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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科33巻9号

1979年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・262

球状の硝子体播種性転移を示した網膜芽細胞腫

著者: 井田理恵 ,   浜中輝彦

ページ範囲:P.1220 - P.1221

 硝子体内の網膜芽細胞腫の生育は,ReeseのⅤ型vitreous seedingとしてよく知られているが,栄養血管を持たない硝子体中における発育は容易でなく,臨床的にわれわれが遭遇しうる機会は数少ないものとされている。今回われわれは腫瘍細胞が集合し,まりも様の球塊となつて硝子体中に浮遊しているという,いわば硝子体内の純粋培養を示す症例を続けて2例経験し,網膜芽細胞腫の硝子体内での生育の典型例であると考えられるのでここに報告する。
症例1:6歳,女子R.F.(53-4389)

総説

神経眼科的診断法—眼球運動検査法

著者: 下奥仁

ページ範囲:P.1223 - P.1229

眼球運動の解剖,生理についての基礎的事項
 眼球運動の検査法を理解するために,あらかじめ眼球運動に関する解剖,生理学的知識を総括してみよう。
 眼球運動は,随意的に行うことができるが,不随意的,すなわち,反射的要素が強いという特徴をもつている。これは,外眼筋が組織学的には横紋筋線維より成つてはいるが,生理学的には平滑筋線維に似た特性を示すことを考え併せると興味のあるところである。

臨床報告

眼レプトスピラ症の現況

著者: 湯浅武之助 ,   多田玲 ,   下村嘉一 ,   中川やよい ,   松本和郎 ,   三村康男

ページ範囲:P.1231 - P.1235

緒 言
 眼レプトスピラ症は葡萄膜炎のうちでは多くとも1〜2%を占めるにすぎない疾患であるが,葡萄膜炎患者のなかには本症を強く疑わせるような症例を時折みかける。本症の疫学ならびに臨床症状の知識があればこのような場合に有用であるが,本邦において眼科医の立場からこれらの成績をまとめた最近の報告1,2)は少ない。ここでは過去10年間に阪大眼科で実施した1,366名にたいするレプトスピラ凝集反応の結果を前報1)のものと,最近5年7カ月間のものとを比較対照した形で報告し,これにより診断された血清学的レプトスピラ症37例の眼症状を述べ,典型的な本症の病像を呈した症例を報告する。

中心性漿液性網脈絡膜症患者における尿中カテコールアミンの検討

著者: 若倉雅登 ,   鈴木英夫

ページ範囲:P.1237 - P.1240

緒 言
 中心性漿液性網脈絡膜症(central scrous cho-rioretinopathy,以下CSC)とストレスとの関係は古くから知られ,精神身体医学的検討もいくつか成されて来た1〜3)。またこの点に注目して作られた家兎の実験的本症も,古味4)以来しばしば研究対象となつている。しかしストレスと関係の深いカテコールアミンに関する検討は全くなされなかつた。そして,光凝固法の普及で,本症治療成績が向上こしたともあつてか,本症とストレスという観点から発生病理に迫ろうとする努力は,最近やや影を潜めた様にも思える。
 著者ら5,6)は,本症が合成副腎皮質ホルモン剤投与で,明らかに増悪を示すことを認め,本症とストレス,とくにカテコールアミンおよび副腎皮質ホルモンと本症の関係を明らかにする必要を感じ,検討したところ,興味ある結果が得られたのでここに報告する。

角膜単純擦過法による上皮性角膜ヘルペス治療の試み

著者: 加藤富士子 ,   大野重昭 ,   松田英彦

ページ範囲:P.1241 - P.1244

緒 言
 1962年Kaufman1)により新しい抗ウイルス剤としてIDUが開発された。それ以来上皮性角膜ヘルペスといえばIDU点眼を,と反射的とさえもいえるほどにIDU点眼が一般化されてきている。しかし治療の成績をふり返つてみると病変の遷延化および再発する例があるのが現状である。
 今回われわれは上皮性角膜ヘルペスに対し角膜単純擦過法による治療を試み,従来のIDU治療との比較をおこなつたのでその成績を報告する。

網膜色素変性症に合併した乳頭の桑実様腫瘤の2症例について

著者: 早川むつ子

ページ範囲:P.1245 - P.1249

緒 言
 乳頭上または乳頭に隣接する網膜上にみられる灰自色の桑実様腫瘤については,従来乳頭ドルーゼとして報告されていた。一方結節性硬化症に合併する桑実様腫瘤は組織学Hamartonaである事が明らかにされている。1972年Robcrtsonは眼底所見の類似性から,綱膜色素変性症に合併した桑実様腫瘤の1例をドルーゼではなくHa-martonaであるとして報告し,またすでに報告されている乳頭ドルーゼと網膜色素変性症の合併例41例の内,5例がHamartomaであつたと述べている。最近当科では網膜色素変性症に合併する乳頭の桑実様腫瘤の2例を経験したので,ドルーゼとすべきか,Hamartomaとすべきかについて若干の考察を加え報告する。

ドリル研磨による翼状片手術

著者: 原孜 ,   原たか子

ページ範囲:P.1257 - P.1259

緒 言
 翼状片の組織には腫瘍性がなく1),その発生と進行過程は,赤松ら2)によれば,先ず外界からの刺激が瞼裂部球結膜の上皮代謝異常を生じ,最終的には不可逆性の膠原線維が角膜内に進行して行くとされている。根本的治療法は手術である。翼状片手術の成功の鍵は,再生組織が再び角膜内に侵入する前に,いかに健常な角膜上皮の再生を完了させてしまうかという事にある3)。報告されている手術法は多様である。すなわち,翼状片組織再生を遅延させる事に意義があるものとして,放射線療法,マイトマイシンC点4),Thio-TEPA点やステロイド点5),テスパミン点6),結膜の回転移植や,口腔粘膜の移植7),翼状片頭部の側方への強膜内埋没法3),更には,術後制御糸による眼球対側固定法8)等がある。これに対して,角膜の処理には,一般にカミソリまたはメスによる方法が用いられている。切除部の角膜再生を円滑にするためには,翼状片頭部のみならずその周囲の健康角膜をも切除する必要がある事は定説化している。その健康角膜の部を,刺激を少なく,最少の量を,しかも確実に切除するのは容易ではない。翼状片手術の中で,最も時間がかかり,そして,術者の神経が使われるのもここである。顕微鏡下でドリルを用いて角膜内の翼状片組織を削りとるという方法は,コロムビヤのバラケ7)により開発されたものであるが,何故かわが国では普及していない。

カラー臨床報告

高度な眼底変化を呈した全身性紅斑性狼瘡の2例

著者: 萱沢文男 ,   本田昭道 ,   弓削経夫 ,   鶴岡祥彦

ページ範囲:P.1251 - P.1255

緒 言
 全身性紅斑性狼瘡(以下SLEと略す)の網膜病変については,1929年のBergmeister1)の報告以来諸家2〜5)により報告されており,通常全身症状と相関して推移するとされている。
 今回,われわれは,全身的所見は極めて軽度であるにもかかわらず,網膜細動脈の高度な閉塞,乳頭部血管新生等多彩な眼底所見を呈したSLE 2例を比較的長期にわたり経過観察する機会を得たので症例報告すると共に,眼底のみに高度な病変を示すSLEの成因およびその治療法につき若干の考察を加えたので報告する。

眼科手術学会

全摘出による人工水晶体挿入における前房内空気による角膜内皮保護

著者: 竹内光彦

ページ範囲:P.1261 - P.1268

緒 言
 老人性白内障に対する全摘出法(ICCE,Intra-capsular cataract extraction)における人工水晶体(IOL,Intraocular lens)挿入の各段階において,前房内に大きな気泡を作りできるだけ角膜内皮との接触をさけながらIOLを挿入すると,術翌日より流涙,線状角膜炎の発生が少なく術眼を開放することがでぎ,明らかに従来の結果と異なる所見が得られた。
 この事実はMaumenee&Stark1〜3), Drews4)の普通のICCEとICCE+IOLにおける角膜内皮細胞生体観察(Specular microscope)による比較でその角膜内皮細胞脱落に著明な差がみられなかつた報告によつても裏づけられる。これらの報告は何れも角膜内皮との接触を注意深く避けることにより角膜内皮は保護されたと報じている。

Ocutome/Fragmatome systemによる硝子体・水晶体手術—その1 Ocutomeについて

著者: 清水昊幸

ページ範囲:P.1277 - P.1283

緒 言
 硝子体吸引切除術は,硝子体出血などによる硝子体混濁の除去にはもちろん,各種前眼部手術たとえば硝子体の混じた外傷性白内障の除去などに極めて有用な手術法である。したがつて今日では硝子体吸引切除機は各種内眼手術にとつてなくてはならない機械器具となつている。硝子体切除機にもMachemerのVISCを始め種々のものがあるが,これらはカッターの駆動方式により二大別することができる。一つはハンドピース内にモーターあるいは電磁駆動装置を持つ「ハンドピース内電気駆動方式」のもので,VISC (Machemer)1),Rotoextractor (Douvas)2),Vitreous stripper(Klöti)3), Vitreous nibbler (Tolentino-Sche-pens)4)などがこれに属す。他は「圧搾空気駆動方式」によもので,ハンドピース外に空気ポンプを有し,細いチューブで圧搾空気をハンドピース内のふいごの中に導きカッターを駆動するものである。例としては,ここにこれから述べようとするO'MalleyのOcutome5)があり,またPey-manのVitrophage6)がある。空気駆動方式のものは,一般にハンドピースの構造が簡単なので,煮沸消毒ができたり故障が少なかつたりいくつかの有利な特徴がある7)

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第33回 日本臨床眼科学会スケジュール

ページ範囲:P.1269 - P.1269

斜視の原因と治療

Ⅶ.内斜視の原因(その2)

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.1284 - P.1285

 前回内斜視は光に対するその眼の「光−内直筋」異常反射が基盤になつておこるというKeinerの説と,それに一致する諸所見を述べた。今回はその続きをもう少し書いてみたい。
 Phoriaの状態をすぎてtropiaになるとEso. Exo.を問わず「光」はあまり関係なくなる。したがつてTropiaは絶対暗室へ入れても眼は通常正位にならないことはExo.について第1報で述べた。この点Eso.もExo.も同様である。しかし両者の間には一つ大きな差がある。図1にExotropiaの暗室における眼位を示す。明室でも暗室でも視線の方向に差はない。図2にEsotropiaの場合を示す。明室では視線はトの字型であるが,暗室ではハの字型になつている。私どもはこの現象をハト現象と呼んでいる。Eso.の場合ハト現象が常に陽性なわけではない。今までに写真判定したものの約50%に陽性であつた。Exo.では1例も経験されていない。こういう差がExo.とEso.との間におこることは理論的にも容易に理解される。

文庫の窓から

南北経験医方大成論(1)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1286 - P.1287

 「南北経験医方大成論」(以下医方大成論という)は江戸初期から中期にかけてしばしば刊行され,その抄や解説書も数多く,大変広く読まれた。
 「医方大成論」は「医書大全」の紹介の際にも触れたように,「医書大全」の中の"病論"だけを抜き集めて一書としたものである。岡本為竹(一抱子)撰,「医方大成論和語鈔」の」"「南北経験医方大成」発端之弁"にはおよそ次のように記されている。

GROUP DISCUSSION

眼の形成外科

著者: 久冨潮 ,   青島周明

ページ範囲:P.1288 - P.1291

 本年は,特別講演をやめ,本来のグループディスカッションをめざし,討論に多くの時間をとつて運営してみた。名大の田辺先生のご尽力により,参会者のうち約10人位が立席になつた位で,会場の広さもちようどよく,会の運営も午後5時丁度に終り,有意義な半日であつたと思う。主題は,眼瞼腫瘍の形成手術と題し,3題の演題があり,座長を昭和大,深道教授にお願いした。一般演題も3題あり,札幌医大,中川助教授の座長で進行した。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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