icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科33巻11号

1979年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・264

Eisnerの圧迫子付きロートを用いた眼底鋸状縁領域の観察

著者: 竹内忍 ,   金上貞夫

ページ範囲:P.1408 - P.1409

 眼底の鋸状縁領域の検査方法には,圧迫子と双眼倒像検眼鏡を用いる方法と,圧迫子付ロート(indentationfunnelに三面鏡を入れ,細隙灯顕微鏡を用いる方法がある。圧迫子と双眼倒像検眼鏡を用いる方法は,現在かなり普及し一般化しつつあるが,圧迫子付きロートと細隙灯顕微鏡を用いる検査方法は,拡大された詳細な所見がスリット像で観察されるにもかかわらず,あまり普及していないようである。今回われわれはEisnerの圧迫子付きロートを使用した結果,従来のものの欠点を補うことができ,かなり実用的であると思われたので報告すると共に,いままでシェーマでしかみられなかつた眼底鋸状縁領域の撮影を試みたので供覧する。
 従来の圧迫子付きロートがあまり実用化されなかつた理由として,①結膜嚢内への挿入が困難,②角膜とレンズとの間に気泡が入りやすい,③圧迫子の移動が困難,④強膜圧迫の強さが変えられないなどがあげられる。Eisnerの圧迫子付きロートはこれらの欠点を補うため,①眼球,瞼裂の大きさに応じた3種類のロートを揃えている。②気泡の侵入を防ぐため,ロートに鍔をつけてある。③圧迫子の経線方向への移動を可能にするため,ロートと圧迫子とを分離している。④強膜圧迫の強さを変化させるため,3種類の圧迫子を揃えている。以上のような特徴をそなえているので,毛様体扁平部より赤道部付近まで簡単に圧迫できるようになり,同時に圧迫の強弱も得られるようになつた。

臨床報告

Lanthony's New Color Testによる色覚研究—(1) 先天性赤緑色覚異常例について

著者: 市川一夫 ,   鳥井文恵 ,   平井陽子 ,   田辺詔子

ページ範囲:P.1411 - P.1419

緒 言
 色は色相,彩度,明度の3属性を持つているが,眼科の臨床においては,主として色相の混同について,検査がおこなわれてきた。
 LanthonyのNew Color Testは,この3属性それぞれについて,同時に検査できる利点を持つている.このテストは,Polackが1931年に出したColor testと題する色票の分類テストを改良して作られたものであつて,色覚異常における有彩色と無彩色の混同に基礎をおく検査を中心とするものであり,色覚異常の質的評価(色相配列検査と無彩色分離検査)と量的評価(種々の彩度での検査と得点計算)が可能である。

MLF症候群における垂直眼球運動障害

著者: 清水公也

ページ範囲:P.1420 - P.1423

緒 言
 MLF症候群1〜3)は核間麻痺inter nuclear oph-thalmoplegiaと言われているもので,内側縦束medial longitudinal fasciculus (以下MLFと略す)の障害により発生するとされている。MLFは,中脳上端より延髄下方に及ぶ線維で前庭神経核,眼球運動核を連絡している。一側のMLF症候群の症状は,(1)患眼の内転障害,(2)反対側眼の外転時に発生する単眼性水平性眼振,(3)輻輳運動は正常であるという,三つの症状とされている。以上の様に,MLF症候群は,水平性眼球運動障害として研究され,分類された。Cogan4)はMLF症候群を3型に分け,内転障害に輻輳障害も加わつているものを,前部型(anterior type)としMLFと外転神経核の障害,または,MLFと橋傍内側網様体 (Parapontine Reticular For-mation,以下PPRFと略す)の障害のあるものを,後部型(posterior type)とし,他のものを,中間型(midzone type)と分けている。posteriortypeで,MLFとPPRFの障害では,患側眼の内転,外転障害と,健側眼の内転障害も起こることより,one and half syndrome5,6)とも紹介されている。しかし,MLF症候群における垂直眼球運動についての研究は少ない。

眼筋型重症筋無力症患者prednisolone療法前後の中枢神経伝達機能の推定—終夜睡眠ポリグラフィによる研究

著者: 若倉雅登 ,   福田敏雅 ,   石川哲

ページ範囲:P.1429 - P.1433

緒 言
 重症筋無力症(MG)の中枢神経系の関与を述べた報告は極めて少ないが1),偽核間麻痺や調節輻湊の種々の異常など2),末梢性因子のみでは十分に説明しきれない症状を呈することがが知られている。また中枢にcholinergic fibresが多数あることから3),MG患者の中枢神経系に何らかの異常が存在することは推定可能である。事実Popeら4)以来多くの研究者により中枢choliner-gic mechanismsの関与が指摘されてきたけいれん発作1)が本症と合併したり5),脳波上にてんかん性異常がみられることが知られている6〜8)。われわれはこうした点に注目して,本症の睡眠ポリグラフによる研究を発表したが9),最近,中枢cholinergic functionの異常を推定しうるREM睡眠の分析法を考案した10)。本法を用いて,MG患者の終夜睡眠ボリグラフィを分析し,さらにprednisolone大量隔日投与を行つた患者の,治療前後の終夜睡眠ボリグラフの記録を検討したところ,極めて興味ある結果が得られたので報告する。

カラー臨床報告

新生児硝子体出血の4例

著者: 高塚忠宏 ,   植村恭夫

ページ範囲:P.1424 - P.1428

緒 言
 新生児に出現する網膜出血は,頻度は10〜20%とかなり高く,臨床的にもよく知られておりこれに関しては夥しい研究報告がある。
 しかし,一般にその予後は良好であり,最近では弱視との関連も否定されている。一方,新生児に出現する硝子体出血は,網膜出血に比し,その頻度は遙かに低く,一般にも知られておらず,その報告もScheich (1890)1)の報告以来21例の報告をみるにすぎない。今回,著者らは,未熟児綱膜症を対象とした定期的眼底検査中,あるいは,白色瞳孔に気付いて来院した乳児のなかで,1974年4月より1977年3月までの3年間に4例の新生児硝子体出血を経験したので,ここに報告する。

眼科手術学会

口腔粘膜移植とシリコンスポンジ使用による涙嚢鼻腔吻合術変法

著者: 近藤武久 ,   栗橋克昭

ページ範囲:P.1435 - P.1439

緒 言
 鼻外法による涙嚢鼻腔吻合術Dacryocystorhi-nostomy (DCRと略す)は涙道開通手術の主流であり最も確実で優れた方法である。われわれも先に過去2年間にDCRを行つた23例を集計し,成功率91.3%の成績をおさめ,症例さえ選択すれば100%成功する手術であることを報告した1)。このDCRは1904年にToti2)が初めて鼻外法を行い,1920年にDupuy Dutemps & Bourguet3)が粘膜縫合を行い今日のDCRの術式を確立した。しかしDCRの技術的改善による適応範囲の拡大,他の術式との併用など検討の余地は残されている。とくに近年,眼科顕微鏡手術の導入により,粘膜縫合が綿密に容易に行えるようになり手術適応の拡大が可能となつた1)。われわれは従来DCRの適応とならなかつた小涙嚢の症例や再手術の症例に対し,口腔粘膜移植とpluggingagentとしてシリコンスポンジを用いて行うDCR変法を行い好結果を得たので報告する。

保存強膜を利用した眼形成手術—(Ⅲ)結膜涙嚢鼻腔吻合術への応用

著者: 田邊吉彦 ,   村上正建 ,   柳川則夫

ページ範囲:P.1441 - P.1445

緒 言
 涙小管の断裂や涙嚢摘出による流涙症を解決するために現在最も広く行なわれている方法は,涙丘部より鼻腔内へ通じるトンネル創を手術的に作り,そこへJones tubeを留置しておく方法である1〜3)。この方法は目下の所,最もよい方法と思うが,欠点もまだ多い。その一つはtubeの脱落が比較的多く,脱落すると,その瘻孔はすぐ狭窄し,再挿入困難となる事で,わずか1日の経過で元のtubcが挿入できず,止むなく1段細いtubeを仮に挿入しておき,1週間程して元のtubeに戻すといつた操作の必要な事もある。次に,術後Jones tubeが下方に偏位して,tubeの口に結膜がかぶつてくる様になる事である。
 この欠点を解決するため,われわれは保存強膜でJones tubeを収める外套チューブをまず作り,これを涙丘から鼻腔へ向うトンネル創内に留置し,その中へJones tubeを挿入した。現在1年以上の経過を見た症例はわずか3例であるが,1例も脱落を認めていない。また術後Jones tubeは位置,角度共安定し,結膜のかぶりは来たしていない。保存強膜チューブはあらかじめ作つて保存しておけは手術の際,余計な手間はほとんどいらないので,Joncs tube使用の際には試みるべき方法と思い報告する。

先天性眼振における上下筋手術

著者: 岩重博康 ,   久保田伸枝 ,   丸尾敏夫

ページ範囲:P.1447 - P.1450

緒 言
 先天性眼振については種々の手術方法が考案されており,また,Dell'Osso (1972)以来,定量的な眼球運動記録1〜3)によつて眼振の静止位(nullrcgion)を鑑定し,手術筋の選択および量定が決定されるようになつている。
 これまで,先天性眼振の手術はface turnの矯正に,水平筋に対しては広く行われているが,上下筋に対してはPierse4),Cüppers5),Parks6),Sch-lossman7),Bastian8),などの報告が散見するのみである。

薬の臨床

実質型角膜ヘルペスの免疫療法—第2報 PS-K (Krestin)による治療成績

著者: 加藤富士子 ,   大野重昭 ,   松田英彦

ページ範囲:P.1451 - P.1455

緒 言
 近年,何らかの免疫学的異常が示唆される疾患に対して,非特異的免疫療法が有効であるという報告が増えてきている。
 われわれは前報で実質型角膜ヘルペスにおける検索の結果,宿主の生体免疫能の低下を指摘した1)。そしてこれが本症の病態形成に何らかの関与をしていると考え,その病態を改善するため,従来のIDU, steroid療法にかわる免疫療法をLevamisoleを用いて試みた。その結果,視力および角膜浮腫の著明な改善をみたことを報告した1)

斜視の原因と治療

Ⅸ.Slave Eye外直筋へのImpulseとその伝達機構 その1

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.1456 - P.1457

 外斜視の発生原因はMaster eyeのProprioceptionから常在性にImpulseが発信され,これがSlave eyeの外直筋にだけ伝達されるためにおこると老えられるが,この伝達の機構については稿を改めて書くことになつていた。
 ここでもう一度外斜視に特有のMagician's Forceps(MF)と一般に見られるReverse Phase Reflex(RPR)との関係をみよう。MFとRPRとが同時におこると両者は区別し難いことがある。しかし外斜視患者でMFだけがおこつてRPRのおこらない「場合」が少なくない。MFが単独におこつた場合にはその反応はall ornone formに近く,ピンセットに抵抗を感じない。RPRには明瞭なDose responseがあり,Master eyeはピンセットに強い抵抗を示す。MF単独の時にはMaster eyeを更に強制内転しても,Slave eyeは正中線を越えて内転しない。そういう例のEMGをまずお見せしよう(図1)。図1は右眼外斜視でMFだけしかおこらなかつた「時」のEMGである。右眼が外斜した状態では,右眼外直筋に強い収縮があり,内直筋のTonusは低下している。左眼(Master)の内外直筋の放電はほぼ等しい。右眼が外斜しているのはその眼が安静位をとつたからではなく,外直筋が異常収縮した結果であることが一目瞭然である。MF現象がおこると右眼は正位になる。

文庫の窓から

南北経験医方大成論(3)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1458 - P.1459

 また,「医方大成論」の諺解や和語抄本等の解読書が次々と著わされた。その書名のわかつているものを挙げると次のようなものがある。
1.医書大全論 江戸初 古活字版 全1冊(51丁)新刊名方類證医書大全序(天順2年 呉高尚,正統11年熊宗立)

第1回眼科手術学会講演抄録集

著者: 住江憲勇 ,   中谷一 ,   前田一美 ,   久保田行男 ,   尾原正博

ページ範囲:P.1465 - P.1475

1.局所麻酔剤塩酸リドカインによる重症痙攣発作
 塩酸リドカインによる急性中毒反応のimmediatetypeとdelayed typeの2症例を報告する。血中局麻剤濃度がどの位になつたら中毒反応を起こすかは,同じ血中濃度でも人によつて差があり,また,全身状態,心因性反応等の関与により,同一人でも状態によつて異なる。しかし,一たび中毒反応の徴候を呈したら速かに対処し,血中局麻剤高濃度遷延化を阻止せねばならない。そのために,①Diazepam投与,②気道確保による十分な酸素投与を改めて強調した。なお,Deryck Dun-calfが1970年に報告したGeneral AnesthesiaとLocalAnesthesiaとのDeath Rateには差が認められないように局所麻酔といえども十分な準備が必要である。

GROUP DISCUSSION

第17回網膜剥離研究会

著者: 市橋賢治

ページ範囲:P.1477 - P.1481

1.遺伝性網膜硝子体変性
 家系内に6名もの網膜剥離を頻発した一家系を経験し家系内の13名を検索した結果,網膜剥離を併発した6名を含む11名が特徴的臨床像を示した。すなわち後極部の網脈絡膜萎縮,硝子体膜,硝子体液化に車軸様の点状白内障であり,家系調査,臨床像から本象系の疾患が常染色体優性遺伝の網膜硝子体変性でありWagnerの網膜硝子体変性に属するものであると結論づけられた。
 さらに従来より本症での視力低下は白内障および網膜剥離の併発によるものとされているが,本家系では11名全員網脈絡膜萎縮が強く特に強度の網脈絡膜萎縮を有する3名には白内障および網膜剥離がないにもかかわらず0.1から0.6の視力低下があり,視力低下の原因として網脈絡膜萎縮が注目された。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?