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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科33巻6号

1979年06月発行

文献概要

連載 眼科図譜・259

日蝕性網膜炎

著者: 山田彪史1 北川彰子1

所属機関: 1深谷赤十字病院

ページ範囲:P.748 - P.749

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 1978年10月2日,本邦で9年半ぶり(一部3年半)の日蝕が観察された。その2日後日蝕性網膜炎の患者が当科を受診した。近年情報手段の発達と共にこの種の事故が減少したためか,割合症例を見る機会も少ないのでここに紹介したい。患者は,小学校5年生の男児(M.S.78-1530),日蝕を肉眼で観察し,通算して3分間余太陽を凝視している。翌日より中心暗点を自覚し近医を受診後当科に紹介された。近医による初診時視力は矯正で右左共0.6,翌日当科で矯正視力右1.2,左1.5であつた。視野測定で両眼共に30′程度の中心比較暗点を検出した。眼底は図1のごとく,両眼共黄斑部中央に直径100μ(乳頭径より換算)の白斑とその周辺に浮腫を認めた。螢光眼底検査では,初回のものにわずかながら黄斑部中心に螢光を認めたのみで以後異常はなかつた(図5)。黄斑部中央の白斑は次第に薄くなり,ほぼ2週間で赤つぽい色調となり浮腫も漸次消退した(図2,3,4)。視力も両眼矯正で1.5と回復したが,中心暗点は,うす暗い感じは取れて来たものの30′程度の範囲は発病後2カ月の時点でも存在している。色覚は暗点部分のみ,水色青色が黒つぽく見えるというが他の部分に異常はなかつた。治療は従来あまり期待されていないが消炎,新陳代謝促進等を考慮してビタミン剤末梢循環改善剤および小量のステロイド等を使用した。この様な日蝕性網膜炎の起る条件について検討して見たい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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