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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科34巻1号

1980年01月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・266

奇異な所見を呈した胞状網膜剥離の1例

著者: 牧野道子 ,   宇津木沢ひかり ,   松野三枝子 ,   岩田純介 ,   長南常男

ページ範囲:P.6 - P.7

 胞状網膜剥離は眼底後極部に網膜色素上皮層を含む病変があり,同時に周辺部に網膜剥離を伴う疾患である。本症は1973年に三村ら4),塚原ら5),吉岡6),Gass7)四者が各独立した形でそれぞれの名称で発表されて以来注目されるようになつたものである。
 症例は17歳の女性右眼の視力障害を主訴として受診した。既往歴として4年4カ月前,左眼に同様症状を来し入院加療している。この時右眼は無症状であつたが眼底後極部に2個の小さい網膜色素上皮剥離があつた。今回右眼発症時の視力は右0.3(1.0),左0.5(1.2),右眼中間透光体には炎症所見は認めなかつた。眼底は黄斑領域に約4乳頭径大の網膜剥離があり(図1),螢光像では中心窩と視神経乳頭の中間に陳旧性の網膜色素上皮剥離(左眼発症時に無症状の右眼に認められたもの)を認め,網膜剥離内に大小2個の旺盛な螢光漏出があつた。色素上皮剥離巣を鼻側の端とした螢光増強部も認められた。造影後漏出部の網膜は緑染し強い組織染を示した。

螢光読影シリーズ・4

異型中心性網膜炎

著者: 横地圭一

ページ範囲:P.29 - P.36

 司会 漿液性中心性網膜といえばもちろん増田型が最も代表的な疾患ですけども,いわゆる異型中心性網膜炎という状態,それがいくつかの種類があるということで最近色々と話題になつています。今日検討する症例もそのような中心性網膜炎と似て非なる症例ですけども,まず受持医から症例の大要を話していただきます。
 C.U. 患者は33歳男子(T.S.53−3588)で,右眼の霧視を主訴として近医を受診し,中心性網膜炎ではないかということで紹介され来院しました。主訴は約6カ月前からはじまつており,中心暗点も自覚していましたがつい最近まで放置しておりました。

臨床報告

胸部帯状ヘルペスに伴つた視神経網脈絡膜炎の1例

著者: 松田久美子 ,   坂上英 ,   佐藤美記 ,   幸塚悠一 ,   志賀早苗

ページ範囲:P.9 - P.14

 胸部帯状ヘルペスに続いて両眼視神経網脈絡膜炎をきたした53歳女性に対して,抗ウイルス剤Cyclocytidine, Betamethasoneの全身投与を行ない症状の改善をみたが,その後左側の耳鳴,難聴を伴う左眼症状の再燃をきたした症例を経験した。眼部以外の帯状ヘルペスに続発した両側の視神経網脈絡膜炎はこれまでに報告がなく,しかも,その眼科所見,耳科所見がVogt−小柳−原田症候群に類似している点もあり,興味ある症例と思われたので報告した。

開放隅角緑内障の夜間視力—ピロカルピン点眼による影響

著者: 蒲山俊夫 ,   常岡寛 ,   服部美里 ,   若松慶二 ,   小池裕司

ページ範囲:P.15 - P.21

 開放隅角緑内障患者の夜間視力にピロカルピン点眼が,どのように影響するかを知る目的で,簡易型中距離夜間視力計を用い,明所視力が良好でも視野,ならびに夜間視力に障害のある本症患者12例20眼にピロカルピンを点眼して,その夜間視力の経時的変化を測定し,次の結果を得た。
 (1)視野障害が軽度,すなわち内部イソプター(I/3,I/2,I/1)のみ障害された緑内障眼の夜間視力は,ピロカルピン点眼により改善された。そして,この改善の平均値は点眼60分後にピークとなり,それは正常値近くまで増強した。
 (2)視野障害が外部イソプターにまで及んでいる緑内障眼の夜間視力は,ピロカルピン点眼によりやはり軽度改善傾向をみたが,その効果は小さかつた。
 (3)このことから,視野障害の小さい緑内障群に対してピロカルピンを点眼した場合の夜間視力(視標提示後60秒)の回復は,視野障害の大きい緑内障群のそれより大きいことが有意の差をもつて認められた(p<0.01)。
 (4)ピロカルピン点眼による緑内障眼の中距離夜間視力の改善は,ピロカルピンの屈折,調節変化,および縮瞳作用以外のなんらかの作用によるものであることが判明したが,今回はその他のピロカルピンの作用についての検討が詳しくなされておらず,その改善機序については,いまだ推論にとどまり,今後の検討が必要と考えられる。

奇異な所見を呈した胞状網膜剥離の1例

著者: 牧野道子 ,   宇津木沢ひかり ,   松野三枝子 ,   岩田純介 ,   長南常男

ページ範囲:P.22 - P.28

 47歳の女性に見られた胞状網膜剥離を報告した。まず左眼に発症し,4年4ヵ月を経て右眼に発症した。両眼共に早期の光凝固療法で視機能の低下は最小にとどまつた。右眼では後極部に巨大な馬蹄型病巣が出現し,螢光像では網脈絡膜関門の著しい破綻を示している。従来の知見からは網膜色素上皮細胞の変性が進行して巨大化したと推測されるが,我々は眼底像から色素上皮細胞間の離開を仮定した。いずれにしても特異な形態でかくも広範囲に網膜色素上皮層が障害されうることは特筆される。

眼科手術学会

Werner症候群白内障のOcutome/Fragmatomeによる手術

著者: 清水昊幸

ページ範囲:P.39 - P.42

 (1)28歳男子のWerner症候群の1例を経験し,その両眼の白内障を,1眼は通常の水晶体全摘術で,1眼はOcutome/Fragmatomeによる小穿孔々超音波破砕法で手術し,結果を比較した。
 (2)通常の水晶体全摘術を行つた左眼は四面切開,厳重な縫合と意図的に創傷治癒の万全を期したにもかかわらず,術直後の前房出血,浅前房に始まり,半永久的な結膜下への前房水漏出等術創癒合不全による諸合併症を生じ,矯正視力は1.0に達しているものの未だに多くの不安を抱えて経過観察を行つている。
 (3) Ocutome/Fragmatomeによる小穿孔々超音波破砕手術を行つた右眼は術後1〜2週間,前房,硝子体中の蛋白・細胞増多,眼底小出血斑等を見たが術創部に全く不安がなく,術後矯正視力も1.0に達している。
(4)以上同一症例の両眼の手術結果の比較から,本症の白内障手術には小穿孔々超音波破砕手術が最もよい適応を有すると考えられた。

眼内レンズ挿入眼に再度の手術を行つた症例について

著者: 尾崎吏恵子 ,   永田誠

ページ範囲:P.43 - P.47

 眼内レンズ挿入眼に再度の手術を行つた症例の現時点における最大の問題,点は金属ループのIOLの固定にあつた。このような再手術例を減少させるためには,IOL挿入にあたつて,適応患者の選択から術後の瞳孔管理まで細心の注意を必要とするのみならず,IOLの材質,デザイン,消毒法などにも,きめ細い配慮が必要である。

術後網膜剥離防止を目的とした部分的網脈絡膜切除術

著者: 水野勝義 ,   奥山茂美 ,   大槻潔

ページ範囲:P.48 - P.54

 眼内微小銅線異物の1例と,眼内腫瘍の1例に,網脈絡膜部分切除を施行した。手術は術後の網膜剥離を防止することを主目的とし,ナイロン糸による網脈絡膜固定を行い,かつ,バックリングにより切除部を囲むことにより,術後剥離を防止することに成功した。本術式は,非磁性の微小眼内異物や,眼内良性の腫瘍の場合,症例によつては,有用な方法である。

Pars plana vitrectomy後急激なmassive periretinal proliferationにより網膜剥離を来たした1例

著者: 大島健司 ,   橋本芳昭

ページ範囲:P.55 - P.58

 44歳の男子の左眼の硝子体出血に対し,VISCXを用いてVitrectomyを行つたところ,術後8日目にmassive periretinal prolifcration (MPP)により網膜剥離を来たした。この症例に対し術後14日目にVISC Xを用いてmembrane pceling,赤道部締結術,SF6によるgas tamponadeを行い,網膜を復位させた。その後再びMPPが再発したが,Ocutomeを使用してmembrane peelingを行い網膜を完全に復位させ,その後6ヵ月間再発なく,矯正視力1.0である。

GROUP DISCUSSION

感染症

著者: 小林俊策

ページ範囲:P.63 - P.67

1.実験的角膜ヘルペスにおける三叉神経軸索流のブロック
 三叉神経軸索流のブロックによつて,単純ヘルペスウイルス(HSV)が角膜から三叉神経節へ輸送されるのを阻止する目的で本実験をおこなつた。
 ウサギの片側の角膜にHSVを接種した場合,in totoに摘出した両側の三叉神経節からHSVが分離できることがある。それは結膜嚢から鼻腔さらに口腔に排出されたHSVが上経顎神および下顎神経の末端を経て他側の三叉神経節にも運ばれるためと考えられる。
 したがつてブロックの効果をみるには,上眼窩裂で眼神経と上顎神経に薬剤を作用させ,下顎神経細胞を含まないよう注意して眼・上顎神経細胞を摘出し,HSVのリカバリーをみることが大切である。

斜視の原因と治療

Ⅸ.Magician's Forceps Phenomenon

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.68 - P.69

 斜視の問題をScnsorimotor Refiexとの関連でみていくと,たくさんの新しい事柄や問題にぶつかる。今回は「Magician's Forccpsとは何か」という問題を深く分析してみよう。一言にMagician's Forceps (MF)現象といつても詳しく見ていくと色々な形に遭遇する。EMGと対比してみるとMFをしらべる時には三つ(亜形を含めると四つ)の場合に分けて観察する必要のあることがわかる。結論から先に書こう。①まず純粋なMFが単独におこる場合,②MFとReverse PhaseReflex (RPR)とが同時に発現する場合,そして,③MFとNF型RPRとが同時に発現する場合である。図1はこれらの場合を模式図で示したものである*1
 ①純粋なMFが単独に発現する場合には,図のA→B→Cのようになる。すなわちSlave eyeはMFによつて正中位*2に来る(B)*3。しかしMasterを更に強制内転させても,Slaveは正中線を越えて内転しない(C—1)。強制外転させてもSlaveは外斜の原眼位に帰るだけである(C−2)。この場合の実際の写真を図2に示す。

文庫の窓から

医学入門(2)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.70 - P.71

 このように内容的には五輪八廓説を採用したもので,「古今医統大全」(徐春甫),「医林集用」(王璽)等に記されている眼科と同様,中国に古くから伝えられたインド古代眼科の龍樹眼論が主体をなしている。
 「編註医学入門」および「医学入門」の流布本にはおよそ次のものがみられる。

第2回眼科手術学会抄録集(2)

著者: 湖崎弘 ,   中各一 ,   坂口一之 ,   原二郎 ,   木下渥

ページ範囲:P.73 - P.83

22.Trabeculectomyの予後
 Trabeculectomyの正確な効果を知るために,9クリニックにおいて,術後6カ月以上経過を観察した原発緑内障276眼の予後を調査し,次の結果を得た。
(1)偶発症は49眼延18%におこつた。悪性緑内障を除いて,重篤なものはなかつたので安全な手術といえるが,濾過過剰による前房再生遅延,遅発性浅前房低眼圧があつたのでやはり注意が必要である。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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