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眼科手術学会
保存強膜を利用した眼形成手術—(Ⅲ)結膜涙嚢鼻腔吻合術への応用
著者: 田邊吉彦1 村上正建1 柳川則夫1
所属機関: 1名古屋大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.1441 - P.1445
文献購入ページに移動涙小管の断裂や涙嚢摘出による流涙症を解決するために現在最も広く行なわれている方法は,涙丘部より鼻腔内へ通じるトンネル創を手術的に作り,そこへJones tubeを留置しておく方法である1〜3)。この方法は目下の所,最もよい方法と思うが,欠点もまだ多い。その一つはtubeの脱落が比較的多く,脱落すると,その瘻孔はすぐ狭窄し,再挿入困難となる事で,わずか1日の経過で元のtubcが挿入できず,止むなく1段細いtubeを仮に挿入しておき,1週間程して元のtubeに戻すといつた操作の必要な事もある。次に,術後Jones tubeが下方に偏位して,tubeの口に結膜がかぶつてくる様になる事である。
この欠点を解決するため,われわれは保存強膜でJones tubeを収める外套チューブをまず作り,これを涙丘から鼻腔へ向うトンネル創内に留置し,その中へJones tubeを挿入した。現在1年以上の経過を見た症例はわずか3例であるが,1例も脱落を認めていない。また術後Jones tubeは位置,角度共安定し,結膜のかぶりは来たしていない。保存強膜チューブはあらかじめ作つて保存しておけは手術の際,余計な手間はほとんどいらないので,Joncs tube使用の際には試みるべき方法と思い報告する。
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