文献詳細
臨床報告
1977年の急性出血性結膜炎小流行時の眼症状と潜在性神経障害
著者: 岡和田紀昭1 柳田和夫1 市川宏1 丹羽得三 飯田光男2 祖父江逸郎2
所属機関: 1名古屋大学医学部眼科学教室 2名古屋大学医学部第一内科学教室
ページ範囲:P.1329 - P.1336
文献概要
急性出血性結膜炎(以下AHCと略す)の臨床報告は1970年のガーナにおけるCharttcrjeeら1)の発表以来世界各地から相次ぐ報告があり,病原菌ウイルスは甲野ら2)によつてEntero-virus群の新しいタイプであることが分離固定され,神経合併症の発生が予測されていた。AHCの神経合併症としてRadiculomyelitisをはじめて注目したのは,インドでの大流行時のBharuchaら3),Wadiaら4)の報告である。以来台湾5),セネガル6),タイ7)の各地からの報告が相次ぎ,神経合併症の頻度はAHC罹患者2万人に1人の割合と推定されている。幸い本邦では1971年の初流行以来今日まで未だ神経合併症の報告がないが,甲野8)は九州で神経合併症の1例が確認されたと総説の中で述べている。AHCの神経合併症が将来本邦に出現する危険性は十分考えられるが,これに対しいまだ系統的な調査はなされておらず,わずかに共同研究者の丹羽ら9)がAHC罹患後の不定愁訴を長期に観察した報告がある程度である。
今回われわれは1977年に名古屋市および近郊で発生した。
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