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臨床報告
糖尿病性続発緑内障—とくに虹彩面上の内皮形成と虹彩血管新生および虹彩根部前癒着との関連について
著者: 野村恒民1 児玉保子2 谷口慶晃2
所属機関: 1産業医科大学眼科学教室 2九州大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.1171 - P.1174
文献購入ページに移動近年インスリン治療と抗生物質の開発により糖尿病の血糖コントロールと感染症合併は改善され,糖尿病患者の余命は著しく延長したが,逆に長期合併症として血管障害が増加しつづけ,現在では,血管合併症の管理と予防が糖尿病治療の主要な目標となつてきている。眼科領域では糖尿病性網膜症が糖尿病患者の失明原因として大きな問題となつていることは,周知の事実である。糖尿病性続発緑内障は別名出血性緑内障,rubeoticglaucomaまたはneovascular glaucomaなどとよばれ,網膜症が進行し,いわゆるproliferativeretinopathyに至つた症例に起こる緑内障である。この緑内障では虹彩面上の血管新生(虹彩ルベオーシス)を伴い,虹彩根部に高度の虹彩前癒着を生じる1)。眼圧のコントロールはむずかしく,強い眼痛を伴つた上に視力回復の見込みがないなどの理由で眼球摘出に至る症例が多い。
1977年Gartnerら2)は虹彩ルベオーシスと虹彩根部前癒着とを伴つた緑内障眼で虹彩面上に内皮が形成されている病理所見を報告した。糖尿病眼に起こつたものはわずか1例だけで,この所見が糖尿病性続発緑内障に頻発するものかどうかは明らかにされなかつた。
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