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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科33巻7号

1979年07月発行

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特集 第32回日本臨床眼科学会講演集 (その6) 学会原著

角膜移植における免疫反応の臨床—免疫反応の発症因子に関する統計学的検索

著者: 山口達夫 ,   金井淳 ,   中島章

ページ範囲:P.927 - P.939

緒 言
 角膜移殖において免疫反応は,graftを混濁させる主な原因の一つである。Khodadoust1)により,角膜の上皮,実質,内皮のそれぞれの層にそれぞれ特微的な反応の起こる事が報告されて以来,免疫反応の臨床像に関してはかなり明確なものとなつてきた。しかしながら,免疫反応を起こす要因について検索した報告6〜20)は少なく,また種々の要因についても,確立されたものはない。
 今回,われわれは高い透明治癒率を得るために,どの様にすれば免疫反応の出現を低く抑える事ができるのか,また,免疫反応を早期に防ぐには,どの様な事に留意すれば良いかを知る目的で,免疫反応を起こす要因について,統計学的に種々の検討を加えた。

日本における眼部悪性黒色腫の頻度について

著者: 金子明博

ページ範囲:P.941 - P.947

緒 言
 悪性黒色腫は網膜芽細胞腫と異なりその頻度の人種差が著しいものとして良く知られている1)。しかし眼部悪性黒色腫の日本での頻度に関しては全国的規模による症例の集計は行なわれていない。著者はこの問題につき1972年より76年までの5年間について全国調査を行い,幸いにも全国の眼科医のご協力により興味ある知見を得たので報告する。

保存強膜を利用した眼形成手術—(Ⅱ)眼瞼全層欠損の再建

著者: 田邊吉彦 ,   星野元宏

ページ範囲:P.949 - P.954

緒言
 眼瞼全層の大きな欠損は皮弁によつて再建される。使用皮弁は,眼球保護という特殊機能の必要上,粘膜が眼瞼部に裏打されるが,これには患者自身の結膜1,2),口腔粘膜2〜4),鼻粘膜2,3)等が利用されてきた。特に鼻中隔軟骨附粘膜は理想に近い裏打材料で,われわれもこれを愛用して来た。しかしこれらは患者に余計な傷を与え,採取に時間と技術を要し,更に無制限には採れない事が欠点である。
 われわれは角膜や強膜の疾患に,保存角膜や強膜の移植を行なつて来た経験から,これが組織とよくなじむ事を知り,先に保存強膜を内皆形成の手術に応用し,これが瞼板代用としても有用であると報告したが14),今回,保存強膜が生食水に浸すと非常にしなやかで,その脈絡膜側は極めて滑らかである事に目をつけ,こちらを角膜にむけ皮弁の裏打に用いれば,異物感もなく,皮弁とのなじみもよかろうと考えた。3例の眼瞼癌に用い良好な結果を得たので報告する。

超音波診断における眼部画像処理と臨床的意義 第3報

著者: 山本由記雄 ,   平野史郎 ,   鏑木ふく代 ,   富田美智子 ,   岡出栄子 ,   池田英昭

ページ範囲:P.955 - P.960

緒 言
 眼部超音波断層画像を得るにあたり,その診断精度の向上に各方面より意が払われて来た。すなわち振動子の質的改良,階調性の表現,多角走査--任意面断層,走査方式の複合など,手持スカナーの開発,カラーディジタル表示の改良,スキャンコバータによるマルチ走査,スキャンコンバータ・リーダの開発,他科用超音波機器の改良,さては,C-mode, F-modeへの展開など10指に余る表示法があげられる。私どもとしては,これら表示法の各得失を検討し,さらに有利な面の開拓に資する目的で,得られた成績より知見の報告をおこないたい。

眼科超音波診断に関する研究—第14報 新型高解像度眼科用超音波診断装置の試作とその臨床的応用

著者: 太根節直 ,   小松章 ,   神野順子 ,   木村陽太郎

ページ範囲:P.961 - P.966

緒 言
 これまで10余年間にわたつて行なつてきた筈者らの各種の眼科超音波診断法(Aモードによる感度断層法,あるいはスキャンコンバータ装置,およびカラーディジタル同時断層装置の使用など)では,定性的診断に大そう有用であつたが,その検査の実施や画像の読影にはまだ相当の経験と熟練を必要とし,ルーチンの検査法としての普及にはさらに工夫を要するものがあつた。
 わが国においても,眼科臨床で用いられている超音波診断装置は国内,国外の製品を合わせて10数種類となつている。しかし,それらの装置により得られる画像の性質は,それぞれに使われている振動子や,増巾器などの電子回路,表示装置の諸特性,および走査方式の違いなどにより,かなり質を異にしている。そして,これらの装置による眼疾患の診断は,それぞれの装置で熟練した検査者の経験や主観的判断に負う所が多く,各々の装置の相互には必ずしも,同じ結果を示さない場合が見られるのが現状であり,これらの中でどの様な画像が,その疾患を正確に表現しうるか,またそれらの情報に何らの共通点があるかを見出しておくことはルーチンの検査法としての超音波診断法の普及に是非必要である。また一方,眼科の超音波診断も,その検査をTechnicianの手に委ねる方向に進まねばならない。

硝子体手術における超音波診断の意義について

著者: 竹内忍 ,   加藤秋成 ,   太田陽一 ,   箕田健生

ページ範囲:P.967 - P.973

緒 言
 近年硝子体手術がさかんに行なわれるようになつたが,術前に硝子体混濁の形態,部位,広がり,さらに網膜剥離の有無を知ることは,硝子体手術の成否に大きな影響を与えるものである。
 硝子体混濁に対する超音波診断についての報告は数多くあるが,実際の硝子体手術時の所見と術前の超音波診断所見とを比較検討した報告は本邦ではいまだない。

網膜剥離におけるQuantitative Echographyに関する研究

著者: 益山芳正 ,   馬場幸夫 ,   澤田惇

ページ範囲:P.975 - P.978

緒 言
 硝子体手術のめざましい発展にともない,その適応を決めるために,光学的検査が不能の場合にでも硝子体および眼底の性状を知りうる生体映像的方法が要求されてきた。超音波による診断方法は現在,これをみたす唯一のものと考えられているが,何か異常があるという検出能のみならず,その異常が何であるかを示すことが必要となる。最もしばしば必要なことは,硝子体中にある構造物が剥離網膜であるか否かを示すことである。
 A-scan echography,特に組織による超音波の反射性の差異を示すquantitative echographyにより剥離網膜と他の膜様構造物との鑑別が正確かつ容易に可能となり,多くの場合Ossoinigの判定基準1)に合致した成績を得て来た。しかしながら,ある種の病変,例えば糖尿病性網膜症ではこの判定基準に合致しないものがみられたので,人工的に網膜剥離を家兎におこし,quantitativeechographyの成績と組織構造の相関を検索し,臨床的応用の際,注意すべき結果を得たので報告する。

硝子体出血に伴う硝子体内膜様物の診断について

著者: 大鳥利文 ,   法貴隆 ,   坪井俊児 ,   浜田陽 ,   初川嘉一 ,   太田路子

ページ範囲:P.979 - P.990

緒 言
 近年わが国においても平均寿命がのび高令者が増加しているので,網膜の血管病変やこれに伴う硝子体出血の症例は増加するものと思われる。
 硝子体内に大量の出血をきたした場合,硝子体内に膜形成をきたすことが多い。このような症例において,硝子体内の膜が剥離網膜であるのか,単なる硝子体出血に起因する膜であるかを鑑別することは臨床上大切な問題であるが,超音波所見からだけでは判断しにくいことがあるとされている1〜13)

CTによる眼窩部のcoronal sectionについて

著者: 高尾宗良 ,   戸塚清

ページ範囲:P.991 - P.995

緒 言
 CT(Computcd Tomography)により,眼窩部の影像を求める場舎,理論的には,およそ三つの方向からの切断が考えられる。すなわち,水平断,冠状断,および矢状断の三つである(図1),この中,水平断を行なう場合の断面の設定条件については,著者らはすでに述べた1)。今回は,眼窩部においてもその有用性が認められてきた冠状断層撮影(Coronal Section)に関して2〜6),冠状断実施の際に,常に一定の部位,方向でこの部を切ることができるとすれば,いかに条件を設定したらよいかを検討した。装置としてはACTA-0200−FSを用いた。

頸動脈−海綿静脈洞瘻のCTについて

著者: 田中泰雄 ,   新藤雅章

ページ範囲:P.997 - P.1004

緒 言
 眼窩病変に対するCTの検討は,各種疾患にわたり多くの人々によりなされているが1〜3),頸動脈−海綿静脈洞瘻(CCF)に関する報告はまだ少ない4,5)。われわれは1977年札幌での臨床眼科学会において,主に眼窩部冠状断層撮影についての報告を行つたが6),今回は冠状断層撮影よりは横断断層撮影の方にその所見がより特微的に描き出される点に興味を覚えたCCFのCT像について,その診断的な意義等に関して多少の検討を加えたので報告する。

正常眼窩内各部のX線吸収係数のあらわれ方と造影剤によるそれらの造影効果について

著者: 麻薙薫 ,   中村泰久 ,   重盛博一

ページ範囲:P.1009 - P.1013

緒 言
 コンピュータ断層法(以下CTと略す)は被検査領域の小区画のX線吸収係数(以下CT係数と略す)を算出することにより,それらの像を描出することは衆知のことである。
 眼科領域では,個々の構成要素が比較的小さく,3方を骨でかこまれた円錘形の中にあるため,個々のCT係数に関しては開題点が多いとされている。

ナフタリン白内障の走査電子顕微鏡による初期像の研究

著者: 富永晄子

ページ範囲:P.1015 - P.1020

緒 言
 白内障の成因を解明する補助手段として,動物を川いての実験的白内障の研究は数多くなされてきた。ナフタリンを投与された動物に白内障が発生することは,すでによく知られ,ナフタリン自内障といわれ,紅織学的に多くの報告が1〜7)あるが,主に光学顕微鏡あるいは透過型電子顕微鏡(以下透過電顕と略す)による観察である。今回,著者は,ナフタリン白内障家兎の水晶体線維の病理学的変化,特に,その皮質水品体線維の初期像を走査型電子顕微鏡(以下走査電顕と略す)を用いて観察したので報告する。

老人性白内障の分類とその生化学的背景について

著者: 山本覚次 ,   錦織恂子 ,   錦織敏治 ,   宍道健介 ,   花房直路

ページ範囲:P.1021 - P.1026

緒 言
 老人性内障の臨床的形態学について,古来から幾つかの報告があるが,Bellows1)らによる分類は次の5種類に分けられている。つまり,
(1) cortical

老人性白内障における前房水の組成について

著者: 藤原隆明 ,   三国郁夫 ,   尾羽沢大

ページ範囲:P.1027 - P.1035

緒 言
 種々の眼内疾患のときに,房水の組成に変化のおこることが知られている1)。白内障についても,主として,実験的白内障の場合において若干の報告3〜5)をみることができる。しかし人眼白内障に関する報告6〜8)は,極めて少ない。その理由の一つとして,試料採取のやや困難なことと微量であることが挙げられよう。白内障成因の生化学的追究にあたつては,水晶体そのものにたいすると同様に,その環境因子としての房水にも,大いに目が向けられねばならない。一方,近年臨床化学分析装置の進歩により微量の試料による多項目にわたる同時分析を迅速に行うことが可能となつた。
 われわれは,今回,この種の装置を用いて,主として老人性白内障手術時に採取した房水を用いて,その生化学的プロファイルを検討し,このうち特に個体差の著しかつた房水Glucoseについて,さらに追究を行ない,若干の知見を得たのでここに報告する。

フットペダル制御による電磁ロック式手術用顕微鏡,および同軸回転式手術椅子(16mm映画)

著者: 杉田慎一郎 ,   永島信六郎 ,   加藤茂雄

ページ範囲:P.1037 - P.1039

緒 言
 広範な領域における手術用顕微鏡使用の結果,Staticまたは固定した位置(Barraquer,Mache-merら)で従来の手術用顕微鏡を用いての眼手術は,次第に困難となつて来た。特に前眼部におけるゴニオトミー等のような特殊な方向からの手術の場合や,網膜剥離,硝子体手術(open-sky法),視神経管骨折等の後眼部の手術の場合には,それに適した手術用顕微鏡が要求される。かかる手術の場合には手術中に顕微鏡の位置や角度もたびたび変えなければならないし,また術者も位置を変える必要が生じて来る。特に顕微鏡の傾斜がしばしば重要になる。
 かかる問題のため,われわれは電磁ロック形式の顕微鏡と,顕微鏡と同軸回転可能な手術用椅子とから成る総合システムを開発した1,2)。このシステムにより,術者の位置および顕微鏡の角度,方向は素早く円滑に変える事ができ,したがつて手術野を幅広い角度から見る事が容易に可能となつた。新しく考案した細隙灯もまた,そのシステム中に組み込まれている。顕微鏡および椅子の操作は椅子に付けられたフットスイッチボタンによつて行われ,術者の両手は手術にのみ使用される。われわれの新しいシステムの五つの特徴を以下に述べる(図1)。

連載 眼科図譜・260

恙虫病による急性視神経網膜炎の1例

著者: 北川道隆

ページ範囲:P.924 - P.925

〔解説〕
 恙虫病は発疹チフス群に属するリケッチア症の一つで,本邦では新潟,山形,秋田の3県がその発生地としてよく知られている。恙虫病による眼病変はScheie (1945年)により初めて報告され,結膜炎,虹彩炎等の前眼部病変と乳頭浮腫,網膜浮腫,軟性白斑等の眼底変化が起こるとされている。本邦においては,眼科領域からの報告は非常に少なく,しかも前眼部病変のみであり眼底変化の報告はないようである。今回著者は本症と思われる眼底所見を有する症例を経験したので報告する。
 症例:51歳,農婦。

眼科臨床レントゲン診断学・19

各論(16):神経眼科(その7)神経眼科とCT (5)脳腫瘍のCT (その2)

著者: 丸尾敏夫 ,   桐渕利次

ページ範囲:P.1040 - P.1041

3.下垂体腫瘍
 下垂体腫瘍pituitary tumorは腫瘍がトルコ鞍内に限局している場合には描出不可能のこともある。それはトルコ鞍内のX線吸収値がその周囲の骨組織の影響で,正確な値を示しにくいためである。しかし,トルコ鞍上部へ伸展した腫瘍では,境界の明瞭な高吸収域として描出が可能となる。しかし,旁鞍部の他の腫瘍との鑑別は,CTのみでは不可能のことも少なくなく,臨床症状や経過などを参考とせねばならない。図1は,視力障害を主訴とした12歳,男子の嫌色素性下垂体腺腫の症例である。鞍上部に高吸収域がみられ,増強法でも増強がみられた。

斜視の原因と治療

V.逆位相眼球反射運動(石川)と外斜視

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.1042 - P.1043

 前回は石川教授によつて発見された眼球の逆位相反射について述べたが,本反射の特徴について,その続きを記載する。
 1.光刺激:この反射はDominant eyeに光刺激を加えておかないと惹起されない。図1はそのことを端的に示すEOGである。Dominant eyeを開放してForcedductionを加えるとSlave eyeが逆位相運動をするが(図1,明),Dominant eyeを閉瞼してForced ductionを加えても(同図,暗),Slave eyeは動かない。「暗」になるとDominant eyeの強制運動がスムーズになり,その振幅も,同じ力で強制運動させているにもかかおらず,大きくなる。その理山は第3項をみよ。なお本反射には学習現象があり,高度に学習された(manifest化された)場合には石川教授によれば光刺激がなくても反射がおこるようになるという(潜伏眼振の例)。

文庫の窓から

医書大全(1)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斉藤仁男

ページ範囲:P.1044 - P.1045

 わが国の南北朝から室町時代末頃までの飜刻書の中には仏教書以外に「論語」や「三体詩」等種々挙げることができるが,医書としては大永8年(1528)阿佐井野宗瑞覆明刊の明・熊宗立撰「新編名方類證医書大全」,天文5年(1536)谷野一栢覆明刊の明・熊宗立撰「俗解八十一難経」等があるだけである。
 越前版「俗解八十一難経」は天文5年9月9日越前国一乗谷城下の高尾において,朝倉孝景(宗淳)に招かれた南都の僧医,谷野一栢(雲篭,連山老人)が明版をもつて覆刊したものであり,わが国医書出版として第2番目のものである。

臨床報告

恙虫病による急性視神経網膜炎の1例

著者: 北川道隆

ページ範囲:P.1047 - P.1052

緒 言
 恙虫病(tsutsugamushi disease)は,眼科領域の感染症の中でもやや特殊な類に属し,結膜充血,虹彩炎等の前眼部病変と,乳頭浮腫,網膜浮腫,軟性白斑等の眼底変化が起こるとされている10〜14,16,17)。本邦では眼科領域からの報告は非常に少なく,しかも前眼部病変のみであり,眼底変化の報告は著者の調べた限りではない。
 今回著者は,利根川支流沿いの高地湿原地に住む一婦人に発症した,本症と思われる眼症状を経験した。それは両眼性であり,視神経網膜炎,軟性白斑,表層出血等の眼底変化を主要病変とする非常に稀有な症例であり,ここにその臨床経過を供覧する。

視覚障害者のリハビリテーション—その1 糖尿病

著者: 小林直樹 ,   環竜太郎 ,   堀内二彦 ,   富井純子 ,   船橋知也 ,   市川文昭 ,   中村哲夫 ,   伊豆利昭

ページ範囲:P.1053 - P.1057

緒 言
 近年,糖尿病患者が増加し1,2)その管理によつて余命は飛躍的に延長したが,一方,血管症である糖尿病性網膜症による重症視覚障害者は増加2)の一途を辿り,しかもその進行,予防およびその治療法などは未だ十分に確立されていない。ひとたび網膜症が発症した場合,視力を可及的に保持するためにも医学的管理や生活指導をすることはもちろんであるが,重症網膜症の際には障害者の最終的段階を認識し社会復帰への積極的な対策も考慮すべきである。特にリハビリテーション(以下リハと略す)の側からも,眼科臨床においていたずらに患者の安静または休養の指示が長すぎたり,失明宣告の時期や方法が不適当であることがしばしば指摘されている3)。したがつて眼科臨床の場において,臨床的更生指導が必要である。しかし現実には視覚障害者の医療と教育,福祉の間には大きなギャップがあり4〜6),障害者のスムーズなリハ移行を妨げている。しかもこのような機関の必要性が痛感されながらも,これが余りにも少なく全国各地にこれらの機関の設置3〜5)が望まれているのが現状である。
 そこで今回,われわれは神奈川県総合リハセンター・七沢ライトホームで経験した糖尿病による重症視覚障害老を対象に,リハの現状を紹介,あわせてその問題点を検討したので報告する。

眼球内容除去後に発生した悪性黒色腫の1症例

著者: 内田邦子 ,   雨宮次生

ページ範囲:P.1059 - P.1062

緒 言
 眼球内容除去をうけた眼に,後年,悪性黒色腫が発生したという報告は数例ある1〜7)。これらの症例においては,悪性黒色腫が,残存ブドウ膜より発生するのか,あるいは,眼球内容除去の原疾患の病因が,実は悪性黒色腫であり,残存腫瘍より再発したものか,などの議論がなされてきた。またこのことから,眼球内容除去術の適応となる全眼球炎や,絶対緑内障の原因として,悪性黒色腫の存在に,注意が喚起されてきた本編では,40年前に眼球内容除去術をうけ,義限台を装用していた眼に,悪性黒色腫を発生した興味ある症例を経験したので記載し,このような症例についての問題点を考按してみたい。

眼科手術学会

第一次硝子体過形成遺残の手術経験

著者: 大島健司 ,   西村宜倫 ,   田原和子 ,   三根茂 ,   岡嶋由布子

ページ範囲:P.1063 - P.1068

緒 言
 第一次硝子体過形成遺残(以後PHPV)は小児の白色瞳孔を来たす疾患の一つであり,臨床的には網膜芽細胞腫や瘢痕期未熟児網膜症との鑑別において重要視されて来ている。
 このPHPVは,正常であれば消失すべき第一次硝子体が遺残し第二次硝子体の異常発育が起つた結果であると考えられているが,最近このPHPVはその臨床症状から二つの型に分類されると考えられている。その一つはanterior typeで,水晶体後面,Cloquet管附近,乳頭表面などに遺残第一次硝子体が見られ,Reeseによる詳細な研究1)でよく知られている型である。他の一つは,今まで先天性網膜襲Congenital retinal fold,先天性束状網膜剥離Ablatio falciformis congenitaなどという名称で知られ,Mann2)やWeve3)等の研究が行なわれていたもので,最近これをPHPVのposterior typeであるとする考えが提唱され,受け入れられつつある。

GROUP DISCUSSION

神経眼科

著者: 下奥仁

ページ範囲:P.1069 - P.1071

 臨床眼科学会の時に開催せられる神経眼科G.D.は,神経眼科学会が別の機会にも開催せられるため,ここ数年間,一般講演を行わず,専ら教育講演的な内容のものを,特別講演としてお願いし,神経眼科に興味をもつている同好の方々にご参集していただいている。
 今回は,視路における生理学に関しての最近の研究の一つを林泰正教授にお願いし,最近,次第に増加しつつある心因性疾患の理解を深めるために,心理学的アプローチに関する問題を松永一郎教授に,また,先天性眼振の問題点とその治療に関する最新の研究を石川哲教授にお願いしてご講演をしていただいた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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