイド療法が著明な効果をみせることが特徴である。Huntはこの疾患に対し明確な基準をもうけているが,それにあてはまるTolosa-Hunt症候群の1例を経験したので報告し,あわせて文献的考察をおこなう。

白内障顕微鏡下嚢外摘出術の再検討

著者: 村田忠彦

ページ範囲:P.1343 - P.1347

緒 言
 白内障状態においても水晶体嚢は混濁せず完全な透明性を維持しており,嚢外摘出術後も残された後嚢の透明性は完全かつ永続的に保たれる。私の確認したこの事実に基づいた新しい顕微鏡下嚢外摘出術を発表1)して以来4年が経過した。その後も乳児より高齢者に至る多数の白内障手術に本手術法を施行し,本法の安全性と確実性を更に確めえたが,その間の経験からなお若干の改良を行い,本法を行うにあたつて注意すべきいくつかの知見も得たので報告する。ただし手術についての基本的な点については何らの変更はない。

ヨモギ花粉症の9例

著者: 根本慧子 ,   大西英子 ,   藤崎洋子

ページ範囲:P.1361 - P.1365

緒 言
 眼,鼻症状を主体とする花粉症は,眼科領域ではあまり知られておらず,現在までに数例の報告1〜7)をみるにすぎない。
 今回,著者らは毎年9月初旬に発症し,10月中旬には全く無症状になる,ヨモギ花粉症と思われる9例を経験したので,その臨床所見を記載すると共に血清IgE値を測定し,若干の免疫学的考察を加えたので報告する。

カラー臨床報告

Iridoschisisの1例

著者: 高橋信夫

ページ範囲:P.1357 - P.1360

緒 言
 Iridoschisisとは,中胚葉虹彩実質の部分的分割すなわち,線維が崩壊して前葉が分離し,その遊離端が前房に浮んでいるという稀な疾患で,1922年Schmitt1)により初めて報告された。彼はこれを虹彩前葉の剥離(Ablosung des vorderenIrisblattes)と呼んだが,Loewenstein2)は1945年Iridoschisisと命名し,以来,この病名が冠された。私は最近,この稀な疾患をみる機会に恵まれたのでここに報告する。

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第32回日本臨床眼科学会スケジュール

ページ範囲:P.1350 - P.1355

眼の臨床局所解剖

瞼裂と眼球の位置関係—子供の偽内斜視は大人になれば治る

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.1366 - P.1367

 子供が内斜視ではないかといわれて眼科医を訪れる。実際は偽内斜視である。これは偽内斜視だから心配する必要はないと説明する。両親は半分だけ安心する。大人になるまでには自然に治るから心配しないで放置しなさいと断定すれば完全に安心する。
 子供はすべて内斜視に見えやすい要素を持つている。うちの視能訓練士増田勝子君らのグループが何故そういうことがおこるのかということを新しい角度から検討しているのでその要約を紹介しようと思う。

神経眼科講習会

視交叉近傍病変の単純写—Ⅱ.単純写:異常所見

著者: 玉木紀彦 ,   松本悟

ページ範囲:P.1371 - P.1375

 視交叉近傍病変の診断に必要な基礎的知識である視交叉近傍構造の臨床解剖とレ線解剖について先に述べた。本稿では視交叉近傍病変の単純写上の病的所見について説明する。

GROUP DISCUSSION

眼の形成外科

著者: 久冨潮

ページ範囲:P.1376 - P.1378

 当グループ・ディスカッションは,毎回,会場狭しと多数の会員の御参集を得ており,世話人としては大変嬉しい一方,いつも座席が足りなくて立見の先生があり,また会場に入ることさえできずに他に行かれる方もあるので,その点は申し訳無く思つています。
 グループの運営をしている間に問題点が出て来ますが,それを臨床眼科学会に対して上申する機会がありません。そこでこの誌上を借りて述べてみます。他のグループも同じ問題をかかえているのでしようか,それぞれ解決しているのでしようか。世話人の集まりというものがあると良い様にも思うし,条件のちがうグループが集つても仕方が無い様な気もします。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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