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特集 第32回日本臨床眼科学会講演集 (その1) 学会原著
蚕蝕性角膜潰瘍の外科的治療—大腿筋膜自家移植と結膜コラゲナーゼ活性
著者: 中野秀樹1 堀久枝2 永井裕2
所属機関: 1筑波大学臨床医学系 2東京医科歯科大学難治疾患研究所
ページ範囲:P.187 - P.193
文献購入ページに移動蚕蝕性角膜潰瘍(以下M.U.)は,Mooren'sUlcerとも呼ばれており,比較的まれな疾患であるが,激痛をともないまたしばしば両側性に出現し難治性である。原因も不明である。最近,角膜潰瘍の成因ならびに進行に角膜コラゲナーゼ活性の上昇が密接に関与することが,Slansky, Itoiら1)により指摘され,コラゲナーゼ阻害物質を用いた治療法が,M.U.に対しても応用されたが,決定的なものとはなりえなかつた。
1975年Brown2)は,M.U.の潰瘍隣接部結膜にも,角膜と同様にコラゲナーゼ活性の上昇を認め,この結膜コラゲナーゼの病的産生こそが,角膜潰瘍を進行せしめるものと推論している。さらにBrownはこの論拠から,結膜コラゲナーゼを抑制することが,M.U.の治療として,より適切であるとし,その手段として角膜潰瘍部の掻爬を含む潰瘍隣接部結膜の切除3)を提唱している。この方法は,本邦では武井ら4)によつて追試され,有効であると判定されている。
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