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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科33巻1号

1979年01月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・254

眼窩に初発した緑色腫の1症例

著者: 星野元宏 ,   近藤順子 ,   市川宏 ,   小林政英

ページ範囲:P.6 - P.7

〔解説〕
 緑色腫は腫瘍形成性白血病の特異な型の一つであり,緑色調を呈する事が特徴である。今回私たちは,急激な眼球突出を初発症状とした緑色腫の1例を経験し,その特徴である緑色あるいは灰緑色をカラー撮影したので報告する。さらに本例は,組織学的に緑色腫と診断されながらも術後3カ月間にわたつて血液学的に白血病がみられなかつた,きわめてまれな興味ある症例であつた。
 患 者:9歳女児。

眼科臨床レントゲン診断学・13

各論(10):神経眼科(その1)頭部単純撮影

著者: 丸尾敏夫 ,   桐渕利次

ページ範囲:P.82 - P.83

 眼症状を主訴とする頭蓋内疾患は少なくなく,頭部のレントゲン診断は神経眼科の重要な診断法のひとつである。まず,頭部単純撮影が基本であり,この後,血管撮影,空気撮影あるいはCTが行われることになる。
 頭部単純撮影によつてみられる頭蓋骨の変化としては,(1)頭蓋内圧亢進による変化,(2)頭蓋骨の骨密度の変化,(3)トルコ鞍の変化,および(4)頭蓋内の石灰沈着があげられる。

総説

緑内障の視野—パターンと進行形式

著者: 湖崎弘

ページ範囲:P.9 - P.20

緒 言
 緑内障の視野は,診断・治療効果の判定・経過観察に欠くべからざるものであるが,そのパターンは弓形暗点・nasal step・末期までの固視部残存・周辺の島状残存が特異的なものとして成書にあげられている。しかしながら緑内障視野のすべてが特異的なものばかりでないこともよく知られている事実であるが,非特異的視野がどの病期にどの程度の比率に存在するかの具体的なことは全くわかつていない。この点は視野から緑内障を診断する上で大きな支障を来たす。
 一方緑内障視野がどのような形式をとつて進行するかについては,わずかにTraquairの成書1)に視野欠損が固視点の周囲を取りかこむ方向に進むものと,早くから周辺に破裂するものの2通りあると記載されているのみで,この進行形式がわかれば予想が立つので実際の視野検査の上で大いに助かる。また更に病期ごとの進行の速度・可逆性がわかれば治療の上で,濃淡・緩急を使いわけることができ,これまた臨床上大いに役立つ。このような目的から臨床経験に基づきパターンと進行形式を分析しみた。

臨床報告

徹照写真による白内障混濁の定量測定の試み

著者: 河原哲夫 ,   尾羽沢大 ,   中野良志 ,   佐々木政子 ,   坂田俊文

ページ範囲:P.21 - P.26

緒 言
 白内障水晶体の混濁状態を定量的に測定することは白内障の臨床上重要なことであり,現在細隙灯顕微鏡による検査や視力による評価が主に行われている。しかしながら,これらの方法には欠点も多く含まれ,客観性に乏しいと考えられる。これに対して,白内障水晶体の徹照像は平面的ではあるが,水晶体の混濁部を一度に観察・撮影できる利点を持つている。それゆえ,白内障の混濁経過の評価に徹照像が有効に利用できると考えられる1〜3)
 最近,われわれは白内障混濁部の定量的解析を目的として,白内障水晶体の徹照像撮影法を改良し,良質の徹照写真を得ることができた3)。さらに,得られた徹照像を等濃度で分割し,水晶体混濁部の等濃度線写真(アイソデンシトグラム)を作成した。また各濃度段階の面積を測定し,混濁程度のヒストグラム表示を行つた。

興味ある多視を訴える1症例

著者: 岡本繁 ,   長谷川栄一 ,   渡辺好政 ,   森礼子 ,   大月洋 ,   熊代修 ,   古元順子

ページ範囲:P.27 - P.29

緒 言
 近年眼科領域において心因性の視機能障害が注目され,眼心身症,眼ヒステリーとして興味ある症例が報告されている。殊に小児の眼科診療に際しては心因性の視機能障害に注意をはらう必要があると思われる。一方「眼心身症」という言葉が広義に解釈され,心因性の視機能障害を総称して用いられているようであり,眼心身症と眼ヒステリーの異同がいささか混乱している。
 私たちは斜視手術後に三重視を訴える症例を経験し,精神科医による診察の結果ヒステリーの機制によることが推察された。このような症例は他になく大変興味ある症例と考えるので報告した。

瞳孔異常を伴わない動眼神経麻痺の1症例

著者: 富森征一郎 ,   大井美行

ページ範囲:P.31 - P.33

緒 言
 一般に,瞳孔異常を伴わない動眼神経麻痺は,糖尿病に合併することが特徴とされている。しかし,今回われわれは,糖尿病のない男性に,瞳孔異常を伴わない動眼神経麻痺が発症し,脳血管撮影によつて,脳底動脈のelongationがみられ,しかも糖尿病に合併する場合と同様,およそ3カ月間で治癒した症例を経論した。わが国では,この様な症例の報告はないので,ここに経過を報告したい。

前交通動脈瘤による片眼失明の1例

著者: 池田公行 ,   夏目重厚 ,   谷栄一 ,   可児一孝

ページ範囲:P.34 - P.38

緒 言
 脳底部に発生する脳動脈瘤により,さまざまな視野障害が起ることが報告されている。内頸動脈瘤,特に巨大動脈瘤によつて視神経が障害される場合には,しばしば動眼神経その他の脳神経の症状を伴うため,診断は比較的容易であると考えられる。中大脳動脈瘤による視野欠損は,視神経に対する直接の障害によるというよりは,脳内での視放線の障害によるものが多いと考えられる。前交通動脈瘤は,その解剖学的な関係より,視神経に直接に障害を及ぼすことがあるものと考えられるが,その頻度はかなり稀なものである。われわれは,急速に片眼の失明をきたし,CT,頸動脈写および手術によつて,前交通動脈瘤による視神経の直接の圧迫による障害と診断された1例を経験したので報告する。

網膜嚢胞を伴つた網膜剥離の3例

著者: 追中松芳 ,   三嶋弘 ,   坂田広志 ,   荻田昭三 ,   調枝寛治

ページ範囲:P.39 - P.43

緒 言
 網膜嚢胞はまれなもので,わが国における報告例は諸外国にくらべて余り多くない。しかし,近年,眼底検査法の進歩によつて,retinoschisisなどを初めとする周辺部網膜病変に関する理解が深まるにつれ,その報告に接することが多くなつた。わが国においてはこれまでに,百々1),新津ら2),白井ら3)などによつて10例の網膜嚢胞を伴つた網膜剥離症例が報告されているが,さらに1975年に至つて小沢ら4),石井ら5)が追加報告をし,嚢胞の成因に関して,嚢胞は網膜剥離に続発した2次的変化であると述べている。
 今回,われわれも1975年1月から12月末までの1年間に,広島大眼科に入院加療された特発性網膜剥離129例132眼のなかに,網膜嚢胞を伴つた網膜剥離3例3眼を認めたので,その治験の概要を報告する。

新型夜間視力計による民間航空機運航乗員の夜間視力判定規準の設定

著者: 蒲山俊夫 ,   常岡寛 ,   福田順一 ,   楢崎嗣郎 ,   牧田紀子

ページ範囲:P.45 - P.50

緒 言
 民間航空機運航乗員の適性検査の一つとして,夜間視力検査がある。この検査は,高輝度下にある眼が,突然薄明状態に入つた時,可及的速やかに対象物を視認するには,どの程度の時間でどのように視力が回復するかを検出するとともに,薄明順応中の低照度視力も同時に調べるために行なう検査であり,単に航空機運航乗員のみならず,一般交通機関乗員の適性を知るためにも必要であり,交通眼科領域における大きな課題の一つであろう。
 わが国の運輸省航空局の航空身体検査マニュアル1)には,この夜間視力の検査方法および検査上の注意として,「現在のところ簡便な検査装置がないため,つぎの検査法でスクリーニングする。比較暗室にて,近距離視力表の0.3の視標を読ませる。疑わしいものは,ADAPTO METER又はNYKTO METERを用いる。」と記載してある。しかし,このスクリーニング法は,条件設定を一定にすることが困離であり,適性検査として適した方法とはいえない。また現在使用されているAdaptometerおよびNyctomcterは,測定に時間がかかり,身体検査時に多数の者を短時間に検査することは,困難である。

Tonic pupilと無汗症の合併した1例

著者: 新富芳子 ,   岡田文彦

ページ範囲:P.51 - P.55

緒 言
 Tonic pupilは瞳孔散大とlight-near dissoci-ationがみられ,低濃度メコリール点眼に過敏性をしめす特異的な瞳孔運動障害である。しばしば腱反射異常を伴うことは,Adie's syndromeとして知られているが,その他の全身症状は伴わないといわれてきた。しかし最近では種々の全身症状との合併例が報告されTonic pupilの病因解明の手がかりともなるのではないかと注目されている1)。なかでも瞳孔以外の自律神経症状を伴う例としては,Acute pandysautonomia2)の場合や,分節状無汗症を伴う例3〜10)などが少しずつ報告されてきているが,各症例ごとに臨床像の相違も大きく,独立した疾患単位とするためには,さらに詳細な検索や長期間の経過観察が必要と考えられている。
 私たちはTonic pupilと無汗症を伴う症例を発病の早期よりpupillographyを用いて経過観察したところ,興味ある瞳孔運動障害の推移をとらえることができたので,無汗症との関連もあわせて報告したい。

Myotonic cataractの3例

著者: 沖本峰子 ,   近藤和義 ,   郡山昌太郎

ページ範囲:P.71 - P.77

緒 言
 Myotonic dystrophyは,筋ジストロフィー症の臨床亜型の一つとされていたが,1968年世界神経学連合1),1969年Walton and Gardner-Med-win2)により筋ジストロフィー症とは別に筋緊張症候群の中の一疾病単位として明確に分類されている。
 本症は,筋ジストロフィー症状に関連する筋萎縮,筋力低下と筋緊張症状を併有し,さらに白内障をはじめとする眼科的異常,前頭部脱毛,性腺萎縮,精神薄弱,言語障害,聴力障害,肺機能低下,循環障害,骨変化,内分泌腺異常,免疫グロブリン異常などの全身症状も多く認められている。徐々に進行増悪する家族性ミオパチーで,筋症状に加えて多彩な筋以外の全身症状を合併することが本症の特徴であり,なかでも白内障と性腺萎縮は本疾患の主症状の一部を形成している。

隅角血管

著者: 石郷岡均 ,   浅山邦夫 ,   荻野誠周

ページ範囲:P.78 - P.81

緒 言
 前房隅角鏡検査で隅角新生血管を観察する機会は極めて多い。しかし,病的ではない隅角血管に関する報告はChatterjee1),Henkind2)のわずか2論文にすぎない。
 われわれは,隅角血管にとりわけ重大な関心を持つ緑内障外来で,隅角血管をしばしば観察し,その写真撮影ならびに螢光造影を試みたので報告する。

カラー臨床報告

乳頭前網膜血管ループ形成症

著者: 小林義治

ページ範囲:P.61 - P.69

緒 言
 視神経乳頭の面上あるいは周囲で,網膜血管が蛇行する状態,いわゆるループ形成症は,1871年Liebreichの報告以来,数多くみられる。しかしながらループの成立は先天性とされ,後天的に形成された報告はなく,かつループ形成の合併症として血管腫・網膜動脈分枝閉塞・緑内障の報告がある他先天形成異常の報告はない。
 著者は,飛蚊症を訴えて来院した27歳男子の両眼に動脈ループ形成のほか視神経乳頭部形成異常等の先天異常を持つ症例を経験したのでここに報告すると共に,血管ループが後天性に発生した例およびループ形成部に動脈瘤を発見し光凝固を行なつた例を加え,6例7眼のループ形成症の所見をのべてなたい。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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