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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科33巻3号

1979年03月発行

雑誌目次

特集 第32回日本臨床眼科学会講演集 (その2) 学会原著

散瞳時前房内にゲル状物質の湧出を認めたexfoliation syndromeの3症例

著者: 馬場裕行 ,   原敬三 ,   右田寛

ページ範囲:P.259 - P.263

緒 言
 Exfoliation syndrome (以下ex.syndromeと略)の症例に散瞳剤を点眼すると,多くの例で前房内に多数の微塵が湧出することが知られており,この湧出した前房内微塵が眼圧上昇と直接関係があるかどうかが問題となつている1)。しかし,散瞳により湧出した前房内微塵の状態を詳細に観察した報告はほとんどない。
 私どもはex.syndromeの3例において,散瞳時前房内に,微塵の湧出と同時に透明なゲル状物質の存在を示唆する所見を得た。この興味ある所見は水晶体嚢緑内障の発生機転を知る手がかりとなると考えるので報告する。

白内障術後嚢胞状黄斑部浮腫の実態第2報

著者: 山元力雄 ,   木村好美 ,   尾崎吏恵子 ,   山岸直矢 ,   高橋義公 ,   深尾隆三 ,   永田誠

ページ範囲:P.265 - P.270

緒 言
 わが国における白内障術後の嚢胞状黄斑部浮腫(以下CMEと略記)の実態を知る目的で,われわれは前報において本症が好発するといわれている白内障術後4ないし6週の時点を選び,眼科的各種所見を老人性白内障122眼について検討し,螢光眼底所見に基づく黄斑部浮腫に関しては事実高率に発生していることを認めた。しかし真の問題はこのうち不可逆的な視力障害を残す症例がどの程度存在するかという点にあり,その後同一症例群について経過観察を続けた。
 今回は術後1年経過した時点におけるこれら症例の螢光眼底所見,機能的予後についての結果と併せて片眼嚢内摘出術,片眼嚢外摘出術を行なつた症例におけるCME発生率について更に検討を加えた結果を報告する。

重症糖尿病性網膜症の冷凍凝固療法

著者: 大槻潔 ,   菊地宏子 ,   水野勝義

ページ範囲:P.271 - P.281

緒 言
 糖尿病性網膜症の治療に光凝固療法がとりいれられて以来,統計上1,2)では増殖性網膜症による失明の危険はほぼ1/3にまで減少したといわれる。しかし,硝子体出血や高度の増殖性変化のために光凝固が全く行えないもの,あるいは牽引性網膜剥離を起す危険が大きく光凝固を実施できない症例には適切な治療法が少なく,すでに手遅れであるとして眼科医から見放される場合が多い。一方,近年の硝子体切除術の発達は,これらの症例においても,中間透光体の透明化をはかり,牽引性網膜剥離を改善させ,さらに光凝固を追加することにより再出血を防止することができるようになつて来ており,網膜症治療上の大きな進歩となつている。とはいえ,糖尿病性網膜症に対する硝子体切除術後の視力の予後は,網膜自体の糖尿病性変化が強く,再出血の頻度もかなり高いことなどより,視力の改善は40〜60%と報告者3〜8)による差が著しい。これは手技の優劣のみならず,対象としているグループの網膜症の程度にも差があるためと思われる。また,硝子体出血は一般には自然吸収の傾向が強い疾患とされている9,10)ため,従来は長期間いたずらに保存的療法のみが行われ,その間に増殖性変化が進行し,ために硝子体手術に踏み切るべき時期を失うことが多かつたことにも起因しているようである。

有裂孔性網膜剥離術後瘢痕化遅延に及ぼす因子について

著者: 杉田隆 ,   大久保享一

ページ範囲:P.283 - P.288

緒 言
 有裂孔性網膜剥離の治療の目的は裂孔を凝固して網脈絡膜癒着瘢痕を来たすことにあり,この瘢痕形成が早ければそれだけ患者の早期離床につながる。したがつて,瘢痕化遅延に及ぼす因子を知り,その因子をとり除くことは,とりもなおさず瘢痕形成を促進することになり早期離床が可能となる。しかしながら臨床例をもとにして瘢痕化遅延に及ぼす因子について詳細に検討した記載を過去にみない。そこでわれわれは有裂孔性網膜剥離術後瘢痕化遅延に及ぼす因子について検討したので報告する。

Preretinal macular fibrosisおよびCellophane maculopathyの後部硝子体所見

著者: 油井恵美子

ページ範囲:P.289 - P.296

緒 言
 黄斑部に好発し,セロファン膜様異常反射および皺襲形成または膜形成を来す一連の疾患については,種々の名称1〜5)が提唱されていることから明らかな様にその発生機転をめぐつて定説がなく,後部硝子体の関与は示唆されながらも,十分な検討はなされていない。
 後部硝子体と網膜との相互作用を解明するためには,眼底および後部硝子体所見を十分観察することがまず必要であり,細隙灯顕微鏡検査がこれらの所見を詳細に把握する上に最も適切な方法と考えられる。

白内障術後の嚢腫状黄斑浮腫について

著者: 新美勝彦 ,   野村隆康 ,   野川秀利 ,   馬嶋慶直

ページ範囲:P.297 - P.304

緒 言
 水晶体摘出術後に高率に嚢腫状黄斑浮腫(Cystoid macular edema,以下CMEと略)が発生することは,barrierとなつている水晶体嚢が破壊されることに関係し,嚢内法と嚢外法で発生率に差があるとする意見もある。私どもは切開面が小さく,術中術後の眼圧の変動の比較的少なく,水晶体後嚢を残す超音波吸引法(Phaco-emulsification and aspiration method,以下PEMと略)を行つた例が,嚢内法に比してCMEの発生が少なくなるかについて検討し,CME発生の機序についていささかの考察を加えてみた。

Neovascular Maculopathyの種々相

著者: 渡辺千舟 ,   吉原正晴 ,   中山周介

ページ範囲:P.305 - P.314

緒 言
 黄斑部網膜の色素上皮下あるいは神経上皮下に,出血や滲出性変化を伴う線維組織の増殖を生じ,臨床的に円盤状網膜剥離の所見を示す疾患群がある。この変化は脈絡膜起源の新生血管が破綻したBruch膜の間隙から,網膜色素上皮下あるいはさらに萎縮,剥離した色素上皮を通つて神経上皮下に侵入する病態のために生ずることが明らかになつてきた。このような脈絡膜からの血管新生は,外傷,変性または炎症と考えられる異質の病因に対して,黄斑部の示す共通性のある反応形式とみなすことができ,発生した新生血管が黄斑部に惹起する変化をNeovascular Maculopathyと称する。
 このようなNeovascular Maculopathyをきたす原疾患のうち,今回は老人性円盤状黄斑変性,近視性黄斑変性およびいわゆるRieger型滲出性中心性脈絡網膜炎をえらび,それぞれの疾患にみられる黄斑部の検眼鏡,細隙灯顕微鏡所見および螢光眼底撮影早期像でえられた新生血管の特徴的所見ならびにMaculopathyとの関係を検討したので,その結果について報告する。

裂孔原性網膜剥離と緑内障(続報)

著者: 上野明廣 ,   村田美苗

ページ範囲:P.315 - P.323

緒 言
 われわれは裂孔原性網膜剥離眼にときに高眼圧を伴うことを経験したので,裂孔原性網膜剥離(以下単に網膜剥離とよぶ)と緑内障の関連性について検索し,すでに網膜剥離眼の8.5%に高眼圧例が存在すること,および原発性開放隅角緑内障が5%併存することを報告1)した。その後網膜剥離の眼圧状態についてさらに検索を続け,とくに剥離症例の他眼を詳しく検索し網膜剥離と原発性開放隅角緑内障との関連性について検討した。その結果,前報の結論を確認しさらにこの両者にはかなりの発病素因共通性のあることを示す興味ある成績をえたので報告する。

境界型GTTと網膜静脈閉塞症との相関について

著者: 岩船裕一 ,   吉本弘志

ページ範囲:P.325 - P.333

緒 言
 予防医学の考えが普及するに伴い,糖尿病や高血圧症等のいわゆる成人病が,早期に発見される機会が多くなつた今日,眼科臨床的にもこれら疾患の初期例に遭遇する機会は増加してきている。これらの症例の中の一群として,境界型GTT症例が多数存在する事は周知である1〜4)。境界型GTTとは,50g糖負荷試験にて,日本糖尿病学会の勧告値により5),正常型にも糖尿病型にも属さない,ちようど中間のパターンを示す一群であり,糖尿病近縁疾患であると考えられている(表1)。
 しかし,本症の詳細すなわち,本症がはたして糖尿病に移行してゆくか否かさえ,今日なお明らかにはされていない1,6〜9)。また,人間ドツクなどで遇然発見された本症患者は,その大部分がfollow upされずに放置されているのが現状であろう。

眼球打撲症における黄斑円孔の臨床的検討—過去3年間の症例を中心に

著者: 大沢英一 ,   難波彰一 ,   山田いほ子 ,   大庭省三 ,   広森達郎 ,   西尾ゆかり ,   松山道郎

ページ範囲:P.343 - P.352

緒 言
 眼球打撲により生じる黄斑円孔の臨床所見は,円孔周囲の網脈絡膜変化を含めて種々の病態を呈する。円孔自身には,いわゆるlamellar holeとfull-thickness holeとがあり,その臨床経過も種種多様であるように思われる。
 今回,著者らは,初診時,黄斑部に円孔(lamel-lar holeを含め)が認められた18症例の外傷性黄斑円孔について臨床的経過を追求検討したので報告する。

網膜下液に関する研究—第1報 ヒト網膜下液中細胞の形態学的研究

著者: 柳田泰 ,   筑田富士雄 ,   高橋茂樹 ,   佐藤佐内 ,   浜井保名

ページ範囲:P.353 - P.358

緒 言
 裂孔原性網膜剥離は,近年,その手術方法の改良に伴い80〜90%の治癒成績が得られるようになつた。しかしながら,手術の成功にもかかわらず,視力の予後に関しては必ずしも満足のいくような結果が得られないのが現状である。Mache-merら1〜3)のサルを使つての研究ならびに一連の実験的網膜剥離の研究4〜6)は,網膜の変性過程および修復過程を知る上で興味深い。一方,網膜下液(以後SRFと略)の生化学的研究に関する報告7,8)は多いが,その形態学的研究はあまりなされていない。光顕ではLam9)やFemanら10)の報告があるが,電顕にてはLaszezyk11)およびFeeneyら12)の二つの報告があるにすぎない。
 今回,われわれは日常臨床において比較的入手しやすいSRFの細胞構成がいかなるものであるか,また,その形態を調べることにより,生体内における変化の過程,ひいては視力の予後が推定できぬものかどうかと考え,以下の実験を試みたのでここに報告する。

連載 眼科図譜・256

眼底にOphthalmomyiasis (眼ハエウジ症)によると思われる網膜下軌跡をみた1例

著者: 糸田川誠也 ,   浦口敬治 ,   三浦敬子 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.256 - P.257

 症例:49歳,男性,会社員。
 現病歴;4日前より始まつた左眼の眼痛,羞明,眼球発赤,流涙を主訴として某医より虹彩毛様体炎の診断を受け,当科を紹介された。

眼科臨床レントゲン診断学・15

各論(12):神経眼科(その3)—神経眼科とCT (1)頭部正常CT所見

著者: 丸尾敏夫 ,   桐渕利次

ページ範囲:P.382 - P.383

 神経眼科におけるコンピューター断層法computedtomography (CT)は,患者に侵襲のあまりない診断法であることから,広く利用されるようになつている。脳実質と脳脊髄液のX線吸収値が異なるために,CTでは,脳室や脳槽が脳実質と区別でき,出血,梗塞および浮腫ばかりでなく,占拠性病変そのものと,それによる脳室や脳槽の偏位あるいは変形が観察可能である。頭部CTは年齢,機種あるいはスキャン方法などで結果も異なることも知つておく必要がある。頭部CTの読影にあたつては,各スライスでの正常所見と解剖がまず認識されねばならないから,本号ではこれらについて述べておこうと思う。
 頭部CTの検査方法については,眼窩の場合には,眼窩下縁と外耳孔とを結ぶReid's base line (RBL)が基準であつたが,頭部の場合には図1に示すように,外眼角部と外耳孔とを結ぶcanthomeatal line (CML)から10°顎を下げた状態,すなわち前上りの基準線を用い,基準線に平行に,2cm上方を中心に,上下1cmの間隔で,4スキャン,8スライスの断層撮影を行う。病変部位のコントラストを強くして,画像を一層明らかにするために,造影剤静注による増強法enhancementが行われる。

臨床報告

Hypertrophy of the retinal pigment epithelium

著者: 林重伸 ,   近藤武久 ,   宮代汎子

ページ範囲:P.369 - P.374

緒 言
 われわれ眼科医を脳ます問題の一つに,眼底の黒色病巣がある。このような病巣の中には,いろいろな疾患が含まれているが,まず第一にmalignant melanomaが疑われて眼球摘出を受ける症例も多いことは,古くより指摘されているところである1)
 この黒色病巣を大別すると,脈絡膜から発生するものと,網膜から発生するものとの2種類に分けられる。このうち,網膜から発生するものは,比較的まれなものであるが,網膜色素上皮(retinal pigment epithclium,以下RPEと略す)のhypertrophyも眼底の黒色病巣として観察されるものの一つである。

カラー臨床報告

慢性関節リウマチに合併した網膜中心動脈閉塞性病変の1例

著者: 神鳥高世

ページ範囲:P.359 - P.365

緒 言
 慢性関節リウマチの眼合併症としては,前眼部病変の報告は多数認めるが,眼底病変合併の記載は極めて少ない。今回著者は両眼に急激なる視力障害を自覚した患者の眼底に網膜中心動脈の閉塞性病変をみ,螢光眼底撮影により,それが血管炎によるものであると考え,最近の慢性関節リウマチに関する病理学的な報告例の検討から,原病に伴うものであろうと推論した。

斜視の原因と治療

Ⅰ.外斜視の原因

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.366 - P.367

 斜視は何故おこるのだろう。斜視には色々の種類があるけれども,日常最もしばしば遭遇する普通の内斜視と外斜視とについて,その原因を考えてみよう。原因がわからなければ,適切な治療はできないからである。
 斜視学の原因論の開祖といわれるFrancis BernardChavasseは,斜視のおこる原因はFusionの未発達,または一度完成されたFusionの喪失の二つであるという。真のFusion(Convergenccを伴つたBifoveal fix-ation)は人類特有のもので,動物では類人猿にその痕跡があるにすぎない。系統発生的にみると,できたばかりの「ひよわ」な機能で,容易にこわれるのである。

薬の臨床

Levamisoleによる実質型角膜ヘルペスの治療成績

著者: 加藤富士子 ,   大野重昭 ,   松田英彦

ページ範囲:P.375 - P.381

緒 言
 実質型角膜ヘルペスは難治性で,しかも再発をくり返す予後不良な疾患である。これに対する治療としてIDUおよびsteroid剤が使用されてきたが,臨床的にはむしろ従来みられなかつたような重症化症例の増加する傾向が指摘され,これら薬剤に対する批判的傾向1,2)が強まつてきている。
 われわれが過去3年間に経験し追跡しえた症例においても,その治療結果は再発をくり返しきわめて不良であつた。

眼光学学会

眼底のstereogrammetry—立体像の再現性について

著者: 武田啓治

ページ範囲:P.384 - P.389

緒 言
 眼底の立体写真の情報処理には定性化と定量化の二通りの方法がある。前者は立体観察を目的とし,後者は立体諸計測をおこない最終的には眼底地図として図化することが目標となる。この立体計測は航空写真では高い精度で利用されているが,眼底写真の場合には精度が低く臨床研究の要望に答え難いのが現状である。しかし一方では,緑内障の診療にみられるように乳頭陥凹の図化をおこない陥凹の進行状態を定量化しようという試みがなされ,より高い精度の立体計測が要求されてきている1,2)
 図化作業には立体撮影,標定,視差差測定の三つの過程がある。立体計測の精度をあげるためには,このおのおのの過程の精度をあげればよい。したがつてCrock3)がおこなつているように視差差測定に図化機を使用し,計測の精度をあげるのもひとつの方法である。しかし眼底の立体計測には,その前段階での問題も多く含まれている。たとえば立体写真の全画面にわたる視差消去が困難であること,撮影角度が異なると視差差が違つてくること,網膜層内の立体情報が判別しにくいなどの問題点がある。また再現された立体像(ステレオモデル)が実際の眼底と相似形を示さない。このようなこと全てが立体計測の精度を低下させることにつながつている。

GROUP DISCUSSION

遺伝・先天性眼疾患

著者: 水野勝義

ページ範囲:P.390 - P.397

 応募題数27題を3時間で終えるため,名大および東北大の演題をそれぞれ1題ずつ遠慮した程,本G.D.の関心が高まつている。
 本来このG.D.は網膜色素変性症の研究者の集まりであつたのが,昭和44年網膜色素変性症の宿題報告が終るとともに,他の遺伝性,あるいは先天異常性眼疾患の報告が次第に増えて来た。昭和44年のG.D.で「眼遺伝・先天異常」と名称を改めて,今日に至つた。この改名は名市大馬嶋教授の助言によるものであり,会の主題が広範になつた以上,世話人も交代する時期に至つたと判断し,当日,世話人を馬嶋昭生教授と交代したい旨会員にはかり了承された。したがつて,次回からは馬嶋教授によつて運営される。長年月にわたり,本G.D.の運営に協力賜わつた,名市大および東北大の教室員,および会員諸氏に厚くお礼申し上げたい。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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