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特集 第32回日本臨床眼科学会講演集 (その5) 学会原著
未熟児網膜症の発生,進行に対するRiboflavin tetrabutyrateの効果について
著者: 馬嶋昭生1 田内緑1 菅由子1
所属機関: 1名古屋市立大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.759 - P.764
文献購入ページに移動あらゆる疾病において自然治癒が期待できない場合には副作用の最も少ない薬物療法が望ましく,さらに疾病の予防法を確立することが最も重要であることはいうまでもない。特に未熟児網膜症のごとく,早期発見が比較的容易であり,また,全身状態からその発生や重症化が予想できる場合には,早期治療,予防の可能性を見出すための研究が行なわれるのが当然であろう。
OwcnsとOwcns1)は,初めてビタミンEを投与して本症の発生予防と進行の停止に有効であると報告したが,KinseyとChisholm2)により予防,治療いずれの効果も否定された。Reeseら3)もビタミンEを無効とし,ACTHが血管性増殖を阻止するために本症の治療に有効であると発表した。しかし,翌年にはさらに症例を追加した結果,ACTHには認むべき効果はないと自ら否定した4)。副腎皮質ホルモンは,PérierとParent5)が初めて使用し,わが国でも松本6)らによつて追試された。その後,全身投与以外に結膜下注射や球後注射も行なわれているが,副作用に優る程の効果は確認されず,次第に使用されなくなつている。1968年永田ら7)が光凝固法による治療を開発したことは,少なくとも活動期重症例に対しては画期的な進歩であり,治療法の焦点はこの方面に向けられた。
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