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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科33巻10号

1979年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・263

間歇性眼球突出を呈した典型的な眼窩静脈瘤の1例

著者: 稲葉全郎

ページ範囲:P.1310 - P.1311

〔解説〕
 眼窩静脈瘤は間歇性の眼球突出という臨床所見が特徴とされている。確定診断には静脈撮影または外科的に静脈瘤の存在を確かめる事が必要であり,このような報告は比較的少ない1〜6)。われわれはCTスキャナー,眼窩静脈撮影により眼窩静脈瘤と診断した症例を経験した。本症のCTスキャン所見の報告はまだなく,また定型的な静脈撮影の写真も報告が少ないのでこの例を報告する。
 症例:42歳,男子。

総説

神経眼科的診断法—視覚誘発電位(VECP)

著者: 安達恵美子

ページ範囲:P.1313 - P.1319

はじめに
 視覚誘発電位(Visually Evoked Cortical Po-tentials,VECP)は,視覚刺激,例えば光とか図形によつて誘発される大脳皮質視覚領附近の電位変化のことをいう。視覚機構を受容器細胞の観点から解析し臨床応用する方法には,自覚的応答によるものと他覚的な電気生理学的手法の二つがあるが,被検者に信頼しうる自覚的応答が期待できない場合,例えば,乳幼児,白痴,詐病,ヒステリーなどでは,後者の威力が発揮される。既に網膜レベルではERGがルーチンに用いられているが,大脳レベルでのVECPはまだ研究の域を出ない憾みがある。その理由は1)数μVオーダーの微少電位のためS/N改善に高価な装置が必要なこと,2) S/N改善に,例えば加算法が必須のため,記録時間が長びくこと,3)刺激パラメータが多彩なため,VECPも多彩で複雑なこと,4)個人差が大きいことなどがあげられる。しかしながら,ここ10年のPattern VECPの急速な進歩は着実にまとまる方向に動いて来た。本論文では,主として最近のわれわれの研究およびAm-sterdamグループ,KeeleグループらのPatternVECPを中心に紹介しながら,ヒトのVECPをいかに記録すべきか,また,今後どの様な応用発展が考えられるかについてのべる。

臨床報告

人工眼内レンズの成績—第1報 眼圧との関係

著者: 近藤武久 ,   吉田雅子 ,   栗橋克昭

ページ範囲:P.1321 - P.1325

緒 言
 人工眼内レンズは1949年Ridley1)が初めてacrylic lensを使用した臨床報告をして以来,多くの追試,改良が加えられ次々に優秀な眼内レンズが開発されてきている。就中,1958年Bink-horst2)のiris-clip lensが登場してからその成績はかなり安定したものになつたといえる。その後もiridocapsular lens,後房レンズの開発3)など,いろいろなタイプのより安全性の高い眼内レンズを求めて多くの研究がなされているのは周知のところである。わが国でも竹内4)が始めてまとまつた臨床報告を行つたのに続き,既にかなりの数の報告5〜7)がみられ次第に普及してきている。
 人工眼内レンズ挿入後の偶発症に関しても既に若干の報告がみられるが,緑内障に関する報告8〜12)は少なく,人工眼内レンズと緑内障の問題を本格的にとり上げたのはSmithら13)のみであり,まだ検討の余地があろう。

涙嚢鼻腔吻合術(500余例の経験から)—その1 手術術式と成功するための要点について

著者: 山崎守成

ページ範囲:P.1327 - P.1332

緒 言
 慢性涙嚢炎に涙嚢鼻腔吻合術(以下D.C.R)を施すと,流涙も膿漏も治つてしまう。慢性涙嚢炎は眼科医にとつて,日常扱う重要な疾患の一つでDCRの適応は多い。また,時には内眼手術の前提ともなり,DCR技術修得は大切な意味を持つ。にもかかわらず,DCRは耳鼻科との境界領域に存在するため,眼科医には取付きにくい,難しい手術という印象が強く,眼科治療の周辺的存在となつて,手術を手懸けるのがおつくうになり,一般的普及は遅れがちである。本邦での手術術式の詳細な紹介はすでに弓削1),長嶋2),丸尾3)が行つている。これらを基とし,私は1967年以来500例を越すDCRを経験した。その間自分なりの技術改良を加え,現在ではほぼ100%の症例に目的を達せられる様になつたのでDCRの一法として記述紹介し,私なりの手術成功のための要点も合わせて報告する。

悪性細網症(malignant reticulosis)にみられたぶどう膜炎

著者: 桜木章三

ページ範囲:P.1333 - P.1337

緒 言
 2年以上にわたつて原因不明の虹彩炎として治療を受けていた62歳の女性が,発熱と全身衰弱で死亡し,病理解剖の結果悪性細網症Malignantreticulosisと診断され,病理解剖時に摘出された眼球を組織学的に検索することができたので,眼球の病理所見を中心に報告し,最近ぶどう膜炎の原因として注目されつつある細網肉腫Reticulumcell sarcomaとの関係について二,三の考察を加えてみたい。

両側性網膜芽細胞腫の患者に見られた原発性線維肉腫の1症例

著者: 新家真 ,   谷島輝雄 ,   山田敦

ページ範囲:P.1339 - P.1344

緒 言
 遺伝性2,21)である両側性網膜芽細胞腫の患者においては,放射線照射部位1,7,27)のみならずそれ以外の部位1,13)よりも別種の悪性腫瘍がしばしば発生する事が知られており,その頻度は片側性網膜芽細胞腫1)の患者や,他の小児悪性腫瘍30)の,患者に比べて非常に高いとされている1)。その原因として,両側性網膜芽細胞腫患者には悪性腫瘍を発生させやすい遺伝的素因がある事が推定9,13)されている。
 今回われわれは,両側性家族性網膜芽細胞腫の患者において,放射線照射を全くうけていない側の眼窩下縁部皮下に発生した線維肉腫の1症例を経験し,当該部広範切除および遊離皮弁移植術により治療した。両側性網膜芽細胞腫の患者において,放射線照射に関係なく発生した悪性腫瘍としては,最も多い骨肉腫1,9,13)を始め,グリオブラストーマ13),悪性黒色腫30),甲状線ガン20),腟悪性腫瘍16)および造血器の悪性腫瘍13)がすでに報告されているが,線維肉腫の報告はいまだない。また眼窩部に原発した線維肉腫の報告3,4,10〜12,25,32)も稀である。

®エタンブトールによる視神経症の観察

著者: 原田敬志 ,   佐竹成子 ,   市川宏

ページ範囲:P.1345 - P.1355

緒 言
 エタンブトールethambutolは化学名を2,2'-(ethylenediamino) di−1−butanolと称し,アメリカのレダリー研究所で抗結核剤としての新しい期待をになつて作られた。結核菌は他の結核薬と交叉耐性を示さないため,初回および再治療肺結核の治療に卓越した効果を発揮する(堂野前1),馬場ら2))。
 1962年,Carr&Henkind3)は18名の本剤服用者のうち8名に何らかの程度の中毒性弱視様症状を認め,翌年わが国でも原田(勲)4)が2例の®エタンブールによる眼障害の報告を行ない,以後多数の報告が相ついだ(内藤5),駒井6),遠藤7),玉井8),茂木9),三根10))。

原発性開放隅角緑内障の長期視野経過の分析

著者: 溝上国義 ,   豊田幸信 ,   諌山義正

ページ範囲:P.1365 - P.1369

緒 言
 原発性開放隅角緑内障はきわめて長期にわたり管理され,また適切な治療を受けるべき疾患である。この管理にあたり,もつとも重要な点は,視機能の保存であるが,それには,視野をチェックして,その悪化を予防する必要がある。一方,緑内障における視野障害の進行は,眼圧の上昇と密接な関連をもつと一般に信じられている。しかしながら,われわれが,40歳以上の男子3,639名を対象として行つた緑内障集団検診1)では20mmHg以上の高眼圧を示した者が,5.63%あつたのに対し,視野障害のあつた者は0.86%であり,両者の間に大きなへだたりがあつた。また眼圧レベルそのものよりも,眼圧の変動幅が視野障害進行にもつとも影響するとする考え方もある2)。この様に,眼圧の上昇と視野障害の進行との相関については,なお不明な点がある。今回,われわれは本院緑内障外来において,薬物治療のみで10年以上にわたり経過観察できた原発性開放隅緑内障群について,それらの視野経過と眼圧との相関について検討を行つたので報告する。

カラー臨床報告

3年間の経過観察を行なつたLeber's congenital amaurosisの1例

著者: 岡島修 ,   谷野洸

ページ範囲:P.1361 - P.1364

緒 言
 Leber's congenital amauroslsは,1869年にLeberが,瞳孔対光反応が消失し,眼振を伴い,Tapetoretinal degenerationに属し,遺伝性を行する先天盲として,初めて報告した疾患である1)
 その後90年間は数個の報告が散見されるのみであったが,1950年代にERGが臨床に応用されるに及んで,本症はにわかに注目を集めた。1957年Alströmらは175例を集めて報告し2),1959年にはSchappert-Kimmijserらが227例を報告した3)。ここで彼らは,本症においてはERGは記録不能あるいは極度の低振幅を示すと述べ,スエーデンおよびオランダの盲児のうち,それぞれ10%および18%が本症によるものであると推定している。

斜視の原因と治療

Ⅷ.斜視の治療

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.1370 - P.1371

 過去7回におたつて斜視の発生原因について述べて来たが,今回はその治療の基本について述べて,このシリーズに一息入れようと思う。
 斜視は異常なSensorimotor reflexが関与しておこるものであることは否定できないが,このような異常なReflexの発生を許す「上位の原因」はFusionの未発達,または一度発達したFusionの喪失のどちらかであろう。Convergenceを伴つたFusionは人類特有のもので,動物では類人猿にわずかに見られるだけである。動物の中で一番両眼視域の広い猫でも近い所を見る時輻湊は全くおこらない。その代り瞳孔が散大する。ヒトでは近見時に輻湊がおこつて縮瞳する(図1)。動物が近見時に散瞳することは輻湊の代償になる(後述)。

文庫の窓から

南北経験医方大成論(2)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1372 - P.1373

 次に内容についてであるが,「医書大全」にはおよそ68門,61附論を挙げているが,「医方大成論」は「医書大全」24巻中に収められた病論と多少の追加をしておよそ72門掲げている。すなわち,
1.風,2.寒,3.暑,4.湿,5.傷寒,6.痙,7.痢,8.嘔吐,9.泄潟,10.霜簿L,11.秘結,12、咳徽,13.疫氣,14,喘急,15。氣,16.脾胃,17.翻胃,18.諸虚,19.瘍療,20.咳逆,21.頭痛,22.心痛,23.眩鼠,24.腰脇痛,25.脚氣,26.五痺,27.五疽,28.崩毒,29.諸淋,30.消渇,31.赤白濁,32.水腫,33.脹蒲,34.積聚,35.宿食,36.白汗,37。虚煩,38,健忘,39.癩痢,40,陰癩,41.癒冷,42.贋熱,43.吐1血L44。下血,45.痔漏,46.脱虹,47.遺尿失禁,48.咽喉,49.眼目,50.耳,51.鼻,52.口唇,53.牙歯,54.舌,55.五蔵内外所因讃治,56.擁痕瘡編,57.瘡疹,58.燦旛,59.折傷,60.急救諸方,61.婦人,62.孕育,63.胎前,64.産後,65.小児,66.膀風撮口,67.口瘡重舌,68.夜1帝客↑午,69.急慢驚風,70.胎熱胎寒,71.感冒四氣,72.疹痘。

眼科手術学会

白内障手術における二段階球後麻酔法

著者: 窪野正 ,   坂西良彦 ,   内野允 ,   清水昊幸

ページ範囲:P.1375 - P.1378

緒 言
 球後麻酔の目的は,眼球内痛覚の除去と外眼筋の麻痺である。したがつて,球後麻酔の効果が確実になるためには,まず第一に球後針を刺入した際,その先端が毛様体神経節および外眼筋支配神経の近辺に到達していなければならない。しかし,外眼筋支配神経の眼筋内侵入部位と毛様体神経節の存在部位の間には多少の距離があるので,片方に効果があつても他方に効果の乏しい場合がある1)。こうした場合,これからここに述べる「二段階球後麻酔法」が有効である。この方法を開発するに当つては,刺入された球後針先端部の眼窩内での存在部位を確認するために,われわれは,レントゲン写真およびCTスキャンを用いた。また,この麻酔法が白内障手術の術中合併症におよぼす影響についても検討を行つたので,併せてここに報告する。

硝子体手術に関する臨床的研究—(その6)網膜静脈閉塞症およびくも膜下出血に伴つて発生した硝子体出血に対する手術成績

著者: 松井瑞夫 ,   田代忠正 ,   佐藤節 ,   永田黄 ,   前保彦

ページ範囲:P.1379 - P.1384

緒 言
 われわれは前報1)〜4)までに,重症糖尿病性網膜症の眼内合併症,Eales病,眼外傷などに対する経毛様体扁平部硝子体切除術(以下,単に硝子体切除術と略記)の手術成績を報告してきたが,今回は網膜静脈閉塞症およびくも膜下出血に伴つて発生した硝子体出血に対する手術成績について報告する。両者を一括して報告する理由については後にものべるが,両者の硝子体混濁の病態が非常に類似しているためである。すなわち,大多数の症例において,乳頭とvitreous baseに癒着をもつた硝子体剥離を来たしている。このため手術々式も比較的容易な術式の適応となる。

GROUP DISCUSSION

第20回 緑内障

著者: 澤田惇

ページ範囲:P.1385 - P.1389

〔主題〕原発緑内障の長期管理に関する諸問題
I予後
 長期間にわたつて観察,治療を行なつている原発緑内障患者を対象として,治療期間内における視野変化を中心とした視機能の千後と眼圧変動,治療内容との関係を計量医学的手法で解析して,本疾患の進行度と治療効果について考察した。対象は5年以上にわたり治療している原発緑内障77症例,144眼てあり,各症例について,年齢,性,視野,眼圧,治療内容を集計した。視野変化については湖崎の分類で数量化し,治療内容については,無治療,1種類の点眼剤使用,2種類以上の点眼剤使用,ダイアモックス内服併用および手術に対して,0〜4の数量化を行なつた。眼圧については経過観察中における最高眼圧,最低眼圧および5年間における眼圧の平均値を用いて眼圧変動を表現した。なお,10年以上にわたり観察している症例については,前半の5年間と後半の5年間をそれぞれ独立していると仮定し集計した。また緑内障眼においては,眼圧,視野変化ともに左右眼での相関を認めなかつたので,左右についても独立していると仮定し,各眼について上記の変量を用いて主成分分析を行なつた。
 主成分分析の結果,最高眼圧が第1主成分に,最低眼圧が第2主成分となり,治療内容は第1主成分に正の相関,第2主成分に負の相関を示した。第3主成分には年齢と予後が同程度の相関係数であつた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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