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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科33巻3号

1979年03月発行

文献概要

特集 第32回日本臨床眼科学会講演集 (その2) 学会原著

重症糖尿病性網膜症の冷凍凝固療法

著者: 大槻潔1 菊地宏子1 水野勝義1

所属機関: 1東北大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.271 - P.281

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緒 言
 糖尿病性網膜症の治療に光凝固療法がとりいれられて以来,統計上1,2)では増殖性網膜症による失明の危険はほぼ1/3にまで減少したといわれる。しかし,硝子体出血や高度の増殖性変化のために光凝固が全く行えないもの,あるいは牽引性網膜剥離を起す危険が大きく光凝固を実施できない症例には適切な治療法が少なく,すでに手遅れであるとして眼科医から見放される場合が多い。一方,近年の硝子体切除術の発達は,これらの症例においても,中間透光体の透明化をはかり,牽引性網膜剥離を改善させ,さらに光凝固を追加することにより再出血を防止することができるようになつて来ており,網膜症治療上の大きな進歩となつている。とはいえ,糖尿病性網膜症に対する硝子体切除術後の視力の予後は,網膜自体の糖尿病性変化が強く,再出血の頻度もかなり高いことなどより,視力の改善は40〜60%と報告者3〜8)による差が著しい。これは手技の優劣のみならず,対象としているグループの網膜症の程度にも差があるためと思われる。また,硝子体出血は一般には自然吸収の傾向が強い疾患とされている9,10)ため,従来は長期間いたずらに保存的療法のみが行われ,その間に増殖性変化が進行し,ために硝子体手術に踏み切るべき時期を失うことが多かつたことにも起因しているようである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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