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臨床報告
ドリル研磨による翼状片手術
著者: 原孜1 原たか子1
所属機関: 1原眼科病院
ページ範囲:P.1257 - P.1259
文献購入ページに移動緒 言
翼状片の組織には腫瘍性がなく1),その発生と進行過程は,赤松ら2)によれば,先ず外界からの刺激が瞼裂部球結膜の上皮代謝異常を生じ,最終的には不可逆性の膠原線維が角膜内に進行して行くとされている。根本的治療法は手術である。翼状片手術の成功の鍵は,再生組織が再び角膜内に侵入する前に,いかに健常な角膜上皮の再生を完了させてしまうかという事にある3)。報告されている手術法は多様である。すなわち,翼状片組織再生を遅延させる事に意義があるものとして,放射線療法,マイトマイシンC点4),Thio-TEPA点やステロイド点5),テスパミン点6),結膜の回転移植や,口腔粘膜の移植7),翼状片頭部の側方への強膜内埋没法3),更には,術後制御糸による眼球対側固定法8)等がある。これに対して,角膜の処理には,一般にカミソリまたはメスによる方法が用いられている。切除部の角膜再生を円滑にするためには,翼状片頭部のみならずその周囲の健康角膜をも切除する必要がある事は定説化している。その健康角膜の部を,刺激を少なく,最少の量を,しかも確実に切除するのは容易ではない。翼状片手術の中で,最も時間がかかり,そして,術者の神経が使われるのもここである。顕微鏡下でドリルを用いて角膜内の翼状片組織を削りとるという方法は,コロムビヤのバラケ7)により開発されたものであるが,何故かわが国では普及していない。
翼状片の組織には腫瘍性がなく1),その発生と進行過程は,赤松ら2)によれば,先ず外界からの刺激が瞼裂部球結膜の上皮代謝異常を生じ,最終的には不可逆性の膠原線維が角膜内に進行して行くとされている。根本的治療法は手術である。翼状片手術の成功の鍵は,再生組織が再び角膜内に侵入する前に,いかに健常な角膜上皮の再生を完了させてしまうかという事にある3)。報告されている手術法は多様である。すなわち,翼状片組織再生を遅延させる事に意義があるものとして,放射線療法,マイトマイシンC点4),Thio-TEPA点やステロイド点5),テスパミン点6),結膜の回転移植や,口腔粘膜の移植7),翼状片頭部の側方への強膜内埋没法3),更には,術後制御糸による眼球対側固定法8)等がある。これに対して,角膜の処理には,一般にカミソリまたはメスによる方法が用いられている。切除部の角膜再生を円滑にするためには,翼状片頭部のみならずその周囲の健康角膜をも切除する必要がある事は定説化している。その健康角膜の部を,刺激を少なく,最少の量を,しかも確実に切除するのは容易ではない。翼状片手術の中で,最も時間がかかり,そして,術者の神経が使われるのもここである。顕微鏡下でドリルを用いて角膜内の翼状片組織を削りとるという方法は,コロムビヤのバラケ7)により開発されたものであるが,何故かわが国では普及していない。
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