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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科33巻12号

1979年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・265

Leber's congenital amaurosisを伴つたJoubert syndromeの1例

著者: 玉井嗣彦 ,   富田温子 ,   大野耕作

ページ範囲:P.1498 - P.1499

 Joubert syndromeは1969年にJoubertら1)により始めて報告された症候群で,1)発作性過呼吸,2)眼球運動異常,3)運動失調ならびに精神運動発達障害,4)小脳虫部の形成障害などを特徴的所見とする。
 現在まで8例の報告1,2)があるが,眼底異常を合併したとの報告はまだみない。最近,Leber's congenitalamaurosis時にみられる眼底病変3〜5)の併発をみた本症候群の1例を経験したので報告する。

臨床報告

新しい抗アレルギー剤によるアレルギー性結膜炎治療の試み

著者: 樋口真琴 ,   大野重昭 ,   三浪英子 ,   松田英彦

ページ範囲:P.1501 - P.1504

緒 言
 春期カタル,花粉症などを含む,いわゆるアレルギー性結膜炎は,日常よく遭遇する疾患で,しかも強い自覚症状のために患者にとつては苦痛の多い疾患である。近年,免疫学の急速な進歩により,これらの疾患の発症機序が明らかにされるとともに,その治療法についても,免疫学的,薬理学的研究により,新しい薬剤が開発されてきている。
 Disodium Cromoglycate(以下DSCGと略す)は従来のアレルギー用剤と異なり,アレルギー反応予防薬剤として,既に気管支喘息やアレルギー性鼻炎等に対し,内科,小児科,耳鼻科領域において広く使用されている。DSCGは肥満細胞の崩壊,およびそれに伴うヒスタミン,slow reactingsubstance of anaphylaxis (SRS-A)等のchemi-cal mediatorの遊離を抑制する作用があり,これまでアレルギー性疾患に使用されてきた副腎皮質ホルモン剤,抗ヒスタミン剤とは全く別の機序による働きをもつものである(図1)。

視覚系のMTF簡易測定装置の試作

著者: 河原哲夫 ,   尾羽沢大

ページ範囲:P.1505 - P.1509

緒 言
 視覚機能は通常,視力検査をはじめとして視野,色覚,光覚,ERGさらにVECPなどの多くの検査法によつて測定されている。特に物体の存否やその形状を認識する機能は一般に視力で評価し,重要・不可欠の検査項目となつている。視力検査ではそのコントラストがほぼ100%の視標を用い,被験者がどの程度細かい物体までを弁別できるか,すなわち解像限界を測定していると考えられる。この検査が重要なことは衆知の事実ではあるが,視覚の形状認識機能の厳密な評価には,これに加えて視標のコントラストが重要視されている。この例として対比視力表がすでに試作され,ドライバーの運転適性検査等に重要と報告されている1)。対比視力表ではコントラストの概念が視力検査に導入されてはいるが,コントラスト範囲が30〜100%であり低コントラスト領域における測定が困難である。またランドルト氏環の転用であるため,非常に簡単な測定となつてはいるが,そのパターンの複雑さから測定データの解釈が容易ではない。

Exfoliation syndromeの房水動態について

著者: 初田高明

ページ範囲:P.1511 - P.1514

緒言
 exfoliation syndrome (以下,本症と略)には高頻度に嚢性緑内障(glaucoma capsulare)を合併することが知られている。嚢性緑内障の発症機序については,なお議論のあるところであるが,落屑片(exfoliative flakes)による隅角線維柱帯細孔(trabecular pore)の閉塞が原因となつて起こる続発緑内障であるとする見解が有力である1〜5)
 わたくしは,本症の臨床所見,特に房水動態について検討したので,その結果について報告する。

「桐沢型ブドウ膜炎」の6症例

著者: 坂東桂子 ,   木下渥 ,   三村康男

ページ範囲:P.1515 - P.1521

緒 言
 1971年浦山ら1)は,その経過,病像からみて,これまでの報告にみられなかつた特異なブドウ膜炎の6症例を報告し,「桐沢型ブドウ膜炎」と命名した。我々は1973年から1978年6月までに,これに類似する6症例を経験した。そのなかの1例では初期症状を観察することができ,また一見健常と思われた他眼のERGに変化をみとめたので,これらの所見を含め,この疾患の経過および病像について報告する。

カラー臨床報告

網膜血管症retinal vasculopathyを伴つた網膜色素変性症

著者: 越生晶 ,   宇山昌延 ,   的場寛佳 ,   岡田日出男

ページ範囲:P.1523 - P.1532

緒 言
 網膜色素変性症が種々の網膜血管病変を伴うことがある。その一つにZamorani1)(1956)が記載したCoats病との合併がある。その後現在までに同様な症例が報告され2〜14),網膜色素変性症の眼底に網膜血管の拡張と蛇行,小動脈瘤,新生血管などを伴う滲出性病変をきたし,網膜硝子体出血や滲出性網膜剥離がみられたとのべている。しかし両疾患が合併する機序に関しては未だ明らかでない。
 また網膜色素変性症,遺伝性嚢胞状黄斑部浮腫,cone-rod dystrophyなどretinal dystrophyをきたす疾患群において網膜血管の透過性が亢進し,網膜浮腫を生じることがわかつてきた11,15〜18)

眼科手術学会

涙嚢篩骨洞吻合術の手術適応について

著者: 松田恭一 ,   星兵仁 ,   田沢豊

ページ範囲:P.1539 - P.1542

緒 言
 流涙に伴う患者の苦痛は診療にあたる側の想像をはるかに越えたものであろうと思われる。慢性涙嚢炎に対する手術的治療法としては古くは涙嚢摘出術がおこなわれていたが,術後に膿性分泌物は消失するものの症状は消失しないため患者は相変わらず流涙に悩まされるのが常であつた。
 昭和30年代に入つて涙嚢鼻腔吻合術(DCR)が導入され,さらに1958年に後藤の創案による涙嚢篩骨洞吻合術(DCE)1,2)が発表されたことは患者側および診療側の両者にとつて大きな福音となり,多くの追試者の報告によつてこの涙道再建手術が広く知られるところとなつた。

薬の臨床

前眼部感染症に対するDE−020点眼液とゲンタシン®点眼液の二重盲検法による効果の比較

著者: 嶋田孝吉 ,   北野周作 ,   東野巌 ,   内田幸男 ,   金子行子 ,   徳田久弥 ,   葉田野博 ,   佐々木隆敏 ,   田中直彦 ,   大石正夫 ,   西塚憲次 ,   原二郎 ,   三井幸彦 ,   塩田洋 ,   小林俊策 ,   小寺健一 ,   東堤稔 ,   岡田寿太郎

ページ範囲:P.1543 - P.1553

緒 言
 DE−020点眼液は,協和醗酵工業の研究所が開発したアミノグリコシド系抗生物質XK−62−21)の硫酸塩(KW−1062)を主成分とする点限液である。
 KW−1062の抗菌スペクトルは広く,Genta-micinと同様,グラム陽性球菌およびグラム陰性桿菌(緑膿菌,変形菌,セラチア,肺炎桿菌など)に強い抗菌力をもつている2)。その化学構造3)は,Gentamicin C1aの6'−N−メチル化体である(図1)。アミノグリコシド系抗生物質は,第Ⅷ脳神経系および腎臓に対する影響が強いことが問題になつているが,KW−1062は,これらの毒性が弱いこと4,5)から有用性が高く,全身薬としても開発が進められている6)

斜視の原因と治療

Ⅹ.Slave Eye外直筋へのImpulseとその伝達機構 その2

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.1554 - P.1555

 前回Magician's Forceps(MF)とReverse PhaseReflex(RPR)との関係を筋電図(EMG)で説明し,RPRの解析が外斜視のSlave eyeの外直筋へのIm-pulseの解明の指針になることを述べた。そして矩形強制運動によつておこしたRPRのEMGをみると,反射を反復するとSlaveの外直筋に対してだけ特有な現象がおこることを述べた。今回はそれをEOGでおつてみよう。
 Sine forced ductionによる RPRのEOGをみると,はじめはpeak to peakのtime lagは200msecであるが,反復するとabduction→adductionのtimelagは300〜400msecと延長し,adduction→abductionのtime lagはほとんど0になることを述べ,その理由は改めて説明すると書いた(5月号,第3回,図3)。そこで今度は矩形強制運動によるRPRのEOGをみることにしよう。図1に示すように最初数回はSlaveeyeも矩形運動をする。しかし反射を反復するとSlaveeyeは著明な歪みをうけた運動曲線を示すようになる。図中の数字は反復回数である。この歪みは電子回路を使つて容易に模写することができる。それを図2に示す。図の上半分は入力させた矩形波である。下半分は回路に並列にコンデンサーを挿入して得られた出力曲線で,図1に示すEOGの歪みを完全に模写している。

文庫の窓から

医学入門(1)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1556 - P.1557

 "入門"という語句を辞書で引くと,"門内に入ること""師の家に入つて弟子となること""初学者に便ならしめる為の書物"あるいは"学校,または私塾などに入りて其生徒となること",等いろいろでている。
 『医学入門』とは"医学初学者に便ならしめる為の書物"である。表題の「医学入門」は医学を学ぶ初学者にとつてどんな入門書であつたろうか。

第2回 眼科手術学会講演抄録集(1)

著者: D. Kelman

ページ範囲:P.1558 - P.1567

◎招待講演
1. SMALL INCISION INTRAOCULAR LENS
 This paper deals with the need and the rational behind a small incision intraocular lens. There are two basic reasons for pursuing such a lens.
(1) With a small incision, the lens can be inserted safely while the chamber is maintained by irrigation. With this system, there is practically no chance of endothelial touch to the intraocular lens.

GROUP DISCUSSION

斜視・弱視

著者: 粟屋忍

ページ範囲:P.1568 - P.1571

 運動面,感覚面より眺めた弱視・斜視全般におよぶ演題や新しい検査法を扱つた報告など豊富な内容に富む20題が発表され,300名を越す出席者の間で活発に質疑がおこなわれ盛会裡におわつた。以下各演題の抄録を報告する。

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臨床眼科 第33巻 総目次・物名索引・人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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