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臨床報告
片眼が眼球萎縮に陥り再発を来たした両眼性の網膜芽細胞腫
著者: 塩谷信行1 貴田秀樹2
所属機関: 1久留米大学医学部眼科学教室 2久留米大学医学部第一病理学教室
ページ範囲:P.1145 - P.1150
文献購入ページに移動網膜芽細胞腫についての報告は,Duke-ElderによればR.Hayesの3歳女児の黒内障性の猫眼を呈した両眼性の腫瘍の例が最初で,その後,多数の網膜芽細胞腫についての報告がある1)。一般に網膜芽細胞腫は,多くは片眼性であるが,両眼性のものが約15〜35%みられ,かつ,両眼性のものは遺伝による家族的発生が多いといわれている1)。本腫瘍は,病理組織学的にも,また臨床的にも,非常に悪性度の高い腫瘍であるにもかかわらず,無治療のものが,まれであるが,自然治癒(Spontaneous regression)を来たす場合があることが知られている。しかし,いつたん眼球萎縮に陥つた網膜芽細胞腫が,再び増殖したという例は非常に少なく,本邦でも,菅沢・尾上2),中村3),高木4)の例など,数例の報告があるのみである。今回,両眼性の綱膜芽細胞腫と診断し,治療を勧めるも,家族の同意が得られず,止むなく放置されたが,11ヵ月後の再診時には,1眼は眼球萎縮に陥り,他眼に虹彩後癒着が認められた。両眼の眼球摘出を行つたが,その後,左の眼窩より,網膜芽細胞腫が再発した興味ある症例を経験したので報告する。
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