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臨床報告
両側性網膜芽細胞腫の患者に見られた原発性線維肉腫の1症例
著者: 新家真1 谷島輝雄1 山田敦2
所属機関: 1東京大学医学部眼科学教室 2東京大学医学部形成外科学教室
ページ範囲:P.1339 - P.1344
文献購入ページに移動遺伝性2,21)である両側性網膜芽細胞腫の患者においては,放射線照射部位1,7,27)のみならずそれ以外の部位1,13)よりも別種の悪性腫瘍がしばしば発生する事が知られており,その頻度は片側性網膜芽細胞腫1)の患者や,他の小児悪性腫瘍30)の,患者に比べて非常に高いとされている1)。その原因として,両側性網膜芽細胞腫患者には悪性腫瘍を発生させやすい遺伝的素因がある事が推定9,13)されている。
今回われわれは,両側性家族性網膜芽細胞腫の患者において,放射線照射を全くうけていない側の眼窩下縁部皮下に発生した線維肉腫の1症例を経験し,当該部広範切除および遊離皮弁移植術により治療した。両側性網膜芽細胞腫の患者において,放射線照射に関係なく発生した悪性腫瘍としては,最も多い骨肉腫1,9,13)を始め,グリオブラストーマ13),悪性黒色腫30),甲状線ガン20),腟悪性腫瘍16)および造血器の悪性腫瘍13)がすでに報告されているが,線維肉腫の報告はいまだない。また眼窩部に原発した線維肉腫の報告3,4,10〜12,25,32)も稀である。
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